末木文美士

末木 文美士（すえき ふみお、1949年 - ）は、仏教学者。東京大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授。専門は仏教学、日本思想史、比較思想。ぶんまお名義の著書がある。

経歴

山梨県甲府市生まれ。父は論理学者の末木剛博、弟は中国哲学者の末木恭彦。山梨県立甲府第一高等学校卒業。1973年東京大学文学部印度哲学専修課程卒業。学部で中村元からインド哲学を学ぶ。1978年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。大学院では田村芳朗のもとで日本仏教を専攻。1978年東京大学文学部助手。1981年財団法人東方研究会専任研究員。1986年東京大学文学部助教授。1993年「平安初期仏教思想史研究 : 安然の思想形成を中心として」で博士（文学）（東京大学）。1995年東京大学大学院人文社会系研究科教授。2009年国際日本文化研究センター教授。総合研究大学院大学文化科学研究科国際日本研究専攻教授併任。2015年国際日本文化研究センター名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授。

2000年に『平安初期仏教思想の研究――安然の思想形成を中心として』（春秋社、1995年）で鈴木学術財団特別賞（日本印度学仏教学会）を受賞。2006年に第16回中村元東方学術賞（公益財団法人中村元東方研究所）を受賞。

著書に黒田俊雄の顕密体制論や批判仏教の立場からの本覚思想批判を批判して鎌倉仏教観を示した『鎌倉仏教形成論――思想史の立場から』（法藏館、1998年）、日本仏教の通史である『日本仏教史――思想史としてのアプローチ』（新潮社、1992年／新潮文庫、1996年）、日本仏教の本質に迫った『日本仏教入門』（KADOKAWA［角川選書］、2014年）などがある。

著書

単著（単行本）

• 『日本仏教史――思想史としてのアプローチ』（新潮社、1992年）
• 『日本仏教思想史論考』（大蔵出版、1993年）
• 『平安初期仏教思想の研究――安然の思想形成を中心として』（春秋社、1995年、オンデマンド版2006年）
• 『仏教―言葉の思想史』（岩波書店、1996年）
• 『仏教思想』（放送大学教育振興会［放送大学教材］、1997年、改訂版2001年）
• 『鎌倉仏教形成論――思想史の立場から』（法藏館、1998年）
• 『『碧巌録』を読む』（岩波書店［岩波セミナーブックス］、1998年）
• 『解体する言葉と世界――仏教からの挑戦』（岩波書店、1998年、岩波オンデマンドブックス2014年）
• 『中世の神と仏』（山川出版社［日本史リブレット］、2003年）
• 『明治思想家論――近代日本の思想・再考I』（トランスビュー、2004年）
• 『近代日本と仏教――近代日本の思想・再考Ⅱ』（トランスビュー、2004年）
• 『日本仏教の可能性――平成十六年度教化活動委員会研修会講義録』（相国寺教化活動委員会編、相国寺教化活動委員会、2005年）
• 『思想としての仏教入門』（トランスビュー、2006年）※『仏教思想』（放送大学教育振興会［放送大学教材］、1997年）の改題・改訂。
• 『日本仏教の可能性』（春秋社、2006年）
• 『他者／死者／私――哲学と宗教のレッスン』（岩波書店、2007年）
• 『鎌倉仏教展開論』（トランスビュー、2008年）
• 『ボクの哲学モドキ Ⅰ 1999-2002――生きにくい世界でボクを襲う危ない性と死の誘惑』（ぶんまお著、末木文美士編、トランスビュー、2009年）
• 『ボクの哲学モドキ Ⅱ 2003-2008――戦争に向かう世界でボクは迷いながら愛と命を考える』（ぶんまお著、末木文美士編、トランスビュー、2009年）
• 『仏典をよむ――死からはじまる仏教史』（新潮社、2009年）
• 『近世の仏教――華ひらく思想と文化』（吉川弘文館［歴史文化ライブラリー］、2010年）
• 『他者・死者たちの近代――近代日本の思想・再考Ⅲ』（トランスビュー、2010年）
• 『哲学の現場　日本で考えるということ』（トランスビュー、2012年）
• 『浄土思想論』（春秋社、2013年）
• 『日本仏教入門』（KADOKAWA［角川選書］、2014年）
• 『草木成仏の思想――安然と日本人の自然観』（サンガ、2015年／サンガ新社、2024年）
• 『親鸞――主上臣下、法に背』（ミネルヴァ書房［ミネルヴァ日本評伝選］、2016年）
• 『日本の思想をよむ』（KADOKAWA、2016年）
• 『日本思想史の射程』（敬文舎［日本歴史 私の最新講義］、2017年）
• 『思想としての近代仏教』（中央公論新社［中公選書］、2017年）
• 『仏教からよむ古典文学』（KADOKAWA［角川選書］、2018年）
• 『冥顕の哲学1 死者と菩薩の倫理学』（ぷねうま舎、2018年）
• 『冥顕の哲学2 いま日本から興す哲学』（ぷねうま舎、2019年）
• 『禅の中世――仏教史の再構築』（臨川書店、2022年）
• 『絶望でなく希望を――明日を生きるための哲学』（未来哲学研究所［未来哲学双書］、発売：ぷねうま舎、2023年）
• 『近世思想と仏教』（法藏館、2023年）
• 『日本の近代思想を読みなおす2 日本』（東京大学出版会、2024年）
• 『霊性の日本思想――境界を越えて結びあう』（岩波書店、2025年）
• 『道元 実践の哲学――身心論から読み解く『正法眼蔵』』（KADOKAWA［角川選書］、2025年）

単著（新書）

• 『日蓮入門――現世を撃つ思想』（筑摩書房［ちくま新書］、2000年）
• 『仏教vs.倫理』（筑摩書房［ちくま新書］、2006年）
• 『日本宗教史』（岩波書店［岩波新書］、2006年）
• 『現代仏教論』（新潮社［新潮新書］、2012年）
• 『日本思想史』（岩波書店［岩波新書］、2020年）
• 『死者と霊性の哲学――ポスト近代を生き抜く仏教と神智学の智慧』（朝日新聞出版［朝日新書］、2022年）

単著（文庫本）

• 『日本仏教史――思想史としてのアプローチ』（新潮社［新潮文庫］、1996年）※新潮社 1992年の文庫化。
• 『増補 日蓮入門――現世を撃つ思想』（筑摩書房［ちくま学芸文庫］、2010年）※ちくま新書 2000年刊の文庫化。
• 『日本仏教の可能性――現代思想としての冒険』（新潮社［新潮文庫］、2011年）※『日本仏教の可能性』（春秋社、2006年）の文庫化。
• 『反・仏教学――仏教vs.倫理』（筑摩書房［ちくま学芸文庫］、2013年）※『仏教vs.倫理』（ちくま新書、2006年）の文庫化。
• 『仏典をよむ――死からはじまる仏教史』（新潮社［新潮文庫］、2014年）※新潮社 2009年刊の文庫化。
• 『草木成仏の思想――安然と日本人の自然観』（サンガ［サンガ文庫］、2017年）※サンガ 2015年刊の文庫化。
• 『『碧巌録』を読む』（岩波書店［岩波現代文庫］、2018年）※岩波書店［岩波セミナーブックス］ 1998年刊の文庫化。
• 『日本の思想をよむ』（KADOKAWA［角川文庫］、2020年）※KADOKAWA 2016年刊の文庫化。
• 『増補 仏典をよむ――死からはじまる仏教史』（KADOKAWA［角川文庫］、2021年）※新潮文庫 2014年刊の増補版。
• 『日本の近代仏教――思想と歴史』（講談社［講談社学術文庫］、2022年）※『思想としての近代仏教』（中央公論新社［中公選書］、2017年）の文庫化。一部割愛あり。

共著

• 『浄土仏教の思想 第2巻 観無量寿経 般舟三昧経』（梶山雄一共著、講談社、1992年）
• 『観心略要集の新研究』（西村冏紹共著、百華苑、1992年）
• 『現代中国の仏教』（曹章祺共著、平河出版社、1996年）
• 『著名人が語る〈知の最前線〉2 古典への誘い』（中野達、佐藤研、鎌田繁共著、リブリオ出版、2007年）
• 『新版 古寺巡礼奈良 10 薬師寺』（中田定観共著、淡交社、2011年）
• 『カラー版 地獄絵の日本史』（小栗栖健治ほか共著、宝島社［宝島社新書］、2021年）
• 『表現の自由と学問の自由――日本学術会議問題の背景』（寄川条路編、稲正樹、榎本文雄、島崎隆、不破茂、山田省三、渡辺恒夫共著、社会評論社、2021年）
• 『決定版 明治学院大学事件――授業盗聴と教科書検閲』（寄川条路編、小林節、丹羽徹、志田陽子、山田省三、幸津國生、小川仁志、福吉勝男、宇波彰、島崎隆共著、社会評論社、2024年）

編著

• 『禅と思想』（編集・解説、ぺりかん社［叢書禅と日本文化］、1997年）
• 『現代語訳 碧巌録（上・中・下）』（編、『碧巌録』研究会訳、岩波書店、2001-2003年、岩波オンデマンドブックス2018年）
• 『瀧田文庫目録――東京大学大学院人文社会系研究科インド哲学仏教学研究室所蔵』（編、東京大学大学院人文社会系研究科インド哲学仏教学研究室、2001年）
• 『思想の身体 愛の巻』（編著、春秋社、2006年）
• 『現代と仏教――いま、仏教が問うもの、問われるもの』（編、佼成出版社、2006年）
• 『近代と仏教――第41回国際研究集会』（編、国際日本文化研究センター［国際シンポジウム］、2012年）
• 『日本をつくった名僧一〇〇人』（編、平凡社、2012年）
• 『中世禅籍叢刊 第1巻 栄西集』（編集責任、臨川書店、2013年）
• 『妙貞問答を読む――ハビアンの仏教批判』（編、法藏館、2014年）
• 『比較思想から見た日本仏教』（編、山喜房佛書林、2015年）
• 『死者と霊性――近代を問い直す』（編、岩波書店［岩波新書］、2021年）
• 『日本仏教再入門』（編著、頼住光子、大谷栄一著、講談社［講談社学術文庫］、2024年）※『日本仏教を捉え直す』（頼住光子共編著、放送大学教育振興会［放送大学教材］、2018年）の文庫化。
• 『宗教の世界史4 仏教の歴史2 東アジア』（編、山川出版社、2018年）

共編著

• 『南嶽思大禪師立誓願文索引――六朝隋唐宗教・思想資料』（菅野博史共編、東京大學東洋文化研究所附屬東洋學文獻センター［東洋学文献センター叢刊］、1988年）
• 『岩波 仏教辞典』（中村元、福永光司、田村芳朗、今野達共編、岩波書店、1989年、第2版2002年、第3版2023年）
• 『岩波 哲学・思想辞典』（廣松渉、子安宣邦、三島憲一、宮本久雄、佐々木力、野家啓一共同編集委員、岩波書店、1998年）
• 『現代日本と仏教（全4巻）』（池田英俊、木場明志、芹川博通、田中教照共編、小林孝輔、古田紹欽、峰島旭雄、吉田久一監修、平凡社、2000年）
• 『日本思想史辞典』（桂島宣弘、佐藤弘夫、白山芳太郎、高橋文博、辻本雅史、中村生雄、宮川康子、吉田忠共編、子安宣邦監修、ぺりかん社、2001年）
• 『非・西欧の視座』（中島隆博共編、大明堂［宝積比較宗教・文化叢書］、2001年）
• 『日本仏教34の鍵』（大久保良峻、佐藤弘夫、林淳、松尾剛次共編著、春秋社、2003年）
• 『現代戒想――出家と在家のはざまで』（多田孝文共編、仏教タイムス社、2004年）
• 『日本文化研究――神仏習合と神国思想』（高木昭作共編著、放送大学教育振興会［放送大学大学院教材］、2005年）
• 『名僧たちの教え――日本仏教の世界』（山折哲雄共編著、朝日新聞社［朝日選書］、2005年）
• 『新アジア仏教史（11-15）日本（1-5）』（編集委員、松尾剛次、佐藤弘夫、林淳、大久保良峻編集協力、佼成出版社、2010-2011年）
• 『シリーズ大乗仏教（全10巻）』（桂紹隆、斎藤明、下田正弘共編、高崎直道監修、春秋社、2011-2014年）
• 『日本思想史講座（全5巻）』（苅部直、黒住真、佐藤弘夫、田尻祐一郎共同編集委員、ぺりかん社、2012-2015年）
• 『岩波講座 日本の思想（全8巻）』（苅部直、黒住真、佐藤弘夫共同編集委員、岩波書店、2013-2014年）
• 『中世禅籍叢刊（全12巻+別巻）』（中世禅籍叢刊編集委員会編、阿部泰郎、石井修道、高橋秀榮、道津綾乃共同編集委員、臨川書店、2013-2019年）
• 『ブッダの変貌――交錯する近代仏教』（林淳、吉永進一、大谷栄一共編、人間文化研究機構国際日本文化研究センター［日文研叢書］、製作：法藏館、2014年／法藏館［日文研叢書］、2014年）
• 『仏教の事典』（下田正弘、堀内伸二共編、朝倉書店、2014年）
• 『シリーズ日蓮 5 現代世界と日蓮』（上杉清文共同責任編集、春秋社、2015年）
• 『栄西撰『改偏教主決』『教時義勘文』(真福寺大須文庫所蔵)訓注』（米田真理子、和田有希子、牧野淳司共編、神戸学院大学、2015年）
• 『中世禅籍叢刊 （第4巻・第11巻） 聖一派（［正］・続）』（阿部泰郎共同編集責任、臨川書店、2016-2017年）
• 『中世禅籍叢刊 第7巻 禅教交渉論』（高橋秀榮共同編集責任、臨川書店、2016年）
• 『日本仏教を捉え直す』（頼住光子共編著、放送大学教育振興会［放送大学教材］、2018年）
• 『中世禅籍叢刊 別巻 中世禅への新視角――『中世禅籍叢刊』が開く世界』（阿部泰郎共同編集責任、臨川書店、2019年）
• 『近代日本宗教史（全6巻）』（島薗進、大谷栄一、西村明共編、春秋社、2020-2021年）
• 『日本の近代思想を読みなおす（全15巻）』（中島隆博共同責任編集、東京大学出版会、2025年-刊行中）
• 『近世仏教資料叢書 第2巻 仏伝と教学』（前川健一共編、臨川書店、2024年）

訳書

• フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト『シーボルト『日本』 第4巻』（中井晶夫、妹尾守雄、石井禎一共訳、雄松堂書店、1978年）
• フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト『シーボルト『日本』 図録第3巻』（石山禎一、八城圀衛共訳、雄松堂書店、1979年）
• 『大乗仏典 中国・日本篇 第19巻 安然 源信』（訳、中央公論社、1991年）
• 『碧巌録（上・中・下）』（入矢義高、溝口雄三、伊藤文生共訳注、岩波書店［岩波文庫］、1992-1996年）
• 『現代語訳「阿含経典」（全4巻）長阿含経』（丘山新、神塚淑子、辛嶋静志、菅野博史、引田弘道、松村巧共訳注、平河出版社、1995-2005年）
• 『真理の偈と物語――『法句譬喩経』現代語訳（上・下）』（神塚淑子、菅野博史、松村巧共訳註、榎本文雄、引田弘道 偈文の解釈研究、大蔵出版、2001年）
• Joseph M. Kitagawa, Mark D. Cumming編『エリアーデ仏教事典』（木村清孝、竹村牧男共編訳、法藏館、2005年）
• Damien Keown著、豊嶋悠吾編訳『オックスフォード仏教辞典』（監訳、朝倉書店、2016年）
• ベルナール・フォール『仏教の仮面を剥ぐ』（金子奈央共訳、トランスビュー、2016年）

校注

• 『神道大系 論説編 三 天台神道（上）』（田村芳朗共校注、神道大系編纂会、1990年）
• 『神道大系 論説編 四 天台神道（下）』（水上文義、佐藤真人共校注、神道大系編纂会、1993年）
• 『江戸漢詩選 5 僧門　独菴玄光・売茶翁・大潮元皓・大典顕常』（堀川貴司共注、岩波書店、1996年）
• 『續神道大系 論説編 習合神道』（伊藤聡、門屋温、原克昭、渡辺匡一共校注、神道大系編纂会、2006年）

監修

• PHP研究所編『仏教――ブッダの教えを「超整理」!』（PHP研究所［雑学3分間ビジュアル図解シリーズ］、2005年）
• 『名僧でたどる日本の仏教』（平凡社［別冊太陽 日本のこころ］、2011年）
• 榎本渉、亀山隆彦、米田真理子編『中世禅の知』（臨川書店、2021年）
• 引野亨輔編『近世仏教資料叢書 第1巻 通俗仏書の出版と民衆仏教』（引野亨輔共同監修、臨川書店、2024年）
• 曽根原理、W.J. ボート、M.M.E. バウンステルス編『近世仏教資料叢書 第3巻 国家を守護する仏神』（引野亨輔共同監修、臨川書店、2025年）

外部リンク

• bunmaoのブログ
• researchmap
• KAKEN