軌間可変

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軌間可変とは異なる線路幅の鉄道路線間で列車を運行するための設備、装置、システムのことである。

概要[編集]

世界中では、イギリスフランスが採用した標準軌が、鉄軌道の一般的な線路幅として採用されているが、政治的な理由(ロシアスペインは侵攻してきたフランスを恐れて別の軌間を採用したなど)や地理的理由(山岳の多い日本)などで異なった線路幅で鉄道を建設する国が中にはそれなりに存在していた。
一方、時代が経ち、自動車飛行機が発達するにつれ、そのような政治的理由はなくなり多国家間の国際列車を運行しようとなったとき、または観光誘致のために異なる軌間間の列車の直通をしようとしたとき、線路幅の障壁があった。そこで、軌間可変という概念が生まれた。

歴史[編集]

かつては軌間が異なる国家間の国境駅では乗り換えするのが当たり前だったが、1953年ソ連が東欧の標準軌を採用している諸国へ向けて国際列車を運行するために世界初の軌間可変形車両である客車を開発した。この客車はブレスト中央駅にある台車交換場で台車を交換するというものである。ただしRICに対応していなかったため実質的な運用開始は1959年である。その後、ソ連、続いてロシアは中欧西欧中国で運用できるように軌間可変形客車の製造を行った。

時代が進むにつれて、台車交換場無しで線路間を移動できるようにフリーゲージトレインの開発が始まった。日本では試験段階で終了したが、スペインやロシアなどでは実用的となっている。→タルゴ列車

軌間可変の方法[編集]

台車交換[編集]

軌間可変における原始的なやり方。台車交換場と言われる施設で、一旦車体を持ち上げその間に台車を交換するというもの。台車交換場の線路は大抵の場合、4線軌条となる。

車軸変換[編集]

スペインやスイスで採用される方式。鉄道車両の台車が、車軸が横に移動でき異なる軌間でも走行が可能な特殊な台車になっている。この特殊な台車は誘導レールに沿ってゆっくりと走行し軌間可変レールを通る時に車軸が横に移動する。

軌間可変の例[編集]

ロシア(旧ソ連諸国)[編集]

標準軌に次いで2番目に広いネットワークを持つロシア軌間エリアでは、ヨーロッパ方面、中国、北朝鮮方面へ国際列車を運行しており、台車交換またはフリーゲージトレインを運行している。現在では運休中だが、モスクワ-ベルリン間のユーロナイトではフリーゲージトレインであるタルゴ列車が運用されていた。他のパリプラハウィーンニース方面の列車には軌間可変形客車が使用されていた。現在では中国、北朝鮮方面への列車に軌間可変形客車が用いられている。

また他にもウクライナ-オーストリア・ハンガリー間、ルーマニア-モルドバ間、中国-カザフスタン間、中国-モンゴル-ロシア間などの列車は台車交換を行う。

アゼルバイジャン・ジョージア・トルコ[編集]

現在計画中のバクー=トビリシ=カルス鉄道の特にジョージア-トルコ間において、ジョージアはロシア軌間、トルコは標準軌と軌間が異なる。将来的にバクー-トビリシ-カルス間の国際列車を運行するとなると台車交換をする必要がある。そこで、それを見据えてアゼルバイジャン鉄道シュタドラー社からフリーゲージトレインを発注・導入した。導入しただけであって、軌間可変における運用はまだである。アハルカラキス・サエルタショリソ・ルキニグジス・サドグリ駅に軌間可変レールが設置される予定である。(もしくは完成している可能性はある。)

スペイン[編集]

国内にTGVと同規格の標準軌(高速線)とイベリア軌間(スペインにおける一般的な軌間)が存在するスペインでは高速線を介して地方へ運行できるようにフリーゲージトレインのタルゴ列車が運行される。高速線と在来線の短絡線では専用の軌間可変レールがある。
高速線開通前は、西仏国境で軌間可変レールを通過する1軸客車の国際列車『カタラン・タルゴ』が運行されていた。

→詳しくはスペインにおける軌間可変を参照。

スイス[編集]

国内に多数の狭軌鉄道を有するスイスでは主に観光列車にフリーゲージトレインが導入されている。→ゴールデン・パス急行

日本[編集]

上記のスペインのように新幹線と貨物輸送の多い在来線を行き来し、大都市と地方を結べるようにフリーゲージトレインが運行できるよう計画・実験が行われていたが、新在直通運転実現には至らなかった。有名な話だが、新八代駅にはフリーゲージトレインの実験が行われていた遺構がある。

現在は、近鉄橿原線吉野線との直通で構想されている。

ポーランド・ドイツ[編集]

ポーランド国鉄ドイツ鉄道は共同で軌間可変システムを備えたSUW 2000という台車を開発した。特にポーランドの東部にはロシア軌間の路線が少しあり、台車交換に時間がかかっていたので、軌間可変台車を開発した。主に東部のロシア軌間線向けの列車、リトアニア方面、ウクライナ方面への国際列車、貨物列車の台車にSUW 2000が装備される。

貨物列車[編集]

軌間が異なるエリアをまたぐ貨物列車には基本的に軌間可変機能は特にない。それは、多くの場合国境駅で貨物の積み替えを行う方が効率がいいからである。ただし輸送密度の高い路線では軌間可変を行う場合もある。

将来[編集]

中国-パキスタン間、上記のジョージア-トルコ間など将来的に軌間可変が用いられる可能性のあるところがある。

関連項目[編集]