新幹線923形電車
923形電車(923がたでんしゃ)とは、東海旅客鉄道(JR東海)及び西日本旅客鉄道(JR西日本)が導入した新幹線用電気軌道総合検測車である。ドクターイエローの愛称で知られる。
概要[編集]
700系をベースに開発され、時速270km/hでの検測走行が可能。
2000年(平成12年)にJR東海所有のT4編成が登場し、国鉄から継承した922形T2編成を置き換えた。この時点ではJR西日本に922形T3編成が残存していたが、2005年(平成17年)にJR西日本所有のT5編成が登場。これによりT3編成が置き換えられて検測車の270km/h化を完了した。西日本持ちのT5編成も大井車両基地に常駐しており、定期検査はJR東海に委託している。
T4・T5編成は外観上大きな違いはないが、T5編成は車体側面にリフティングジャッキを差し込むための穴がある他、7号車屋根上にアンテナが設置されている事などが異なる。
老朽化や営業車のN700Sに搭載した検測機能で代替が可能になったことで、T4編成は2025年(令和7年)1月で引退。T5編成も2027年(令和9年)1月で引退予定となっている。
構造[編集]
T4・T5編成共に7両編成で、ベースとなった700系と車体構造や各種部品が共通化されている。そのため車体はアルミ合金中空押出材を使用したダブルスキン構造だが、屋根部は軽量化と測定装置取り付けのためシングルスキンとなっている。また天井や床中には測定配線用のスペースが設けられている。
- 外観
車体色は黄色をベースに青15号の帯を巻いている。しかし雑誌『鉄道ファン』1999年9月号に掲載されたイメージイラストでは、パールホワイトをベースにJR東海のコーポレートカラーであるオレンジ色の帯を巻くものとなっていた。[1]
先頭部は700系と同じエアロストリーム形で、前照灯下方の車体中央部に前方監視カメラとそれを挟む形で尾灯が設置されている。側引戸は700系よりも幅広のものとなり、922形にあった機器搬入口を廃止している。また窓数は最低限のものとなっている。
- 機器類
機器類も700系に準じ、加減速力も合わせられている。ユニット構成も4両1ユニットを基本としているが、7両編成と短いのもあって、博多方の第1ユニットが1 - 3号車の3両で1ユニットとなっている。このため新たに両先頭車が制御電動車となり、付随車に搭載していた補機類を電動車に移設している。またM'車の車内には210kVAの電源装置と鉛蓄電池が搭載されている。
台車は全車両ボルスタレス式で、動力車はT4編成はTDT204形(1・7号車運転台側は測定機器付のTDT204A形)、T5編成はWDT206形(1・7号車運転台側は測定機器付のWDT206A形)を履き、4号車の軌道検測車はT4編成はTTR8001形、T5編成はWTR8001形を履く。この台車はヨーダンパが1台車に付き4本設置されているが、検測装置と干渉するためブレーキ装置が装備されていない。
- 検測装置
922形に搭載されていた検測機器よりも新しいものが搭載された。
軌道検測は922形までの3台車方式から、レーザー基準線と台車の光センサーの相対変位を検出する2台車方式へと変更。922形の軌道検測車は17.5m車だったのが923形では25mとなって他車にと同じ長さになった。
- 集電装置
2・6号車には集電用と検測用のTPS302形シングルアームパンタグラフが1基ずつ搭載され、編成全体では4基のパンタグラフが装備されている。パンタグラフは車体長の半分以上を占める長大なパンタグラフカバーの中に収められている。
なお検測走行の際、進行方向前側は検測用パンタのみを上げ、進行方向後側は集電用パンタのみを上げる。ただし試運転等の特殊運転時はこの限りにない。
- 車内
車内は各号車ごとに役割が変えられている。運転台は700系とほぼ同一で、検測用パンタの昇降スイッチが追加されている等の細かい違いしかない。
検測走行は長時間に及ぶため、デザインは人間工学に基づいた疲れにくいものとした。ただし防音設備は旅客車よりも質素になっている。
- 1号車
電気・信号・通信関係の測定台を有する。検測員は測定台に座ってモニタに表示されるデータを監視する。
- 2号車
電力・集電状態の測定を行い、検測用パンタから得られたデータを処理する高圧室等がある。検測員が乗り込むスペースはない。
- 3号車
電力関係の測定を行い、屋根部分にはパンタグラフなどをチェックできる観測ドームがある。観測ドームには専用座席と架線を撮影するカメラが設置されている。その他にもデータ整理室、テーブル・椅子・ロッカー、便洗面所と流し台がある。
- 4号車
軌道検測車で、軌道関係の検測を行う。検測機器の関係で床面が他の車両よりやや高い。4号車のみ検測機器への熱の影響を軽減するため屋根を白く塗っている。
- 5号車
3号車同様観測ドームがある他、休憩室と便洗面所、流し台がある。休憩室の座席は背もたれを倒して補助椅子を使うことで簡易ベッドにもなる。
- 6号車
ミーティングルームと資材搭載スペースがある。資材搭載スペースはレールやクレーンといった重量物も載せられるよう強化されている。また電力関係の測定機器、高圧機器もこの車両に置かれている。
- 7号車
各種添乗や視察に対応する添乗員室となっており、700系の普通車に準じた回転リクライニングシートが10列と大型モニタが設置されている。
編成構成[編集]
| 方向 | ←博多 | 東京→ | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
| 構造 | M1c | M' | M2 | T | M2 | M' | M1c |
| 形式 | 923 | 923 | 923 | 923 | 923 | 923 | 923 |
| T4 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
| T5 | 3001 | 3002 | 3003 | 3004 | 3005 | 3006 | 3007 |
運用[編集]
概ね10日1回、のぞみ号と同じダイヤで検測するのぞみ検測と、2ヶ月に1回こだま号と同じく各駅停車で待避線を主に検測するこだま検測で運行される。どちらも2日間かけて東京と博多を1往復していた。
2025年(令和7年)1月28・29日の検測運行を以て東海持ちのT4編成が運用を終了。最終運行日には1・4・7号車の窓に防炎クロスを用い「ありがとうT4」の文字装飾を行った。文字はクロス1枚に1文字ずつ書かれ、窓1枚につきクロス1枚を貼り付けた。
西日本持ちのT5編成はT4編成引退後も検測運行を行っているが、こちらも2027年(令和9年)1月を以て引退する。[2]
保存[編集]
T4編成の両先頭車が保存されている。
- 923-7 : 名古屋市のリニア・鉄道館で2025年6月より保存。従来展示されていた922-26との入れ替えであり、同地での保存を終えた922-26は石川県白山市のトレインパーク白山に移設。
- 923-1 : 山口県下松市の日立製作所笠戸事業所構内で保存。2025年の工場公開イベントで保存後初めて一般公開された。[3]
注[編集]
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