名鉄3500系電車 (2代)
名鉄3500系電車(めいてつ3500けいでんしゃ)とは、1993年に登場した名古屋鉄道の通勤型電車。
概要[編集]
現有車両としては最多の136両を誇り、過去と比べても6000系に次ぐ2位となる。
従来投入されてきた6500系の後継車種として、VVVFインバータ制御、電気指令式ブレーキ(ECB)を始めとする新機軸を導入した。なお、VVVFインバータ制御電車の1993年の初投入は、関西・関東の大手民鉄と比べて7〜8年遅れで、JRの走ルンですとほぼ同時期である。
車体や内装は6500系最終増備車の6523F・6524Fとほぼ同一だが、案内表示器や車いすスペースを設置するなど、バリアフリー対応の設計が求められる時代に合った改良がなされた。先頭車前面では上部に編成番号が表記され[注 1]、電気指令式ブレーキを示すECBのプレートが取り付けられた。また、一般車では6600系以来となるスカートを設置。
機器類では、制御装置は東洋電機製のGTO-VVVFインバータ制御を採用。主電動機はかご形三相誘導電動機を取り入れ、出力は170kwと高めに設定。歯車比は高速向けに振られており、120㎞/hの高速運転を可能としたが、その代償として起動加速度は2.0km/sと低めである。ブレーキは名鉄一般車両では初となる電気指令式ブレーキを搭載するが、従来車とブレーキ方式が異なる関係上、従来車と併結ができず、3100系などのVVVF2連車が登場する前は単独4連あるいは8連しか組成できなかったため、8両編成の需要がない昼間は普通列車の運用が中心だった。
投入年次によるグループ[編集]
1次車[編集]
該当編成:3501F - 3504F
混雑対策として、1991年より犬山線や常滑線に暫定的に投入されていた200系を、本来の使用目的である名古屋市営地下鉄鶴舞線への直通運用に転属させるため、その代替用として1993年6月から7月にかけて4編成16両が製造された。
このグループのみ、6000系などと同じ従来型の列車無線アンテナを装備したが、後述の更新工事を受けた際に最新型のものに交換された。
2次車[編集]
該当編成:3505F - 3511F
1994年3月から4月にかけて7編成28両が製造された。基本的な仕様は1次車に準拠。列車無線アンテナの形状が変更された。
なお、6500系最終増備車タイプの内装の特徴として、ドア周りの立ち席スペースが異様に広く、その関係上着席定員数が少なくなるという問題点があるが、その解決策として、立ち席スペースに補助席を設置することに。3509Fの岐阜方先頭車の3609号車に1995年9月より試験的に折り畳み式補助座席を設置し、4次車以降で本格採用。3509F全車と3508Fにも取り付けられたが、問題があったのか2014年以降に再撤去されている。
3次車[編集]
該当編成:3512F–3521F
1995年4・6月に10編成40両が製造。仕様は2次車と同一だが、このグループからは主制御器や主電動機に東芝・三菱製のものを使用した車両も登場。(ただし従来の東洋電機製のものとほぼ同一品のため、モーター音は変わらない。)
この増備で、広見線新可児 - 御嵩間や尾西線新一宮 - 森上間など、支線への運用が拡大。また、この3次車導入により、6000系16両が瀬戸線に転属、3780系の一部が廃車された。
4次車[編集]
該当編成;3522F–3526F
本形式の中で、最も変更点が加えられたグループである。
1996年2月に6編成24両が製造された。2次車の一部車両でテストされていた折り畳み式補助椅子が本格採用され、各車両に8名分ずつ設置された。(2014年頃に撤去。)また、バリアフリー対策の一環として、ドアチャイムが設置され、以後の新造車では標準装備となった。さらには冷房を低騒音型のものに、補助電源装置をSIVをGTOサイリスタ方式からIGBT素子方式のものに変更した。また、室内では、天井中央部の高さが1cmのみ高くなった。
5次車[編集]
該当編成:3527F–3534F
1996年4月に8編成32両が製造された。仕様は4次車と変わらない。
上記4次車とこの5次車の増備により、6000系の5–8次車の中間車のみ12両を瀬戸線に玉突き転用させることで、瀬戸線内での非冷房車を置き換え、600V線区を除く名鉄全線での冷房化率100%化に貢献した。
この増備をもって本系列の製造は終了し、1997年以降は3700系の増備に移行された。
更新工事[編集]
製造から25年を超え、走行機器の劣化が進んだことから、2013年に試験的に3511Fの制御装置が東洋IGBT-VVVFに換装された。その後、2017年度より機器更新工事およびリニューアルが本格的に実施されることになり、初期に製造された車両から更新が進んでいる。同時に行先表示器のフルカラーLED化や車内案内表示器のLCD化も行われている。ドアチャイムについては従来型の搭載車を含め、JR東海313系電車と似た音色のものが新規設置された[注 2]。
2019年度以降、一部編成では、バリアフリー化を目的として車内アコモデーションを9500系並みに引き上げる[注 3]と同時に、ワンマン運転に対応する工事も行われた。
これとは別に前照灯のLED化も進められているが、更新工事と同時施工というわけではなく、ましてや未更新のままLED化された車両も存在する[注 4]。
運用[編集]
3700系、3300系、9500系とは共通運用で、単独運用の他、これらの2重連や3100系、3150系、9100系などの2連群を併結した4~8連での運用に就く。名鉄内の最大両数が8両であることから6両編成の2200系との併結は行わない。また、2000系とは回送列車などでの併結実績が存在するが、定期営業運用においては行われない。
各務原線、知多新線では2023年より、広見線では2024年よりワンマン運転化されたため、増発時を除きワンマン対応車のみが充当される。
豊田おいでんまつり開催時や代走など、稀に三河線にも入線するが、2024年以降はワンマン対応車が優先的に充当される。
今後[編集]
車内LCDのサイズなど細かい差異を除き、3500系の更新メニューは3パターンに分類される。
- 通常更新(VVVF・SIVの更新、行先表示のLED化、照明のLED化、車内案内表示のLCD化)
- 簡易更新(SIVの更新・照明のLED化を行わず)
- 大規模更新(通常更新に加えて内装材の交換、ワンマン化)
2025年9月時点では、通常更新を受けたグループが最も多く、18編成存在する。一方で簡易更新車は3524Fの1編成しかないため、検査場の容量の都合などから一部更新の手間を省略せざるを得ない状況となり、この形態が生まれたことが推測される。つまり、そのうち34本全編成が、通常更新以上の水準を満たした更新工事を受けるのはほぼ確定とみてよいだろう。
その一方で、大規模更新を受けたグループは13編成と、通常更新よりかは少ないが、年間2~3編成のペースで増加している。また、最近では、すでに通常更新を受けた編成に対し、大規模更新を追加で施工した事例もみられるようになった。仮に全編成更新する場合、年間数編成というペースを鑑みると、かなりの時間と費用がかかるとみられる[注 5]。だが、非VVVFを大量に抱える名鉄としても、3R車の3500系は今後も継続使用したい車両であるがために、いずれは全編成に大規模更新が施工される可能性もあり、今後が注目される[注 6][注 7]。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ↑ 前面の車両番号表記は名鉄では1954年製造分以来となる。
- ↑ 同時期に更新工事を受けた1200系や6000系でも同様のものが設置された。
- ↑ ただし内装材は9500系の白地・ベージュ系ではなく、3300系の寒色系のものが採用された。
- ↑ 現在、未更新車でハロゲン灯の車両は消滅した。
- ↑ 2019年から2025年まで、舞木検査場では3500系13本・6500系8本の計21本の大規模更新を施工(年間3.2本)しており、このペースが今後も続いた場合、全編成更新までは2031年頃までかかる見込み。
- ↑ 仮に一部編成のみに対し施工する場合、6500系や6800系(ワンマン化)の事例を見ている限り、基本的に後番の車両に集中的に施工すると考えられる。本形式の場合、大規模更新が施工された編成に規則性はなくバラバラであるため。
- ↑ 2025年度は3300系や6800系がLED照明化工事を受けるなか、3524FはLED照明の交換がされない簡易更新で出場し、3700系の3705Fも同様の更新メニューを受けている。なお、2025年度以降に通常更新が施工された編成はない。
大規模更新時にはすべての内装材を取り外すため、通常更新でLED照明化しても結局また取り外すことなる。つまり、後に行われることになる大規模更新を考えた結果、LED照明化の手間を省略したと推測できる。そのため、2025年度以降の普通の更新は、VVVFや車内案内表示など劣化が激しい部品の更新のみに留め、LED照明化を行わない方針に変わったとも思われる。このことからも、既に通常更新が施工された編成も大規模更新をいずれ施工する方針であると考えられる。
出典[編集]
関連項目[編集]
- 名古屋鉄道
- 名鉄6000系電車 - 2世代前
- 名鉄6500系電車・名鉄6800系電車 - 1世代前
- 名鉄3700系電車・名鉄3100系電車 - 1世代後
- 名鉄3300系電車 - 2世代後
- 名鉄9500系電車 - 3世代後