名鉄6500系電車
名鉄6500系電車(めいてつ6500けいでんしゃ)とは、名古屋鉄道の通勤型電車である。
概要[編集]
1984年に登場した6000系の改良型。6000系は抵抗制御だが省エネルギーを考慮して回生ブレーキ付界磁チョッパ制御へと変更された。4両編成24編成が製造された。
製造時期の違いにより、1~8次車が存在する。
車体[編集]
片側3ドア・19m級の鋼製車体。正面非貫通構造で、1~5次車の6501F~6517Fは正面窓下にステンレスの飾帯のあるいわゆる鉄仮面スタイル、1989年登場の6次車の6518F以降は大型曲面ガラスを2枚使用した金魚鉢スタイルである。
1次車の6504Fまでは当初標識灯がシールドビームタイプの2灯式だったが、2004年の旧3300系廃車ですべてLED1灯式に交換されている。
1~3次車の6513Fまでは行先表示器が未装備だったが、4次車の6514F以降は側面に行先表示器として方向幕を装備する。また、6515F以前は運転台と客用ドアの間に窓がなかったが、金魚鉢スタイルも含め6516F以降は開閉不可の固定窓が設置されている。
車内[編集]
6000系と同じ固定式のセミクロスシートを採用しているが、居住性の向上を目的に改良が行われ、座席のシートピッチが50mm拡大され800mmに、座席占有幅や背もたれの高さも100mm程度拡大されたほか、通路側の座席には肘掛けが設置された。また、妻面や袖仕切りに木目調の化粧板を使用したり、床板では緑色をベースに扉回りの色を赤色に着色したりなど、高級感の演出も図られた。
1989年に登場した6・7次車の金魚鉢スタイルの車両では、座席シートピッチがさらに40mm拡大された。座席形状についてもさらに改良が加わり、座面や背もたれを少し厚くし、ヘッドレストが装備され、肘掛けの形状が少し大きいものに変更された。
1992年に登場した8次車2編成は、車体こそ変わらないものの、車内が大幅に変更された。座席はすべて6人掛けロングシートとされ、混雑対策として扉回りのスペースが拡大。また、妻面にあった木目調の化粧板は廃止され、側面のものと同じクリーム色に変更された。床板も、6000系から受け継がれてきた緑色ベースの色調から、灰色に通路部分に模様を加えたものに変えられ、従来と比較して質素な車内となった。ほかにも、ドアの形状が1200系と同等のものに変更された。なお、このスタイルは3500系にもほとんど変わらずに受け継がれており、車内の配色に関しては2000年登場の3100系最終増備車まで受け継がれている。
機器類[編集]
省エネシステムの回生ブレーキを装備しつつも、6000系との連結が可能となる設計とされた。主電動機は、界磁位相制御で回生ブレーキを使用する7500系と同様、複巻整流子電動機を使用する。制御装置は、従来の抵抗制御に界磁整流器を取り入れた、界磁チョッパ制御を使用し、回生ブレーキの使用を可能とした。
主電動機出力は従来と同じ150kwとなっているが、歯車比は5.65と比較的高速向けに振られており、最高速度は6000系よりも10km/hアップされ、110km/hとなった。先述のように、6000系とは違い車内の雰囲気が変更されたのも、110km/h運転ができる性質を生かし、急行列車としての運用を多めに想定したからだと推察される。
台車はSUミンデン式の空気ばね台車で、電動車はFS521A形を、付随車はFS098A形を装備する。
編成構成[編集]
方向 | ←豊橋 | 岐阜→ | ||
---|---|---|---|---|
構造 | Tc1 | M1 | M2 | Tc2 |
形式 | ク6400 | モ6450 | モ6550 | ク6500 |
運用[編集]
運用範囲は6000系に準ずるが、広見線末端区間と蒲郡線については現在定期では2両編成の運用しかないことから入線しない。
三河線への入線はワンマン運転開始以降、多客に伴う臨時増発等の機会に限られていたが、後番8編成が三河線ワンマンに対応する改造(後述)を受け、2023年から同線での運用を開始している。
なお、2023年3月にワンマン運転が開始された各務原線、翌年3月に開始された広見線では、3500系・9500系のワンマン対応車が運用を担っており、本形式はワンマン対応車も含め基本的に入線しない。ただし、知多新線では、早朝や深夜に非ワンマンの直通列車があり、この列車の一部に本系列が充当される。なお、尾西線玉ノ井支線でも非ワンマン4両の列車があるが、こちらは3500系など3R車が充当され、本形式は代走を除いて充当されない。
一方、鉄仮面スタイルの初期車に廃車も発生しており、2023年4月には6507Fが、同年6月は6505Fが廃車された。その後は、三河線に転用された金魚鉢編成と入れ替わりで本線に戻された6000系4両編成の廃車が優先され、本形式の廃車は一旦ストップされた。しかし、2025年6月に6000系4両編成が全廃されたため、次の置き換え対象として再び廃車が進むものと思われる。
内装更新[編集]
1995年度には、検査入場した編成に対してロングシート化改造が施工され、6504F、6510F、6513F、6516F、6517Fが対象となった。同時に床下も変更され、製造時からロングシート車である8次車の6523F・6524Fとほぼ同等のものとなった。妻面の木目調の化粧板は変更されていない。また、セミクロスシートのロングシート部分をそのまま生かしている都合上、座席は6523F・6524Fとは違い8人掛けとなった。しかし、翌年度以降はなぜか改造が行われず、後述の大幅内装更新を除いて施工はこの5編成のみにとどまっている。
2011年には特別整備という名目で、1次車の6504Fが各種改造を受けた。とはいえ、内装自体が大幅に変更されたわけではなく、床板のドア付近に黄色の滑り止めが加えられたり、ドアチャイムが取り付けられたり、袖仕切りの色が変更されたり、つり革が丸形から三角形のものに交換された程度で、化粧板の全面交換など6000系初期車に施工された特別整備と比較すると、大した改造はしていない。外観については方向幕の設置すらされず、一切手が加えられていない。なお、こちらも他の編成に波及することなく、1編成のみにとどまっている。2つの意味で中途半端な改造だといえるだろう。
10年後の2021年には、金魚鉢スタイルの6521F、6522Fに対し、内装に大幅に手が加えられた各種改造が行われた。外観では行先表示器のLED化や車外スピーカーの設置が目立つが、内装は更新前とは全く別のものになっている。具体的には座席のオールロングシート化(8人掛け)、内装材の全面交換(床板、化粧板、天井の冷房吹き出し口、袖仕切り、座席モケット、つり革を3300系と同様のものに交換)、車いすスペースの設置(4両全車)、ドアチャイムやドア開閉予告ランプの取り付けなどが行われた。その他にも、ワンマン運転に対応するための機器類増設などが施工された。
この改造はほかの金魚鉢スタイル編成にも波及し、2022年度には6518F、6519Fも改造された。この2編成では、前年度に施工されたメニューに加え、LCD式車内案内表示器設置の準備工事が施されている。のちに設置され、準備工事が施工されていない6521F、6522Fにも次の検査入場時に取り付けられた。
これらの編成は、2023年3月に三河線に転用され、同線で運用されていた6000系4両編成を、廃車あるいは検査期限が切れるまで本線専属に回した。
2023年度も引き続き内装更新が行われたが、6520F、6523F、6524Fに加え、鉄仮面スタイルの6517Fにも同様のメニューで施工された。これは、三河線の6000系4両編成の本数の都合上、金魚鉢編成では1本足りず、鉄仮面編成からも1本改造して三河線に転用する必要があったからだと思われる。なお、これらの編成は内装更新時よりLCDが取り付けられた。また、6523F・6524Fは元々のロングシートをそのまま生かしたため、他編成とは違って改造前と同じ6人掛けとなっている。
まとめ[編集]
※名鉄6R車の編成一覧も参照
- 原型内装
- 6501F
- 6502F
- 6503F
- 6505F→2023年4月廃車
- 6506F
- 6507F→2023年6月廃車
- 6508F
- 6509F
- 6511F
- 6512F
- 6514F - 方向幕あり
- 6515F - 方向幕あり
- 1995年度ロングシート化施工
- 6504F→特別整備へ
- 6510F
- 6513F - 方向幕あり
- 6516F - 方向幕あり
- 6517F - 方向幕あり→内装更新へ
- 2011年特別整備施工
- 6504F
- 2021年~2023年内装更新施工(すべてLED行先表示、6517F以外は金魚鉢スタイル車)
- 6517F - 唯一の鉄仮面
- 6518F
- 6519F
- 6520F
- 6521F
- 6522F
- 6523F - 6人掛け座席
- 6524F - 6人掛け座席
今後[編集]
鉄仮面・セミクロスの6407Fが廃車されたことから、鉄仮面のセミクロス編成は徐々に数を減らすものと予想されるが、ロングシート車のみは本数的に三河ワンマンへの転用がうまい具合に可能なため、ロングシートグループ全編成に重整備を行い残す可能性も否定できない[1][2]。一方、6417F以降の後期車は内装更新やワンマン化が行われたことから、当面の間は三河線ワンマンでしばらく安泰であろう。
更には、豊橋鉄道渥美線の1800系がそろそろ代替時期に迫っているため、鉄仮面をこちらに譲渡しても良いように思えなくもない[3]。
近い世代の車両[編集]
脚注[編集]
- ↑ 金魚鉢のクロスシート車両がロングシート化改造を受けた際は8人掛け座席に改造されたのに対し、元からロングシートの車両が内装更新を受けた際は従来の6人掛け座席のままだったことから、ロングシート車両の方が内装更新の一部の工程を省けることもある。また、内装更新の対象になった鉄仮面の6417Fはロングシートである。ただ、車端部に取り付けるLCDが入るかの問題もあるのでロングシート車全て内装更新がされるかというのは微妙なところ…
- ↑ ただし、2024年度は6500系の内装更新は行われない予定で、2024年4月の6524Fへの重整備が最後になった可能性もある。
- ↑ しかし渥美線は全車ステンレス無塗装車なので、渥美線内に塗装設備がなく、鋼製車両のメンテナンスが不可能であることも否定できない。