世界名作劇場
世界名作劇場(せかいめいさくげきじょう)は、フジテレビ系列で毎週日曜日19時30分から20時00分に放映されていたテレビアニメ専用の番組枠。また同枠で放映された日本アニメーション制作のテレビアニメのシリーズ。世界名作アニメ、名劇などとも呼ばれる。シリーズの傾向は「名作路線」とも呼ばれる[1]。
番組枠[編集]
スポンサーの交代により番組枠の名称は変更しており、1979年の『赤毛のアン』から「世界名作劇場」の名称となった。「カルピスまんが劇場」「カルピスこども劇場」「カルピスファミリー劇場』はカルピス、「ハウス食品世界名作劇場」はハウス食品工業(1993年にハウス食品に改称)の一社提供番組だった。「世界名作劇場」(1979~1984年)は味の素、花王など、「世界名作劇場」(1994~1997年)はハウス食品、NTTなどの複数社提供番組だった。
『どろろと百鬼丸』は虫プロダクションが制作した。『ムーミン』・『アンデルセン物語』・『ムーミン(新ムーミン)』・『山ねずみロッキーチャック』・『アルプスの少女ハイジ』・『フランダースの犬』は瑞鷹エンタープライズが企画した。このうち、『ムーミン』の第26話までを東京ムービーが、『ムーミン』の第27話以降・『アンデルセン物語』・『ムーミン(新ムーミン)』を虫プロが、『山ねずみロッキーチャック』・『アルプスの少女ハイジ』・『フランダースの犬』の第20話までをズイヨー映像(瑞鷹エンタープライズの制作部門)が制作した。1975年6月にズイヨー映像のスタッフが離脱・独立して日本アニメーションを設立し、『フランダースの犬』の第21話から制作会社が日本アニメーションに切り替わった。以降の作品はすべて日本アニメーションが制作している。
アニメシリーズ[編集]
「世界名作劇場」の定義は版権などの点から諸説あるが[1][2][3]、日本アニメーションは1975年から2009年に制作した『フランダースの犬』から『こんにちは アン〜Before Green Gables』までのテレビアニメ26作品[4]、もしくはこれにテレビアニメをリメイクした劇場用アニメ2作品(1997年の『フランダースの犬 THE DOG OF FLANDERS』、1999年の『MARCO 母をたずねて三千里』)を加えたアニメ28作品[5]を「世界名作劇場」としている。
海外の文学作品を原作にしたものを基準にすると1969年の『ムーミン』以降の作品となる(原作が存在しない『七つの海のティコ』は例外)[3]。日常を舞台にしたものを基準にすると1974年の『アルプスの少女ハイジ』以降の作品となる(例外的に日常を舞台にしてないものもある)[3]。定義が異なっても『どろろと百鬼丸』が含まれることはない[3]。
1988年に角川書店から発売されたVHS『世界名作劇場総集編』(全10巻)には日本アニメーション制作だが、TBS系列で放送された『草原の少女ローラ』(1975-1976年)、テレビ朝日系列で放映された『シートン動物記 くまの子ジャッキー』(1977年)、テレビ大阪系で放映された『ふしぎの国のアリス』(1983-1984年)が収録されている。
特徴[編集]
日本における海外児童文学のアニメーション翻案の代表格として知られる[2]。1994年の『七つの海のティコ』以外はすべて欧米諸国の児童文学を原作としている[2]。また日曜夜の7時半という家族団らんの時間に放映されることから、親子が一緒に見る作品として製作され、子供を主人公とした児童文学を原作としている[2]。代表的な作品として、1974年の『アルプスの少女ハイジ』、1975年の『フランダースの犬』、1976年の『母をたずねて三千里』、1977年の『あらいぐまラスカル』、1979年の『赤毛のアン』がある。『ハイジ』はズイヨー映像制作のため、狭義の「世界名作劇場」には含まれないが、後の「世界名作劇場」に作風やスタッフが引き継がれ、シリーズの基盤となった作品とされる[2]。
『アルプスの少女ハイジ』『母をたずねて三千里』『赤毛のアン』を監督した高畑勲は「名作路線」について「家庭的に幸せとはいえない主人公が明るくけなげに生きてゆく姿をたっぷりと一年かけて描きあげる。原作をダイジェストするのでもなく、いたずらに事件主義で表面的なドラマを追加するのでもなく、むしろ傍役を含めおのおのの人物像を豊かにふくらませる。物語の大きな流れは原作の進行にまかせ、そのなかで主人公の日常にいわば密着取材して彼等の一日一日の生活(生き方)を克明に追いかける」と述べている[6]。大山くまおは高畑が監督した劇場アニメ『じゃりン子チエ』(1981年)とTVアニメ『じゃりン子チエ』(1981-1983年)にも当てはまるとして、両作を大阪下町版「世界名作劇場」と評している[7]。清水友理は「世界名作劇場」の特徴は海外児童文学をアニメ化するにあたり、主人公を「模範的な子ども」像に造形することだと指摘している[2]。
宮崎駿は『ムーミン』『フランダースの犬』『あらいぐまラスカル』の原画、『アルプスの少女ハイジ』『赤毛のアン』の場面設定・画面構成、『母をたずねて三千里』の場面設定・レイアウトを担当した。津堅信之は同人誌『斎藤博+宮崎晃の世界』(赤毛同盟、1997年)の紹介で「それに名作劇場は、どうしても現在、『アルプスの少女ハイジ』、『母をたずねて三千里』、『赤毛のアン』といった作品がクローズアップされる機会が多く、これらはすなわち、高畑勲・宮崎駿のコンビが手がけた作品である。/そのこと自体はよい。いずれ劣らぬ名作である。/しかし、高畑&宮崎(=ジブリ)という視点ではなく、あくまで「世界名作劇場」という脈列で見ることができる人は、『ペリーヌ物語』(1978)、『トム・ソーヤの冒険』(1980)、そして『牧場の少女カトリ』(1984)といった作品への評価がより高く、思い入れが深いのではないだろうか。/そして、これらの作品を手がけたのが、演出:斎藤博、脚本:宮崎晃という、名作劇場を実質的に支えた名コンビ中の名コンビである。」と述べている[8]。
2008年に「フランダースの犬とCR世界名作劇場」としてパチンコになった[9]。
作品一覧[編集]
| 番組枠名称 | 通番 | タイトル | 放送期間 | 話数 | 舞台 | 原作 | 監督 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| カルピス まんが劇場 (『フランダースの犬』第26話まで) |
どろろと百鬼丸(13話までは「どろろ」) | 1969年4月6日 - 9月28日 | 全26話 | 日本 | 手塚治虫 | 杉井ギサブロー | |
| ムーミン | 1969年10月5日 - 1970年12月27日 | 全65話 | フィンランド | トーベ・ヤンソン | 大隅正秋(26話まで) りんたろう(27話以降) | ||
| アンデルセン物語 | 1971年1月3日 - 12月26日 | 全52話 | なし | ハンス・クリスチャン・アンデルセン | 藤田一郎ほか | ||
| ムーミン(新) | 1972年1月9日 - 12月31日 | 全52話 | フィンランド | トーベ・ヤンソン | りんたろう | ||
| 山ねずみロッキーチャック | 1973年1月7日 - 12月30日 | 全52話 | アメリカ | ソーントン・バージェス | 遠藤政治 | ||
| アルプスの少女ハイジ | 1974年1月6日 - 12月29日 | 全52話 | スイス ドイツ |
ヨハンナ・シュピリ | 高畑勲 | ||
| 1 | フランダースの犬 | 1975年1月5日 - 12月28日 | 全52話 | ベルギー | ウィーダ | 黒田昌郎 | |
| カルピス こども劇場 | |||||||
| 2 | 母をたずねて三千里 | 1976年1月4日 - 12月26日 | 全52話 | イタリア アルゼンチン |
エドモンド・デ・アミーチス | 高畑勲 | |
| 3 | あらいぐまラスカル | 1977年1月2日 - 12月25日 | 全52話 | アメリカ | スターリング・ノース | 遠藤政治、斎藤博、腰繁男 | |
| カルピス ファミリー劇場 |
4 | ペリーヌ物語 | 1978年1月1日 - 12月31日 | 全53話 | ボスニア クロアチア イタリア スイス フランス |
エクトール・アンリ・マロ | 斎藤博、腰繁男 |
| 世界名作劇場 | 5 | 赤毛のアン | 1979年1月7日 - 12月30日 | 全50話 | カナダ | L・M・モンゴメリ | 高畑勲 |
| 6 | トム・ソーヤーの冒険 | 1980年1月6日 - 12月28日 | 全49話 | アメリカ | マーク・トウェイン | 斎藤博 | |
| 7 | 家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ |
1981年1月4日 - 12月27日 | 全50話 | スイス 無人島 オーストラリア |
ヨハン・ダビット・ウィース | 黒田昌郎 | |
| 8 | 南の虹のルーシー | 1982年1月10日 - 12月26日 | 全50話 | オーストラリア | フィリス・ピディングトン | 斎藤博 | |
| 9 | アルプス物語 わたしのアンネット |
1983年1月9日 - 12月25日 | 全48話 | スイス | パトリシア・メアリー・セントジョン | 楠葉宏三 | |
| 10 | 牧場の少女カトリ | 1984年1月8日 - 12月23日 | 全49話 | フィンランド | アウニ・ヌオリワーラ | 斎藤博 | |
| ハウス食品 世界名作劇場 (『七つの海のティコ』第9話まで) |
11 | 小公女セーラ | 1985年1月6日 - 12月29日 | 全46話 | イギリス | フランシス・ホジソン・バーネット | 黒川文男 |
| 12 | 愛少女ポリアンナ物語 | 1986年1月5日 - 12月28日 | 全51話 | アメリカ | エレナ・ホグマン・ポーター | 楠葉宏三 | |
| 13 | 愛の若草物語 | 1987年1月11日 - 12月27日 | 全48話 | ルイーザ・メイ・オルコット | 黒川文男 | ||
| 14 | 小公子セディ | 1988年1月10日 - 12月25日 | 全43話 | アメリカ イギリス |
フランシス・ホジソン・バーネット | 楠葉宏三 | |
| 15 | ピーターパンの冒険 | 1989年1月15日 - 12月24日 | 全41話 | イギリス | ジェームス・マシュー・バリー | 黒田昌郎 | |
| 16 | 私のあしながおじさん | 1990年1月14日 - 12月23日 | 全40話 | アメリカ | ジーン・ウェブスター | 横田和善 | |
| 17 | トラップ一家物語 | 1991年1月13日 - 12月22日 | 全40話 | オーストリア | マリア・フォン・トラップ | 楠葉宏三 | |
| 18 | 大草原の小さな天使 ブッシュベイビー |
1992年1月12日 - 12月20日 | 全40話 | ケニア | ウィリアム・H・スティーブンソン | 鈴木孝義 | |
| 19 | 若草物語 ナンとジョー先生 |
1993年1月17日 - 12月19日 | 全40話 | アメリカ | ルイーザ・メイ・オルコット | 楠葉宏三 | |
| 20 | 七つの海のティコ | 1994年1月16日 - 12月18日 | 全39話 | 七つの海 | なし | 高木淳 | |
| 世界名作劇場 | |||||||
| 21 | ロミオの青い空 | 1995年1月15日 - 12月17日 | 全33話 | スイス イタリア |
リザ・テツナー | 楠葉宏三 | |
| 22 | 名犬ラッシー | 1996年1月14日 - 8月18日 | 全26話 (第26話は本放送時未放映) |
イギリス | エリック・ナイト | 片渕須直 | |
| 23 | 家なき子レミ | 1996年9月1日 - 1997年3月23日 | 全26話 (第16話、第19話、第20話は本放送時未放映) |
フランス | エクトール・アンリ・マロ | 楠葉宏三 | |
| 1997年4月 - 2006年12月の間シリーズ中断。 | |||||||
| ハウス食品 世界名作劇場 (BSフジ) |
24 | レ・ミゼラブル 少女コゼット |
2007年1月7日 - 12月30日 | 全52話 | フランス | ヴィクトル・ユゴー | 桜井弘明 |
| 25 | ポルフィの長い旅 | 2008年1月6日 - 12月28日 | 全52話 | ギリシャ イタリア フランス |
ポール・ジャック・ボンゾン | 望月智充 | |
| 2009年1月 - 同年3月の間シリーズ中断。 | |||||||
| 世界名作劇場 (BSフジ) |
26 | こんにちは アン 〜Before Green Gables |
2009年4月5日 - 12月27日 | 全39話 | カナダ | バッジ・ウィルソン | 谷田部勝義 |
出典[編集]
- ↑ a b 清水友理「「世界名作劇場」というアダプテーション――『若草物語 ナンとジョー先生』にみる作品間のつながり」『言語文化』第39号、2022年
- ↑ a b c d e f 清水友理「研究ノート:『世界名作劇場』研究の意義と方法――国境を超える児童文学」『グローカル研究』No.6、2019年
- ↑ a b c d Q&Aコーナー 第1回「世界名作劇場って何本あるの?」 WEBアニメスタイル
- ↑ ABOUT 世界名作劇場
- ↑ 世界名作劇場 | 作品紹介 日本アニメーション
- ↑ 高畑勲「名作路線の出発、テレビでなければできなかったこと」、『映画を作りながら考えたこと』(徳間書店、1991年)所収。大山くまお「高畑勲監督「じゃりン子チエ」は大阪下町版「世界名作劇場」1話から3話まで無料公開中で「ルパン」超え」(エキサイトニュース、2019年5月22日)からの孫引き。
- ↑ 大山くまお「高畑勲監督「じゃりン子チエ」は大阪下町版「世界名作劇場」1話から3話まで無料公開中で「ルパン」超え」エキサイトニュース、2019年5月22日
- ↑ 世界名作劇場 斎藤博+宮崎晃 津堅信之のアニメーション研究資料図書室2008年8月20日
- ↑ フランダースの犬などでおなじみの「世界名作劇場」がパチンコに GIGAZINE、2008年1月24日
関連文献[編集]
- 高畑勲「名作路線の出発、テレビでなければできなかったこと」(高畑勲『映画を作りながら考えたこと』徳間書店、1991年)
- 世界名作親子の会『名作アニメもうひとつの物語――ムーミン、ラスカルほか全24作品の素顔』(ワニブックス、1994年)
- 松本正司『世界名作劇場大全』(同文書院[20世紀テレビ読本]、1999年)
- 『思い出の世界名作劇場オフィシャルガイド』(双葉社[双葉社スーパームック]、2003年)
- 畠山兆子「再話の放送形態研究――ハウス食品世界名作劇場第一作「小公女セーラ」(1985)の場合」(『梅花女子大学文化表現学部紀要』第4号、2007年)
- 松山雅子「放送形態にみる名作再話の語り――ハウス食品世界名作劇場「ピーターパンの冒険」(1989)における状況設定としての少女の夢」(『国語教育学研究誌』第26号、2009年)
- ちばかおり『世界名作劇場シリーズ メモリアルブック アメリカ&ワールド編』(新紀元社、2009年)
- ちばかおり『世界名作劇場シリーズ メモリアルブック ヨーロッパ編』(新紀元社、2010年)
- ひこ・田中『ふしぎなふしぎな子どもの物語――なぜ成長を描かなくなったのか?』(光文社[光文社新書]、2011年)
- 藤川隆男編『アニメで読む世界史』(山川出版社、2011年)
- 藤川隆男、後藤敦史編『アニメで読む世界史2』(山川出版社、2015年)
- 『THE 世界名作劇場展~制作スタジオ・日本アニメーション40年のしごと~』(日本アニメーション、2015年)
- ちばかおり写真・文『世界名作劇場への旅』(新紀元社、2015年)
- 黒田昌郎述「「世界名作劇場」の傑作群を演出」、三沢典丈『アニメ大国の神様たち――時代を築いたアニメ人インタビューズ』(イースト・プレス、2021年)
- ちばかおり『『世界名作劇場』の家と間取り』(エクスナレッジ、2025年)