ATOS型放送
ATOS型放送は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の駅で使用されている、自動放送のタイプの一つについて、鉄道ファンが使用する通称である。主に、東京圏輸送管理システム(ATOS)が導入される際に、このタイプの音声になることが多いため、この通称が用いられる。このATOS型放送をATOSそのものだと勘違いしている人が多く、ATOS型放送をATOS非導入線区で導入した際「○○駅にATOSが導入された」と言われる場合があるがこれは明らかな間違いである。ATOS中央装置を稼働させ、配下に駅連動装置を接続して運転整理を行っているATOS導入線区は首都圏の一部線区のみである(ATOS導入線区は東京圏輸送管理システム(ATOS)を参照してほしい)。
ATOS導入線区においては、ATOS中央装置から配信を受けた列車情報をもとに放送がなされているので、ダイヤ混乱時でも駅係員の操作を介することなく正確な行先放送が可能である。
担当アナウンサーは男声が津田英治、女声が向山佳比子。しかし、宇都宮線を始めとする近郊路線を中心に、男声アナウンスが田中一永へ順次移行している[1]。接近チャイムは統一のものを利用しており、かつて山手線で使用されていたチャイムのアレンジ版になっている。
なお、線区別のATOS中央装置が未設置または稼働しておらず、駅連動装置単独での稼働時(分かりやすくいえば「オフライン状態」。)にATOS放送が使用されている状態を「スタンドアローン」という。将来ATOS導入線区になる予定がなくても、駅連動装置がATOS用の派生シリーズであって放送がATOS型であれば「スタンドアローン」ということがある(仙台駅、木更津駅、蘇我駅、茅ヶ崎駅および橋本駅の相模線ホーム、拝島駅4.5番線八高線ホームなど)。ATOS中央装置とは接続されていないため、ダイヤ混乱時に放送内容を反映させるためには駅係員の入力が必要である。
かつては、国分寺駅、大宮駅・松戸駅・取手駅・西船橋駅・宇都宮駅もこの形であった。初期の放送は音声の継ぎ接ぎが酷かったが、台詞のパーツをまとめることで順次改良している。しかし、それゆえ台詞によって収録時期が異なっているので、放送の途中で発音が不自然に変化することがある。
現在、ATOS型放送は津田英治から田中一永へ交代した所謂「宇都宮ATOS型放送」へ更新が進んでおり、「スタンドアローン」も『宇都宮ATOS型放送のスタンドアローン』が出てきた。さらに、横浜線・京葉線・青梅線 (西立川〜青梅間)・五日市線では、導入時から宇都宮型ATOSである。
放送文例[編集]
路線によって言い方に違いがある。常磐線以降に導入された後期の改良型放送を通称常磐ATOS型放送ということがあり、男声担当者が異なると(津田英治から田中一永へ交代したver.)宇都宮ATOS型放送になる。
- 初期型の接近放送(東海道・横須賀線まで)
- (メロディ)
- まもなく、○番線に
- (当駅始発)※始発列車の場合
- 種別
- ○○ 行きが、参ります。(後に「○○行きが、参ります。」や「○○行きが参ります。」に変更)(○○は行先)
- 危ないですから、黄色い線の内側までお下がりください。(後に「危ないですから、黄色い線までお下がりください。」に変更)
- この 列車(電車)は、(○つドア)○両 です。(後に「○両です。」に変更)
- ホームの、○○ 寄りには、止まりません。
- この 列車は、○○ で、前(後)寄り ○両、切り離しとなります。
- 後期型・宇都宮型の接近放送(常磐線以降・前期型も順次変更)
- (メロディ)
- まもなく、○番線に
- (当駅始発)※始発列車の場合
- 種別
- ○○行きが、参ります(○○行きが参ります)。(○○は行先)
- 危ないですから、黄色い線までお下がりください。
- この列車(電車)は、(○つドア、)○両です。
- グリーン車は足元の数字、○番と○番でお待ちください。(「グリーン車がついております。」も一部で使用)
- ホームの、○○寄りには 止まりません。
- この列車の、前(後)寄り、○両は、○○ 止まりとなります。
- また、一部の駅では列車到着前に次発列車の予告放送が流れる。
- 本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。(時間帯によって、「おはようございます」と流すことも可能)(前期型・後期初期型では「本日も、ご利用いただきまして~」と流れる)
- 今度の、○番線の、列車(電車)は
- ○○時 ○○分 発
- 種別
- ○○ 行きです。(2005年頃からは「○○行きです。」に変更)(○○は行先)
- (この後、両数案内などの案内が流れる)
- また、一部の駅では列車到着時に到着放送が流れる。
- ○○、○○。(初期型は「○○~、○○ です。」)(○○は駅名)(常磐型までは駅名を伸ばす場合が多い。です を言わないタイプもある。)
- ご乗車、ありがとうございます。
- (一部駅では「○○線 は、お乗り換えです。」のように乗り換え案内が流れる。 但し、府中本町駅の南武線ホーム、田端駅の上野方面ホームなどは扉閉め放送の後に「○○、○○、○○ 方面は、○番線 ○○線 は、お乗り換えです。」と放送する。)
- 終着駅の場合の到着放送
- ○○~、○○~。(前期初期型は「○○~、○○~、終点 ○○ です。」)(○○は駅名)
- 本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。(前期型・後期初期型では「本日も、ご利用いただきまして~」と流れる)
- お忘れ物のないよう、ご注意ください。
- (一部駅では乗り換え案内が流れる)
- 終着駅では、折り返し列車到着前の接近放送でこのような案内が流れる。
- (メロディ)
- まもなく、○番線に
- 当駅止まりの、列車(電車)がまいります。
- 危ないですから、黄色い線までお下がりください。
- (折り返す場合)
- この電車(列車)は、(○つドア、○両です。)折り返し、○○時 ○○分 発
- 種別
- ○○ 行きと、なります。(○○は行先)。
- (回送の場合)
- この列車(電車)には、ご乗車になれませんので、ご注意下さい。
※上記は一例であり駅や路線によって設定変更により、より詳細な放送、また簡略化した放送が可能。
ATOS型放送の種類[編集]
※ATOS型放送の分類は人それぞれで、定義が非常に曖昧です。ご了承ください。
- 初期型・・・イントネーションが不自然なパーツが多い。また、継ぎ接ぎが多い。
男声の場合、接近放送と発車放送は男声であるが、到着予告放送と駅名連呼放送は女声である。現在使用されている駅は存在しない。
- 初期改良型・・・初期では「黄色い線の内側まで」だったところを、初期改良型では「黄色い線まで」に変わっていた。それ以外は、初期型と同じ。2021年2月に木更津駅が更新されたのを最後に消滅した。
- 常磐初期型・・・初期改良型をさらに改良したのが、この常磐型である。また男性の場合は初期型や初期改良型と違い、到着予告放送と駅名連呼放送も男声になった。それから、到着予告放送の言い回しが一部変わっている。初期型と初期改良型では、「本日も、ご利用いただきまして、ありがとうございます。」と案内してたのが、「本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。」に変わっている。また、時間帯によって「おはようございます」と流すこともある。
- 常磐改良型・・・常磐初期型と異なるところは、到着予告放送の「〇〇行きです。」の部分。今までの放送は「〇〇、行きです。」のように、“行き先“と”行きです“が分かれていたが、この常磐改良型では、「〇〇行きです。」とスムーズに言うようになった。また、「特別急行」の言い回しが、「特急」に変更されたりしている。それ以外は常磐初期型と同じ。
- 宇都宮初期型・・・今までの放送と異なるところは4つある。1つ目は、男声のアナウンサーが変わったこと。2つ目は、今までになかった停車駅案内や待ち合わせ案内などの詳細な放送が追加されたこと。3つ目は駅名連呼放送で、常磐改良型などでは「しぶやー」のように語尾をのばしていたが、それが「しぶや」と語尾をのばさないタイプに変わっていること。4つ目は簡易英語放送が導入されたこと。簡易英語放送は種別は言うものの、列車名や行き先等は言わない。また、男声は存在しなく女声のみとなっている。
- 宇都宮改良型・・・宇都宮初期型との違いは、接近放送の「黄色い線まで」の言い回しが、「黄色い点字ブロックまで」に変わったことだけである。
- 海浜幕張型・・・名前の通り、京葉線の海浜幕張駅発祥の放送である。この海浜幕張型は今までの放送とは大きな変化が2つある。1つ目は接近放送の「黄色い線まで」の言い回しが「黄色い点字ブロックまで」に変わったこと。2つ目は詳細英語放送が導入されたこと。詳細英語放送は簡易英語放送とは違い、種別だけでなく列車名や行き先、停車駅案内、次駅案内もする。それから、簡易英語放送では女声しか存在しなかったが、この詳細英語放送では男声も存在する。今現在、このタイプの放送が増えつつある。
特に山手線は半分の駅がこの放送に更新され山手線内の宇都宮初期型は、原宿だけとなった。 この放送は、今後宇都宮初期型、常磐改良型を置き換えていくだろう。
特殊なATOS型放送のタイプ[編集]
- スタンドアローン型・・・仙台駅、木更津駅、蘇我駅で使用されている。ATOSの放送が導入されている他の駅はATOSの運行管理システムが導入されているが、この3駅にはATOSの運行管理システムが導入されていない。放送だけがATOSの放送になっているのである。そのようなタイプの放送のことを、スタンドアローン型という。
外房線・内房線・高崎線・上越線にも、ATOSに似たような放送が存在する。それは、外房PRCと内房PRCと上越CTCである。放送の声はアナウンサーが担当しているのではなく、音声合成が使われている。外房PRCは接近メロディは違うものの、文面や言い回しがほぼ同じであり、内房PRC・上越CTCは接近メロディがATOSと同様のもので、文面や言い回しもほぼ同じである。外房PRCは外房・内房線の永田 - 安房鴨川 - 九重間(茂原駅を除く)で使用されており、内房PRCは内房線の青堀 - 那古船形間で使用されており、上越CTCは高崎・上越線の新町 - 水上間で使用されている。
ATOS型放送の担当アナウンサー[編集]
- 旧男声:津田英治 (初期改良型・常磐初期型・常磐改良型)※置き換え進行中
- 新男声:田中一永 (宇都宮初期型・宇都宮改良型・海浜幕張型)
- 女声:向山佳比子 (全て)
- 英語女声:ルミコ・バーンズ (簡易英語・詳細英語放送など)
- 英語男声:クリス・ウェルズ (詳細型英語放送など)
脚注[編集]
- ↑ “JRの自動音声「中の人」交代 駅名など新たに録音”. 朝日新聞デジタル. 2015年4月28日確認。 ※全文の閲覧には会員登録が必要