正孔

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

正孔とは、電子がなく孔のようになっていること。電子は負の電荷をもち、相対的に正の電荷をもっているように見えるため孔という。 ホールとも。

概要[編集]

正孔は、電荷の符号が電子と逆であるので、電子と対になるキャリアとして考えられる。

正孔が多数キャリアの半導体P型半導体(positiveの意)と言って、例えば14族元素(Siなど)に13族元素(Bなど)を添加して作ることができる。 このような13族をアクセプターと呼び、電子を受け取るものの意である。これは、14族の価電子が4つなのに対して、13族は1少ない3つなので電子が少なく正のようになっていることによる。 逆に、電子が多数キャリアの半導体をN型半導体(negativeの意)と言って、例えば14族元素(Siなど)に15族元素(Pなど)を添加して作ることができる。 このような15族をドナーと呼び、電子を提供するもの意である。これは、14族の価電子が4つなのに対して、15族は1多い5つなので電子が多く負のようになっていることによる。 アクセプターやドナーを注入していない半導体は真性半導体(I型半導体:intrinsicの意)と言って、電子と正孔の濃度は同じである。

これらのキャリア(電子と正孔)はそれぞれの濃度にかかわらず、濃度のが一定になる。これは真性半導体でも成り立つから、濃度の積は真性キャリア濃度の2乗である。このことを質量作用の法則と言う。 これは、中和反応における水素イオン(あるいはオキソニウムイオン)とヒドロキシイオンの関係と同じである。 平衡状態においては対生成と対消滅が釣り合っているので積が一定になる。 ただし、温度や禁制帯幅などの条件を変えると対生成のレートが変わってしまい、水のイオン積が変わるようにキャリア濃度の積も変化してしまう。

対生成は、価電子帯の電子が熱や光で励起され伝導帯に遷移することで、価電子帯の正孔と伝導帯の電子に分離することで起きる。 このような対生成のほかに、外部から注入される正孔も考えられる。 そして、正孔は電子のない孔なので実体があるわけではなく、水の中の泡のアナロジーで例えられる。 特にバンド構造を示すバンド図において電子のエネルギー準位で見たときに、 電子が落ちていくのに対して、正孔は浮上していくように見える。これはまさに、重力で水が落ちて泡が上への浮上していくのと同じである。

また、孔なので質量がないと考えられがちだが、その正体は電子がないという状態なので質量をもつかのように考える必要がある。 そのような質量を有効質量という。電子とホールとでは有効質量は一般に異なる。そのため、P型半導体とN型半導体では性質が異なり、完全な対称ではなくなる。

関連項目[編集]