松尾剛次
松尾 剛次(まつお けんじ、1954年 - )は、歴史学者。山形大学名誉教授、山形大学都市・地域学研究所名誉所長[1]。専門は日本中世史、宗教社会学[2]。
経歴[編集]
長崎県南高来郡愛野町(現・雲仙市)生まれ。1977年東京大学文学部国史学科卒業。1981年同大学大学院人文科学研究科国史学専門課程博士課程退学。1981年山形大学教養部専任講師、1985年助教授[3]。1994年「鎌倉新仏教の宗教史学的考察 : 入門儀礼システムと祖師神話」で博士(文学)(東京大学)[4]。1996年山形大学人文学部助教授、1998年教授[3]。2007年より山形大学都市・地域学研究所所長を兼務[5]。2019年山形大学名誉教授[1]。この間、プリンストン大学東洋学部客員研究員(1996-1997年)、北京日本学研究センター客員教授(2000年)、ロンドン大学アジア・アフリカ研究所(SOAS)客員教授(2003年)[3]、東京大学COE特任教授(2004年)、ニューヨーク州立大学オーバニー校東アジア研究学部客員教授(2005-2006年)などを兼務[3]。
日本仏教史を専門とし、特に鎌倉仏教を研究する[2]。大学時代は中世史を専攻していたが、4年生のときに忍性が起こした奇跡の話を知って仏教に関心を持った[6]。当初は戒律に注目して戒律復興運動や救済活動を行った叡尊・忍性らの教団を研究した[2]。著書に『鎌倉新仏教の成立――入門儀礼と祖師神話』(吉川弘文館、1988年)、『破戒と男色の仏教史』(平凡社新書、2008年)、『葬式仏教の誕生――中世の仏教革命』(平凡社新書、2011年)などがある。『鎌倉新仏教の成立』において、黒田俊雄の顕密体制論を批判し、宗教は政治・経済と区分してそれ自体として考察すべきだと主張した。そのような観点から鎌倉仏教の特色は個人救済にあるとし、新仏教の担い手を「遁世僧」と規定した[7]。
著書[編集]
単著(単行本)[編集]
- 『鎌倉新仏教の成立――入門儀礼と祖師神話』(吉川弘文館[中世史研究選書]、1988年、新版1998年)
- 『中世都市鎌倉の風景』(吉川弘文館、1993年)
- 『勧進と破戒の中世史――中世仏教の実相』(吉川弘文館、1995年、オンデマンド版2023年)
- 『救済の思想――叡尊教団と鎌倉新仏教』(角川書店[角川選書]、1996年)
- 『中世の都市と非人』(法藏館、1998年/法藏館[法藏館文庫]、2024年)
- 『日本中世の禅と律』(吉川弘文館、2003年)
- 『忍性――慈悲ニ過ギタ』(ミネルヴァ書房[ミネルヴァ日本評伝選]、2004年)
- 『鎌倉古寺を歩く――宗教都市の風景』(吉川弘文館[歴史文化ライブラリー]、2005年、オンデマンド版2019年)
- 『山をおりた親鸞 都をすてた道元――中世の都市と遁世』(法藏館、2009年)
- 『親鸞再考――僧にあらず、俗にあらず』(NHK出版[NHKブックス]、2010年)
- 『中世律宗と死の文化』(吉川弘文館、2010年、オンデマンド版2023年)
- 『家康に天下を獲らせた男 最上義光』(柏書房、2016年)
- 『中世叡尊教団の全国的展開』(法藏館、2017年)
- 『鎌倉新仏教論と叡尊教団』(法藏館、2019年)
- 『最上氏三代――民のくたびれに罷り成り候』(ミネルヴァ書房[ミネルヴァ日本評伝選]、2021年)
単著(新書)[編集]
- 『鎌倉新仏教の誕生――勧進・穢れ・破戒の中世』(講談社[講談社現代新書]、1995年)
- 『中世都市鎌倉を歩く――源頼朝から上杉謙信まで』(中央公論社[中公新書]、1997年)
- 『仏教入門』(岩波書店[岩波ジュニア新書]、1999年)
- 『太平記――鎮魂と救済の史書』(中央公論社[中公新書]、2001年)
- 『「お坊さん」の日本史』(日本放送出版協会[生活人新書]、2002年)
- 『破戒と男色の仏教史』(平凡社[平凡社新書]、2008年/平凡社[平凡社ライブラリー]、2023年)
- 『葬式仏教の誕生――中世の仏教革命』(平凡社[平凡社新書]、2011年)
- 『知られざる親鸞』(平凡社[平凡社新書]、2012年)
- 『日本仏教史入門――釈迦の教えから新宗教まで』(平凡社[平凡社新書]、2022年)
- 『日蓮――「闘う仏教者」の実像』(中央公論新社[中公新書]、2023年)
編著[編集]
- 『日本仏教34の鍵』(大久保良峻、佐藤弘夫、末木文美士、林淳共編著、春秋社、2003年)
- 『持戒の聖者 叡尊・忍性』(編、吉川弘文館[日本の名僧]、2004年)
- 『思想の身体 戒の巻』(編著、春秋社、2006年)
- 『新アジア仏教史(11-15)日本(1-5)』(末木文美士編集委員、松尾剛次、佐藤弘夫、林淳、大久保良峻編集協力、佼成出版社、2010-2011年)
出典[編集]
- ↑ a b researchmap
- ↑ a b c 『日蓮』/松尾剛次インタビュー Web中公新書|中央公論新社、2024年4月30日
- ↑ a b c d 自己紹介 松尾研究室
- ↑ 鎌倉新仏教の宗教史学的考察 : 入門儀礼システムと祖師神話 CiNii Research
- ↑ 山形大学都市・地域学研究所 所長 松尾 剛次 氏 やまコミ、2011年1月14日
- ↑ 時代とともに変る「仏教=葬式」のイメージ 松尾 剛次 氏 アットホーム株式会社大学教授対談シリーズ 「athomeTIME」2012年2月号
- ↑ 佐藤弘夫「中世仏教研究と顕密体制論(PDF)」『日本思想史学』第33号、2001年
関連文献[編集]
- 平雅行「松尾剛次著『鎌倉新仏教の成立 : 入門儀礼と祖師神話』(中世史研究選書)(PDF)」(『史学雑誌』99巻3号、1990年)
- 追塩千尋「松尾剛次著『勧進と破戒の中世史 : 中世仏教の実相』, 吉川弘文館, 一九九五・八刊, A5, 四二四頁, 七八二八円(PDF)」(『史学雑誌』105巻9号、1996年)
- 佐藤もな「書評と紹介 松尾剛次著『鎌倉新仏教論と叡尊教団』(PDF)」(『宗教研究』95巻2輯、2021年)