バイコヌール宇宙基地
ナビゲーションに移動
検索に移動
バイコヌール宇宙基地(バイコヌールうちゅうきち、カザフ語: Байқоңыр ғарыш айлағы, ロシア語: Космодром Байконур, ラテン文字転写: Baikonur Cosmodrome)は、カザフスタンのクズロルダ州にある世界最古かつ最大級の宇宙基地である。ソビエト連邦時代に建設され、1957年に世界初の人工衛星「スプートニク1号」と、1961年に世界初の有人宇宙飛行「ボストーク1号」を成功させた歴史的な場所として知られる。
現在はロスコスモスがカザフスタン政府からリースして運用しており、ISSへの宇宙飛行士や物資の輸送、各種人工衛星の打ち上げなどに利用されている。
歴史[編集]
バイコヌール宇宙基地の建設は、第二次世界大戦後、冷戦の激化に伴いソビエト連邦がICBMの開発を進める中で計画された。
建設と初期の活動[編集]
- 1955年2月12日:ソビエト連邦閣僚会議は、カザフ・ソビエト社会主義共和国のチュラタム(Tyuratam)近郊に、新たなミサイル試験場「第5科学調査試験場(NIIP-5)」を建設する政令を採択。
- 1955年6月2日:公式に建設が開始される。この日を宇宙基地の創設日としている。
- 1957年5月15日:初のR-7ミサイルの発射実験が行われる。
- 1957年10月4日:世界初の人工衛星「スプートニク1号」を搭載したスプートニクロケットが打ち上げに成功。人類初の宇宙進出を果たす。
- 1957年11月3日:ライカ犬を乗せた「スプートニク2号」が打ち上げられる。
- 1960年10月24日:R-16ミサイルの試験中に発射台で爆発事故が発生。多数の死者を出した(ネデリンの大惨事)。
有人宇宙飛行と宇宙開発競争[編集]
- 1961年4月12日:ユーリイ・ガガーリンを乗せた「ボストーク1号」が打ち上げられ、世界初の有人宇宙飛行を達成。
- 1963年6月16日:ワレンチナ・テレシコワが「ボストーク6号」で打ち上げられ、女性初の宇宙飛行士となる。
- 1966年2月3日:ルナ9号が打ち上げられ、世界初の月面への軟着陸に成功。
- 1969年1月16日:ソユーズ4号とソユーズ5号が宇宙空間でのドッキングに成功。
- 1971年4月19日:世界初の宇宙ステーション「サリュート1号」が打ち上げられる。
- 1975年7月15日:アポロ・ソユーズテスト計画により、ソユーズ19号とアポロのドッキングモジュールが宇宙空間でドッキング。米ソデタントの象徴となった。
ソ連崩壊後[編集]
- 1991年12月26日:ソビエト連邦の崩壊。バイコヌール宇宙基地は、独立したカザフスタン領となる。
- 1994年3月28日:ロシア連邦とカザフスタン政府との間で、バイコヌール宇宙基地のリース契約が締結される。年間1億1500万ドルのリース料で、2050年までロシアが使用する権利を得た。
- 1990年代以降、ISS計画の中心的な打ち上げ拠点の一つとなる。
- 2000年代以降、商用衛星の打ち上げも活発に行われている。
施設[編集]
バイコヌール宇宙基地は、広大な敷地内に複数の発射台、組み立て施設、追跡・管制施設、宇宙飛行士の居住施設などを有している。
- ガガーリン・スタート(Site 1):スプートニク1号とボストーク1号が打ち上げられた歴史的な発射台。現在もソユーズロケットの打ち上げに使用されている。
- Site 31:ソユーズロケットの打ち上げに使用される。
- Site 81、Site 200:プロトンロケットの打ち上げに使用される。
- ミサイル組立試験棟 (MIK):ロケットや宇宙船の組み立て、試験が行われる。
- 追跡ステーション:ロケットや宇宙船の飛行状況を追跡し、管制を行う。
運用と課題[編集]
バイコヌール宇宙基地の運用は、ロスコスモスが行っている。しかし、カザフスタン領内に位置するため、カザフスタン政府との連携が不可欠である。
運用上の課題[編集]
- 環境問題:ロケット打ち上げに伴うデブリやロケット燃料の残骸による環境汚染が問題視されている。
- 安全性:老朽化した施設や設備による事故のリスクが懸念されている。
- 政治的関係:ロシアとカザフスタンの政治的関係が、宇宙基地の運用に影響を与える可能性がある。
今後の展望[編集]
ロシアは、アムール州に新たな宇宙基地「ボストチヌイ宇宙基地」を建設しており、将来的にはバイコヌール宇宙基地での打ち上げを一部縮小する方針を示している。しかし、バイコヌール宇宙基地が持つ歴史的意義と、これまでに蓄積されたインフラやノウハウは依然として重要であり、今後も国際的な宇宙開発において重要な役割を果たすと予想される。
豆知識[編集]
- バイコヌールという名称は、バイコヌール市から約200km離れた場所にある鉱山の町「バイコヌール」に由来している。これは、アメリカ合衆国の情報機関を欺くための意図的な偽装であった。
- ガガーリンが宇宙へ飛び立った発射台は、彼の功績を称え「ガガーリン・スタート」と呼ばれるようになった。
- 宇宙基地は、ロシアがカザフスタン政府からリースしているため、打ち上げの際にはカザフスタンの上空を通過する許可が必要となる。