Datadog

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Datadog, Inc.(データドッグ)は、クラウド環境の監視と分析を行うSaaS型サービスを提供するアメリカ合衆国の企業である。ニューヨーク市に本社を置く。2010年にOlivier PomelとAlexis Lê-Quôcが創業し、Pomelが最高経営責任者、Lê-Quôcが最高技術責任者を務める[1]。サーバー、データベース、アプリケーション、ネットワーク、各種クラウドサービスの稼働状況を収集・可視化する製品群をサブスクリプション方式で提供している。同社はこの分野をオブザーバビリティ(observability)と呼んでいる[1]。ガートナーはオブザーバビリティを、ソフトウェアやシステムがその出力に基づいて理解可能であり、挙動に関する問いに答えられる性質と定義している[2]。株式は2019年9月からNASDAQに上場している[3]。

2012年にインフラストラクチャ監視の提供を始めた。2017年にはアプリケーションパフォーマンス監視(application performance monitoring、APM)を加え、続いてログ管理へ製品を広げた[3][1]。2020年代にはセキュリティとAI関連へ領域を広げ、企業買収を重ねた。純損益は2023年12月期に初めて黒字となった[1]。株価指数では、2021年12月にナスダック100指数、2025年7月にS&P 500の構成銘柄に採用された[4][5]。2026年第1四半期には、四半期の売上高が初めて10億ドルを超えた[6]。

製品はインフラストラクチャ監視、APM、ログ管理、デジタル体験監視、ネットワーク監視、セキュリティ、AI関連の各分野にわたる[1]。課金は製品ごとのサブスクリプション契約で行われ、契約した利用水準を超えた分は追加で課金される[1]。ガートナーの「Magic Quadrant for Observability Platforms」では、2026年版まで6年連続でリーダーに位置づけられた[7]。2018年からは、利用者向けの年次カンファレンス「DASH」を開催している[8]。

2025年12月期の売上高は約34億ドルで、前年から28パーセント増えた[1]。2025年12月時点の顧客は約32,700社で、160を超える国に所在する。従業員は約8,100人で、35か国で事業を展開している[1]。本社のほか、パリ、ダブリン、東京などに拠点を置く[1]。監視対象には同社が開発したエージェントを導入し、サービスは地域ごとに独立した複数のサイトで提供される[9][10]。

日本では2018年5月に東京オフィスを開設し、2019年11月に日本法人のDatadog Japan合同会社を設立した[11]。2023年4月に東京のデータセンター、2025年4月に大阪の事業拠点を開設した。国内ではNTTデータなどとパートナー契約を結んでいる[12]。同社は、富士キメラ総研の調査で国内の運用管理・オブザーバビリティ市場のシェアが2024年度・2025年度と2年連続で1位になったと発表している[13]。

沿革[編集]

ファイル:DatadogAWSTorontoSummit.jpg
AWS Summit TorontoにおけるDatadogの展示(2018年)

Datadogは、Olivier PomelとAlexis Lê-Quôcの2人が2010年に創業した企業である[3]。法人はデラウェア州で設立され、設立州はのちにネバダ州へ変更された(後述)。2人はいずれもエコール・サントラル・パリで計算機科学の修士号を取得した[14][3]。創業前は、教育分野のSaaS企業Wireless Generationで同僚だった。Pomelは2002年から技術担当バイスプレジデントを務めた。Lê-Quôcは2004年3月から2010年12月まで在籍し、Live Operationsのディレクターを務めた[3]。Wireless Generationは2010年にニューズ・コーポレーションに買収された。報道によれば、ニューズ社はWireless Generationの9割の持分を約3億6000万ドルで取得した[15]。両名はそれ以前にも、大手IT企業の研究部門などで技術職に就いていた[3]。

社名は、創業者の前職におけるサーバーの命名慣習に由来する。Pomelは2025年12月に出演したポッドキャストで、その経緯を説明している。前職では、本番用のサーバーに犬、ステージング用に鳥、開発用に猫の名を付ける慣習があった。本番のデータベース群は「datadog」と呼ばれていた。そのうち「datadog 17」は毎年容量が倍増するOracleのデータベースで、全員がその扱いを恐れていたという。Pomelはこれを、自分たちが後に残そうとしていた古い世界を表す名前だったとしている。創業に取りかかった際の呼び名も「datadog 17」であった。この名称が記憶に残りやすかったため、数字を落として社名にした。あわせて、デザイナーに子犬のロゴを作ってもらったとしている[16]。

創業の目標は、開発チームと運用チームの間の隔たりを解消することであった。株式公開時の目論見書によれば、同社は2010年に散在するデータを統合する基盤の構築に着手した。最初の用途として選んだのがインフラストラクチャ監視である[3]。Pomelは設立以来最高経営責任者、Lê-Quôcは最高技術責任者を務めている。両名は2010年6月から取締役でもある[3][1]。

事業の拡大は、ベンチャーキャピタルからの出資と対応先のクラウドの拡大が支えた。同社は2012年から2016年にかけて4回にわたり出資を受けた。出資者にはIndex Ventures、OpenView Venture Partners、ICONIQ Capitalなどが含まれる(詳細は後述)。2015年1月の報道によれば、対応先は複数のクラウド事業者に広がっていた。具体的にはAmazon Web Services(AWS)、Google Cloud Platform、Microsoft Azureである。Red Hat OpenShiftとOpenStackにも対応していた。同時点で約100種類の技術に対応していた[17]。

米国外の拠点は、2015年10月に開設したパリの研究開発拠点が最初である。拠点はパリのシリコン・サンティエ地区に置かれた[14]。フランス法人のDatadog France SASは、同年8月に設立されていた。フランス政府の企業登記によれば、2026年8月時点でパリ以外にも複数の事業所が登記されている。所在地はナント、リヨン、モンペリエ、ボルドー、グルノーブル、およびソフィア・アンティポリスがあるヴァルボンヌである。これらはいずれも2025年以降に開設された[18]。2016年にはデロイトの「Technology Fast 500」に選ばれた。同ランキングは2012年から2015年の売上成長率に基づく[19]。同年、ニューヨーク市の本社をニューヨーク・タイムズ・ビルディング(620エイスアベニュー)に移した[3]。

製品領域は、インフラストラクチャ監視からAPM、ログ管理へと広がった。APMは2017年2月に一般提供を始めた。これにより監視の対象は、インフラからその上で動くアプリケーションへ広がった[20]。続くLogmatic.ioの買収でログ管理が加わり、インフラの指標、APM、ログ管理を同一の基盤で扱うようになった[21]。2018年2月には、監視エージェントをGoで書き直したメジャーバージョン6.0.0を公開した[22]。

利用者向けの年次カンファレンス「DASH」は2018年に始まった。第1回はニューヨーク市のSpring Studiosで開かれ、その後も毎年開催されている[8][23]。

株式公開は2019年に行った。上場したのはクラスA普通株式で、市場はNASDAQである(詳細は後述)[3]。同年11月には日本法人を設立した(詳細は後述)[11]。

2020年代には、製品領域をセキュリティおよびAI関連へ広げた。2020年のCloud SIEM、2021年のクラウドセキュリティ関連製品、2024年のLLM Observabilityなどを投入した[1]。同時に企業買収を重ねた(詳細は後述)。従業員数と顧客数は上場後も増え続けた(詳細は後述)[1]。純損益は2023年12月期に黒字へ転じ、2025年12月期まで黒字を維持した[1]。

同社は自社の位置づけの記述を段階的に改めている。2023年12月期と2024年12月期の年次報告書は、冒頭で自社を「クラウドアプリケーション向けのオブザーバビリティおよびセキュリティのプラットフォーム」と記していた。2025年12月期には「AIを活用したクラウドアプリケーション向けのオブザーバビリティおよびセキュリティのプラットフォーム」に改めた[1][24]。2026年5月の四半期決算発表以降は、「AI時代のオブザーバビリティおよびセキュリティのプラットフォーム」と説明している[6]。

AI関連では、2024年の生成AIアプリケーション向け監視の投入を起点に、製品と研究の両面で対象を広げた。2026年3月には、AIエージェントが監視データに接続するためのMCP Serverを一般提供した[25]。同月には、時系列基盤モデルを開発する社内研究組織の取り組みが報じられた[26]。2026年4月にはGPUの監視製品を提供した[27]。同月には法人設立州をネバダ州へ変更した。同社の届出によれば、事業、経営陣、本社所在地、雇用に変更はない[28][29]。

経営陣は、共同創業者2名を含む執行役員で構成される。2026年4月の委任状によれば、最高財務責任者(CFO)はDavid Obstlerで、2018年11月に就任した。最高執行責任者(COO)はAdam Blitzerで、2021年5月に就任した。取締役会は11名で構成され、PomelとLê-Quôcの両名が含まれる[29]。

主な出来事
年月 出来事 出典
2010年6月 デラウェア州で法人を設立 [3]
2012年 インフラストラクチャ監視の提供を開始 [3]
2015年10月 パリに研究開発拠点を開設(当時の本社従業員は100名超、法人顧客は1,500社超) [14]
2016年 デロイトの「Technology Fast 500」で北米9位(2012年から2015年の売上成長率10,303パーセント) [19]
2017年2月 APMの一般提供を開始 [20]
2017年9月 Logmatic.ioを買収し、ログ管理に参入 [21]
2018年2月 年次カンファレンス「DASH」の初回(同年7月11日・12日、ニューヨーク市)の開催を発表 [8]
2019年9月 NASDAQに上場 [3]
2021年12月 ナスダック100指数に採用 [4]
2023年12月期 初めて通期の純利益を計上 [1]
2024年6月 LLM Observabilityの一般提供を開始 [30]
2025年7月 S&P 500に採用 [5]
2026年第1四半期 四半期の売上高が初めて10億ドルを超える [6]
2026年4月 法人設立州をデラウェア州からネバダ州へ変更(事業、経営陣、本社所在地の変更なし) [28]

事業と製品[編集]

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Google Cloud SummitにおけるDatadogの展示

同社の製品群はモジュール構成をとる。2025年12月期の年次報告書によれば、インフラストラクチャ監視、APM、ログ管理、デジタル体験監視、ネットワーク監視、セキュリティの分野からなる。このほかに開発者向けオブザーバビリティ、サービス管理、製品分析などの分野がある。ダッシュボード、アラート、ワークフロー自動化などの機能は製品間で共有される。利用者は機能を段階的に追加することも、複数をまとめて導入することもできる[1]。各製品は、監視対象のソフトウェアやクラウドサービスと接続する連携機能(インテグレーション)を通じてデータを集める(詳細は後述)。

製品分野と主な製品(括弧内は投入年。製品名は2025年12月期の年次報告書の名称で、旧称は括弧内に示す。投入年は改称前の製品を含め年次報告書の一覧と各出典に基づく)
分野 主な製品(投入年) 概要 出典
インフラストラクチャ監視 Infrastructure Monitoring(2012年) クラウド、コンテナ、サーバーレスの基盤を一元監視 [3][1]
APM APM(2017年)、Continuous Profiler(2020年)、Database Monitoring(2021年) コード水準の分散トレーシングと性能分析 [1]
ログ管理 Log Management(2018年)、Observability Pipelines(2022年)、Flex Logs(2023年)、Flex Frozen(2025年)、CloudPrem(2025年) ログの取り込み、索引、長期保存、転送 [1][31][32]
デジタル体験監視 Synthetics(2019年)、Real User Monitoring(2019年)、Session Replay(2021年)、Product Analytics(2025年) 模擬リクエストと実利用者の体験を分析 [1][33]
ネットワーク監視 Cloud Network Monitoring(2019年、旧称Network Performance Monitoring)、Network Device Monitoring(2021年) 通信フローとネットワーク機器を監視 [1][33]
セキュリティ Cloud SIEM(2020年)、Cloud Security(2021年、旧称Cloud Security Management)、Sensitive Data Scanner(2021年)、App & API Protection(2022年、旧称Application Security Management)、Audit Trail(2022年) 脅威検知、脆弱性走査、機密データの検出 [1]
開発者向け CI Visibility(2021年)、Feature Flags(2026年)、Experiments(2026年) CIパイプライン、テスト、機能公開の管理 [33][34][35]
サービス管理 Incident Management(2020年)、Workflow Automation(2023年)、Event Management(2024年)、Incident Response(2025年、旧称OnCall) インシデント対応、アラート集約、定型作業の自動化 [1]
クラウドコスト管理・データ Cloud Cost Management(2022年)、Data Streams Monitoring(2023年)、Storage Management(2025年) クラウド費用の配分とデータ処理の監視 [1][36]
AI LLM Observability(2024年)、Bits AI SRE(2025年)、MCP Server(2026年)、GPU Monitoring(2026年) LLM処理の追跡、AIエージェント、GPU監視 [1][25][27]

監視とオブザーバビリティ[編集]

インフラストラクチャ監視は、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッド環境を対象とする。コンテナやサーバーレスの構成も含め、ITインフラの状態をリアルタイムに監視する。収集したデータは1つの保存先にまとめ、相互に関連付ける[1]。APMは、マイクロサービス、ホスト、コンテナ、サーバーレス関数をまたぐ分散トレーシングを行う。トレースはコードの水準まで追跡できる[1]。ログ管理は、ログを取り込んで索引を作り、検索、可視化、アラートを提供する。年次報告書は、ログ管理に関連する仕組みを2つ挙げる。Logging Without Limitsは、ログの取り込みと処理にかかる費用を切り離す。Flex Logsは保存とクエリを分離し、保持期間とクエリ処理量を個別に調整できる[1]。Flex Logsは2023年8月に発表されたログ管理の階層である[31]。

利用者側から見た挙動を扱う製品は3つある。Syntheticsは、シミュレートしたリクエストでアプリケーションとAPIエンドポイントを監視する。Real User Monitoring(RUM)は、実際の利用者が体験したWebブラウザーとモバイルアプリケーションの性能を分析する。Product Analyticsは、製品や利用者に関するデータを横断して集計する[1]。このほか、常時稼働で実行時の性能を測定するContinuous Profilerがある。Database Monitoringは、データベースのクエリの指標と実行計画を一覧する。Error Trackingは、エラーを類似のものごとにまとめる[1]。Database Monitoringは2021年10月に提供が始まった。同社の発表によれば、低速なクエリに起因する性能上の問題を特定するための情報を提供する[37]。

データ処理を対象とする製品として、イベント駆動のアプリケーション向けのData Streams Monitoringがある。Apache SparkやDatabricksのジョブ向けには、Data Jobs Monitoringがある。ネットワーク関連では2製品を提供する。Cloud Network Monitoringはトラフィックを、Network Device Monitoringはネットワーク機器を対象とする[1]。

Observability Pipelinesは、メトリクス、ログ、トレースを任意の送信元から任意の送信先へ収集・変換・転送する製品である。一般提供の開始時点で80以上の連携機能を備えていた。費用の発生箇所や使用中のツール、データへのアクセス権限を1つの画面で確認できるとされた[38]。Cloud Cost Managementは、クラウドの利用料を監視データと同じ画面で扱う。同社の発表によれば、利用料をアプリケーション、サービス、チームごとに配分し、支出の変化とその要因を追跡する[39]。

年次報告書の投入一覧には、表にない製品も含まれる。Universal Service Monitoring(2022年)とApplication Vulnerability Management(2023年)である[1]。2021年11月には、パートナー製アプリケーションを稼働させるDatadog Appsの提供開始も発表された。15か月分以上のログを検索できるOnline Archivesも同時に発表された[33]。2022年11月には、画面操作の記録によるテスト作成を行うContinuous Testingの一般提供を始めた[40]。表に含まれない製品として、2025年10月に無料のWebダッシュボードUpdogを公開した。各種SaaSのAPIの稼働状況を表示するものである。対象にはAWS、Cloudflare、OpenAI、Slackなどが含まれる。同社は、テレメトリの細かなパターンを捉えることで障害をより早く検知できると述べている。例として、Amazon DynamoDBの性能低下をAWSの稼働状況ページの更新より32分早く示したことを挙げた[41]。

セキュリティ[編集]

セキュリティ分野の製品は、年次報告書によれば次のとおりである。Cloud Securityは、エージェントを導入せずに利用者のインフラを走査する。脆弱性、設定の誤り、権限に関するリスク、コンプライアンス違反を検出する。Code Securityは、実行時の状況をもとに脆弱性の対処順序を決める。Cloud SIEMは、クラウド環境における脅威の検知と調査を扱い、セキュリティログの保存と分析も行う。脅威管理は2つの製品からなる。Workload Protectionは、ホストとコンテナのワークロードをカーネル内で分析する。App & API Protectionは、APIを対象とする[1]。

Sensitive Data Scannerは、機密データを検出・分類して伏せ字化(redaction)する。年次報告書は、この製品がGDPR、HIPAA、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)といった規制への対応を支援するとしている。プラットフォーム上の操作の履歴を記録する製品として、Audit Trailがある[1]。

AI関連[編集]

2024年以降、AI向けの監視製品とAIエージェントを投入し、独自の基盤モデルの研究も行っている。LLM Observabilityは、大規模言語モデル(large language model、LLM)を用いた処理の連鎖を追跡する。各段階の入出力、エラー、トークン使用量、待ち時間を記録する[1][30]。2025年6月のDASHでは、AIエージェント群を発表した。内容は、障害対応のBits AI SRE、コード修正のBits AI Dev Agent、セキュリティ調査のBits AI Security Analystである[42]。年次報告書は、Bits AI SREを常時稼働のAIエージェントと位置づける。数千件の実際のインシデントに基づいて開発され、根本原因の特定と復旧時間の短縮を支援するとしている[1]。

MCP Serverは、AIエージェントに本番環境のログ、メトリクス、トレースへの参照手段を提供する。連携先として想定される開発支援エージェントには、Codex、Claude Code、Cursorなどが挙げられている[25]。GPU Monitoringは、GPUインスタンスの使用状況や費用、部門・利用者ごとの消費状況を1つの画面で扱う。停滞しているワークロードを、それを動かしているGPU、Pod、プロセスに関連付ける機能を持つ。発表は米国時間で2026年4月22日、日本国内向けの発表は同月24日である[27][43]。

2026年6月のDASHでは、100を超える新機能・機能強化を発表した[44][45]。この中には次の4つが含まれる[44]。

  • Bring Your Own Cloud(BYOC):同社のプラットフォームを利用者自身のクラウド上に配置し、利用者のクラウドのオブジェクトストレージ上でデータを処理・インデックス化する
  • Bits Agent Builder:利用者が独自のAIエージェントを構築する
  • AI Guard:プロンプトインジェクションやデータの流出からAIアプリケーションを守る
  • Agent Console:Claude Code、Cursorなどの開発支援エージェントを一元的に監視する

同社はAIの研究組織AI Research Labを設けている。2025年12月期の年次報告書は、この組織が新たな手法の開発を担うとしている。同報告書は、研究開発部門の技術者にAIの活用とAI機能の開発を課しているとも記している[1]。2025年8月の決算発表では、最初の成果としてTotoとBOOMを挙げた。Totoは同社内部のテレメトリのみで学習した時系列向けの基盤モデルで、重みは公開されている。BOOMはオブザーバビリティのメトリクスに特化した評価用データ群である[1][46]。The Registerの2026年3月の報道によれば、Totoは1億5100万個のパラメータを持つ。事前学習には2兆個を超える時系列のデータ点が用いられた[26]。

課金モデル[編集]

年次報告書によれば、収益はサブスクリプション契約から得られる。取引価格は、契約した利用水準に対する固定額と、追加購入分に対する変動する対価から構成される。同社は個々のサービスを、それぞれ独立した履行義務として識別している。契約した利用量を超過した分は追加で課金される。按分計上型の契約では、超過分の課金は月ごとに生じる。使用に応じて提供される契約では、契約分を使い切った時点で生じる。課金は製品ごとに行われる。対象にはインフラストラクチャ監視、APM、ログ管理、Synthetics、セキュリティ監視が含まれる。Continuous Profiler、サーバーレス監視、ネットワーク監視、RUM、インシデント管理も対象である。ダッシュボードにおけるカスタムメトリクス、Dockerコンテナの監視、インデックス化されたスパンなどの副次的なサービスも対象となる[1]。

評価と市場[編集]

2025年12月期の年次報告書は、同社の主要な市場をITオペレーション管理市場と位置づける。ガートナーが2025年12月に公表した内容に基づき、この市場の規模を2029年時点で820億ドルとしている。うちオブザーバビリティに相当する分野は390億ドルである。同報告書は、同社が参加する4分野の合計を2029年時点で1870億ドルと見込む。4分野はITオペレーション管理、セキュリティソフトウェア、アプリケーション開発、分析プラットフォームである。あわせて、ガートナーの内容は研究上の意見であって事実の表明ではなく、公表時点のものであると付記している[1]。

ガートナーの「Magic Quadrant for Observability Platforms」では、2026年版で6年連続のリーダーに位置づけられた[47][7]。同社の発表によれば、デジタル体験監視の分野でも2024年11月に初めてリーダーに選出された。対象の報告書は「Magic Quadrant for Digital Experience Monitoring」である[48]。フォレスター・リサーチの「The Forrester Wave: AIOps Platforms, Q2 2025」でもリーダーに位置づけられたと、同社は発表している[49]。

『フォーブス』誌の「Cloud 100」(非公開クラウド企業の順位)では、2019年9月に5位に置かれた[50]。『フォーチュン』誌の「Future 50」(長期成長性の評価)では、2025年版で15位に置かれた[51]。

競合分野では事業者の再編があった。2023年7月にNew Relicが65億ドルで非公開化することに合意し[52]、シスコシステムズによるSplunkの買収は2024年3月に完了した[53]。

生成AIの普及について、ガートナーは2026年3月30日に予測を公表した。LLMのオブザーバビリティへの投資は、2028年までに生成AIの導入案件の50パーセントに達するという。公表時点の比率は15パーセントとしている。理由として、説明可能なAI(explainable AI、XAI)への要求の強まりを挙げた。同予測によれば、LLMのオブザーバビリティは応答時間などの一般的な測定にとどまらない。幻覚、偏り、トークンの使用量といったLLM固有の指標を扱う。利用者も広がっているとした。AIシステムを開発・運用する部門に加え、IT運用部門やサイト信頼性エンジニアリング(site reliability engineering、SRE)の担当者が含まれる[54]。同年5月12日には、AIを導入する組織の40パーセントが2028年までにモデルの性能、偏り、出力を監視する専用の製品を導入すると予測した[2]。The Registerは2026年3月、利用者がAIで自ら道具を作れるようになる変化を取り上げた。同紙は、同社がこの変化への対処として、汎用のLLMに依拠せず自社の領域に特化したモデルを開発していると報じた。同記事で最高製品責任者のYanbing Liは、AIの出力は説明可能で検証可能でなければ信頼を得られないと述べた[26]。

調査レポートとイベント[編集]

同社は、自社のプラットフォームで観測された利用データに基づく調査レポートを継続的に公表している。主題はクラウドセキュリティ、DevSecOps、サーバーレス、クラウドコスト、AIエンジニアリング、コンテナ利用の6つである。「State of Cloud Security」は2023年版に続き2025年10月版を公表した[55]。「State of DevSecOps」は2026年2月に公表した[56]。サーバーレスの報告書は2023年8月版、コンテナ利用の報告書は2023年11月版を公表しており、いずれも2020年までに公表を始めていた[57][58]。クラウドコストの報告書は2024年6月版、AIエンジニアリングの報告書は2026年4月版が公表されている[59][60]。

調査結果の例を挙げる。2025年版の「State of Cloud Security」は、AWS、Google Cloud、Microsoft Azureを利用する数千の組織のデータを分析した。同社によれば、少なくとも84パーセントの組織が複数のAWSアカウントを使い、86パーセントがAWS Organizationsを利用していた[55]。2026年4月の「State of AI Engineering」は、69パーセントの企業が3種類以上のAIモデルを利用していると報告した[61]。

年次カンファレンス「DASH」(前述)の2026年6月の回について、SiliconANGLEは自律的なAI運用を推し進める発表が相次いだと報じた[45](内容は前述)。

パートナーとエコシステム[編集]

年次報告書によれば、同社は1,000以上の連携機能を標準で提供している。パートナー製品を提供するMarketplaceも運営する。営業組織には、パートナーを担当するチームを置いている[1]。同社の発表によれば、連携機能の数は2025年10月に1,000件に達した[62]。

教育面では、同社は学習サイトDatadog Learning Centerを運営している[63]。認定資格制度も運営する。基礎のDatadog Fundamentalsのほか、ログ管理、APM、Cloud SIEM、データベース監視の分野に認定試験を設けている。試験は2026年9月時点で5種類である。2025年1月からは、試験の運営にKryterionを採用している[64]。

買収[編集]

同社は2015年以降、監視、セキュリティ、開発者向けツール、データの各領域で企業買収を重ねてきた。2025年12月期の年次報告書によれば、買収契約の締結件数は2023年が3件、2024年が1件、2025年が3件であった。2025年の3件の取得対価は総額1億7840万ドルであった。表には社名が公表された案件を示す[1]。

Datadogによる企業買収
時期 買収先 事業内容 出典
2015年2月 Mortar Data 大規模データ処理の基盤。ニューヨーク拠点 [65]
2017年9月 Logmatic.io ログ管理。パリ拠点 [21]
2019年2月 Madumbo Webアプリケーションのテスト基盤。パリ拠点 [66]
2020年8月 Undefined Labs 開発工程(CI/CD)のテストと監視 [67]
2021年2月(契約締結) Sqreen アプリケーション層のセキュリティ [68]
2021年2月 Timber Technologies データパイプライン「Vector」の開発元 [69]
2021年11月 Ozcode 本番環境のライブデバッグ [70]
2022年2月 CoScreen 技術チーム向けの画面共有・共同作業 [71]
2022年5月(契約締結) Hdiv Security 実行時のアプリケーションセキュリティ試験 [72]
2022年8月 Seekret APIの自動発見・管理 [73]
2022年11月 Cloudcraft AWS構成図の自動生成 [74]
2023年4月 Codiga 静的コード解析 [75]
2023年11月 Actiondesk クラウド型の表計算 [76]
2025年1月 Quickwit ログ向けのオープンソース分散検索エンジン [77]
2025年4月 Metaplane データ品質の監視。ボストン拠点 [78]
2025年5月 Eppo 実験基盤とフィーチャーフラグ管理 [79][80]
2026年1月 Propolis 自律型の品質保証テスト [81]
2026年6月 Adaptive ML 強化学習運用(RLOps)基盤。AI研究組織に合流 [82]

領域ごとに見ると次のとおりである。セキュリティでは、アプリケーション層のSqreen、実行時試験のHdiv Security、APIの自動発見を扱うSeekretを取得した[68][72][73]。データの領域では、データパイプラインVectorの開発元であるTimber Technologiesと、データ品質を監視するMetaplaneを取得した[69][78]。実験と機能フラグの領域ではEppoを取得した[79]。可視化と開発者向けの領域では、Cloudcraft、Codiga、Ozcodeを取得した[74][75][70]。AI研究では2026年にAdaptive MLを取得し、同社のAI研究組織に合流させた[82]。

買収で得た技術は、その後の製品に組み込まれている。Timber Technologiesが開発したVectorは、買収後も同社のオープンソースソフトウェアとして公開されている(詳細は後述)[69][83]。MetaplaneとEppoは買収後も、それぞれ「Metaplane by Datadog」「Eppo by Datadog」の名称で既存顧客への提供が続けられた[78][79]。両件の買収額は公表されていないが、Eppoについては2億2000万ドルとする報道があるとTechCrunchは伝えている[80]。同社の説明によれば、2026年に一般提供が始まった機能フラグ管理のFeature Flagsと実験基盤のExperimentsは、いずれもEppoの買収を土台として開発された[34][35]。

技術[編集]

監視エージェント[編集]

監視対象のホストには、データを収集して同社のサービスへ送信するDatadog Agentを導入する[9]。エージェントはGoで書かれている。2018年2月に公開されたメジャーバージョン6.0.0で、それ以前のPythonによる実装から全面的に書き直された。リリースノートはその目的を性能の改善、資源消費の削減、チェックの並行実行としている。Pythonで書かれたチェックやプラグインは、変更なしに6系でも引き続き利用できるとされた[22]。メジャーバージョン7は2019年12月の7.16.0から始まり、Python 3のみに対応する[84]。

エージェント自体がオープンソースソフトウェアである。ソースコードはGitHubのリポジトリDataDog/datadog-agentで公開されている。ユーザー空間の構成要素はApache License 2.0で提供される。BPFのコードはGNU General Public License 2.0で提供され、二重ライセンスの形をとる[9]。バージョン5以前のエージェントは別のリポジトリ(DataDog/dd-agent)で管理されていた。こちらはPythonで書かれ、簡易BSDライセンスで公開されていた。同リポジトリのライセンスファイルには、2009年のBoxed Iceと2010年から2016年のDatadogの著作権表示が併記されている[85][86]。

エージェントを導入せずに監視する方式も用意されている。AWSとの連携では、IAMロールの委譲を受けてAmazon CloudWatchのAPIを定期的に呼び出す方法がとられる[87]。

サイト構成[編集]

サービスは複数の「サイト」に分かれて提供され、各サイトは相互に独立していてデータを共有しない[10]。

提供サイトの一覧
サイト 地域 稼働開始・備考 出典
US1、US3、US5 米国 [10]
EU1 欧州 [10]
UK1 英国 2026年7月にAWSの欧州(ロンドン)リージョン上で提供開始 [10][88]
AP1 日本 2023年4月に東京で稼働。同社にとってアジアで最初のデータセンター [10][89]
AP2 オーストラリア 2025年7月にAWSのアジアパシフィック(シドニー)リージョン上で提供開始 [10][90]
US1-FED、US2-FED 米国政府機関向け US1-FEDは「Datadog for Government」として提供され、2026年5月にFedRAMP Highの認証を取得 [10][91]

日本のサイトは、それまでの米国、欧州、AWS GovCloudの拠点に加わるものである。同社の発表によれば、日本国内にデータを保存することを求める要件に対応し、既存のすべての製品が利用できるとされた[92]。

第三者による認証と監査も受けている。2025年12月期の年次報告書によれば、同社製品の一部はISO 27001、SOC 2、PCI DSS、FedRAMP(Moderate)の基準の対象である。これらについて第三者監査人による試験と評価を受けている[1]。政府機関向けサイトのFedRAMP Highベースラインの認証は表のとおりである[91]。同社はTrust Centerにおいて、これらに加えISO/IEC 27017・27018・27701への適合を掲げている。AIマネジメントシステムに関するISO/IEC 42001と、オーストラリアのIRAPも含まれる[93]。

2023年3月8日には、systemdのセキュリティ更新の自動適用でコンテナのネットワーク経路が削除され、米国政府向けを除く全サイトが約1日利用できない障害が発生した[94][95]。

オープンソースソフトウェア[編集]

同社は自社開発と買収の双方を通じて、複数のオープンソースソフトウェアを公開している。前述のDatadog Agentのほか、Python向けの計装ライブラリdd-trace-pyなど、各種言語向けのライブラリを公開している[96]。Timber Technologiesの買収により、データパイプライン「Vector」を得た。Vectorは監視データを収集・加工して任意の宛先へ転送するソフトウェアである。Rustで書かれ、Mozilla Public License 2.0で公開されている[69][83]。買収したQuickwitは、ログを対象とする分散検索エンジンをオープンソースで開発していた[77]。

セキュリティ分野では、クラウド環境への攻撃手法を再現するStratus Red Team(2022年)をApache License 2.0で公開している[97][98]。同じライセンスで、GuardDog(2022年)やKubeHound(2023年)などのセキュリティツールも公開している[99][100]。

業績[編集]

同社の会計年度は12月31日を期末とし、年次報告書(Form 10-K)を米国証券取引委員会へ提出している。四半期ごとの決算は臨時報告書(Form 8-K)の添付資料として公表される[1][101]。売上高は2019年12月期の3億6278万ドルから2025年12月期の34億2716万ドルへ増加した[1][102]。米国会計基準による純損益は2023年12月期に初めて黒字となり、2025年12月期まで黒字を維持した[1]。2026年8月6日に発表した同年第2四半期決算では、売上高が前年同期比36パーセント増の11億2000万ドルとなった。通期の売上高見通しは従来の43億〜43億4000万ドルから44億5000万〜44億7000万ドルへ引き上げた[6][101]。2025年12月期の年次報告書は、売上が変動しうる要因として、同社がAIネイティブと呼ぶ顧客層の利用が急速に拡大した後に最適化される場合があることを挙げている。この顧客層には同社の最大の顧客が含まれる[1]。

主要な連結業績の推移(単位は百万ドル・△は損失)[1][103][102]
決算期 売上高 純損益
2019年12月期 362.8 △16.7
2020年12月期 603.5 △24.5
2021年12月期 1,028.8 △20.7
2022年12月期 1,675.1 △50.2
2023年12月期 2,128.4 48.6
2024年12月期 2,684.3 183.7
2025年12月期 3,427.2 107.7

売上高は各期とも前期を上回っており、2021年12月期に10億ドルを超えた[103]。売上の大半は北米で生じている。2025年12月期の売上は地域別で北米が24億3308万ドル、それ以外の地域が9億9408万ドルであった。顧客の請求先住所を基準とすると、北米以外の地域が売上の約29パーセントを占めた。単一の国で売上の10パーセントを超えるのはアメリカ合衆国のみである[1]。

顧客は2025年12月31日時点で160を超える国に所在する。同社は顧客の規模を年間経常収益(annual run-rate revenue、ARR)で示している。年次報告書によれば、ARRはある時点における全顧客のサブスクリプション契約の売上を年率に換算した値で、月次の経常売上を12倍して算出する。ARRが10万ドル以上の顧客は、2025年12月31日時点でARR全体の90パーセントを占めた[1]。2026年6月30日時点では、ARRが10万ドル以上の顧客は約4,720社となった[101]。

従業員はニューヨークの本社のほか、複数の国と都市に分かれて勤務している。2025年12月31日時点で正社員の約44パーセントがアメリカ合衆国外に所在し、そのうちフランスが34パーセントを占める。研究開発部門は約3,900人、営業・マーケティング部門は約3,600人である。本社はニューヨーク市のニューヨーク・タイムズ・ビルディングに置かれる[3]。年次報告書によれば、本社は2033年6月に満了する賃貸契約に基づく約39万5000平方フィートの床面積で構成される。このほかボストン、デンバー、サンフランシスコ、パリ、ダブリン、アムステルダム、シドニー、東京、シンガポール、ソウルに賃借によるオフィスを持つ。不動産は保有していない[1]。

従業員数と顧客数の推移(各年12月31日時点)
年末 従業員数 顧客数 ARR 10万ドル以上の顧客数 出典
2019年 1,403 約10,500 858 [102]
2020年 2,185 約14,170 1,228 [104][105]
2021年 約3,200 約18,800 約2,010 [105]
2022年 約4,800 約23,200 約2,780 [103]
2023年 約5,200 約27,300 約3,190 [106]
2024年 約6,500 約30,000 約3,610 [24]
2025年 約8,100 約32,700 約4,310 [1]

従業員数と顧客数は、いずれも各年とも前年を上回った。株式公開前の2018年末には、従業員数は886人、ARR 10万ドル以上の顧客は453社であった[102]。2020年末のARR 10万ドル以上の顧客数は、2021年12月期の年次報告書で再集計された値である[105]。従業員の所在は年を追って米国外へ広がった。米国外に勤務する正社員の比率は2019年末には約34パーセントで、当時はそのうちフランスが48パーセントを占めていた[102]。事業を展開する国は2019年末の27か国から2025年末の35か国へ増えた[102][1]。顧客の所在国は、2019年から2022年までの年次報告書では「100か国以上」、2023年と2024年は「150か国以上」と記されている[102][103][106][24]。ARRが10万ドル以上の顧客がARR全体に占める比率は、2019年末には75パーセントであった[102]。ARRが100万ドル以上の顧客は、2023年末の396社から2024年末の462社、2025年末の約603社へ増えた[106][24][1]。

同社は2022年7月に初めて環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する報告書を公表した[107]。報告書は環境、社会、ガバナンスの3分野について同社の取り組みをまとめたもので、同社のサイトで公開されている[108]。

株式[編集]

株式公開[編集]

2019年8月23日に米国証券取引委員会へ登録届出書(Form S-1)を提出した[109]。同年9月19日にクラスA普通株式をNASDAQ(Nasdaq Global Select Market)へ上場した。ティッカーシンボルはDDOGである。公開価格は1株27.00ドルで、当初の売出しは2400万株であった[3]。上場初日の株価は寄付きで40.50ドルを付けた。終値は37.55ドルで、公開価格を39パーセント上回った[110]。公開手続は9月23日に完了した。9月25日に引受人が追加取得の選択権を行使した結果、発行総数は2760万株となった。引受手数料および費用を控除した手取り額は7億590万ドルであった[102]。共同主幹事はモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェース、クレディ・スイスであった[109]。

CNBCは、同社が2019年に株式を公開したクラウドソフトウェア企業のうち、時価総額100億ドル以上に達した4社目にあたると報じた。同記事は他の3社としてZoom、Slack、クラウドストライクを挙げている[111]。

ブルームバーグは2019年9月18日、シスコシステムズが株式公開の数週間前に70億ドルを超える金額でDatadogの買収を提案していたと関係者の話として報じた。同報道によれば、Datadogは株式公開を選び、これに応じなかった[112]。

株式の種類と株価指数[編集]

普通株式はクラスAとクラスBの二種類に分かれ、議決権の数が異なる。クラスAは1株につき1個、クラスBは1株につき10個の議決権を持つ。上場しているのはクラスAのみである。2025年12月31日時点で、発行済みのクラスB普通株式は全議決権の約43パーセントを占める。その保有者には同社の役員および取締役が含まれる。2026年2月5日時点の発行済株式数はクラスAが3億2827万4648株、クラスBが2430万1433株であった[1]。

株価指数では、2つの主要指数の構成銘柄に採用されている。2021年12月10日に発表された年次見直しによりナスダック100指数の構成銘柄に採用され、同月20日の取引開始前に適用された[4]。2025年7月2日には、除外されるジュニパーネットワークスに代わってS&P 500の構成銘柄に採用されることが発表され、同月9日に適用された[5]。

転換社債[編集]

株式公開後の資金調達には転換社債も用いている。2020年6月、同社は2025年満期の0.125パーセント転換社債7億4750万ドルを、適格機関投資家向けの私募(Rule 144A)で発行した[105]。この社債は2025年6月15日に満期を迎えた[1]。2024年12月には、2029年満期の無利息(0.00パーセント)転換社債10億ドルを同じく私募で発行した。年次報告書によれば、発行にあわせてキャップド・コール取引を締結した。2029年満期の社債は、所定の転換条件を満たした場合に保有者の選択で満期前に転換できる。同社は転換の義務をクラスA普通株式の交付、現金の支払い、またはその組み合わせで履行する[1]。

株式公開前の資金調達[編集]

株式公開前には、ベンチャーキャピタルから4回にわたって出資を受けた。

資金調達ラウンド
時期 ラウンド 調達額 主導投資家 出典
2012年11月 シリーズA 620万ドル Index Ventures、RTP Ventures [113]
2014年2月 シリーズB 1500万ドル OpenView Venture Partners [114]
2015年1月 シリーズC 3100万ドル Index Ventures [115]
2016年1月 シリーズD 9450万ドル ICONIQ Capital [116]

シリーズDの時点で累計調達額は約1億4800万ドルとなった[116]。

日本での事業[編集]

日本では2018年に東京オフィスを開設し、その後、日本法人、データセンター、大阪の拠点を設けている。同社によれば、国内の導入企業は2025年時点で約2,000社である[117]。

日本での主な出来事
年月 出来事 出典
2018年5月 東京にオフィスを開設 [118]
2019年11月 日本法人Datadog Japan合同会社を設立 [11]
2023年4月 東京にデータセンターを開設 [89]
2023年8月 新たな東京オフィスを開設。日本語による技術文書と製品サポートを開始 [119]
2024年2月 正井拓己が日本法人の社長に就任。認定プログラムの日本語提供を発表 [120][119]
2024年6月 クラスメソッドと戦略的パートナーシップを締結 [121]
2025年3月 NTTデータ、東京エレクトロン デバイスとパートナー契約を締結 [12]
2025年4月 大阪に事業所を開設 [122]
2025年5月 アマゾン ウェブ サービス ジャパンのパートナー表彰(2024年)でTechnology Partner of the Yearに選定 [123]
2025年8月 富士キメラ総研の調査で2024年度の国内シェア1位と発表 [124]
2026年2月 住信SBIネット銀行が勘定系システムに採用 [125]
2026年5月 Datadog Live Tokyo 2026(東京国際フォーラム・発表) [126]
2026年6月 キンドリルジャパンとの協業強化を発表 [127]

法人と拠点[編集]

日本への進出は、2018年5月30日に発表した東京オフィスの開設に始まる。カントリーマネージャーに就任した中川誠一は、AWS Japanの立ち上げに参画し、アイレットを経てDatadogに加わった[118]。2019年11月12日には日本法人の設立を発表した。同社の発表では英語表記をDatadog Japan GKとしており、日本語表記はDatadog Japan合同会社である[11][120]。設立の発表は2018年のオフィス開設を受けたものと位置づけられた。あわせて明治記念館で初の年次サミットが開かれ、既存顧客5社が自社での利用について講演した。当時のアジア太平洋・日本担当バイスプレジデントはAndy Clarkであった[11]。2024年2月1日付で正井拓己が日本法人の社長兼日本担当ゼネラルマネージャーに就任した。正井はPivotalの日本法人代表、ワークデイの日本法人社長などを歴任した[128][120]。

国内の拠点は東京と大阪にある。東京のデータセンター(前述)により、日本国内でデータを保存・処理できるサイトの提供が始まった[89]。2023年8月には組織の拡大に伴い新たな東京オフィスを開設した。あわせて日本語による技術文書と製品サポートを用意し、国内にサポートチームを置いてチャットによる対応も始めた[119]。公式の技術文書は日本語版が提供されている[10]。2024年2月には認定プログラムを日本語で提供することを発表した[119][117]。2025年4月1日には大阪に事業所を開設した。大阪事業所は西日本地域の営業とカスタマーサポートの拠点で、同社によれば日本国内で東京以外に設けた初めての拠点である[122]。

事業規模と評価[編集]

同社の説明によれば、日本市場では2020年から2023年までの3年間、対前年比売上成長率は平均43パーセント増、社員数は平均46パーセント増であった[119]。同じく同社の説明では、日本でのサブスクリプション売上は2024年末時点で2021年比の2倍になった[117][129]。日本単独の売上高は開示されていない(前述)[1]。市場シェアについて、同社は富士キメラ総研の市場調査『ソフトウェアビジネス新市場』の運用管理・オブザーバビリティ部門で2年連続の1位になったと発表している。同社の発表では、シェアは2024年度が34.7パーセント、2025年度が52.3パーセントである。同調査は市場規模を2024年度に946億円、2025年度に約1,100億円としている[124][13]。

パートナー[編集]

国内では販売代理店やシステムインテグレーターとの協業を進めている。2025年3月時点で最上位のゴールドティアパートナーは4社であった。伊藤忠テクノソリューションズ、アイレット、京セラコミュニケーションシステム、キンドリルジャパンである[117]。2025年3月24日には、NTTデータおよび東京エレクトロン デバイスとのパートナー契約の締結を発表した。NTTデータとの契約では、NTTデータのSRE支援サービスにDatadogを組み込むことなどを定めた[117][12]。2024年6月にはクラスメソッドと戦略的パートナーシップを結んだ。クラスメソッドの発表によれば、クラスメソッドはAWS Marketplaceのプライベートオファーを通じてDatadog製品の取り扱いを始めた。クラスメソッドは、オブザーバビリティ製品をこの経路で扱うのは国内で初めてとしている[121]。キンドリルジャパンとの協業強化では、営業・技術支援・マーケティングでの連携と、技術者育成を目的とした認定プログラムの策定を掲げた[127]。同社は2025年から、国内のパートナー企業を表彰する「Datadog Japan Partner Award」を実施しており、2026年にも第2回を開いた[130][131]。

クラウド事業者との関係では、2024年にOracle Cloud Infrastructureの正式サポートが加わった。これにより、AWS、Google Cloud、Microsoft Azureとあわせて主要4クラウドを対象とした[117][129]。2026年第1四半期には、AIの研究を行うSakana AIとの提携を発表した。同社の発表によれば、研究、製品開発、市場展開の各面で協力する。当初は日本の大企業を対象とし、その後世界へ広げるとしている[6]。

導入事例[編集]

国内の導入事例は、鉄道、金融、エネルギー、インターネットサービスなど複数の業種で報道されている。西日本旅客鉄道の情報システム子会社JR西日本ITソリューションズは、監視ソフトウェアの保守終了を契機に2024年2月にDatadogを導入し、外形監視を始めた。2025年9月には「JRおでかけネット」の一部システムをAWSへ移行したのに合わせ、AWS環境の監視も一元化した。IT Leadersの取材記事によれば、画面操作による監視設定で、監視業務を担える人員が2人から15人に増えた。Amazon S3への大量のリクエストによる費用をAPMで分析し、利用費を約20パーセント削減した例も報告されている[132]。SBI証券は2,000以上の監視リソースをDatadogに集約し、インシデントの解決時間を60パーセント短縮したとASCII.jpが報じた[133]。住信SBIネット銀行は、勘定系システムをAWS上のクラウド環境へ移行するにあたりDatadogのプラットフォームを採用した。同社の発表によれば、目的はクラウド環境での勘定系システムの継続的な安定稼働である[125]。

東京ガスは会員サービス「myTOKYOGAS」の基盤をMicrosoft Azureへ移行して刷新する際にDatadogを導入した。従来のZabbixによる死活監視に代えるもので、グループのIT会社である東京ガスiネットが監視体制を刷新した。ZDNET Japanの報道によれば、従来はサーバー、ミドルウェア、通信機器が別々の道具で管理されていた。ログの形式や時間軸が揃っていなかったため、原因の特定に時間がかかっていたという。同記事は、データを国内法に準拠して管理する必要があり、Datadogが日本国内にリージョンを備えていたことが採用の決め手になったと伝えている[134]。ウォンテッドリーは2014年のコンテナ導入期からDatadogを利用している。ZDNET Japanのインタビューによれば、約50人のエンジニアが週約100回のリリースを行う体制の監視基盤となっている[135]。DMM.comは動画配信サービス「DMM TV」の運用基盤をオンプレミスからGoogle Cloudへ再構築するにあたり、Datadogを採用した。ZDNET Japanによれば、DMM.comはゲームや会員向けの基盤など複数のサービスで従来からDatadogを利用していた。DMM TVではAPMとRUMを含めて監視の範囲を広げ、CPU約820コア規模の配信基盤を約160人の担当者が横断的に利用している[136]。

イベント[編集]

同社は日本で利用者向けの年次イベントを開いている。2025年6月4日には、同社が日本での中心的な催しと位置づける「Datadog Live Tokyo 2025」を開催した。利用企業やパートナー企業の担当者が登壇した[137]。同社は2026年5月20日にも、東京国際フォーラムで「Datadog Live Tokyo」を開催すると発表した。告知には利用企業の登壇が記載された[126]。

脚注[編集]

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外部リンク[編集]

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