クラウドコンピューティング

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クラウドコンピューティング(英: cloud computing)は、インターネットなどのコンピュータネットワークを経由して、サーバー・ストレージ・アプリケーションなどのコンピュータ資源を必要に応じて利用できるサービスの形で提供する利用形態である[1][2]。略してクラウドとも呼ばれ、cloudは英語で「雲」を意味する。利用者は自らハードウェアを保有せず、事業者のデータセンターに置かれた資源をネットワーク越しに利用し、使った分に応じて料金を支払う。

アメリカ国立標準技術研究所(NIST)は2011年に、オンデマンドのセルフサービス、幅広いネットワークアクセス、リソースの共用、スピーディな拡張性、サービスが計測可能であることの5つを基本的な特徴とし、SaaS・PaaS・IaaSの3つのサービスモデルと、パブリック・プライベート・コミュニティ・ハイブリッドの4つの配置モデルで構成されると定義した[2][3]。

商用サービスとしては、1999年にセールスフォース・ドットコムがSaaS形態のCRMを、2006年にAmazon Web Services(AWS)が仮想サーバーを従量課金で提供するAmazon EC2を開始した[4]。「クラウドコンピューティング」の語は同年にGoogleのエリック・シュミットが公の場で用いている[5]。以後、マイクロソフト(Microsoft Azure)やGoogle Cloudをはじめ多くの事業者が参入し、仮想化・コンテナ・サーバーレスといった技術の発展とともに、企業や政府の情報システム、そして2020年代には生成AIの実行基盤として利用が拡大している。2024年には日本企業の80.6%がクラウドサービスを利用しており[6]、世界のクラウドインフラ市場では2026年第2四半期時点でAWS・Microsoft・Googleの3社が6割を超えるシェアを占める[7]。

定義と特性[編集]

従来のコンピューティングでは、利用者がハードウェアやソフトウェアを購入・契約し、構内(オンプレミス)や遠隔地のデータセンターに設置して運用していた。クラウドコンピューティングでは、利用者はインターネットなどのネットワークを経由して、事業者が保有・運用する情報システムから情報処理サービスを受ける。利用者側に必要なのは接続環境とパーソナルコンピュータや携帯情報端末などのクライアント、およびサービス利用料金であり、処理の大半を実行するサーバやストレージは事業者側のデータセンターに置かれ、その資産管理や運用保守も事業者が行う。契約の変更によって計算資源を柔軟に増減できる点も特徴である。

アメリカ国立標準技術研究所(NIST)は2011年9月に公表した特別刊行物SP 800-145「The NIST Definition of Cloud Computing」で、クラウドコンピューティングを次のように定義した[2][3]。

クラウドコンピューティングは、共用の構成可能なコンピューティングリソース(ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション、サービス)の集積に、どこからでも、簡便に、必要に応じて、ネットワーク経由でアクセスすることを可能とするモデルであり、最小限の利用手続きまたはサービスプロバイダとのやりとりで速やかに割当てられ提供されるものである。このクラウドモデルは5つの基本的な特徴と3つのサービスモデル、および4つの実装モデルによって構成される。 — アメリカ国立標準技術研究所(情報処理推進機構訳)

NISTが挙げる5つの基本的な特徴は次のとおりである[2][3][8]。

オンデマンド・セルフサービス(On-demand self-service)
利用者が事業者の担当者を介さず、必要なときに自ら計算資源を確保・設定できる。
幅広いネットワークアクセス(Broad network access)
標準的な仕組みを通じてネットワーク経由で機能が提供され、多様なクライアントから利用できる。
リソースの共用(Resource pooling)
事業者の計算資源は複数の利用者で共用され(マルチテナント)、需要に応じて動的に割り当てられる。利用者は資源の物理的な所在を通常は意識しない。
スピーディな拡張性(Rapid elasticity)
資源を迅速かつ弾力的に、場合によっては自動的に増減できる。利用者には資源が無制限に見える。
サービスが計測可能であること(Measured service)
資源の利用量が計測・監視され、利用量に応じた課金や透明性のある報告が行われる。

3つのサービスモデル(SaaS・PaaS・IaaS)と4つの配置モデル(NISTの訳語では実装モデル。パブリック・プライベート・コミュニティ・ハイブリッド)については後述する。国際規格としては、ISO/IECのJTC 1/SC 38が2014年10月にクラウドコンピューティングの概要と用語を定めたISO/IEC 17788:2014を発行し[9]、日本ではこれに対応するJIS X 9401:2016「情報技術-クラウドコンピューティング-概要及び用語」が制定された[10]。ISO/IEC 17788:2014は2023年に廃止され、用語を定めるISO/IEC 22123-1:2023と概念を定めるISO/IEC 22123-2:2023に置き換えられた[11][12]。JIS X 9401はクラウドコンピューティングを「セルフサービスのプロビジョニング及びオンデマンド管理を備える、スケーラブルで伸縮自在な共有できる物理的又は仮想的なリソース共用へのネットワークアクセスを可能にするパラダイム」と定義している[10]。

名称[編集]

「クラウド」(雲)に似た図形は、1977年のARPANETや[13]、1981年のCSNETで[14]、コンピュータ機器のネットワークを表す記号として使われており、両者は後にインターネットへ発展した。以後「クラウド」はインターネットのメタファーとして用いられ、1993年には分散コンピューティングの分野でも使われていた[15]。これらはコンピュータネットワークの記号としての用法であり、Webサービス普及以後の用法とは意味が大きく異なる。

「クラウドコンピューティング」という語を最初に使ったとされるのは、1994年4月の『Wired』誌の記事に引用された、当時General Magicの共同創業者でエンジニアのアンディ・ハーツフェルドの発言である[16]。ただし当時はコンピュータや通信の能力が不十分で、限定的な実装と試験サービスに留まった[17]。商業的なサービスを指す語としては、2006年8月にGoogleのCEOであったエリック・シュミットが「検索エンジン戦略会議」(Search Engine Strategies Conference)で用いた発言が早い例として知られる[5]。

この形態で提供されるサービスを「クラウドコンピューティングサービス」または単に「クラウドサービス」といい、その事業者を「クラウドサービスプロバイダ」または「クラウドプロバイダ」と呼ぶ。なお、クラウドソーシング(crowdsourcing)やクラウドファンディング(crowdfunding)の「クラウド」は不特定多数を意味する crowd であり、雲(cloud)とは別の語である。両者はクラウドコンピューティング以前から存在し、コンピュータネットワークの使用も必須ではないが、日本語では同じ表記となるため混同されることがある。

歴史[編集]

前史[編集]

コンピュータの処理能力をネットワーク経由でサービスとして提供する形態は、クラウドコンピューティングという語が普及する以前から存在した。1960年代からのタイムシェアリングシステムによるメインフレームの共同利用、1980年代の付加価値通信網(VAN)、スーパーコンピュータの時間貸しに始まるユーティリティコンピューティング[18]、1990年代後半にインターネット経由で業務アプリケーションを提供したアプリケーションサービスプロバイダ(ASP)[19]、複数の計算機を束ねるグリッド・コンピューティングなどである。ただし1980年代は通信回線が高価で低速であり、技術仕様も統一されていなかったため、これらは業務システムの一要素として導入される限定的な利用に留まった。

2000年代にクラウドコンピューティングが成立した背景には、インターネットの高速化・低価格化とオープン標準の普及、オープンソースソフトウェアによる特定メーカーに依存しないサーバー構築、そしてx86サーバーの仮想化技術による計算資源の共用と柔軟な割り当てがある。x86の仮想化はVMwareが1999年に発表したVMware Workstationで実現され、これをサーバーに応用したVMware GSX Serverと、x86サーバー向けとして初めてベアメタル型ハイパーバイザ方式を採用したVMware ESX Serverによって、2000年代初頭にはサーバー仮想化が本番環境で使われるようになった[20]。仮想化ベンダーは2000年代末にはこうした製品をプライベートクラウド構築の基盤として位置づけ、VMwareは2009年時点で「vCloud」のブランドを展開していた[21]。Ajaxによるウェブアプリケーションの表現力向上(2005年ごろ)も、ブラウザだけで業務アプリケーションを利用する形態を後押しした。

成立(2006年前後)[編集]

1999年に設立されたセールスフォース・ドットコム(現・セールスフォース)は、CRMアプリケーションをインターネット経由で提供する事業を始め、後にSaaSと呼ばれる形態の先駆となった[22]。Amazon.comは2002年に開発者向けのAmazon Web Services(AWS)を開始し、2006年3月14日にオブジェクトストレージのAmazon S3を[23]、同年8月24日に仮想サーバーを時間単位の従量課金で提供するAmazon EC2のβサービスを開始した[4]。EC2は2008年10月23日に正式サービスとなり、稼働率99.95%のSLAが設けられた[24][25]。@ITは2026年に、S3を「クラウドストレージ業界全体の方向性を決定付ける存在」と評している[26]。

2006年8月9日、GoogleのCEOであったエリック・シュミットは検索エンジン戦略会議(Search Engine Strategies Conference)で、データサービスとアーキテクチャはサーバー側にあるべきであり「我々はそれをクラウドコンピューティングと呼んでいる」と述べた[5]。Googleは2008年4月に限定公開したウェブアプリケーションの実行基盤Google App Engineを同年5月に一般に開放した[27]。IBMは2007年11月にBlue Cloud計画を発表し[28]、マイクロソフトは2008年10月にWindows Azure(現・Microsoft Azure)を発表し[29]、2009年7月には同年11月の開発者会議PDC09から商用サービスへ移行する計画と料金体系を公表した[30]。2009年3月にはIBM、サン・マイクロシステムズ、シスコシステムズ、SAP、EMC、VMwareなどが相互運用性を訴える「Open Cloud Manifesto」を発表した[31]。2010年7月にはラックスペースとNASAがオープンソースのクラウド基盤ソフトウェアOpenStackを開始し、事業者や企業が自らIaaS基盤を構築する選択肢となった[32]。AWSは2011年3月2日に世界で5番目の拠点として日本国内にデータセンター群(東京リージョン)を開設し[33]、2021年3月には国内2拠点目の大阪リージョンを開設した[34]。マイクロソフトは2014年2月にWindows Azureの日本データセンター(東日本・西日本リージョン)を[35]、Googleは2016年11月にGoogle Cloud Platformの東京リージョンを開設した[36]。

普及と多様化(2010年代)[編集]

2010年代には、クラウド上で動くアプリケーションの構築・運用技術が急速に発展した。AWSは2012年11月に初の年次イベント「AWS re:Invent」を開催し[37]、以後、大手事業者の年次イベントが新サービス発表の場となった。2013年3月にdotCloud社(同年10月にDocker社へ改称)がコンテナ型仮想化ソフトウェアDockerをオープンソースで公開し[38]、2014年6月にはDocker 1.0のリリース[39]とGoogleによるコンテナ管理ツールKubernetesの公開[40]が続いた。2014年11月にAWSがイベント駆動でコードを実行するAWS Lambdaを発表し[41]、利用者がサーバーを管理しないサーバーレスの形態が注目された。2015年7月にはKubernetes 1.0の公開とともにLinux Foundation傘下にCloud Native Computing Foundation(CNCF)が発足し[42]、2016年3月にKubernetesの開発主体がCNCFへ移管された[43]。2017年8月にはAWSがCNCFにプラチナメンバーとして加盟し、Microsoft・IBM・Googleと並んで大手事業者がコンテナ技術の標準化に加わった[44]。

サーバーレスの形態は他社にも広がり、2016年にGoogleがGoogle Cloud Functionsを[45]、マイクロソフトがAzure Functionsを公開した[46]。オンプレミスとパブリッククラウドを組み合わせるハイブリッドクラウドでは、2017年8月にVMwareとAWSがAWSのベアメタル基盤上でVMware環境を提供する「VMware Cloud on AWS」の提供を開始し[47]、AWSは2018年11月にクラウドと同じハードウェアとソフトウェアを利用者のデータセンターに設置する「AWS Outposts」を発表して2019年12月に正式提供を始めた[48][49]。2019年にはGoogleがKubernetesを基盤にオンプレミスと複数のクラウドでアプリケーションを実行する「Anthos」を[50]、マイクロソフトがAWSやオンプレミスも統合管理する「Azure Arc」を発表し[51]、複数の事業者のクラウドを併用するマルチクラウドの管理が製品化された。

日本では、政府が2018年6月7日に「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」(各府省情報化統括責任者連絡会議決定)でクラウドサービスの利用を第一候補とする「クラウド・バイ・デフォルト原則」を定めた[52]。

2020年代[編集]

2020年6月には政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)の運用が始まり、2021年3月に「ISMAP等クラウドサービスリスト」が初めて公開された[52]。2021年10月26日、デジタル庁は政府共通のクラウド利用環境であるガバメントクラウドの先行事業の対象としてAmazon Web ServicesとGoogle Cloudを選定し[53][54]、2022年10月にMicrosoft AzureとOracle Cloud Infrastructureを追加した[55]。2023年11月にはさくらインターネットの「さくらのクラウド」が2025年度末までに全技術要件を満たすことを条件に選定され[56][57]、2026年3月27日にデジタル庁は同サービスが305項目の技術要件すべてに適合したことを確認し、国内事業者として初めて本番環境の提供が可能になった[58][59][60]。

2023年以降は生成AIの実行基盤としての役割が拡大した。マイクロソフトは2023年1月にGPT-3.5などのモデルを提供する「Azure OpenAI Service」の正式提供を始め[61]、AWSは2023年9月に複数の基盤モデルをAPI経由で利用できるAmazon Bedrockを正式リリースし、GoogleのVertex AIと並ぶ生成AI基盤が出揃った[62]。また、各社は日本でのデータセンター投資を拡大しており、AWSは2024年1月に2023年から2027年までの5年間で2兆2,600億円を日本に投資すると発表し[63]、マイクロソフトは2024年4月に2年間で29億ドル(約4,400億円)[64]、2026年4月には2029年までの4年間で100億ドル(約1兆6,000億円)の投資を発表した[65][66]。

事業者の再編も進み、2023年11月22日にはBroadcomによるVMwareの買収が完了した[67]。AWSは2024年12月にVMware環境をAWS自身が提供する「Amazon Elastic VMware Service」をプレビュー公開(2025年8月に一般提供)し[68][69]、2026年1月にはEU域内のみで構築・運用する独立したインフラ「AWS European Sovereign Cloud」の一般提供を開始した[70]。

年表[編集]

  • 1999年、セールスフォース・ドットコム(現・セールスフォース)が設立され、CRMをSaaS形態で提供する事業を始める[22]。
  • 2002年、Amazon.comがAmazon Web Services(AWS)を開始[23]。
  • 2006年3月14日、AWSがAmazon S3を提供開始[23]。
  • 2006年8月9日、エリック・シュミットが検索エンジン戦略会議で「クラウドコンピューティング」の語を用いる[5]。
  • 2006年8月24日、Amazon EC2のβサービス開始[4]。
  • 2007年11月15日、IBMがBlue Cloudの計画を発表[28]。
  • 2008年3月4日、Yahoo!とインドのComputational Research Laboratories(CRL)が、クラウドコンピューティングの研究支援を発表[71]。
  • 2008年5月28日、GoogleがGoogle App Engineの登録制限を撤廃し一般に開放[27]。
  • 2008年10月23日、Amazon EC2が正式サービスとなる[24]。
  • 2008年10月27日、マイクロソフトがProfessional Developers Conference 2008でWindows Azureを発表[29]。
  • 2009年3月18日、サン・マイクロシステムズがOpen Cloud Platformを発表[72]。
  • 2009年3月29日、IBM、サン・マイクロシステムズ、シスコシステムズ、SAP、EMC、AT&T、ノベル、OMG、レッドハット、VMwareなどがOpen Cloud Manifestoを発表[31]。
  • 2009年4月1日、IBMがソーシャル・ネットワーキングとコラボレーションを統合したLotusLive Engageを発表[73]。
  • 2009年7月15日、マイクロソフトがWindows Azureの商用化計画(同年11月のPDC09から)と料金体系を公表[30]。
  • 2009年7月30日、IBMがIBMマネージド・クラウド・コンピューティング・サービス(IBM MCCS)を発表[74]。
  • 2010年7月、ラックスペースとNASAがOpenStackを開始[32]。
  • 2011年3月2日、AWSが東京リージョンを開設[33]。
  • 2011年6月6日、Appleが「iCloud」を発表[75]。
  • 2011年9月、NISTがSP 800-145「The NIST Definition of Cloud Computing」を公表[2]。
  • 2012年6月6日、オラクルがOracle Cloudの正式サービス開始を発表[76]。
  • 2013年3月、dotCloud(現・Docker)がDockerをオープンソースで公開[38]。
  • 2013年6月4日、IBMがパブリッククラウド事業者SoftLayerの買収を発表[77]。
  • 2014年2月26日、マイクロソフトがWindows Azureの日本データセンターを開設[35]。
  • 2014年6月、Docker 1.0がリリースされ[39]、GoogleがKubernetesを公開[40]。
  • 2014年10月、ISO/IEC 17788:2014(クラウドコンピューティングの概要と用語)が発行[9]。
  • 2014年11月13日、AWSがAWS Lambdaを発表[41]。
  • 2015年7月21日、Kubernetes 1.0が公開され、Cloud Native Computing Foundation(CNCF)が発足[42]。
  • 2016年、Google Cloud Functions(2月・アルファ)[45]とAzure Functions(11月・正式版)[46]が公開。
  • 2016年11月8日、Google Cloud Platformの東京リージョンが正式運用を開始[36]。
  • 2017年8月28日、VMware Cloud on AWSが提供開始[47]。
  • 2017年11月、AWSがC5インスタンスからKVMベースの新ハイパーバイザ(Nitro System)を採用[78][79]。
  • 2018年6月7日、日本政府が「クラウド・バイ・デフォルト原則」を決定[52]。
  • 2018年11月26日、AWSが独自設計のArmプロセッサ「Graviton」を発表[80]。
  • 2019年、Google Anthos(4月)[50]、Azure Arc(11月)[51]が発表され、12月にAWS Outpostsが正式提供[49]。
  • 2020年6月、ISMAPの運用開始[52]。
  • 2021年10月26日、デジタル庁がガバメントクラウド先行事業にAWSとGoogle Cloudを選定[53]。
  • 2022年10月3日、ガバメントクラウドにMicrosoft AzureとOracle Cloud Infrastructureを追加[55]。
  • 2023年1月16日、Azure OpenAI Serviceが正式提供開始[61]。
  • 2023年9月、Amazon Bedrockが正式リリース[62]。
  • 2023年11月22日、BroadcomによるVMware買収が完了[67]。
  • 2023年11月28日、ガバメントクラウドにさくらのクラウドが条件付きで選定[56]。
  • 2024年1月19日、AWSが日本への5年間2兆2,600億円の投資を発表[63]。
  • 2024年12月、Amazon Elastic VMware Serviceがプレビュー公開[68](2025年8月5日に一般提供[69])。
  • 2026年3月27日、さくらのクラウドがガバメントクラウドの全技術要件に適合し、令和8年度募集の対象として5サービスが選定[58]。
  • 2026年4月3日、マイクロソフトが日本への4年間100億ドルの投資を発表[65]。
  • 2026年9月3日、AWSとMicrosoft Azureが最大100Gbpsの閉域相互接続を開始[81]。

サービスモデル[編集]

ファイル:Cloud Computing Stack.svg
階層(SaaSはApplicationを、PaaSはPlatformを、IaaSはInfrastructureを提供する)

NISTの定義は、提供するサービスの種類(利用者がどの層を管理するか)によってクラウドサービスを3つのサービスモデルに分類している[2][3]。これらの総称としてXaaS(X as a Service)という表現も用いられる。

Software as a Service(SaaS)
事業者が運用するアプリケーションをネットワーク経由で利用する形態。利用者は基盤やアプリケーションの設定の一部を除いて管理しない。電子メール、グループウェア、CRMなどが典型で、セールスフォースのSalesforce(1999年設立)[22]、マイクロソフトのMicrosoft 365、GoogleのGoogle Workspace、SAPのS/4HANA Cloud、オラクルのOracle Cloud Applicationsなどがある。オープンソースのSaaS構築フレームワークとしてはLiferayがある。
Platform as a Service(PaaS)
利用者が開発したアプリケーションを配置・実行するためのプラットフォーム(実行環境・データベース・ミドルウェアなど)を提供する形態。利用者はOSや基盤を管理せず、アプリケーションとその設定のみを管理する。GoogleのGoogle App Engine(2008年)、セールスフォースのForce.com(現・Salesforce Platform)、マイクロソフトのWindows Azure(2008年発表)、Heroku、Amazon Web ServicesのAWS Elastic BeanstalkやAmazon DynamoDBなどのマネージドサービス、SAPのSAP Business Technology Platformなどがある。
Infrastructure as a Service(IaaS)
仮想マシン、ストレージ、ネットワークといった基盤資源を提供する形態。利用者はオペレーティングシステム(OS)以上の層を自ら導入・管理できる。Amazon Web ServicesのAmazon EC2(2006年)とAmazon S3、Microsoft Azureの仮想マシン、Google CloudのCompute Engine、Oracle Cloud、IBM Cloudなどがある。Hardware as a Service(HaaS)と呼ばれることもある。
サーバーレスコンピューティング(FaaS)
利用者がサーバーの確保や管理を行わず、関数単位のコードを実行して実行時間に応じて課金される形態で、Function as a Service(FaaS)とも呼ばれる。AWS Lambda、Google Cloud Functions、Azure Functionsなどがある[46]。Datadogが自社顧客2万組織以上の利用データを基に2023年8月に公表した調査では、AWSを利用する組織の70%以上、Google Cloudの60%、Azureの49%が1つ以上のサーバーレスサービスを利用していた[82][83]。

配置モデル[編集]

ファイル:Cloud computing types.svg
クラウドコンピューティングの種類(パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウド)

NISTの定義は、クラウド基盤を誰が利用し誰が所有・運用するかによって4つの配置モデル(実装モデル)を挙げている[2][3]。

テンプレート:Visible anchor
事業者が保有・運用する基盤を、インターネット経由で不特定の組織や個人に提供する形態。狭義のクラウドコンピューティングはパブリッククラウドのみを指す。Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloudなどが代表例である。
テンプレート:Visible anchor
単一の組織が専用に利用する形態[84]。基盤は自社のデータセンターに置く場合も、事業者に運用を委ねる場合もある。企業内のイントラネットなどを経由して利用部門に提供され、資源の増減をアプリケーション側の改変なしにプラットフォーム側で行える点はパブリッククラウドと共通する。サーバー仮想化製品を基盤とする構成のほか[21]、オープンソースのOpenStack(2010年にラックスペースとNASAが開始)も用いられる[32]。
コミュニティクラウド
共通の関心事(任務、セキュリティ要件、ポリシーなど)を持つ複数の組織が専用に共用する形態。政府機関や業界団体など要件を共有する組織群のための基盤が該当する[2][10]。
テンプレート:Visible anchor
上記のうち二つ以上の異なるクラウド基盤(例えばプライベートとパブリック)を、データやアプリケーションの可搬性を保つ標準技術や独自技術で結合した形態。業務やデータの要件に応じた使い分け・連携ができる。事業者側からは、パブリッククラウドと同じハードウェアとソフトウェアを利用者のデータセンターに設置するAWSのAWS Outposts(2019年正式提供)[49]などが提供されている。また、VMwareとAWSは2017年8月にAWSのベアメタルサーバー上でvSphereなどのVMware環境を稼働させる「VMware Cloud on AWS」の提供を開始し[47]、Microsoft Azureの「Azure VMware Solution」(2020年)、Google Cloudの「Google Cloud VMware Engine」(2020年)、AWS自身が提供する「Amazon Elastic VMware Service」(2025年8月一般提供)も同様にVMware環境をパブリッククラウド上で提供している[85][86][69]。
マルチクラウド
複数の事業者のパブリッククラウドを併用する形態。NISTの4分類には含まれないが、用途ごとに適したサービスを選ぶ目的などで用いられ、複数のクラウドを統合管理する製品や事業者間の閉域相互接続が提供されている[51][81]。

利用技術[編集]

仮想化[編集]

IaaS型クラウドの基盤技術は、物理サーバー上に複数の仮想マシンを動かすハイパーバイザ型の仮想化である。x86サーバーの仮想化は2000年代初頭にVMwareなどが商用化し[20]、オープンソースのXen(2003年)や、2007年にLinuxカーネル2.6.20へ統合されたKVMが続いた[87]。Amazon EC2は長らくXenベースのハイパーバイザで運用されていたが、2017年11月のC5インスタンスから、ネットワークやストレージの処理を専用ハードウェアに移しKVMベースの軽量なハイパーバイザで仮想マシンを動かす「Nitro System」へ移行を始めた[78][79]。マイクロソフトの「Azure Boost」(2023年)[88]やGoogle Cloudの「Titanium」(2023年)[89]も、仮想化やインフラ処理を専用のSoCにオフロードする同種の基盤である。事業者が独自に設計したプロセッサも用いられており、AWSは2018年11月にArmベースの「Graviton」を発表した[80]。

コンテナとオーケストレーション[編集]

コンテナ型仮想化は、OS上にアプリケーションごとに隔離された空間を作る方式で、ハイパーバイザ型より軽量で起動が速い[39]。2013年に公開されたDockerによって普及し、2014年にGoogleが公開したコンテナ管理ツールKubernetesは2015年のCNCF発足を経て、複数のコンテナを配置・運用する(オーケストレーション)技術の標準的な選択肢となった[40][42]。コンテナとKubernetesは、アプリケーションを小さなサービスの組み合わせとして構築するマイクロサービスや、クラウドの特性を前提に設計する「クラウドネイティブ」の文脈とともに企業システムの主流技術となった[90]。主要事業者はAmazon EKS・Azure Kubernetes Service・Google Kubernetes EngineなどのマネージドKubernetesサービスを提供している。監視SaaS事業者のDatadogが自社顧客の約24億のコンテナに関する2023年9月時点のデータを基に公表した年次調査では、コンテナ利用組織の46%がAWS FargateやGoogle Cloud Runなどのサーバーレスコンテナを利用し(2021年は31%)、コンテナランタイムはcontainerdの採用率が53%と前年の23%から倍増していた[91][92][93]。

サーバーレスコンピューティング[編集]

サーバーレスコンピューティングは、イベントを契機にコードを実行するスケーラブルでマネージドな実行環境を基盤とし、利用者がサーバーの確保や管理を行わない構成を指す。2014年11月にAWSが発表したAWS Lambdaを機に注目され[41]、2016年にGoogle Cloud Functions・IBM OpenWhisk・Azure Functionsが続いた[45][46]。課金は実行時間や実行回数に基づき、利用がないときの費用が発生しにくい一方、実行時間や実行環境に制約がある。

Infrastructure as Code[編集]

クラウド資源の構成をコードとして記述し、自動的に作成・変更する手法はInfrastructure as Code(IaC)と呼ばれる。AWSは2011年2月にAWS CloudFormationを提供開始し[94]、HashiCorpのTerraformはAWS・Azure・VMwareなど複数の基盤に対応する代表的なIaCツールとして2021年6月にバージョン1.0に到達した[95]。

運用管理と監視[編集]

クラウド事業者は自社基盤の監視サービスを提供しており、AWSは2009年5月にAmazon EC2向けの監視サービスAmazon CloudWatchをAuto ScalingおよびElastic Load Balancingとともに公開した[96]。Microsoft AzureのAzure Monitor[97]やGoogle CloudのGoogle Cloud Observability(Cloud Monitoring・Cloud Logging)[98]も同種のサービスである。一方、複数のクラウドやオンプレミスを横断して監視する第三者のSaaSも普及しており、調査会社ガートナーの「Magic Quadrant for Observability Platforms」2025年版または2026年版で、Datadog[99]・Dynatrace[100]・New Relic[101]・Splunk[102]・Grafana Labs[103]・IBM[104]などがリーダーの1社に位置づけられたと各社が発表している。

こうした監視の考え方はオブザーバビリティ(可観測性)と呼ばれ、メトリクス・ログ・トレースの3種のテレメトリーデータからシステム内部の状態を推測する[105]。テレメトリーの収集を標準化するOpenTelemetryは、2019年にOpenTracingとOpenCensusの統合によりCloud Native Computing Foundation(CNCF)のサンドボックスプロジェクトとして発足し[106][107]、2026年5月に同財団の卒業プロジェクトとなった[108]。

コスト管理[編集]

クラウドの従量課金は、利用量に応じて支出が変動するため、支出の可視化と説明責任の確立が運用上重要になる。財務部門と技術部門が協働してクラウド支出の事業価値を最大化する実践はFinOps(FinanceとDevOpsを合わせた造語)と呼ばれ[109][110]、その推進団体であるFinOps Foundationは2019年2月に発足し、2020年6月にLinux Foundation傘下に入った[110][111]。同財団が2026年に公表した第6回「State of FinOps」調査では、回答組織の98%が生成AI関連の支出を管理対象にしていた[112]。

支出の分析には、AWS Cost Explorerのように事業者が提供する料金分析機能[113]のほか、第三者のクラウドコスト管理ツールも用いられる[114]。Datadogが、同社のコスト管理製品を利用する数百組織のAWS利用料データ(2023年5月〜2024年4月)を分析して2024年6月に公表した調査では、Armベースのインスタンスを利用する組織ではEC2費用の18%をArm系インスタンスが占め、1年前の2倍になっていた[115]。

ネットワークとエッジ[編集]

利用者のデータセンターとクラウドを専用線で接続するサービスや、コンテンツを利用者に近い拠点から配信するコンテンツデリバリネットワーク(CDN)も、クラウドを構成する技術である。ネットワークの外縁(エッジ)で処理を行う形態はエッジコンピューティングや「フォグコンピューティング」と呼ばれ[116]、モノのインターネット(IoT)のように遅延や通信量の制約がある用途で、クラウドと組み合わせて用いられる。

市場と主要事業者[編集]

世界[編集]

調査会社ガートナーは、2024年の世界のパブリッククラウドサービスへの支出を前年比20.4%増の6,754億ドルに達すると予測した[117]。総務省『情報通信白書』令和7年版によれば、世界のパブリッククラウドサービス市場の売上高は2024年に7,733億ドル(前年比22.4%増、見込み値)であった[118]。

IaaS・PaaS・ホステッドプライベートクラウドを合わせたクラウドインフラサービス市場では、調査会社Synergy Research Groupの集計で、2014年第3四半期(AWS 27%、2位はMicrosoftの10%)[119]、2023年第4四半期(AWS 31%・Microsoft 24%・Google 11%で上位3社が67%)[120]、2026年第2四半期(AWS 28%・Microsoft 20%・Google 15%)[7]のいずれの時点でもAmazon Web Servicesが首位であった。生成AI需要で市場が拡大した2026年第2四半期の四半期売上高は1,430億ドル(前年同期比43%増)であった[7]。調査会社によって集計範囲が異なり、Canalysの2024年第3四半期の集計ではAWS 33%・Azure 20%・Google 10%とされている[121]。

日本[編集]

総務省の通信利用動向調査によれば、全社または一部の事業所・部門でクラウドサービスを利用している企業の割合は2024年に80.6%に達し、利用率の高い用途はファイル保管・データ共有、社内情報共有・ポータル、電子メール、給与・財務会計・人事、スケジュール共有であった[6]。市場規模については、IDC Japanが2025年8月に、2024年の国内クラウド市場(売上額)を前年比29.2%増の9兆7,084億円とし、2029年には19兆1,965億円に達すると予測している[122][123]。このうちパブリッククラウドサービス市場は2024年に4兆1,423億円(前年比26.1%増)であった[118]。国内のデータセンターサービス市場も2023年の2兆7,361億円から2028年には5兆812億円へ拡大すると見込まれている[124]。

MM総研が2022年6月に実施した企業調査(複数回答)では、IaaS利用企業のうちAWSを利用する企業が54.7%、Microsoft Azureが44.0%、Google Cloudが26.2%であった[125]。国内の事業者では、IDC Japanの国内ITサービス市場調査で2024年の売上額シェア上位となった富士通・日立製作所・NEC・NTTデータなどのシステムインテグレーターがクラウドの構築・運用サービスを提供しており[126]、富士通は2020年6月にIaaSの「FUJITSU Cloud Service for OSS」と「FUJITSU Cloud Service for VMware」を「FJcloud」ブランド(FJcloud-O・FJcloud-V)に改めた[127]。通信事業者ではNTTドコモビジネス(2025年7月にNTTコミュニケーションズから商号変更)[128]やKDDIがクラウドサービスを提供し、さくらインターネットとKDDIは2024年に生成AI向けGPUクラウドへそれぞれ1,000億円規模の投資を発表した[129]。 日本の大手ITベンダーは2009年から2010年にかけてクラウド事業への参入や戦略転換を相次いで表明した[130]。例えば日立製作所は2009年6月にクラウドソリューション群を「Harmonious Cloud」として体系化し[131]、2012年以降はVMware・マイクロソフト・AWSなどと協業してプライベートクラウドやハイブリッドクラウド環境を提供し、2014年に「Hitachi Cloud」へ再体系化した[132]。同社は2024年にAWSとハイブリッドクラウド分野で3年間の戦略的協業契約を結び[133]、マイクロソフトとは生成AI分野で戦略的提携を結んで同社のデジタル事業「Lumada」にAzureのサービスを組み込む方針を示した[134]。グループ会社の日立ソリューションズや日立システムズもクラウドのシステム構築やマネージドサービスを手がけている[135][136]。

政府の情報システムでは、2018年6月の「クラウド・バイ・デフォルト原則」[52]を経て、2022年9月に抜本改定された「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」がクラウドサービスの利用を第一候補とする「クラウド第一原則」の下でクラウドを適切に利用する方針を定めている[137]。政府調達で利用するクラウドサービスは原則としてISMAPに登録されたものから選定され[52]、国と地方公共団体が共同で利用するガバメントクラウドには2026年3月時点でAWS・Google Cloud・Microsoft Azure・Oracle Cloud Infrastructure・さくらのクラウドの5サービスが選定されている[58]。2023年11月時点のガバメントクラウド本番利用アカウント175件の内訳はAWS 162・Google Cloud 8・Oracle Cloud Infrastructure 3・Microsoft Azure 2であった[138]。

脚注[編集]

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出典[編集]

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参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

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