飯田線の旧形国電

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飯田線の旧形国電 (いいだせんのきゅうがたこくでん)とは、かつて飯田線に在籍し、運行した旧型国電について述べる。

概要[編集]

太平洋戦争中に戦時国有化によって4つの地方民鉄が買収されて成立した飯田線はしばらく買収国電によって運行されていたが、首都圏京阪神圏国鉄モハ80系電車国鉄モハ70系電車が投入されると、これらの路線で運行されていた鉄道省モハ40系電車鉄道省モハ51系電車が飯田線に投入されて買収国電を地方民鉄に売却した。

投入形式[編集]

クモハ52・クモハ53[編集]

流線形電車、魚雷形電車と言われた鉄道省モハ52形電車は、落成後、東海道本線山陽本線に投入され、鉄道省サハ48形電車鉄道省サロハ66形電車を中間に連結して運転された。太平洋戦争後に国鉄モハ80系電車に置き換えられると阪和線に投入され、国鉄モハ70系電車に置き換えられると飯田線に転出した。中間にサハ48、サハ75を連結して運転されたが、1978年国鉄モハ80系電車に置き換えられて引退した。一方、弟分の合いの子こと鉄道省モハ43形電車1983年まで活躍した。

クモハ51[編集]

複雑な車歴を持ち、オリジナル以外にも鉄道省モハ40形電車改造車、鉄道省モハ41形電車改造車等が存在した。

クハ68・便所取り付け改造車[編集]

複雑な車歴を持ち、オリジナル以外にも鉄道省クハ55形電車からの改造車がある鉄道省クハ68形電車であるが1966年1968年にかけて便所取り付け工事の行った車両の車番は百の位が4になった。


太平洋戦争後のクハ68への復帰、改造
番号 記事
68001~68023 クロハ59→クハ68→クハ55をセミクロスシートに改造。奇数番号のみ。3両はクハ68401~クハ68405(奇数番号のみ)に改造。
68024~68058 クハ68→クハ55をセミクロスシートに復元。偶数番号のみ。7両はクハ68400~クハ68410(偶数番号のみ)・68416に改造。
68060~68106 クハ55001~55096をセミクロスシートに改造。→6両は68407・68409・68412・68414・68418・68420に改造。
68107~68111 クロハ59→クハ55をセミクロスシートに改造。奇数番号のみ。
68200 クハ47を3扉化
68210・68211 サハ48→クハ47を3扉化
68400~68420(偶数番号主体) 68024~68058から7両、68060~68106から6両に便所取付68409以外は偶数番号。
68401~68405(奇数番号のみ) 68001~68023に便所取付


クハ68 400番台の歩み
旧番 前配置 飯田線入線 配置 便所取付 改番 新番号 廃車 配置
クハ68040 明石 1967年 伊那松島 1968年 1968年 クハ68400 1983年 伊那松島
クハ68007 明石 1966年 中部天竜 1967年 1968年 クハ68401 1979年 豊橋
クハ68032 明石 1966年 豊橋 1967年 1968年 クハ68402 1983年 豊橋
クハ68003 明石 1966年 伊那松島 1967年 1968年 クハ68403 1983年 伊那松島
クハ68030 明石 1965年 伊那松島 1967年 1968年 クハ68404 1983年 伊那松島
クハ68009 明石 1966年 中部天竜 1967年 1968年 クハ68405 1984年 伊那松島
クハ68034 明石 1966年 伊那松島 1968年 1968年 クハ68406 1983年 伊那松島
クハ68077 明石 1968年 伊那松島 1972年 1972年 クハ68407 1978年 豊橋
クハ68054 明石 1966年 伊那松島 1968年 1968年 クハ68408 1983年 伊那松島
クハ68064 高槻 1960年 伊那松島 1961年 1968年 クハ68409 1984年 伊那松島
クハ68046 明石 1965年 伊那松島 1967年 1968年 クハ68410 1984年 伊那松島
クハ68106 陸前原ノ町 1971年 豊橋 1972年 1972年 クハ68412 1984年 伊那松島
クハ68100 明石 1969年 伊那松島 1972年 1972年 クハ68414 1983年 伊那松島
クハ68026 明石 1966年 豊橋 1974年 1974年 クハ68416 1983年 伊那松島
クハ68066 岡山 1967年 豊橋 1974年 1974年 クハ68418 1984年 伊那松島
クハ68094 明石 1969年 豊橋 1974年 1974年 クハ68420 1984年 伊那松島

モハ80系電車[編集]

準急列車、後に急行列車に運用された。1978年鉄道省モハ52形電車を追い出して居座った。1983年に引退。

クモハユニ64[編集]

1943年横須賀線用の三等郵便荷物合造車として3両が登場したモハユニ61であるが、戦局の悪化によってモハユニ61001のみ電装化され、残りの002、003は電装されなかった。また、セミクロスシートの予定であったが、クロスシートの設置もなかった。001はその後、1953年にセミクロスシート化されてモハユニ44100となり、大糸線時代の1961年に両運転台、ロングシート化されて本形式となり、1978年飯田線に入線した。一方、電装化されなかったモハユニ61002とモハユニ61003は国鉄クハユニ56形電車に改造されて飯田線に入線し、モハユニ61の末裔3両が異形式となって再会した。クモハユニ64000は1981年に茶色2号から横須賀色に塗り替えられた。1983年に引退。

クハニ67[編集]

鉄道省クハ55形電車改造の900番台は当初は横浜線伊東線青梅線で使用され、その後、松戸、新前橋、伊那松島に転じ、伊那松島に在籍した901、903、905は国鉄モハ80系電車に置き換えられ、1978年に廃車となった。

クモニ13[編集]

首都圏京阪神圏での新聞輸送のほか、飯田線では13024~13026が昭和43年10月1日日本国有鉄道ダイヤ改正までは荷電単独若しくは1、2両の貨車を牽引しており、連結器自動連結器であったが、このダイヤ改正旅客列車との併結が開始された。クモニ83 100番台と連結して荷物輸送を行った。

クモニ83←クモユニ81[編集]

国鉄モハ80系電車を構成する両運転台の郵便荷物合造車である。客室との合造車ではない鋼製車としてははじめての郵便荷物合造車である。晩年は山陽本線岡山地区、飯田線大糸線に転じた。全車湘南色で登場したが、北松本に転じたクモユニ81003は他の旧型国電と同様の青22号一色に塗られ、「海坊主」と呼ばれた。飯田線に転じた3両が全室荷物車に改造され、国鉄クモニ83形電車に編入されて100番台に付され、横須賀色に塗られた。

クハユニ56[編集]

鉄道省クハニ67形電車と未電装のモハユニ61の2両が正式に制御車として、セミクロスシート化、便所設置改造されて登場した飯田線のみに配属された形式である。

詳細は「国鉄クハユニ56形電車」を参照

サエ9320[編集]

伊那電気鉄道引き継ぎの買収国電で、日本国有鉄道最後の木造車である。救援車 (鉄道車両)として1977年まで在籍した。

モユニ81→クモユニ81の履歴
車番 落生年月日 製造所 落成配置 抹消年月日 最終配置 備考
クモユニ81001 1950年8月31日 大井 田町 1979年12月25日 岡山
クモユニ81002 1950年9月7日 大井 田町 1979年9月20日 岡山
クモユニ81003 1950年9月15日 大井 田町 1981年7月15日 北松本
クモユニ81004 1950年9月25日 大井 田町 1970年2月5日 豊橋 クモニ83001に改造
クモユニ81005 1950年9月29日 大井 田町 1970年2月5日 豊橋 クモニ83002に改造
クモユニ81006 1950年11月15日 大井 田町 1970年2月5日 豊橋 クモニ83003に改造
国鉄クモニ83形電車100番台の履歴
車番 改造年月日 改造工場 落成配置 廃車年月日 最終配置
クモニ83101 1970年2月5日 浜松 豊橋 1983年8月12日 豊橋
クモニ83102 1970年2月5日 浜松 豊橋 1984年3月19日 豊橋
クモニ83103 1970年2月5日 浜松 豊橋 1984年3月19日 豊橋
国鉄・郵便荷物電車形式別年度末両数
年度 1957年 1958年 1959年 1960年 1961年 1962年 1963年 1964年 備考
クモニ13 37 37 37 37 35 33 33 33
クハニ19 14 14 14 14 13 13
クモハユニ44 6 6 6 5 5 5 5 5
クハユニ56 6 6 6 6 6 6 6 6
クモハユニ64 1 1 1 1 1
クハニ67 9 9 9 9 9 8 8 8
クモユニ74 2 12 12 20
クモユニ81 6 6 6 6 6 6 6 6
モニ3200 2 2
モニ3410 6 4
クハニ7210 2
小計 74 70 78 78 78 85 84 92

参考:大糸線での旧型国電[編集]

北松本電車区・松本運転所北松本支所の配置電車
形式 1956年3月1日 1960年4月1日 1965年3月31日 1969年3月31日 1975年3月31日 1981年4月30日
クモハ11 11両 11両 13両
クモハ12 2両 1両 1両 1両
クハ16 9両 11両 12両
クモハ40 1両 1両 1両
クモハ41 3両 9両 1両
クモハ60 9両 9両 9両
クハ55 15両 15両 9両
サハ57 3両 3両 2両
クモハ51 3両 2両 7両 4両
クモハ54 3両 3両
クモハユニ64 1両 1両
クハ68 3両 3両
クモハ43 4両 2両
クモハユニ44 2両 2両 1両
サハ45 3両 3両
クモユニ81 1両 1両
合計 24両 25両 34両 41両 50両 37両

注1) 1959年6月1日以前はクモハはモハ、クモハユニはモハユニである。

注2) 1965年以降、松本運転所北松本支所となった。

注3) 1981年7月24日以降、国鉄115系電車に取り替えられた。

参考文献[編集]