特急街道
特急街道（とっきゅうかいどう）とは、ある鉄道路線において頻繁に特急列車が走行する区間を指す、鉄道ファンの間での用語である。特急銀座（とっきゅうぎんざ）とも呼ばれる。
概要[編集]
主に、国鉄・JRの在来線など有料特急列車の運行線区を対象に使われる言葉である。
近年の整備新幹線開業によって、日本国内のJR線ではその数が少なくなりつつある。
国鉄時代より、特急列車や急行列車という存在は、新幹線よりも低速度だが、それ故に適度な旅情を楽しめると考える鉄道ファンが多く、また終日を通して大量の特急列車が走行する光景をよしとする鉄道ファンも多い。しかしながら、日本国内ではそうした特急街道ではより高速度でかつ安定輸送に努めるため、整備新幹線が整備されてきた。そのため近年では特急街道と呼べるようなJR在来線路線については大きく数を減らしているのが実情である。
北陸新幹線の金沢 - 敦賀間開業までは、「特急街道」と言えば「北陸本線」と考える鉄道ファンが多く、同線は特急街道の代名詞的な存在として国鉄時代から親しまれてきた。しかしながら新幹線開通に伴って特急列車は廃止され、一応残存区間である米原 - 敦賀間や湖西線では現在も特急列車が頻繁に走行しているものの、その実態は特急街道の主な要素たる（後述）都市間輸送という目的からやや逸れた「新幹線リレー特急」であり、事実上の北陸本線の特急街道消滅と捉える向きも少なくない。北陸本線の場合は、敦賀という半端な地点で乗換えが発生することで新幹線が特急の役割を完全には代替できていないため、現在でも定期的に特急列車の金沢直通復活が論じられたり、「#くたばれ北陸新幹線」といったハッシュタグが出回るなどしている。
一方、国鉄がエル特急の参考にした近鉄など、有料の特急列車を頻発させる大手私鉄の路線を対象に使われることはあまりない。
定義[編集]
用語に明確な定義は無いが、
- 終日、1時間に1～2本以上の特急列車が走行する
- 都市間輸送を行っており、一定の高速度で走行する（都市間輸送とはならない空港アクセス特急については除外）
- 普通列車よりも特急列車優先のダイヤである
などの定義がしばしば用いられるため、本項でもこれを前提として記していく。
現存する特急街道の一覧[編集]
JR函館本線 札幌 - 旭川間[編集]
- 走行する特急列車
- 使用車種
- JR北海道789系電車（「カムイ」「ライラック」）
- JR北海道キハ261系気動車（「宗谷」）
- JR北海道キハ283系気動車（「オホーツク」）
電車特急の「カムイ」「ライラック」を基本とし、宗谷本線直通の「宗谷」、石北本線直通の「オホーツク」が入り混じり、1時間に1～3本の高頻度で運行されている。最高速度120km/hの速度で札幌 - 旭川間を約1時間30分で結ぶ。
JR常磐線系統 品川・上野 - いわき間[編集]
- 走行する特急列車
- 使用車種
- JR東日本E657系電車（「ひたち」「ときわ」）
JR東日本を代表する特急街道・交直流代表。最高速度130km/hの高速度運転を行い、上野 - いわき間を約2時間20分で結ぶ。品川 - いわき（一部仙台）間を結ぶ「ひたち」が1時間に1本、品川 - 勝田（一部高萩）間を結ぶ「ときわ」が1時間に1本の合計1時間2本サイクルで運転されている。特に「ひたち」の大半は上野 - 水戸間でノンストップ運転を行い、常磐自動車道経由の高速バスに徹底対抗している。
同線に並行する整備新幹線計画はなく、特急街道消滅の可能性はまずないとみられる。
JR中央本線・JR篠ノ井線 新宿 - 松本間[編集]
- 走行する特急列車
- 使用車種
- JR東日本E353系電車（「あずさ」「かいじ」「富士回遊」）
JR東日本を代表する特急街道・山岳路線代表。最高速度130km/hの高速度運転により、新宿 - 松本間を約2時間30分で結ぶ。新宿（一部千葉・東京） - 松本（一部白馬）間を結ぶ「あずさ」が1時間に1本、新宿（一部東京） - 甲府（一部竜王）間を結ぶ「かいじ」が1時間に1本の合計1時間2本サイクルで運転されている。一部の「あずさ」「かいじ」には、富士山・河口湖方面への「富士回遊」が連結される。
同線に並行する整備新幹線計画として中央新幹線があるが、こちらは「あずさ」「かいじ」を運行するJR東日本ではなくJR東海が自前でリニア中央新幹線として整備中であり、また中央本線とはルートが逸れているため、特急の減便や廃止はまず行われないとみられる。
JR中央本線・JR篠ノ井線 名古屋 - 長野間[編集]
- 走行する特急列車
- 特急「しなの」（名古屋 - 長野間）
- 使用車種
- JR東海383系電車（「しなの」）
最高時速130km/hの高速度運転により、名古屋 - 長野間を約3時間で結ぶ。1時間に1本の頻度で運転されており、中京圏から信州への都市間輸送を一手に担っている。線路は大半の区間で単線でかつ特急優先のダイヤグラムのため、中津川 - 塩尻間の特急通過駅では2時間30分以上普通列車の間隔が開く時間帯がある。
同線に並行する整備新幹線計画として中央新幹線があるが、こちらも「あずさ」「かいじ」と同じく中央本線とはルートが逸れているため、特急の減便や廃止はまずないとみられる。
JR北陸本線・JR湖西線 大阪・米原 - 敦賀間[編集]
- 走行する特急列車
- 使用車種
- JR西日本681系電車（「サンダーバード」「しらさぎ」）
- JR西日本683系電車（「サンダーバード」「しらさぎ」）
北陸新幹線で走行区間が大幅に短縮されたものの、敦賀以南ではまだまだ特急街道の風情が残る。最高時速130km/hの高速度運転も健在であり、大阪 - 敦賀間を約1時間20分、名古屋 - 敦賀間を約1時間40分で結ぶ。大阪 - 敦賀間を結ぶ「サンダーバード」が1時間に1～2本、名古屋 - 米原 - 敦賀間を結ぶ「しらさぎ」が1時間に1本運転されている。ただし、「しらさぎ」は米原発着便と名古屋発着便が交互に運転されている[注 1]。
同線に並行する整備新幹線計画として北陸新幹線ならびに北陸中京新幹線があり、着工に向けて準備が進む北陸新幹線に完全並行する「サンダーバード」については、そう遠くない未来に廃止されるだろうとみられる。
JR伯備線・JR山陰本線系統 岡山 - 出雲市間[編集]
- 走行する特急列車
- 使用車種
- JR西日本273系電車（「やくも」）
- JR西日本285系電車（「サンライズ出雲」）
- JR西日本キハ187系気動車（「スーパーおき」「スーパーまつかぜ」）
陰陽連絡の特急街道。振り子式の特急により、岡山 - 出雲市間を約3時間で結ぶ。「やくも」の1時間に1本の運行を基本に、山陰本線を縦貫する特急「スーパーおき」「スーパーまつかぜ」が2時間に1本ほどの間隔で乗り入れる。そのほか、寝台特急として1日1往復「サンライズ出雲」が乗り入れ、首都圏との直通列車も存在する。
JR予讃線・JR土讃線系統 高松・岡山 - 松山・高知間[編集]
- 走行する特急列車
- 使用車種
- JR四国8000系電車（「しおかぜ」「いしづち」）
- JR四国8600系電車（「しおかぜ」「いしづち」）
- JR四国2700系気動車（「南風」「しまんと」）
四国の特急街道。最高時速130km/hの高速度運転により、岡山 - 高知間を約2時間30分、岡山 - 松山間を約2時間50分で結ぶ。日中は「しおかぜ」「いしづち」がそれぞれ1時間に1本（2つの列車は宇多津駅または多度津駅にて分割併合を実施）、「南風」が1時間に1本のパターンダイヤとなっている。
同線に並行する整備新幹線計画として四国新幹線ならびに四国横断新幹線があるが、現在のところは着工の予定はないため当面は特急街道も存続するだろう。
JR鹿児島本線・JR日豊本線 博多 - 小倉 - 大分間[編集]
- 走行する特急列車
- 特急「ソニック」（博多 - 中津 - 大分 - 佐伯間）
- 特急「にちりんシーガイア」（博多 - 宮崎空港間）
- 特急「にちりん」（小倉 - 大分 - 宮崎空港間）
- 特急「きらめき」（博多 - 門司港間）
- 特急「かささぎ」（肥前鹿島 - 博多 - 門司港間）
- 特急「リレーかもめ」（武雄温泉 - 博多 - 門司港間）
- 特急「ゆふ」「ゆふいんの森」（博多 - 大分 - 別府間）
- 特急「九州横断特急」（熊本 - 大分 - 別府間）
九州北部の特急街道。博多 - 小倉間はJR九州の鹿児島本線のほかにJR西日本の山陽新幹線があるため、シェア獲得のために日豊本線からの「ソニック」を中心に大量の特急が運転されている。同区間では1時間に1～4本の特急が運転される。小倉 - 大分間では、「ソニック」が1時間に2本運転されているほか、1日1往復ずつ「にちりん」「にちりんシーガイア」が運転されており、このうち「にちりんシーガイア」は日本の昼行在来線特急で最も長い距離を走る特急列車となっている。このほか、別府 - 大分間では久大本線や豊肥本線からの気動車特急列車が乗り入れる。
同線に並行する整備新幹線計画として東九州新幹線（日豊新幹線）があるが、現在のところは着工の予定はないため当面は特急街道も存続するだろう。
JR鹿児島本線・JR長崎本線 博多 - 早岐間[編集]
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脚注[編集]
- 出典
- 注釈