エースをねらえ! (映画)

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エースをねらえ!』は、山本鈴美香同名漫画を原作とする1979年公開のアニメーション映画。『エースをねらえ! 劇場版』『劇場版 エースをねらえ!』とも。

概要[編集]

1979年9月8日公開。上映時間88分。出﨑統の劇場映画初監督作品[1]。製作は東京ムービー新社(現・トムス・エンタテインメント)。配給は東宝。同時上映は居作昌果監督の『ピーマン80[2]

山本鈴美香の漫画『エースをねらえ!』のアニメ化には、出﨑統監督のテレビシリーズ『エースをねらえ!』(旧エース。1973-1974年)、岡崎稔チーフディレクターのテレビシリーズ『新・エースをねらえ!』(新エース。1978-1979年)、出﨑統監督の本作(1979年)、古瀬登チーフディレクターのOVA『エースをねらえ!2』(1988年)、出﨑統監督のOVA『エースをねらえ!ファイナルステージ』(1989-1990年)の5作がある。『旧エース』は原作が完結していなかったため、原作第1部の最初から中盤までを扱っている。『新エース』と 本作は原作第1部の最初からラストまでを扱っている。3作とも大まかなストーリーはほぼ同じである[3]

本作は『宇宙戦艦ヤマト』(1977年)に始まる劇場アニメブームの中[4]、『新エース』の好評を受けて製作された[5]。スタッフは『旧エース』の出﨑統監督・杉野昭夫作画監督のコンビ、『新エース』の小林七郎美術監督、高橋宏固撮影監督など。テレビシリーズの再編集版ではなく、劇場用に全て新規に制作されている[5]。半年足らずの短い期間で制作された[5]

出﨑統の最高傑作[5]、出﨑演出、出﨑チームの仕事の頂点とする評価もある[6]細田守下田正美[3]押井守に影響を与えた[7]。同年に高畑勲監督の『赤毛のアン』、富野喜幸総監督の『機動戦士ガンダム』、りんたろう監督の『銀河鉄道999』、宮崎駿監督の『ルパン三世 カリオストロの城』などが公開され、1979年は本作を含めアニメ史に残る重要な作品が複数生まれた年として知られる[8][9][10]

メインスタッフ[編集]

キャスト[編集]

主題歌[編集]

  • OP:「まぶしい季節に」
  • ED「はるかな夢」
    • 歌手:少年探偵団
    • 作詞:竜真知子
    • 作曲:馬飼野康二
    • 編曲:馬飼野康二[11]

評価[編集]

アニメーション監督[編集]

押井守は初劇場監督作品『うる星やつら オンリー・ユー』(1983年)が「映画ではなく、でかいTVに過ぎなかった」と感じ、「でかいTVと映画の違いは何だ」「どうやったらアニメーションは映画になるんだろうか」と考えて、「映画を観たという実感が感じられた」本作に「何か秘密があるはずだと思って何度も観た」という。本作から時間軸をコントロールすることを学び、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984年)で参考にしたという[12]。「主観的な時間に突入するためのさまざまな演出テクニック」の1つとして、本作の「中盤のテニスの試合で、主人公が窮地に追い込まれたときに頭上をヘリコプターが飛んでいくシーン」をあげている[13]。「『エースをねらえ!』で見せてもらった出崎演出の集大成が『あしたのジョー2』」であるとも述べている[14]

庵野秀明はテレビ版と劇場版について「旧『エース』は、まずオープニングが素晴らしかったし、話も演出も面白かったし、止めを多用した絵も凄く綺麗だった。不必要な情報を省略していく画のスタイルも新鮮でした。(中略)生涯初のLDBOX購入は旧『エース』でした。それほど、好きなんですね。あと、あれだけの内容を90分に収めている「劇場版」も最高です。映画として素晴らしいですね」と評している[15]。庵野の代表作『トップをねらえ!』(1988-1989年)は本作のパロディ、オマージュを含んでいる。

神山健治は「監督をやるなら観ておきたい20本」の1つに選び、以前は宗方仁が岡ひろみに入れ込んだ理由が「母に似ていたから」というのが気に入らなかったが、最近になって本当の理由は「俺の好きな女だったから」であり、出﨑監督が見せた「照れ」であることが分かったと述べている[16]

細田守はテレビ番組で自身の活動にも大きな影響を与えたという「今、絶対に観てほしい5つのアニメ」として、いずれも1979年に公開された『赤毛のアン』、劇場版『エースをねらえ!』、『機動戦士ガンダム』、劇場版『銀河鉄道999』、『ルパン三世 カリオストロの城』を紹介した[17]

湯浅政明は『犬王』に関するインタビューで「個人的なオススメ作品」として『ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!』(1992年)、劇場版『エースをねらえ!』(1979年)、『銀河鉄道の夜』(1985年)、『ユニコ 魔法の島へ』(1983年)をあげている[18]

評論家・研究者[編集]

五味洋子は「映画版は、原作に忠実にアニメ化したならば厖大な長さになってしまうだろうストーリーの単純なダイジェスト化ではなく、巧みに原作という地平からの離陸を図ることによって、独自の作品となり得ている」「当時熱狂的な原作派だった私としては、この映画には不平も不満もあった。しかし、時が過ぎた今となっては、青春映画としてこれを作ったことは、88分という限られた時間の中にまとめるには、これが正解だったと思える」と評している[4]

小黒祐一郎は「1979年は奇跡のような1年だったと書いたが、その中でも「奇跡」の言葉が最も相応しいのが、劇場版『エースをねらえ!』だろう。演出も、作画も、美術も、撮影も、音響も完璧。表現がシャープであり、力がある。映像のポイントは光と影だ」「一連の「出崎チーム」の作品の中でも、最も完成度の高いフィルムだろう」と評している[2]

氷川竜介は第32回東京国際映画祭のシンポジウムで日本のアニメ映画史のエポックメイキングな作品として、『白蛇伝』(1958年)、劇場版『エースをねらえ!』、『AKIRA』(1988年)をあげた[19]

藤津亮太は「20歳のアニメファンが観るべき38作品」の1つに選んでいる[20]

出典[編集]

  1. 第5回 出﨑 統さん(アニメーション監督)その1 練馬アニメーションサイト
  2. a b 小黒祐一郎「アニメ様365日 第25回 劇場版『エースをねらえ!』」WEBアニメスタイル、2008年12月9日
  3. a b 氷川竜介「【氷川教授の「アニメに歴史あり」】第20回 「再話」としての劇場映画とその可能性」アニメハック、2019年10月5日
  4. a b 五味洋子「キラめく青春の一頁 劇場版『エースをねらえ!』」同人誌『Vanda』12号、1993年12月
  5. a b c d 多根清史「『エースをねらえ!』」、大山くまお、林信行編著『アニメーション監督 出﨑統の世界――「人間」を描き続けた映像の魔術師』河出書房新社、2012年、160-161頁
  6. 藤津亮太「出﨑統というアニメーション演出家」、大山くまお、林信行編著『アニメーション監督 出﨑統の世界――「人間」を描き続けた映像の魔術師』河出書房新社、2012年、12頁
  7. 大山くまお「富野由悠季「『アトム』は許しがたい」「ニッポンアニメ100年史」が永久保存モノすぎた件」エキサイトニュース、2017年1月29日
  8. 小黒祐一郎「アニメ様365日 第23回 1979年」WEBアニメスタイル、2008年12月5日
  9. 細田守監督、最も影響された作品は「赤毛のアン」 1979年は「アニメの世界で革命的な年」 サンスポ、2018年7月16日
  10. 藤津亮太「1979年、映画『銀河鉄道999』『エースをねらえ!』『ルパン三世 カリオストロの城』が「アニメの古典」となり得た理由」QJWeb クイック・ジャパン ウェブ、2022年2月3日
  11. エースをねらえ! | 1970年代 | TMS作品一覧 トムス・エンタテインメント
  12. 「ロングインタビュー 押井守」『アニメスタイル』第2号、2000年9月
  13. (2ページ目)「監督としてやっていく上で絶対に乗り越えなければならない壁」あの押井守が認めた「アニメ史に残る傑作映画」の正体 文春オンライン、2022年3月27日
  14. 「監督としてやっていく上で絶対に乗り越えなければならない壁」あの押井守が認めた「アニメ史に残る傑作映画」の正体 文春オンライン、2022年3月27日
  15. 「エースをねらえ」「新・エースをねらえ」Blu-ray BOX ビクターエンタテイメント
  16. もっとアニメを観よう 第22回 神山健治の「監督をやるなら観ておきたい20本」(3) WEBアニメスタイル、2005年10月19日
  17. 細田守監督の「今、絶対に観てほしい5つのアニメ」とは?『世界一受けたい授業』番組レポ アニメイトタイムズ、2021年8月15日
  18. 映画『犬王』湯浅政明監督に訊く、オススメアニメーション4選 GQ JAPAN、2022年5月28日
  19. 『AKIRA』『エースをねらえ!劇場版』が日本アニメ映画史の最重要変化点である理由とは? MOVIE WALKER PRESS、2019年11月2日
  20. 藤津亮太「20歳が観るべきアニメ38タイトルを選んでみた」QJWeb クイック・ジャパン ウェブ、2022年5月3日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]