交通科学博物館
交通科学博物館は、かつて大阪府大阪市港区に所在した交通に関する博物館である。1962年に日本国有鉄道(国鉄)によって「交通科学館」として開館し、1990年に「交通科学博物館」へ改称された。主に鉄道を中心とした交通技術の発展を紹介する施設であり、西日本旅客鉄道(JR西日本)が所有し、公益財団法人交通文化振興財団が運営していた。2014年に閉館し、収蔵品の多くは京都鉄道博物館へ移管された。
沿革[編集]
1950年代後半、国鉄は東京・神田須田町にあった交通博物館とは異なるコンセプトの博物館を大阪地区に設置する構想を立てた。これは、大阪環状線の全通記念事業の一環として具体化され、弁天町駅の高架下に「交通科学館」として設置された。当初は1961年10月14日(鉄道記念日)の開館を予定していたが、同年9月の第2室戸台風の影響で工事が遅れ、1962年1月21日に開館した。開館当初は「科学館」としての性格が強く、鉄道に関する歴史的展示は控えめであった。展示車両も蒸気機関車1両と客車3両のみであったが、徐々に展示内容が拡充され、鉄道車両の保存展示や歴史的資料の追加が進められた。1978年には0系新幹線やEF52形電気機関車の展示のために増築が行われ、1984年にはDD13形DF50形などのディーゼル機関車を展示する第2展示場が開設された。1987年の国鉄分割民営化に伴い、施設はJR西日本の所有となり、1990年には「交通科学博物館」に改称された。2000年にはイギリス・ヨークの国立鉄道博物館と姉妹提携を締結し、国際的な鉄道文化交流の拠点としての役割も担った。
展示内容[編集]
交通科学博物館は、屋内展示場、屋外展示場、第2展示場の3つの主要展示エリアで構成されていた。屋内展示場では、入口付近にML-500形リニアモーターカーの実物が展示されていたほか、昭和初期の駅舎を再現した「昔の駅」や、車掌ロボット「ポッポ君」が鉄道の歴史を紹介する「ポッポシアター」が設置されていた。特に人気を集めたのが「模型鉄道パノラマ室」であり、幅約17m、奥行き約7m、レール総延長約400mの巨大ジオラマにて、最大7編成の鉄道模型が同時に走行可能であった。屋外展示場には、D51形蒸気機関車、DD13形ディーゼル機関車、DF50形ディーゼル機関車など、実物の鉄道車両が多数展示されていた。また、エアロ・コマンダー680F型小型機やスバル360、三菱500、ダットサン16型セダンなどの自動車や航空機も展示され、交通の多様性を体感できる構成となっていた。
閉館とその後[編集]
施設の老朽化と展示スペースの限界を理由に、交通科学博物館は2014年4月6日をもって閉館した。閉館後、収蔵品の多くは京都市下京区に新設された京都鉄道博物館へ移管され、2016年に開館した新博物館で再展示された。また、一部の車両は岡山県津山市の津山まなびの鉄道館へ移設された。施設跡地は大阪環状線改造プロジェクトの一環として再開発が進められ、2019年には新たな商業施設がオープンしている。閉館に際しては、特別展やセレモニーが開催され、52年間の歴史に幕を下ろした。
来館者数と影響[編集]
最盛期の1980年度には約52万人が来館し、閉館までの累計来館者数は約1,811万人に達した。交通科学博物館は、関西における交通文化の発信拠点として長年親しまれ、特に鉄道ファンや家族連れに人気の施設であった。