注意欠陥・多動性障害

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注意欠陥・多動性障害
別名 注意欠陥障害、多動性障害
診療科 精神医学, 児童精神医学
症状 #症状を参照。
定型的な発症時期 12歳未満
原因 #原因を参照。
診断法 症状に基づく
医薬品 精神刺激薬(メチルフェニデート、リスデキサンフェタミン)、α2α受容体アゴニスト(グアンファシン)、アトモキセチン
治療 #治療を参照。
有病率 小児で5%、成人で2.5%
ICD-11 6A05
ICD-10 F90

注意欠陥・多動性障害(ちゅういけっかん・たどうせいしょうがい、:Attention deficit hyperactivity disorder 、ADHD)とは、日本アメリカでは扱いが異なる事で話題になる発達障害の一つである。

概要[編集]

発達障害としてアスペルガー症候群ともよく一緒くたにされるような事もあるらしいが、その反応特性には差が見られ、配慮が必要になる模様である。
先天性であるとされ、脳の機能のバランスが定型発達とは異なるとされる。実際、遺伝率は約76%と高いが、環境的要因には後天的な環境も含まれている。詳しくは#原因を参照。
また。定型発達人間とは違う物の見方が出来る等のその特性ならではの長所もある。
トーマス・エジソンは典型的なADHDで、[1]学校を出入り禁止になるが、電球や蓄音機などの大発明をすることになるのである。
DSM-5では、12歳以前に発症すると定義されており、これが成人ADHDの重要な診断基準であるが、小児期ADHDと成人ADHDは異なる経過を持つ症候群だと示唆した研究もある。[2]
診断は問診を中心に行われ、成人期のADHD自己記入式症状チェックリストやADHD Rating Scale-IVなどといった評価尺度が補助的に使用される。
成人まで診断基準を満たすのは、約30%[3]程度といわれているが、約90%に症状が残る。[4]ともいわれる。
有病率は小児で5%、成人で2.5%である。米国では小児では有病率は10%を上回っており、過剰診断の疑いがある。
不注意優勢型[注 1]、多動性・衝動性優勢型[注 2]、混合型[注 3]がある。

診断基準[編集]

統合失調症のような他の精神疾患と同様、ADHDを診断する客観的な検査は存在しない。診断基準については、脳科学辞典の注意欠陥・多動性障害#診断・鑑別診断を参照。

症状[編集]

症状としては、不注意、多動性・衝動性があるが、Cognitive disengagement syndromeでは、多動性(hyperactivity)とは逆に低活動(hypoactivity)となる。
不注意には、注意力の低下のほか、集中力の低下、意欲の低下[注 4]も含まれる。多動性及び衝動性には、多動性、衝動性が含まれる。過集中傾眠などが起きることもある。

以下がADHDにおいて起きる問題の例である。

不注意
  • 注意の持続が難しくなる。ケアレスミスが多くなる。(1a,1b)
  • 作業を放棄し違う作業を始める。(1d)
  • 課題や活動を順序立てることがしばしば困難である。(1e)
  • 意欲が低下する。例えば、ウィキサイトなどの執筆に関しても、新規記事を書いてる途中に飽きてしまうことがあり、すぐに一行記事として新規投稿をしてしまう。そして、忘れた頃にまた、加筆しては、また放棄する。(1f)
  • 書類などを紛失する。(1g)
  • 外的な刺激によって気が散る。(1h)
多動性・衝動性
  • 授業や会議などの場でキョロキョロしたり、じっと椅子に座れなかったりする。また、いきなり立つこともある。じっと椅子に座れないのは、軽度のアカシジアにも似ているが、アカシジアとは全く異なる。(2a,2b)
  • エンジンで動かされるように行動する。(2e)
  • しばしばしゃべりすぎる。失言が多い。(2f)
  • 自分の順番を待つことが困難である。(2g,2h)
  • 他人を妨害する。反社会的行動。(2i)
その他
意欲の低下の一方、自分の好きな作業だけは、没頭し、長時間その作業をすることがある。これは過集中と呼ばれる。
その他の症状としては、傾眠が挙げられ、ある人などは会議中に上司の面前で寝てしまったという話がある。Cognitive disengagement syndrome(CDS)という疾患が提唱されており、傾眠はCDSの症状である。ナルコレプシーとは別だが、小児のADHD患者のうち約3割に脳波異常があり、特にてんかんやナルコレプシーに似た脳波が記録される[5]
とにかく意欲が続かず放置しっぱなしという事が多く、例えば、キュウリが野菜室で溶けていたり、洗濯物が洗濯槽でカビていたりする。
Cognitive disengagement syndromeの症状は、不注意や低活動(hypoactivity)であり、症状はブレインフォグなどと認識されることがある。低活動(hypoactivity)の症状としては思考の貧困[注 5]などがある。CDSがある人々の多くは、ADHD不注意優勢型あるいは特定不能のADHDとして診断されている。

原因[編集]

病態モデルとして、実行機能及び報酬系の障害であるとされる。[6]

遺伝的要因[編集]

遺伝率(遺伝的要因)は74~80%[7]と高いとされる。

環境的要因[編集]

残りは、環境的要因である。環境的要因には、後天的な環境も含まれている。
胎児期の薬物やアルコールおよびタバコの暴露、周産期の問題、外傷性脳損傷は重要な環境要因である。[8][9][10]
外傷性脳損傷を受けた小児の30%以上がADHDを発症する。[11]
食事については、安息香酸ナトリウムとタール色素が危険因子であるとする研究がある。[12][13]そして、砂糖の多いソフトドリンクと多動の相関関係が観察された研究もある。[14]詳しくは、#食品の影響の有無も参照。フードファディズムの影響には留意。
睡眠不足がADHDの増加に大きく関わっているといわれることがある。[15]
妊娠前の肥満、皮膚炎、子癇前症、小児喘息、ビタミンD不足はADHDのリスクを高める。[16]
極端な早産、非常に低い出生体重、ACEs、周生期の鉛への曝露はADHDのリスクを高める。[17][18][19]
妊娠中、出生時、乳幼児期に特定のウイルス(風疹、ヒトヘルペスウイルス3による脳炎、はしか、Enterovirus 71など)に感染することはADHDのリスクを高める。[20]
それら以外には、貧困、教育様式、社会福祉、携帯電話の過剰な使用などが関係している可能性がある[10]

歴史[編集]

1917~1918年のエコノモ脳炎の後遺症として不注意、多動性、衝動性がみられ、脳炎行動障害とされた。ここからの推測で器質性原因による脳損傷児概念が1947年に提唱されたが、脳波やCTスキャンからは何も損傷が見つからなかったため、微細脳損傷そしてさらに微細脳障害へと改名された。微細脳障害概念も原因となる脳機能障害が特定できず次第に使われなくなる。1968年のDSM-IIでは、hyperkinetic reaction of childhood(小児期の多動性反応)が含まれていた。1980年のDSM-IIIで注意欠陥障害が含まれ、1987年のDSM-III-Rで注意欠陥・多動性障害に改名された。ICD-9(1978年)にはHyperkinetic syndrome of childhood(小児期の多動症候群)が含まれ、ICD-10(1993年)のF90,hyperkinetic disorder(多動性障害)となった。ICD-11では注意欠陥・多動性障害である。 jawp:発達障害には1987年に微細脳障害が注意欠陥多動性障害に改められたと記載されているがこれは誤りである。

治療・対処[編集]

とりあえず、脳の機能のバランスが定型発達とは異なるのであれば、他人と比べて評価する手法だと正しく評価できないので、各個人ごとに過去からの成長の度合いを計る評価方法も使った方が良いのかもしれない。
一時的に注意・集中力などを向上させるために、覚醒水準を引き上げる薬として、メチルフェニデート(リタリン、コンサータ)やリスデキサンフェタミン(ビバンセ)のような精神刺激薬が使われる。精神刺激薬ではないものとしては、アトモキセチン(ストラテラ)のような選択的ノルアドレナリン再取り込み剤、グアンファシン(インチュニブ)のようなα2α受容体アゴニストが使われる。薬物療法では、91%が精神刺激薬を含む。
心理療法としては、認知行動療法ソーシャルスキルトレーニングペアレント・トレーニングワーキングメモリ訓練などがある。
精神刺激薬における薬物療法では、16年目では、症状の重症度の低下に結びついておらず、1-2センチの身長の成長の抑制と関連していることが分かった研究[21]があり、薬漬けであるとする強い批判があり、薬物を使用しない治療も模索されている[22]
その一方で、薬物療法は、ADHDに高い有効性があるとする研究もある。[23][24]
精神刺激薬[25]及びグアンファシン[26][27][28][29]は、STPDにおける注意・認知症状にも効果がある。
CDSではメチルフェニデートの効果は不十分であるとされる。[30][31][32][33]

論争(準エスケープ転載)[編集]