マンハッタン次元崩落テロ事件
マンハッタン次元崩落テロ事件(マンハッタンじげんほうらくテロじけん、英語:September 11 attacks)は、2001年9月11日(火)の朝から同15日にかけて、超常テロリストグループであるカオス・インサージェンシーによって、アメリカ合衆国ニューヨーク市に対して行われたヴェール崩壊以降初の大規模超常テロ攻撃である。
この攻撃により、125万人以上の市民がマンハッタン島周辺に形成された異常領域に巻き込まれ、一般市民の他にも、テロリストに対する反撃や救援活動に従事した軍人や法執行官、超常団体や正常性維持機関の職員に多数の死傷者が発生した。またこれら人々に対する健康被害やニューヨーク市のインフラと財産、経済活動に多大な打撃を与えた。一方で後に当たり前となった超常団体間の連携の下地を作ったパラヒューマンの人権問題解決への一里塚となったという正の側面も持ち合わせている。
当時の情勢[編集]
1998年のポーランド神格存在出現事件発生以後、北米大陸において SCP財団、世界オカルト連合、プロメテウス・ラボグループ、アメリカ合衆国政府は、4者協議による北米大陸のアノマリー評価報告システムを速やかに確立した。さらに米国南部超常組織協力条約(SUSEOCT/Southern United States Extranormal Organization Cooperation Treaty)の拡張的枠組みとしてメキシコ湾条約が締結され、財団・連合の特殊資産が集中する北米全域における衝突の防止、ヴェール政策の段階的廃止におけるモデルケースとして運用された。この枠組みはしばらくしてメディアにより「メキシコ湾体制」と呼称されるようになり、この四者の繋がりはヴェール崩壊後の新しい国際秩序として機能していくと見られていた。
1999年2月、ランブイエ和平が世界オカルト連合監督下で成立して以降、カオス・インサージェンシーはメキシコ湾条約締結勢力への批判を本格化した。カオスインサージェンシーの上級命令系統であり、事実上の司令部と考えられているデルタコマンドは不特定のチャンネルで攻撃を予告し、うち幾つかが実行された。
また、ヴェールの消失によりマーシャルカーター&ダークを始めとした超常コミュニティ出身の仲介業者を中心に、ラプターテック・インダストリーズやロゴスの製品、1998年半ばまでに散逸したプロメテウス・ラボ製品などのパラテック兵器が活発に取引されるようになり、これらは東欧・中東・中央アフリカに跨って確立された超常犯罪秘匿ネットワークに流れ込んだ。これにより東欧・中東・中央アフリカの紛争地域では闇資金と超常兵器の供給が急増し、概して紛争の激化を招いた。一方、この過剰ともいえるパラテック兵器やマーシャルカーター&ダークの商業兵力部門、マナによる慈善財団等のNGOに帯同されるプリモルディアル、コブウェブ・インターナショナルなどのパラテック技術者や傭兵の流入もまた、カオス・インサージェンシーによる秘密裡の現地介入の結果、現地の勢力図の変化と、現地のパラテック技術者と傭兵の平時の活動地域外への流出が引き起こされたことによるものであった。
事件当時のマンハッタン島では、2001年9月1日から国際連合超常問題特別総会が、国際連合本部ビルで開催されており、7.12事件から3年間の国際情勢を鑑み、これらの問題への対処方針を策定することがその主題であった。世界オカルト連合にとっては幾つかの重要な超常国家の承認と大使演説をもって国際社会への統合を呼びかける重大なイベントであったため、この総会に連合は大きく注力していた。その過程で連合の精神部門[1]は先述のような紛争地域への監視も厳しく行い、パラテック技術者やゲリラ活動家の北米への進入を事前に察知していた。さらに財団との協力により、カオス・インサージェンシーについての詳細な情報も入手していたにもかかわらず、世界オカルト連合やSCP財団はニューヨークに対するテロ攻撃を未然に防ぐには至らなかった。
このような経緯と事件中の旅客機の動きから、カオス・インサージェンシーの本来の標的は、特別総会に出席中の各国高官、プロメテウス・ラボ・グループ重役、異常領域国家の大使、パラヒューマン人権活動家、ならびに世界オカルト連合事務総長D.C.al Fineであったと考えられている。
ハイジャックを受けた飛行機[編集]

2001年9月11日朝(現地時間)、マサチューセッツ州ボストン、バージニア州ダレス(ワシントンD.C.近郊)、ニュージャージー州ニューアークを発った5機の旅客機が、午前8時20分頃、ほぼ同時にカオスインサージェンシーの工作員によってハイジャックされた。ハイジャック時点でいずれの機もマンハッタン島から200km圏内に位置していた。このうちの3機がマンハッタン島へ進路を取った。乗務員に対する精神操作には、プロメテウス社製の精神同調機器が用いられたと考えられている。
なお、乗っ取られた5機のうち3機がアメリカ合衆国のボーイング社製のボーイング767型機で、残りの2機がボーイング757型機である。この2種類の機体は、運行する航空会社のパイロットに互換性を持たせるために、コックピットの操縦システムは基本的に同じ物が使われており、いずれも2人のみで操縦できるため、意図してこれらの機体が運行されている便が選択されハイジャックされたと考えられている。
乗っ取られた5機の内3機(アメリカン航空11便、ユナイテッド航空175便、デルタ航空1989便)は、8時46分前後にマンハッタン島上空へ到達した。マンハッタン島全域が超常的予備攻撃を受け、財団や世界オカルト連合、アメリカ合衆国空軍が状況把握に失敗する中で、空気力学的に異常な飛行を行う同機らは赤熱した航跡雲を発してマンハッタン島上空に儀式陣を描き出し、その構築を完了させた。当初、ハイジャック犯はこれら旅客機を最終的に、国際連合本部ビルへの攻撃に用いる目論見を立てていたようだが、世界オカルト連合による呪術的迎撃措置が部分的に成功したことで、旅客機はワールドトレードセンターへ目標を変更、9時3分までに全機がワールド・トレードセンター・ツインタワーに突入した。その後、突入から5分以内にワールド・トレードセンター複合施設を中心とした約4.5km2の領域が異常次元に崩落、連鎖的に周辺空間への侵食が始まった。アメリカン航空77便はアメリカ国防総省本庁舎に攻撃を行い、同庁舎は爆破炎上、この攻撃によりアメリカ合衆国国防総省超常部門であるペンタグラムの機能が停止した。残るユナイテッド航空93便はペンシルベニア州シャンクスヴィルに墜落した。
アメリカン航空11便[編集]

詳細は「アメリカン航空11便テロ事件」を参照
ボストン発ロサンゼルス行きアメリカン航空11便(ボーイング767-200ER型機・機体番号N334AA)は、乗客81名(日本人1名を含む)・乗員11名を乗せ、午前8時00分頃にローガン国際空港を離陸し、ロサンゼルス国際空港に向かった。その後、午前8時20分頃、カオスインサージェンシーの工作員によってハイジャックされ、午前9時3分までにワールドトレードセンターへ着弾した。WTCに一番初めに突入した機体であり、旅客機の突入によるもののみでは一番犠牲者が多かったと考えられる。
ユナイテッド航空175便[編集]
詳細は「ユナイテッド航空175便テロ事件」を参照
ボストン発ロサンゼルス行きユナイテッド航空175便(ボーイング767-200ER型機・機体記号N612UA)は、乗客56名・乗員9名を乗せ、午前8時14分にローガン国際空港を離陸し、ロサンゼルス国際空港に向かった。その後、午前8時20分頃、カオスインサージェンシーの工作員によってハイジャックされ、午前9時3分までにワールドトレードセンターへ着弾した。またこの便には、国際連合超常問題特別総会に合わせて開催されていた全米同時パラヒューマン公民権要求デモ行進の内、ロサンゼルスで行われるものに参加しようとしていた人狼や人型ガーゴイル、現実改変者の集団が搭乗していた。
デルタ航空1989便[編集]
詳細は「デルタ航空1989便テロ事件」を参照
ボストン発ロサンゼルス行きユナイテッド航空175便(ボーイング767-332ER型機・機体記号DL1989)は、全乗員155名を乗せてローガン国際空港を離陸し、ロサンゼルス国際空港に向かった。その後、午前8時20分頃、カオスインサージェンシーの工作員によってハイジャックされ、午前9時3分までにワールドトレードセンターへ着弾した。WTCに一番最後に突入した機体であり、避難の進行により旅客機の突入による死傷者は少なかったと思われるが、彼らは例外なく間もなく発生した異常領域に飲み込まれたと見られている。
アメリカン航空77便[編集]
詳細は「アメリカン航空77便テロ事件」を参照
ワシントンD.C.(ダレス国際空港)発、ロサンゼルス(ロサンゼルス国際空港)行きアメリカン航空77便(ボーイング757-200:機体番号N644AA)は、乗客58名・乗員6名を乗せて、午前8時20分に出発した。午前8時20分頃、カオスインサージェンシーの工作員によってハイジャックされ、直後に進路を北向きに変えた後、南へ転回、その後東へ進路を変えた。その後、バージニア州アーリントンにあるアメリカ国防総省本庁舎(ペンタゴン)に墜落した。
ユナイテッド航空93便[編集]
詳細は「ユナイテッド航空93便テロ事件」を参照
ニューアーク(ニューアーク空港)発サンフランシスコ(サンフランシスコ国際空港)行きユナイテッド航空93便(ボーイング757-200、機体記号N591UA)は、午前8時42分、乗客37名(日本人1名を含む)・乗員7名を乗せて出発した。その後、午前8時20分頃、カオスインサージェンシーの工作員によってハイジャックされた。この機の正確な標的は明らかになっておらず(進路はワシントンD.C.)、ペンシルベニア州シャンクスヴィルに墜落した。詳細は不明だが、墜落直前の コクピットボイスレコーダーにはQueenの「ウィー・ウィル・ロック・ユー」「アイ・ウォント・イット・オール」「ボヘミアン・ラプソディ」「イニュエンドウ」のメロディやリズムが記録されている。
事件の経過[編集]
11日[編集]
旅客機の衝突から5分後、午前9時8分頃からワールド・トレードセンター複合施設を中心とした約4.5km2の領域が異常次元に崩落、連鎖的に周辺空間への侵食が始まる。異常空間には外部からの侵入が不可能であり、そこから赤色または暗褐色を呈するガス状実体が市街地に流入し、流入先の街区では異常空間が急速に伸張していった。この次元崩落現象に対し、国際統一奇跡論センターは、神格実体の不完全な顕現に際して発生することが多い「菩薩・バックラッシュ」と呼ばれる現象に性質が近いと公表したが、2001年時点この規模の菩薩・バックラッシュは文献に記録がなかった。

異常領域内には複数の霊的実体や悪魔実体(後にSCP財団によりSCP-2911-JP-Bに指定される)が出現して破壊行動を開始し、一般市民は恐慌状態に陥っていた。ニューヨーク市警察は警察専用線を介して悪魔実体の出現を極初期に確認しており、マンハッタン島南部では市民の避難に尽力し、これと悲惨な交戦を繰り広げ、島中部や北部に位置する17分署など各地の分署ではバリケードの構築や当時人員配置され始めたエクソシストを戦力として、悪魔実体との接触や逃げ込んできた避難民の収容に備えていた。また、島内各地の教会では悪魔出現の噂に避難民が殺到していた。
事件発生からしばらくの間、マンハッタン島内の基幹物理回線喪失と電波障害による混乱や午前9時半頃のアメリカ国防総省本庁舎への攻撃の結果、SCP財団や世界オカルト連合、アメリカ合衆国政府の対応は遅延していた。なお当時、国際連合本部ビルでは国際連合超常問題特別総会が開催されていたため、世界オカルト連合側は即時動員した排撃班が特別総会出席者の護衛と避難に奔走していたほか、なだれ込んだ避難民により本部・周辺施設は混乱の渦中にあり統制が取れていなかった。一方のSCP財団は、同総会の開催に合わせ、世界オカルト連合に配慮してマンハッタン島周辺に即時動員可能な機動部隊を展開することを制限していたことや、既に一部隊が機能不全に陥っていたこともあり、極初期には十分な介入を行える状況にそもそもなく、僅かに展開していた2部隊(機動部隊Ζ-23 "バッカスの酒"、機動部隊Η-44 "螺旋階段")を用いて、30番街に規制線を張り、避難民のマンハッタン島南部への逆流入防止と国連本部ビル周辺への誘導[2]を行うのが精いっぱいであった。
その後午前中に、世界オカルト連合は国際連合本部ビルに、財団はスタテン島に位置する研究収容サイト-310に仮設本部を設置した。米国政府はジョージ・W・ブッシュ大統領が 非常事態を宣言し、冷戦時代につくられた 政府存続計画が初めて実行された。ワールドトレードセンター・ツインタワーやペンタゴンへの攻撃がなされた後しばらくの間は、さらなるテロに備えて、州兵、予備役が動員された。空港などには厳戒態勢が敷かれ、全ての国境が封鎖された。また、連邦航空局(FAA)の命令によりアメリカ国内の民間航空路の封鎖、アメリカ領空内への民間機の入域・通過が禁止され、領空内を飛行中の民間機は全て最寄の空港に強制的に着陸させられた。
午後3時頃になると、SCP財団が作成した異常事例報告の初版によれば、マンハッタン島南部およびブルックリン西岸、ジャージーシティ近郊が既に異常領域に飲み込まれており、領域内にいた市民、推定60万人の命は失われたものと見なされた。

異常領域が未だ到達していないマンハッタン島中部では、財団や連合による組織的な、市民の避難が夕方頃から開始された。この頃には、財団の機動部隊の増援が到着し始め、世界オカルト連合は統制を限定的に回復しつつあり、南東部から霊的防護が強固な国際連合本部周辺を経由してクイーンズ区に抜けるルートで島外に市民を移送しはじめた。しかしながら、未だ混乱が続き、道路網の渋滞も相まって、その避難は12日の未明まで続けられた。避難民の一部は北部へも流入しており、公共施設が避難所として開放されていった。なお、南部の異常領域内は午後11時時点で複数の一般市民が取り残されていたことが、ニューヨーク陸軍第42歩兵師団(en: 42nd Infantry Division (United States))の記録から分かっているが、領域内への進入が困難なことや当時のリソースでの大規模な救出作戦が不可能、効果的な成果が得られないと予想された、あるいは救出作戦実行によるリソースの消費が事態収拾への足かせとなるという判断から断念されたと考えられる。
12日[編集]
前日夕方から開始されたマンハッタン島中部の市民の移送は、12日未明に概ね成功し、この間SCP財団と世界オカルト連合は現場レベルの連携を確立した。マンハッタン島南部は大型の悪魔実体など多数の悪魔実体の出現を理由に放棄され、合同部隊はエンパイアステートビルやタイムズスクエア周辺に防衛線を構築した。また、SCP財団は国際連合本部ビルの24階に機動部隊の仮指揮所を設置し、アルト・クレフを作戦臨時顧問に据えて、世界オカルト連合現地部隊との連携を強化する。その後両組織は境界線イニシアチブに助力を求める方針を固めた。その最中、カオスインサージェンシーは午前3時頃に、ハーレムリバーヤード発電所を始め、島内・周辺の発電施設を自爆攻撃などで攻撃し、財団の防衛が突破されたことで、マンハッタン島一帯は大規模停電(ブラックアウト)に陥った。これら攻撃は島内各所の一部の水道・ガスインフラにも及び、一部の地域ではライフラインが完全に寸断された。
ライフラインの寸断などがあったものの、中部の市民の避難が概ね成功し、エンパイアステートビル・タイムズスクエア防衛線が安定するなど、一時的な停滞は同日12時過ぎまで続いた。この間にSCP財団や世界オカルト連合は数回の会見を行い、事態がある程度制御下にあることを表明し、境界線イニシアチブの指導機関である"法廷"は援軍の派遣及び共同戦線の構築の是非に紛糾(ただアンリ・ド・モンフォールが彼の指揮下にある戦闘部隊である"鉄槌計画"を独自に派遣している)するなど、未だ絶望的状況下という認識は存在しなかったと考えられている。またこの時点でアメリカ大統領府は「同時多発テロ」の見方を示すとともに、アメリカン航空77便の乗員乗客全員の死亡が確認された。さらに連邦捜査局異常事件課(FBI-UIU)は沿岸警備隊内部に侵入していたカオスインサージェンシーの特殊工作員、デレク・オブライエンを確保し、SCP財団と共に尋問を行い、ニューヨーク市全域にカオスインサージェンシーの特殊工作員や人間爆弾が潜伏していることを確認した。

12時過ぎ、領域内から敵性実体による初の大規模攻勢が開始された。国際連合本部ビル前ではSCP財団機動部隊 Γ-10("バルムンク")や境界線イニシアチブ"鉄槌計画"、ニューヨーク州兵らが悪魔実体との乱戦に突入し、エンパイアステートビルはカオスインサージェンシーによる自爆攻撃で陥落した。 壊れた神の教会・ジェファーソン・ミラー教会ではこの大規模攻勢に際し、マンハッタン・メカニクスが初起動した。特に、エンパイアステートビルの陥落はBBCにて、SCP財団報道担当臨時管理官ジャック・ブライトによる会見の後の中継映像の中で報道され、全世界に大きな衝撃を与えた。また、同会見にて報道臨時管理官は実行犯の可能性がある組織として、カオスインサージェンシーの名前を初めて挙げた。なお、このエンパイアステートビルの陥落により、同ビルには後にUE-1109(en: UE-1109)と指定される巨大エネルギー実体を召喚する核が配置された。

この大規模攻勢により、SCP財団・世界オカルト連合はエンパイアステートビル・タイムズスクエア防衛線を解体し、パーク街を保持したままセントラル・パークへの撤退を開始した。この情勢を前に境界線イニシアチブ"法廷"は正式に連携を決定し、財団・連合・イニシアチブ合同対策会議が国際連合本部ビルに設置された。またSCP財団の空間工学部門は非常事態宣言を発令し、財団に非敵対的な超常団体・超常科学者への協力要請を送付した。
さらに午後9時頃になるとセントラルパーク防衛線も崩壊寸前に陥った。当時セントラルパーク周辺の避難所の防衛の為、セントラルパーク・ウエストと81番通りの交差点の防衛陣地にいた人物の証言によると、その頃にはセントラルパーク各所に設置されて情報共有に用いられていた霊素通信機からの交信が途絶していたという。この劣勢を決定的にしたのが、午後10時頃にセントラルパークに顕現した巨大神格実体であるUE-1110(en: UE-1110)である。この神格の顕現は、境界線イニシアチブによりセントラルパークに施されて防衛の要となっていたギリシア式の大規模結界を内側から破壊し、前線に多大な被害を与えた。この防衛線はニューヨーク市警やニューヨーク州兵、SCP財団らによって構築されていたが、その殆どは速やかに撃破され、当時の通信の困難さも相まって、国際連合本部ビルに設置された合同対策会議はセントラルパーク防衛線前線決壊の理由であるUE-1110の顕現を次の日の午前中まで知ることはなかった。
13日[編集]
13日未明にSCP財団のサイト-310では、SCP財団が前日に財団に非敵対的な超常団体・超常科学者に向けて送付した協力要請を受諾した、プロメテウス・ラボの次世代移動能力研究委員会、ディア大学異常構造数理学研究室、赤斑蛇の手のホヤ女史、理外学研究所の超次元力学研究グループ、ICSUTマサチューセッツキャンパス教授会を含む空間工学者が集結し、異常空間内へ大規模に戦力を送り込む手段の開発の為の共同研究を開始した。
午前7時13分、SCP財団のブレナン-天佑神助カウンターが、セントラルパークを中心としたアキヴァ放射大規模リレーションを観測する。同時に観測された空間ヒューム値の分布予測内の観測異常の原点に神格実体に類する存在がいるとし、これをUE-1110に指定した。これにより合同対策会議はセントラルパーク内において神格実体に類する存在、UE-1110の顕現を初めて知る。また、この放射により、財団が島内各所に設置していたカント計数機の一部が長時間機能を喪失した。

午前8時頃になると、敵性実体との前線は再び膠着状態になり、戦闘は続行されていたものの結果として限定的な平穏がもたらされていた。また、SCP財団組織内では自身がニューヨーク市内にて収容していたアノマリーを用いて、領域内との有線通信を確立する。さらに、SCP財団機動部隊 F-15("ニューヨーカー")によるヘリコプターを用いた内部捜索が成功し、領域内における民間人と悪魔実体の交戦を記録した。この観測で観測された民間人に関連するものは、ワシントンスクエアにおける民間人、カナルストリート方面における戦闘音、ニューヨーク郡裁判所周辺において悪魔実体と交戦していた異常芸術家、そしてマンハッタンの魔法少女たち。さらに同機は、1WTC上部に繭状の構造物である神格実体の幼体を確認することに成功する。この神格実体の幼体は後に、UE-1111(en: UE-1111)と指定され、悪魔実体や異常領域の出現に大きくかかわっていると推測された。

午前9時20分、敵性実体による第二次大規模攻勢が開始される。領域拡大の加速による悪魔実体の大増加や巨大エネルギー実体であるUE-1109群による破壊活動により、SCP財団と世界オカルト連合は劣勢に追い込まれる。この攻勢により、合同対策部隊はセントラルパークを失陥し、コロンビア大学やハーレム地区への後退を開始する。同攻勢ではジェファーソン・ミラー教会周辺においてUE-1110が顕現し、マンハッタン・メカニクスはこれと交戦を行うが、同機は敗北し、多くの部品を破壊される。神父らはパイロットを救出するとともに、メカニクスの再構築を開始する。
午前10時、世界オカルト連合のトップであるD.C.al.Fineがピチカート手順の発令を通告する書簡を発表する。避難民に対する人道的配慮から猶予が設けられ、15日の午前10時までに神格(主にUE-1111)の排除が完了しなかった場合、終結トリアージが執行されることを宣言した。このピチカート手順については、108評議会において11日から協議されてきたことだが、SCP財団による領域内探索でUE-1111が確認されたこと、UE-1110の顕現によりマンハッタン島中部に境界線イニシアチブが敷設した神学的結界が破綻したことが明らかになったことが決め手となった。通告に伴い、世界オカルト連合の部隊は午後6時半頃にはマンハッタン島周辺に指向性核エネルギー兵器を配備し始める。
決議925号(2001年9月13日) 世界オカルト連合108評議会は、 1998年7月12日の決議███(1998年)、1998年7月13日の決議███(1998年)、1998年7月21日の決議███(1998年)、1999年2月1日の決議███(1999年)、2000年4月3日の決議███(2000年)、メキシコ湾条約を想起、再確認し、
世界オカルト連合とSCP財団による努力にも関わらず、カオス・インサージェンシーが決議███(2000年)と上記に関連する決議、宣言、その他あらゆる行動に対して反抗的な行動をとったことで、世界オカルト連合と国際平和に対する甚だしい侮辱を行ったことに留意し、
世界オカルト連合とSCP財団による努力にも関わらず、2001年9月11日にカオス・インサージェンシーがアメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市に対して行った攻撃が未だ収束しないことを留意し、
同攻撃に伴いワールドトレードセンターツインタワー北棟の上層に出現した、不詳実体1111号の将来的な顕現が、人類社会の存続に重大な危険を齎すことを確認し、
世界オカルト連合憲章の諸目的及び諸原則に加え、国際連合憲章の諸目的及び諸原則の下、国際平和と人類社会の保護と持続のための義務と責任を認識し、
これら決定の完全な遵守を確保するため決断し、
世界オカルト連合憲章の下で行動し、
- アメリカ合衆国ニューヨーク州マンハッタン区に存在するカオス・インサージェンシー構成員及び不詳実体1109号、1110号、1111号の排撃の為、同地域に対してピチカート手順を発令することを決定する。
- 任務に関する五大標語の第三標語に基づき、終結トリアージの執行には当決議に基づく事務局からアメリカ合衆国連邦政府、SCP財団北米司令部、境界線イニシアチブ法廷に対して行われる通告から48時間の猶予が設けられる。
- アメリカ合衆国連邦政府とニューヨーク州、ニューヨーク市に対して、世界オカルト連合憲章第五項に基づき、ピチカート手順の実行のために世界オカルト連合が要求する資産を貸与・譲渡することを要請する。
- 世界オカルト連合に所属する機関及び国際連合に所属する全ての国に対して、本決議に基づいて実施される措置に対して適切な支援をすることを要請する。
- アメリカ合衆国と協力している国際連合加盟国に対して、本決議第三項、第四項に基づいて実施される措置に対して世界オカルト連合事務局に通知することを要請する。
3 この問題に対して引き続き取り組むことを決定する。
この108評議会決議925号-ピチカート(TC/RES/S-17/925/Pi) に対し、SCP財団の意思決定機関であるO5評議会は非承認を採択。
O5評議会提言概要
— O5-12
提言: 108評議会決議925号-ピチカート(TC/RES/S-17/925/Pi)に関する第1回投票 - O5-12
評議会投票概要:[非公開]
結果: 非承認
我々は諦めるべきではない。衆人環視の中で世界最大の人口密集地を焼き払う行為は、ただちに全世界的な正常性維持への直接的疑念に発展するだろう。その瞬間、財団が槍玉に挙げられないという見立ては楽観的にすぎる。幸いにして事態は未だ制御下にあり、必要な資源が確保できる。為すべきことを為し、破局を阻止することに総力を傾けるべきである。
これを受けて、終結トリアージの執行までにUE-1111を排除するため、作戦臨時顧問のアルト・クレフ指揮の下、異常領域内部への突入作戦が立案された。また上記の理由には、カオスインサージェンシーが財団の離反組織であるという外交上の弱点も挙げられるという説がある。[要出典]アメリカ大統領府は、ポーランド神格存在出現事件におけるバックラッシュによってポーランド南部が壊滅したことに触れ、東海岸を灰燼に帰しかねないピチカート手順の実行には慎重な行動を要求したほか、合衆国としてUE-1110の排除に全力を挙げて、SCP財団と世界オカルト連合に協力することを表明した。
また、ニュージャージー州やニューヨーク州などにおいて避難区域に指定されていなかった地域の住民や一部の東海岸の市民はこのピチカート手順発令の報道を受けて、警察や軍に従わず独自に遠隔地への避難を加速・開始したが、既に一昨日11日に連邦航空局(FAA)がアメリカ合衆国大陸部内のすべての民間航空機を離陸禁止としていたため、人々は アムトラックや長距離バス、州間高速道路に集中し、これら交通機関は多大な混乱や混雑、渋滞の状態に陥った。

午後になると、合同部隊はセントラルパークを放棄し、コロンビア大やハーレム区まで後退した。ハーレム区では境界線イニシアチブが教会を要塞化して避難所を開設し、セントラルパーク内ではアメリカ自然史博物館に防衛線の生き残りが立てこもっていた。この時点で、リンカーントンネルを避難民移送の際の通行路とする計画が広まっており、同館の有志は館内に展示されていたT-REXの化石をナルカのヘモマンシーで蘇らせて、トンネルまで退避することに成功している。この際、有志らはマンハッタン・メカニクスがUE-1110を打倒する直前を視認しているが、この時既に島内では現実性が揺らいで情報の矛盾が各所で起きており、この例に漏れず資料間の食い違いは珍しくない。なお、当のマンハッタン・メカニクスがあるジェファーソン・ミラー教会は前線の後退により孤立していた。
午後7時12分、日没。合同対策会議は突入作戦の準備を完了させた。神格攻撃部隊はSCP財団機動部隊と世界オカルト連合排撃班の重装部隊で編成、民間人の収容を担当する部隊は財団の機動部隊に、悪魔実体の掃討を担当する部隊は世界オカルト連合と境界線イニシアチブの部隊、物資運搬は合衆国軍とニューヨーク市警察の選抜部隊が担当した。プロメテウス・ラボ社の資産が補給物資として広く提供され、マンハッタン島内における社有資産は放棄された。この時点で、ハドソン川両岸とマンハッタン島の75%が異常領域に侵食されている。
14日[編集]
突入作戦は14日の午前0時から開始された。作戦は、フェーズ1から3に分けられ、
- フェイズ1: 先遣隊によるバックドア・ソーホー経由での進入と橋頭堡の確立
- フェイズ2: 補給線の確保、ならびに増援部隊の導入
- フェイズ3: UE-1111の撃破または放逐、カオス・インサージェンシー主力部隊の排除
と段階的に、終結トリアージが執行される15日の午前10時までに神格の撃破・放逐を目指す方針となっていた。

まず研究収容サイト-310の有識者チームによって異常空間の多元空間軸ベクターが解析され、これをもとに領域外からバックドア・ソーホーへつながる仮設ポータルが設置された後に、先遣隊が突入した。しかしながら、異常領域への先遣隊の突入は間もなく多数の悪魔実体に阻まれたため、フェーズ1の達成には6時半頃の夜明けからの反撃を待つこととなった。この反撃により、SCP財団機動部隊 M-13("ゴーストバスターズ")とΓ-10("バルムンク")らは午前11時頃にソーホーに位置するサイト-28跡地に橋頭保を築くことに成功する。しかしながら、カオスインサージェンシー戦闘員やUE-1109・1110の攻撃により、フェイズ2(補給線の確保)には失敗したほか、多数の避難民を収容していたサイト-28を陥落前に救援するには至らなかった(先遣隊は6時41分時点でサイト-28との通信を確立していた)。
また10時頃、ジェファーソン・ミラー教会ではネイサン・フィルモアらにより、マンハッタン・メカニクスの再構築が完了している。

午前12時頃になると、フェイズ2の達成に目途がつく。資料によると世界オカルト連合はこの時間帯、サイト-28跡地の橋頭保に前線指揮所を既に設置し、マンハッタン島南東部を飛行改装済の超重交戦殻(オレンジ・スーツ)を持つ排撃班9999("MaxDamage")で哨戒して悪魔実体を掃討し、SCP財団の機動部隊や世界オカルト連合排撃班6350("Hound Dog")らはチャイナタウン周辺などで民間人の収容や補給物資の収集に当たっていた。しかし、これら部隊は巨大エネルギー実体であるUE-1109-Aの来襲で死傷者やU-HECの損失を受けて、ソーホー周辺への一時的撤退を強いられることとなる。また、排撃班9999("MaxDamage")によりウィリアムズバーグ橋が爆破され、ブルックリン区への渡橋による悪魔実体の侵入を防いだ。
とはいえ、午前12時頃から日付が変わるまで合同部隊はソーホーを中心に多数の避難民を収容し、リンカーントンネル経由で彼らを島外へ避難させた。これら作戦には、P-4("聖歌隊")らSCP財団機動部隊が移送や護衛に、世界オカルト連合排撃班や境界線イニシアチブが随行・支援として悪魔実体の掃討に当たったほか、プロメテウス・ラボ・グループ社員が物資の集積や仕分けなど雑務を担当した。これら任務は非常に過酷であり、大量の悪魔実体やUE-1109に加えて、カオスインサージェンシーがマディソン・スクエア・ガーデンに設置した巣から生まれた巨大生物らなどの妨害により、避難便のバス停車場を何度も変更せざるを得なかったほか、避難民や護衛に当たった隊員に少なくない死傷者を出している。

特に午後11時半頃には、補給線であり避難便輸送路であったリンカーントンネル自体が「地獄とつながった」[3]ことにより、通行中だった避難便やトンネルの出入り口で待機していた作戦参加者らが、多数の悪魔実体による奇襲を受ける形となった。この際には、境界線イニシアチブ所属"啓示されし者たちの軍"第四徒を率いたウサマ=アル=カフタニが来援に訪れ、間もなく補給線は回復した。
15日[編集]
15日0時、世界オカルト連合による終結トリアージ実行まで10時間を切った。しかし15日未明から午前中にかけて、合同部隊らの戦況は急速に好転し、事件は収束していく。
まず、午前0時15分頃、セントラルパークにてマンハッタン・メカニクスとUE-1110が再び交戦し、マンハッタン・メカニクスがUE-1110を撃破する。これをSCP財団は「セントラル・パークにおける高次アキヴァ放射、異常ヒューム値、高レベルEVE反応は消失し、UE-1110は何らかの理由により自然消滅した」として観測した。その光景は非常に壮絶なものであり、二体の巨神が接近戦を繰り広げる様を恋昏崎新聞社が公開している。同社はイエロージャーナリズムの権化であることが広く知られているが、マンハッタン・メカニクスが武器として用いたクレオパトラの針が、メトロポリタン美術館近くの元々立っていた場所から数百m離れた場所で横倒しになり、先端が若干欠けている様子で発見されていることは事実である。[独自研究]また、壊れたる教会の聖典『壊れたる巨像の書』第14巻にもその戦いの様子が描写されている。
4時頃からはロウア―・マンハッタンやミッドタウンで転機となる戦闘が行われていく。ワールドトレードセンター周辺にはSCP財団機動部隊 N-7("下される鉄槌")や世界オカルト連合排撃班6350("Hound Dog")を中心とした作戦臨時顧問クレフが率いる神格攻撃部隊やマンハッタンの魔法少女たちが集結し、残るカオスインサージェンシー工作員やUE-1109と衝突を繰り広げ、エンパイアステートビル周辺ではSCP財団機動部隊 Z-23(バッカスの酒)がカオスインサージェンシー戦闘員らと交戦していた。
魔法少女たちは、4時頃にワールドトレードセンター周辺に集結して編隊を組み、同じく島内各所から分体を集結させて融合したUE-1109-Σと交戦する。UE-1109-Σはワールドトレードセンターへの進入を行おうとしていたようだが、彼女らによる足止めや魔法少女たちを導いていたリーダー格の女性による体当たり攻撃、カオスインサージェンシーが神格攻撃部隊の分断の為に敷設した次元異常によってそれを達成できず、UE-1109の核のあるエンパイアステートビルへ撤退を開始する。
SCP財団機動部隊 Z-23(バッカスの酒)は午前5時50分頃にはエンパイアステートビル中層に到達。エンパイアステートビルは12日の大規模攻勢による陥落以降、カオスインサージェンシーの拠点となるとともに、上層階にはUE-1109の核である「不和の林檎」が配されていた。ビル内にはパラヒューマンや敵性実体が割拠しており、特に不和の林檎の下では種々のヒトおよびパラヒューマンらが、儀式のために殴打・斬撃・咬みつき等により相互に暴行を加えている光景が広がっていた。上層階に到達したZ-23が不和の林檎を破壊したことで、UE-1109-Σは大きなダメージを受け、即座に分裂、その後9時頃には続々と衰弱して消滅している。
神格攻撃部隊は、午前4時15分頃に1WTC(ワールドトレードセンター・ツインタワー・北棟)の基部に到達する。ここに到達するまでに神格攻撃部隊は、カオスインサージェンシーの戦闘員となった大日本帝国異常事例調査局の歩行戦車やロシア連邦軍参謀本部情報総局"P"部局の改造兵士、1WTC上層の"悪夢姫"の爆撃によって多くの隊員を喪失した。さらに、4時半頃にカオスインサージェンシーの工作員によって発生した島南部の次元異常により、ワールドトレードセンター周辺が封鎖され、部隊はサイト-28による管制と補給線を喪失する。
とはいえ1WTC内部に到達すること自体には成功した神格攻撃部隊は、クレフ率いる先遣隊とジャスティン・エバーウッド率いる隊に隊を二分して、上層階への進入を目指した。4時50分頃には先遣隊が44階まで到達、エバーウッド隊は33階までの制圧を完了。さらに先遣隊は外壁を登攀する戦闘強化服(ホワイトスーツ)隊とクレフ率いる陽動部隊に部隊を分割し、78階第二スカイロビーへの奇襲を行い、これを成功させる。この奇襲や続く戦闘で神格攻撃部隊は、多数の死傷者を出しながら"悪夢姫"を殺害するが、さらに来襲した工作員や戦闘員、突如発生した異常領域などによって壊滅的な被害を受け、作戦臨時顧問アルト・クレフなど少数だけがUE-1111が存在する1WTC頂上に到達する。その後、彼らが何らかの手段で1WTC上層とUE-1111を基底現実および異常領域から完全に切除したことで、作戦は完了した。彼らの行方はいまだに不明である。
午前9時45分、SCP財団リバティ島基地は、マンハッタン島外縁地域におけるヒューム値の回復と周期的アキヴァ放射の消滅を確認したことを公表、これを受けて世界オカルト連合事務局はピチカート手順の一時停止を揮下の部隊に通達した。終結トリアージが実行される午前10時まで僅か15分、まさにタッチの差であった。この間、マンハッタン島の異常領域は急速に縮小していき、それと連動して悪魔実体も次々と消滅していった。これと並行して、スタテン島に駐屯していた境界線イニシアチブの主軸部隊が島内に隠されたカオス・インサージェンシーアジトの発見と制圧に成功し、多数のカオス・インサージェンシー構成員を拘束。10時30分、神格実体の排除を確認したSCP財団と世界オカルト連合は共同声明を発表して、事態収束を宣言した。
収束[編集]

9月17日、マンハッタン各所に縮小して残った各地の異常領域から一体の悪魔実体が出現し、木の棒やパイプの先に白い布を括りつけて頭上でそれを振って見せた。これを停戦交渉と受けて、翌18日にSCP財団は異常領域内に探索隊を派遣した。
探索隊は異常領域内部で悪魔実体たちを従える"王"と主張する悪魔イブリースと接触した。イブリースはカオスインサージェンシーやそれが召喚した神格によって、異常領域や悪魔実体の支配権を強奪されたことを主張し、事態の収束により支配権を回復したことで交戦を中止させて交渉の席を用意したのだと説明したという。イブリースは交渉に際し、自身の身柄と財産の保護の代わりに、24時間エネルギーさえあれば使用に制限のない悪魔実体を労働力として供出することを提示した。SCP財団は、財団法務部門や事案調査委員会の検討のうえで、イブリースとの地位協定文書を策定。すべての悪魔実体は契約に従って収容を受け入れ、地位協定文書のコピーが世界オカルト連合と境界線イニシアチブに送付された。この契約に対して、両組織は抗議を表明した。また、「悪魔実体の長(イブリース)はカオス・インサージェンシーにより領域と悪魔実体の支配権を強奪された被害者でもあり、殺害された悪魔実体は犠牲者でもある」という情報は復興事業の開始に合わせて、SCP財団によって流布され、市民の一部から同情を引き出している。
19日、被害状況の全貌が明らかになる。最終的な異常領域の浸食はマンハッタン島全域、隣接するブルックリン及びクイーンズ、ブロンクス、ニュージャージー州ハドソン郡の計720.8km2に達し、関連して述べ1500万人が異常存在に直接的な影響を受けたと考えられた。北米大陸における正常性維持機関の有する処理能力を完全に上回るこれらの事態に対し、両組織は政策の転換を迫られた。
また、15日にマンハッタン島が異常領域から回復して以降、メキシコ湾条約締結組織の検閲能力を超える報道が世界各国に対して行われた。特に、15日午後1時にCNNが放送したニュース特番の中で放映された、マンハッタンの魔法少女であるアンジェリーナ・ピカリングとマリエッタ・メイウェザーがマンハッタン・メカニクスの残骸の下に身を寄せる避難民に対して「団結」の言葉をもって激励する様子は大きな反響を呼んだ。これに呼応してコロンビア=カヴンを始めとする世界各地の タイプ・ブルー(魔術師・妖術師)互助会・団体並びにパラヒューマン擁護団体の多くが、「世界の団結」をスローガンに公民権運動を強化する声明を出した。米国政府はこれに協調し、メキシコ湾体制におけるパラヒューマン及びタイプブルーの部分的権利・義務の策定をSCP財団及び世界オカルト連合に強く要求した。
9月20日、事後処理に伴う衝突防止のためSCP財団と世界オカルト連合との間にハドソン川協定が締結され、相互の協力体制の確認が行われた。
世界オカルト連合(以下、連合)と財団の両者は、世界の平和及び安全の維持に寄与することを目的とし、以下のとおり行動することに合意する。
世界オカルト連合 事務総長
1 連合、財団の両者は以下の領域に関する全ての占有的主張を放棄する。
・マンハッタン島全域
2 財団は以下のアーティファクトの管理を全て請負し、これを管理する。
・SCP-2911-JP
・SCP-2911-JP-A
・SCP-2911-JP-B — 但し、SCP-2911-JP領域内に限る。
3 連合、財団の両者は以下の領域について相互の独立性を尊重し、非戦地帯とする。
・サイト-311
・ステーション-NA-019
.
.
.
125 連合、財団の両者は以下の存在についてその生来の権利を確認し、正常性ならびに現実性を毀損しない場合に於いて、可能な限りその生存と自由意志の存立を擁護する。
・人間型異常/脅威存在
本協定は2001年9月21日より効力を持つ。
連合、財団の両者全ての構成員が本協定に則って職務に対する拘束を受ける。 — 財団監督評議会 1号評議員
これにより、9月11月から始まった一連の事件とそれに付随する正常性維持機関間の共闘体制と論争に一区切りがついたことで、マンハッタン島はハドソン川協定下にコントロールされることが確定、本格的に事件は収束し復興事業が開始される運びと相成った。また協定締結に伴い、イブリースによる悪魔実体の労役提供の申し出は承認され、SCP財団法務部門が1800ページに及ぶ基準契約書を作成。悪魔実体に対する労役は1 WTCの隔壁建築作業から開始され、マンハッタン島の復興事業全体に拡大された。
また事件中から終息後しばらく、続々と各国の超常団体が人道支援のためにニューヨーク周辺に集結したほか、支援物資を提供した。マナによる慈善財団といったNGOの他にも、境界線イニシアチブ、アンタレス協会といった宗教団体が、被害者の衣食住の他にも心のケアに奔走した。プロメテウス・ラボ・グループはマンハッタン島に所有するもの以外にも多くの社有資産を避難民に提供し、社員を人道支援に送り出した。日本からも理外研グループを始めとする日本超常組織平和友好条約機構の認可団体以外にも人道支援や事態収束に関わったとみられる団体が存在するとされている。
この事件に関する国際連合の特別法廷は、2002年の夏頃から順次開始された。捕縛されたカオス・インサージェンシーや正常性維持機関、境界線イニシアチブ、ニューヨーク市警察の構成員、ニューヨークの避難民等は、法廷において原告、被告、証人など様々な立場で法廷に立った。また、マンハッタンにおいてカオス・インサージェンシーがラプターテック製やロゴス製の兵器等を多用した事実から、これらメーカーの社員・重役が参考人として招聘されている。
マンハッタン・メカニクス[編集]
詳細は「マンハッタン・メカニクス」を参照
マンハッタン・メカニクスは、壊れた神の教会・マンハッタン-スタテン合同教区のジェファーソン・ミラー教会の下に避難した市民によって構築された巨大人型機械である。セントラルパークにて、UE-1110を撃破し、事態収束に貢献した。戦闘後損壊した部位は避難所の一部に使われ、マンハッタンの魔法少女であるアンジェリーナ・ピカリングとマリエッタ・メイウェザーがその下で「団結」を説いたことでも知られている。
現在は決戦の地であったセントラルパーク内に保存されており、9.11復興モニュメントの一つとして、セントラル・パーク管理委員会及び国立セプテンバー11遺構管理センターに管理されている。また、毎年9月11日に行われるマンハッタン次元崩落テロ事件祈念式典はグラウンド・ゼロとマンハッタン・メカニクスの前で行われる。
事件後発表された、壊れたる教会の聖典『壊れたる巨像の書』第12巻には、メカニクスの再構築について以下のように描かれている。
- そしてあるべき五体が一つの場所に集まり、組み立てられようとしていた。
- 第一の欠片は胴と右腕。砕かれた戦士の駆体と鎧。
- 第二の欠片は左腕。あらゆる怪物を砕く怒りの拳。
- 第三の欠片は右足。破壊の橙に染まる血戦の脚。
- 第四の欠片は左足。魔術によって残骸より形造られた不壊の脚。
- 第五の欠片は頭脳。叡智と直感をもたらす未元の演算機。
- 欠片を捧げ持ち、司祭ネイサン・フィルモアは唱えた。
- 「祝福あれ、これより構築されるは我らが神の似姿。」
- 「我らの成せる業はけして完全ならず。されど永遠ならずとも、今ひとときに奇跡の御業を下し給え。」
- 信徒と良き市民により、欠片は彼の手を離れ、構築され始めた。
- 呪術者、異教徒、毛皮や鱗を持つ者、その場に居た全ての人が分け隔て無く鎚と鑕をとり、血と汗を注いだ。
- 信仰はその者の持つ肉体に束縛されず、あらゆる魂がそれを許される。
- なれば気高き精神もまた、地に生きるあらゆる者が持つのだろう。
- それを見たある者が語った。「敵対者カオスは肉体のみに注視し、人類としての正常を規定するだろう。しかし、それは暗黒の時代の再来であり、人々を迷わせる無知の霧をもたらす徒な探求である。」
- 「人を人たらしめるのは誇り高き精神のみ。世界を素晴らしいものに修復しようとする誇り高き精神である。」
- 欠片は組み合い、巨像の姿をとった。
- 聖霊-Birdeveはマクスウェリズムの信徒により巨像にはめ込まれ、目覚めた。
- そこには古代の力と現代の叡智が、噛み合った歯車のように宿っていた。
- 聖霊は感謝を述べ、巨像の完成について次のように慶ばしく述べた。
- 「この偉業は個のものではなく、携わった全ての者の尽力によるものであろう。」
- 「神を修復することは神には出来ず、構築者が欠けることは神を綻ばすこととなる。1人が欠けてもこの素晴らしきことは成せなかった。祝福があらんことを。」
- 巨像に雷が宿ると、全ての者はそこに奇跡を見た。
- そして、巨像の心なる原動機は唸りを上げ、再び大地に立った。
『壊れたる巨像の書』の記述と現在保存されている残骸から読み取るに、マンハッタン・メカニクスの構築には、壊れた神の教会の三宗派(壊れたる教会、歯車仕掛正教、マクスウェリズム教会)、ナルカ、シャークパンチングセンター、プロメテウス・ラボ、アンダーソン・ロボティクス、世界オカルト連合、蛇の手、Are We Cool Yet?、ザ・ファクトリー、ワンダーテインメント博士の構成員あるいは物品が関連していると見られている。このような事実はこのモニュメントが、人種と存在のるつぼであるマンハッタンのシンボルとして位置づけられたり、「人類の団結」という文脈において多く引用される要因の一つである。
"マンハッタンの魔法少女"[編集]
詳細は「マンハッタンの魔法少女」を参照
"マンハッタンの魔法少女"(Manhattan magical girls)は、事件当時マンハッタン島内部にいた市民の内、妖精(SCP財団指定: SCP-2910-JP)と契約を行ったことで限定的な奇跡術を行使できるよう(疑似タイプブルー)になった複数の女性のことである。彼女たちは、カオス・インサージェンシーの構成員やUE-1109と戦い、事態の収束に関わった可能性があるほか、複数の避難民の団体を窮地から救出したことで知られている。現在、マンハッタン・メカニクスのそばには、特定のモチーフはないものの、マンハッタンの魔法少女と妖精の姿が銅像となって置かれている。
彼女たちはリーダーである"アリソン"の下で戦ったが、"アリソン"は最後にUE-1109の腹部に体当たり攻撃を行って以後、妖精"ヘキサ"(en:Hexa(Manhattan magical girls))と共に行方不明である。
魔法少女として知られるものたちは、避難民であったリータ・ハクスリー、アンジェリーナ・ピカリング、マリエッタ・メイウェザー、境界線イニシアチブの"啓示されし者たちの軍"エージェントであったシビル・レイランドなどである。
タイプブルーである彼女たちの活躍や、アンジェリーナ・ピカリング、マリエッタ・メイウェザーによる避難所での演説は、それまで一般社会において低い地位に置かれていたタイプブルーやそれを内包するパラヒューマンが公的に人権を獲得していくきっかけとなった。
事件後、魔法少女たちの内身寄りを喪った者たちは、コロンビア=カヴンなどのタイプブルー互助会・団体の保護下に置かれ、既に成人であったり親族に身を寄せた者たちの多くも同様の団体と関係を持った。また、アンジェリーナ・ピカリングとマリエッタ・メイウェザーはパラヒューマンの公民権運動に従事し、「団結の魔法少女(後に魔女)」と呼ばれ親しまれている。今なお、ニューヨーク市においては魔法少女たちの人気は高く、「マンハッタンズ・マジカルガールズ」という彼女らの名を冠した強豪クィディッチチームの本拠地が置かれている[4]ほか、空を飛べるタイプブルーたちによる配達サービスや曲芸飛行によるパフォーマンスと、身近な生活から観光業までニューヨーク市の風景に溶け込んでいる。
テロの実行者[編集]
"悪夢姫"[編集]
詳細は「悪夢姫」を参照
"悪夢姫"(Hime Akumu)はSCP財団や世界オカルト連合の武装部門において、カオス・インサージェンシーの優秀な工作員として知られていた。黒髪のアジア人女性(少女)であり、無から物質の生成が可能な現実改変者である。彼女は常にカップケーキ型のショルダーバッグを携帯し、そこから爆発するカップケーキを作成することが可能であり、さらにそれを操ることができた。彼女の護衛だったヴァシリー・キリアコフと共に、事件前にダレス国際空港から入国。シャルロットの偽名を使っていた。事件中、"悪夢姫"は1WTC(ワールドトレードセンター・ツインタワー北棟)の上層階に構え、マンハッタン島南部を爆撃することで、合同部隊の地上戦力並びに空中戦力を攻撃・抑制した。15日に1WTCへ進入した神格攻撃部隊によって殺害される。
ヴァシリー・キリアコフ[編集]
ヴァシリー・キリアコフはロシア連邦軍参謀本部情報総局"P"部局の元エージェントで、"悪夢姫"の護衛役を務める工作員だった。「クリスマスツリーのような」多連装ハンドガンを始めとする多様な重火器の扱いに長けた優秀な軍人であったとされ、1WTCに進入した神格攻撃部隊と交戦し、"悪夢姫"を喪ってもなお、部隊と交戦を続け、多くの隊員を殺害した。事件前に"悪夢姫"と共にダレス国際空港から入国、エーリッヒの偽名を使用していた。
カシアン・ヤルゼルスキ[編集]
カシアン・ヤルゼルスキはカオス・インサージェンシーの軍需部門のエージェント。事件発生の一か月前にローガン国際空港から入国し、マンハッタン周辺に大量の軍需物資と工作員を輸送した。なお、当時のマンハッタン島周辺は国際連合超常問題特別総会の開催を前に、世界オカルト連合関係者が厳重な監視体制を敷いていた。
その他のカオスインサージェンシー構成員[編集]
連邦捜査局異常事件課は当事件の計画に関わっていた可能性のある人物として、上の他にカオス・インサージェンシー・ニューヨークセルの管理者であるサイラス・アイザックス、ファイサル・"アルタイル"・バシャールを挙げている。特に、サイラス・アイザックス、ファイサル・"アルタイル"・バシャールはヴァシリー・キリアコフ、カシアン・ヤルゼルスキと共に、ギリシャ共和国アルカディア県レオニディオにて、住民と友好的な関係を築いていた伝承部族が住民と共に虐殺された、レオニディオの悲劇に関わっていたとみられている。
報道[編集]
ニューヨークやワシントンには世界中の報道機関が本社・支社・事務局を置いているため、一連の事件は、テレビ、ラジオ、インターネットなどを通じて全世界にリアルタイムで伝えられた。連日、新聞や週刊誌なども最大級の扱いで事件を伝えた。事件中およびその後のテレビ報道はインターネットアーカイブで保存公開されている。しかしながら、異常領域周辺への進入と報道は事件中、正常性維持機関によって制限されたうえ、独自に死地へ踏み込んだジャーナリストの殆どは生きて帰らぬ人となったため、事態が回復する15日までに流された世界各国のニュース映像や写真の多くは、マンハッタン上空で旅客機が儀式陣を構築する映像や赤く染まったマンハッタン島の遠景映像、合同対策会議や正常性維持機関と関係の深い報道機関から提供されたものが殆どであった。また国外向けの放送局であるCNBC(ヨーロッパ/アジア向け、本部は米国内)やCNNインターナショナルでは、本来あまり放送されないアメリカ国内向けの放送を全編放送し続けた。
なお、旅客機が儀式陣を構築する様子は十数分に及んだため、その後のワールドトレードセンターへの突入と併せて、ニューヨーク市民の多くがそれを目に収めており、プロやアマチュアを含む多くのカメラマンに撮影され、間もなく報道された。これらの画像・映像の報道は1週間近くにわたり何十回、何百回となく繰り返されたが、これは多数の人間が殺害された瞬間にほかならず、遺族や関係者、さらには子供にショックやトラウマを与える可能性が懸念され、次第に自粛を要請する声が上がり、報道各社の殆どはそれに従った。なおマンハッタン島南部で撮影した映像はその後の異常領域の拡大に伴い、その多くが失われており、現在視聴できるものは状況終息後に正常性維持機関の部隊が島内に奇跡的にも残された撮影機器や記録メディアを回収したものである。
米国内[編集]
旅客機がマンハッタン上空に到達した、ニューヨーク時間(アメリカ 東部夏時間)8時46分はテレビ各局が朝のニュースショーなどの最中で、CNNは9時0分から、ABC、CBSなど他のテレビ局も9時10分前後から特別報道番組を開始、しかし、マンハッタン島内の基幹物理回線喪失と電波障害による混乱により、各テレビ局は島外からマンハッタン島を収める情報カメラや報道ヘリコプターによってマンハッタン島が赤く染まっていく状況を伝えるに留まった。
この後も11日午前中は、正常性維持機関やアメリカ合衆国国防総省超常部門(ペンタグラム)の混乱により、多くの情報が錯綜した。SCP財団内部で異常事例報告の初版が完成した午後3時頃になると、報道担当臨時管理官ジャック・ブライトによる初の会見が行われた(文面による発表は既に複数回行われていた)。この会見では、5機の旅客機が何者かによってハイジャックされ、マンハッタン島上空で儀式を完成させたことで外部からの進入が不可能な異常領域がマンハッタン島南部に出現したこと、異常領域内にはおよそ100万人が残されていることを再び説明した後、SCP財団は機動部隊を増強してマンハッタン島中部の市民の避難に全力を尽くしていることを強く表明し、世界オカルト連合事務局も同様の会見を開いた。なお、ここから12日午前中にかけて、正常性維持機関は「事態は制御下にある」との見解を崩さなかったため、各報道機関は楽観的な見方を報道するとともに、今後公表されるだろう収容/排撃計画についての予想を専門家を招いて報道した。
状況がさらに急変し悪化していった12日午後から13日午前にかけては、そのような見解の表明は鳴りを潜めたが、SCP財団や世界オカルト連合、アメリカ合衆国政府による報道検閲は機能していた。特に、報道機関は13日未明にSCP財団のサイト-310で開始された、プロメテウス・ラボ、ディア大学、蛇の手、理外学研究所、ICSUTの空間工学者たちによる異常空間内へ大規模に戦力を送り込む手段の開発の為の共同研究に触れて、突入作戦が開始される見込みであることや、これ以外にも前例のない超常団体の協力が事態を好転させるだろうことを宣伝したほか、12日正午頃にSCP財団が実行者の可能性が高いとして挙げたカオスインサージェンシーによる過去の攻撃での被害を挙げて、市民の不安を煽る一方敵を明確化した。また、13日8時頃のUE-1111の発見と報道はこれまで影も形もなかった異常空間の主の姿をあらわにしたことで、未知の敵という恐怖感を和らげることに繋がった。
13日10時の世界オカルト連合によるピチカート通告の公表はアメリカ市民に大きな衝撃を与えた。なお、報道機関はピチカート手順と併せて1998年の神格討伐によるバックラッシュでポーランド南部が壊滅したことについては触れたものの、正常性維持機関の指導を受けて控えめに報道したのだが、東海岸の市民はそれでも遠隔地への避難を加速させ、既に停止していた旅客便を避けて地上交通に集中し大規模な混乱を巻き起こした。また、13日午後にかけて準備が進んでいた突入作戦に関してはカオスインサージェンシーへの情報流出を懸念して詳細は報道されなかった。
14日午前、突入作戦のフェイズ1が成功すると、報道機関は一斉に現在進行中の作戦について大規模な報道を開始した。当初は正常性維持機関の広報部門が公開した映像を報道していたが、橋頭保や補給線が確立されると正常性維持機関と関係の深いジャーナリストが島内に足を踏み入れ、突入部隊の奮戦や避難民の救援の様子が次々とカメラに収められていった。
15日、マンハッタン島が異常領域から回復すると、メキシコ湾条約締結組織の検閲能力を超える報道が世界各国に対して行われた。特に、15日午後1時にCNNが放送したニュース特番の中で放映された、マンハッタンの魔法少女であるアンジェリーナ・ピカリングとマリエッタ・メイウェザーがマンハッタン・メカニクスの残骸の下に身を寄せる避難民に対して「団結」の言葉をもって激励する様子は大きな反響を呼び、パラヒューマンの公民権運動を加速させた。また、カオスインサージェンシーがSCP財団から離反した組織であるという事実や世界オカルト連合がマンハッタン島に対してピチカート手順を発令したことに対しての、様々な反感や疑念、憶測も報道された。しかしながら、前者に対してはタイプブルーが事態収束に尽力したことは事実であり、さらにアメリカ政府が迎合したため話題を呼んだが、後者に関してはあくまでただの疑念や反感に留まり、実際XK-クラスシナリオの回避は彼らの尽力によってなされたために、この時点では大きな話題を呼ばず、正常性維持機関らのプロパガンダによってその多くは沈静化した。
イギリス[編集]
イギリスは昼過ぎであった。BBCにおいてはテレビ国際放送・BBCワールド(現・BBCワールドニュース)内で速報として13時前に真っ赤に染まるマンハッタンの遠景を映し出したのが第一報であった。トニー・ブレア首相は14時30分ごろ、出席していたブライトンでの労働組合会議の場で「深い哀悼」の意を伝えた。
日本[編集]
テロ発生直前の報道内容[編集]
2001年9月11日は台風15号と台風16号が前日から関東地方と沖縄を襲って多くの被害をもたらしたほか、9月1日に発生した歌舞伎町ビル火災の原因究明、9月10日に国内で初めて狂牛病疑いのある牛が千葉県で発見されるなど、この日のニュース番組では重大ニュースが多数報道されていた。
事件発生後[編集]
9月11日22時3分(以下日本時間)、3機の旅客機が世界貿易センタービルに突入する。
22時前後、「ニューヨーク上空で異常事態」という情報が各局のニュース番組またはニュース速報で一斉に伝達され、まもなく世界貿易センタービルに旅客機が追突したとの情報が追って伝達された[5].
テレビ朝日(ANN)では、定時の21時54分より「ニュースステーション」の放送を開始した。冒頭は台風関連のニュースを伝えていたが、22時15分からCNNの映像をそのまま使用してニューヨークにおける異常事態を報道し、その後狂牛病の報道に戻った。
22時開始の「NHKニュース10」(NHK総合テレビ)も、冒頭のヘッドラインは台風のニュースなどを流していた。しかし、ヘッドライン終了後キャスターが「台風のニュースをまずお伝えしようと思ってたんですが、たった今こういうニュースが入ってきました」と切り出し、ニューヨークにおける異常事態を報道し、間もなくABCニュースの中継映像で真っ赤に染まるマンハッタンの空が映し出された。
この後日本のほぼ全てのメディアは報道特番を開始して翌日の明け方までテロに関する情報を伝え続けたが、現地の混乱から日本においても情報の不足や錯綜に見舞われた。その後、現地における正常性維持機関の状況回復と事件が異常性のものであるという情報を受けて、まもなく日本超常組織平和友好条約機構社会文化委員会は報道管制を本格化させ、さらに防衛計画委員会へその職務を移行させていく。
日本の放送メディアにおける海外の非常事態の終夜放送は、1998年7月12日に発生したポーランド神格存在出現事件(バックラッシュ発生以後)以来であった。また駐日アメリカ軍向けのラジオ放送を行うAFNも通常放送を中断してニュースを伝え続けると同時に、アメリカ軍の警戒態勢や行動上の注意を喚起する内容の放送を、ニュースの合間に繰り返し行っていた。
アメリカ市民の様々な反応[編集]
愛国心[編集]
喪失感が充溢する中でアメリカ国民は、求心力を愛国的な意識を共有することに求め、速やかな報復を肯定する世論が形成されていった。正常性維持機関による報道管制が敷かれたにも拘らず、イスラム原理主義を信奉するアラブ系人種(イスラーム過激派)によるテロ説が唱えられ、流言に乗った市民によるアラブ系住民の暴行事件が発生した。
こうした動きに対し、12日正午頃のSCP財団の会見において、ジャック・ブライト報道担当臨時管理官は初めてテロの首謀者の可能性がある組織としてカオス・インサージェンシーを挙げた際、「詳しいことは何も……いえ、彼らは少なくともタリバンではありません。共産主義者でもありません。お静かに。」とイスラム原理主義組織との関連性を否定したほか、境界線イニシアチブと関係のあるキリスト諸教会や諸モスクも悪魔との戦いを前にアブラハムの宗教の信者の団結を唱えていた。特に、9月14日深夜にリンカーントンネルにおいて、多数の悪魔実体を殲滅し途絶した補給線を回復させ、作戦を続行させると共に多くの避難民を救った境界線イニシアチブ"啓示されし者たちの軍"第4徒は、ウサマ・アル=カフタニに率いられたイスラム教徒の部隊であり、彼らの活躍は数多く報道された。
また、テロ発生直後に市民を守るために悪魔実体と対峙し殉職した警察官や消防隊員や、その後も正常性維持機関の部隊や軍に同行したニューヨーク市警察の警察官に対して、その勇気と献身的態度を賞賛する声がアメリカ合衆国のみならず世界中から寄せられ、その遺族に対する募金や手紙も世界各国から寄せられた。
さらに、事件の最中で活躍した疑似タイプ・ブルー、「マンハッタンの魔法少女」たちが、本来殆どがニューヨーク市の避難民であったことは、アメリカ国民に彼女らに対して、タイプ・ブルーへの嫌悪感・忌避意識[6]を超えて愛国心を想起することに繋がり、アメリカ合衆国においてタイプ・ブルーの公民権運動が進展することになった。
娯楽・文化活動の自粛[編集]
異常領域の浸食と破壊活動は、ナショナル・フットボール・リーグやメジャーリーグ・ベースボール、ナショナル・バスケットボール・アソシエーションの本部施設やスタジアム、ブロードウェイ・ミュージカルの各劇場を始めとした多くの文化施設に及び、これらは長期間の休止に追い込まれた。直接的な被害を受けなかったものでも、市民感情およびセキュリティ上の観点からニューヨークでは多くのアトラクションが興行中止となった。
一方、西海岸では多くの興行が再度のテロを警戒する警察官の警護の元にハドソン川協定締結後まもなく再開し、「テロにひるまず通常の生活を続ける」という意思表示を行うとともに、打ちひしがれたアメリカ合衆国国民の心を慰めた。また、コロンビア=カヴン所属のタイプブルーやフリーポート(超常自由港市)にてパフォーマーとして活動するパラヒューマンたち、正常性維持機関の慰問部隊、米国慰問協会による巡回興行や訪問が、避難所や作戦に従属した部隊に対して行われた。
また、全米1200もの系列局を傘下にもつラジオ放送大手のクリアチャンネル(en: Clear Channel Communications)は、13日に放送自粛曲リストを作成した。リストには、Queen『地獄へ道づれ』や レッド・ツェッペリン『天国への階段』など著名なアーティストの楽曲が多数含まれ物議を醸した。映画関連ではアメリカ国内や同盟国では、ニューヨークを舞台にしたりテロをモチーフにした映画は「被害者に不謹慎」として公開を延長、または自粛する作品が相次いだ。
移動手段の変化[編集]
テロ攻撃の後、アメリカ人の多くがテロを警戒して民間航空機による移動を避けて自家用車による移動を選択したために、同年の10月から12月までのアメリカ合衆国における自動車事故による死者の数は前年比で約1,000人増加した。
また、アムトラックやグレイハウンドなどの民間航空機以外の公共中長距離交通機関や、レンタカーの利用者も急増した。これによりグレイハウンドなどは臨時増便を行うなどして収益が改善したものの、空席が増えた航空会社の収益は悪化する結果となった。
ブッシュ大統領の支持率[編集]

事件直前、ジョージ・W・ブッシュ大統領の支持率は50%を切っていた。そもそも、前年の大統領選挙は僅差での勝利であるために、また大統領選における大規模な混乱は選挙の正当性への議論を招いたことから、選挙直後から政権支持率は高くなかった。そのため、事件は大統領就任後の初めての大きな事件としてその指導力が国民の注目を浴びることとなった。ブッシュ政権はテロとの戦いやニューヨークの迅速な復興、タイプブルーへの公民権拡大を打ち出したため、2001年の12月には国民の支持率は史上最高の9割に到達、いみじくも政権最初の年から国民の支持を得た形となった。
国際社会の対応[編集]
このテロに対する国際的な反発は大きかった。マンハッタン島における交戦とその後の現場検証・収容作業のために、国際連合本部は一時的な休止を強いられたが、11月には間もなく復旧し、国際連合超常問題特別総会が再開された。この総会において、アメリカ政府と市民に哀悼と連帯を表してワシントンと国連本部を置くニューヨークへのテロ攻撃を非難する決議A/RES/56/1を当時の全加盟国189カ国が満場一致で採択し、9月28日には史上初の国際立法とされる国際連合安全保障理事会決議1373で「全ての国」にテロ対策とその報告を義務付けた。安全保障理事会もテロの脅威に対して「あらゆる手段を用いて闘う」とした国際連合安全保障理事会決議1368を全会一致で採択した。
13日にブッシュ大統領は、イギリスのブレア首相、フランスのシラク大統領、ロシアのプーチン大統領、中華人民共和国の江沢民国家主席ら4人の常任理事国首脳と電話会談し、テロ対策で共闘を合意した。また、北大西洋条約機構、欧州連合などのような機関もブッシュ大統領のテロとの戦いの呼びかけに応じた。さらに、ヨーロッパ共同オカルトベンチャーや日本超常組織平和友好条約機構といった超常組織連合の多くがパラテロリズムへの非難と対抗を表明する決議を採択した。
事件の影響[編集]
マンハッタン次元崩落テロ事件は、アメリカ合衆国の政治の大きな転換点となると共に、ヴェール崩壊を引き起こしたポーランド神格存在出現事件に次ぐ国際社会の転換点となった。これは皮肉にも、カオスインサージェンシーが望んだ方向性とは真逆に、超常組織間の協調という前例を生み出したことやパラヒューマンの公民権拡大を加速させるものであった。
しかしながら、アメリカ国内では、事件が世界オカルト連合によるピチカート手順への反感やSCP財団への疑念を生み出したことから、アノマリーナショナリズムや超国家主義的な傾向が見られ始めた。これは、ブッシュ政権や続く政権が連邦捜査局異常事件課の再拡充と、カオスインサージェンシーが根を張っているとされた第三世界、特にかつて「アメリカの裏庭」と称されたラテンアメリカへの介入を強めたことからも分かるように政治にも影響を与えていく。とはいえ、これらの動きはパラテロリズムを警戒するSCP財団と世界オカルト連合との緊密な連携の下であり、メキシコ湾体制が本格的に綻びを見せるのは2010年代以降になる。また、このような動きの中で、プロメテウス・ラボ・グループは、本社を置くアメリカ合衆国の政府と、自社の再生事業に大きくかかわった正常性維持機関による束縛と支援を受けながら、拡大していった。
金融市場[編集]
次元崩落テロ事件において最初に被害を受けたマンハッタン島南部は、アメリカ経済、そして国際経済の金融センターであるウォール街を抱えていた。また、標的となったワールドトレードセンタービルは多くの 金融機関が入居していたため、金融機関は設備と共に多数の人員を一度に喪失した。事件発生時刻はアメリカ合衆国での取引が始まる前だったため、その日のアメリカ合衆国国内の取引は中止した。ニューヨーク金融市場が翌々週にマンハッタン島外の仮設取引所にて再開するまで、取引所や金融機関は修復作業に追われ、取引再開後のNYダウは急落した。
取引中だったヨーロッパではCNNやCNBCを通じて事態が明らかになるとすべての取引所で株価の全面安が起きる。明くる12日の東京市場の日経平均株価は大幅な下落となった。これは一部で「9.11ショック」とも報道されていた。その後多くの国においては株価の低迷がしばらくの間続くこととなる。
又、9月18日のタイムズ紙によると、事件の数日~数週間前にかけてアメリカ、日本、イギリス、ドイツ、イタリアの株式市場で航空会社や保険会社、軍事関連企業などの株式が大量に信用売りされ、テロ攻撃の結果、株価が暴落した直後に安値で大量に買い戻された不審な売買形跡が認められたという。
航空業界[編集]
このテロが航空機を用いたものであったことや、アメリカを中心とした大企業が緊急なものを除く外国出張の禁止を命じたことなどから、事件後は航空需要が一時的に激減し、世界中の航空会社が大きな打撃を受けることとなった。
テロの標的となったユナイテッド航空、デルタ航空、アメリカン航空だけでなく、標的にならなかったノースウエスト航空も、連邦倒産法第11章の適用を申請し経営破綻した。また、サベナ航空やスイス航空など、アメリカ以外の航空会社も多くが赤字に転落したうえ経営破綻し、そのうちのいくつかは姿を消した。
さらに、プロメテウス・ラボ・グループやエンゲルベルト・グループ、理外研グループが2000年代中頃に相次いで跳躍路を開発して建設を始めると、間もなく航空業界は圧倒的に速度で勝るこれとの競争を強いられ、段々と旅客機は地方交通やパラテクノロジーを利用できるインフラのない途上国への渡航手段にまで縮小していった。多くの航空会社は地方航空会社として自活するほかに、国営化の上で途上国や国内の交通困難地域への路線の維持を担うなどしていく。

また、以前より空港に限らず数多くの交通機関や"道"での保安体制が強化され、搭乗客への身体検査や手荷物の検査が厳重化されたほか、操縦室・運転室のドアなども強化された。
パラヒューマンの人権問題[編集]

アメリカ合衆国政府の要求で盛り込まれたハドソン川条約第125条により、SCP財団と世界オカルト連合は「正常性ならびに現実性を毀損しない場合に於いて、可能な限りその生存と自由意志の存立を擁護する」方針を正式に決定し、世界各国においてタイプ・ブルー(妖術者・魔術師)が正当な理由なく拘束・殺害される事案は急速に減少していった。一方で、タイプ・グリーン、現実改変者に対しては、2002年のブルックリン教区児童虐待事件(en: Catholic Church sexual abuse cases)の例から分かるように十分な保護や教育の提供が未だ不十分であり、マンハッタン次元崩落テロ事件以後もアメリカ国内において強力な現実改変者による重大犯罪の発生数とその後の現場における即時排撃数は横ばいのままであった。アメリカ合衆国政府は、これらの事態を危惧したことや、国内やそれに連なる超常コミュニティに在住しているパラヒューマンらを公的に「移民」として管理下に置くため、そしてパラテロリズムの予防のために、FBI-UIUの再拡充や権限の強化、ネクサス・ポータル間移動の規制、国内の超常コミュニティ・パラヒューマンの大規模調査、地域超常コミュニティの地元社会への編入もしくは地方政府化、現実改変者教育・啓蒙の研究を2003年に開始した。
ロイド=セッションズ法(en: Lloyd-sessions law)などこれらの施策は、超常コミュニティのアメリカ社会への合併、そしてホモ・サピエンスのパラヒューマンの公民権獲得・回復という点で効果的であった。しかしながら、これらの施策による「自由」な超常市民像の終焉は、これまでアメリカ政府が言うところの「無法」の世界で暮らしてきた超常コミュニティ[7]の住人からは批判も多いものであった。また、アメリカ国外においては、アメリカ同様、自国民として正規に登録されているホモ・サピエンスのパラヒューマンはそのまま主権の保護下に置かれるようになり、その他は自治機能を有する国内の超常コミュニティを自国の自治地域として編入することでパラヒューマン保護を進めていった。しかし積極的に接触を図ってきた伝承部族が多数いたギリシャ、2009年の奇蹄病事件や2015年のスペイン国民カワウソ化事件に遭遇した日本やスペインなどの例外を除けば、アメリカほど非ホモ・サピエンスのパラヒューマンの人権問題が問題として真剣に国政に浮上し、2020年代初頭までに問題の解決が非常に強力に推進された例は少なく、特に後進国においてはパラテクノロジーの受容と同じく対応策が遅滞したことで南北問題を浮き彫りにした。
復興事業[編集]
マンハッタン島とその周辺の復興事業は、現場検証と収容作業と並行して計画され、終了次第開始された。ブッシュ政権は12月までに第三次復興予算案を可決させ、SCP財団建設部門及び世界オカルト連合天地部門の協力の下で作業が迅速に行われたことで、周辺では復興特需に経済が湧いた。その結果、11月半ばまでに比較的被害の少なかったセントラル・パーク以北では、再び市民生活が復旧し、その度合いも順次南下していった。
工事現場ではイブリースによる悪魔実体の労役提供が行われ、硫黄の煙やガスを吸う悪魔実体の労働者たちがマンハッタンの街頭に溶け込んでいった。一方で、悪魔実体の導入に対し、人間の労働者は複数回ストライキを行い、工賃の引き上げを要求したほか、遺族団体から少なくない非難があった。
さらに事件の風化を抑えるため、正常性維持機関とアメリカ合衆国政府はマンハッタン島において、9.11復興モニュメントの整備を進めた。ワールドトレードセンター・プラザや周辺は「グラウンド・ゼロ」として慰霊の場所やナショナル・セプテンバー11メモリアル&ミュージアムとして整備され、マンハッタン・メカニクスの残骸は団結の象徴として保存されている。
なお、ワールドトレードセンター・コンプレックスの大部分は、正常性維持機関による収容体制下に置かれ、1WTCは物々しい隔壁に包まれた。5・6WTCはSCP財団サイト-311に、2・3は世界オカルト連合ステーション-NA-019に指定された。ワールドトレードセンター・コンプレックスが正常性維持機関らに明け渡されたことで、マンハッタン島内に本来あったオフィススペースは近隣のジャージーシティ等の開発で賄われることなった。
これらの復興事業は2003年までに終了し、悪魔実体の契約はSCP財団の監視統制下でニューヨーク・ニュージャージー港湾公社と市労働局に移管されている。この結果、ニューヨーク市は全米で最も労働人口に悪魔実体が占める割合が高い市となった。また、パラヒューマン人口も流入し、マンハッタンは「人種と存在のるつぼ」と言われるような、多様でパラテクノロジーの発展した近未来的な街となった。
陰謀説[編集]
マンハッタン次元崩落テロ事件に対するアメリカ合衆国政府やSCP財団、世界オカルト連合による公式見解は「カオス・インサージェンシーによるメキシコ湾体制の解体や、ヴェール体制の解体への反抗を目的としたテロ事件であり、多数の神格の顕現や異常領域の展開といった方法は正常性維持機関を始め、誰もが予想もつかなかった」というものである。
これに対してテロリズムをアメリカ合衆国政府や正常性維持機関、プロメテウス・ラボ・グループがあらかじめ知っていたが無視したとする説、政府や各正常性維持機関自身、プロメテウス・ラボ・グループによる自作自演であるとする説が唱えられている。また、本事件の公式見解を支持する場合であっても、事件時の不手際などを政府や軍が隠蔽しているのではないかという疑惑も、広義の陰謀論と呼べる。
このような説が唱えられる背景には、このテロが低迷していたブッシュ政権に高い支持率を与えたこと、カオス・インサージェンシーがSCP財団から離反した組織であること、世界オカルト連合がパラテロリズムとの戦いを名目に各国のアノマリーナショナリズム政策に圧力を加えたこと、復興事業や事件を契機にプロメテウス・ラボ・グループが更なる伸長を果たしたこと、プロメテウス・ラボ製の精神同調機器がハイジャックに用いられただろうことに加えて、SCP財団や世界オカルト連合が1998年以前からの当時の陰謀論における秘密結社とよく似た特徴を持っていたことが挙げられる。
見逃し説[編集]
SCP財団による見逃し説[編集]
SCP財団による見逃し説は以下のような事実や憶測から構成されている。
- カオス・インサージェンシーはSCP財団から離反した組織であるという事実
- 旅客機群の当初の標的が国際連合本部であったという推測
1998年以前は世界オカルト連合とSCP財団が公然と対立していたという事実
- ニューヨーク市内・周辺の武装資産の多くを(国連総会に合わせて)引き上げていたという事実
- 事件直前に航空会社や保険会社、軍事関連企業などの株式が大量に信用売りされ、テロ攻撃の結果、株価が暴落した直後に安値で大量に買い戻された売買形跡の実行主体がSCP財団やそのフロント団体であるというという憶測
- 単なる情報伝達の不手際
世界オカルト連合とアメリカ合衆国政府による見逃し説[編集]
世界オカルト連合とアメリカ合衆国政府による見逃し説は、カオスインサージェンシーの計画をSCP財団を経由して知りながら、あるいは独自に察知したにもかかわらず見逃したというというものであり、以下のような事実や推測から構成されている。
- カオス・インサージェンシーはSCP財団から離反した組織であり、SCP財団は世界オカルト連合、合衆国政府という緊密な関係を維持していたという事実
- 自国民や自組織の構成員を自ら殺すほど、そこまでひどいことはやらない。これほどの事態を秘密にしておくことは不可能(自作自演に対しての反論の一種)
- 事前にパラテック技術者やゲリラ活動家の北米進入を確認しており、さらに彼らとカオス・インサージェンシーとの関係性が連合の精神部門で推測されていたという事実。
- 事件直前に航空会社や保険会社、軍事関連企業などの株式が大量に信用売りされ、テロ攻撃の結果、株価が暴落した直後に安値で大量に買い戻された売買形跡の実行主体が世界オカルト連合やそのフロント団体、合衆国政府やそれに連なる人物・団体であるというという憶測
- 単なる情報伝達の不手際
自作自演説[編集]
カオス・インサージェンシーとSCP財団の関係に対する疑念[編集]
カオス・インサージェンシーがSCP財団からの離反組織であるという事実は、事件当時はあまり知られたものではなかった。首謀者としてのカオス・インサージェンシーが初めて浮上した9月12日の会見において、SCP財団ジャック・ブライト報道担当臨時管理官は以下のように述べている。
しかしながら、我々はカオス・インサージェンシーと名乗るテロ勢力による関与の証拠を入手しています。 この勢力は、えー、非常に危険なテロリストであり、複数のアノマリーを保有しています。 マンハッタン島への攻撃の大部分は、彼らによって引き起こされた可能性があります。 詳しいことは何も…… いえ、彼らは少なくともタリバンではありません。 共産主義者でもありません。 お静かに。
とはいえ、カオス・インサージェンシーが財団からの離反組織であるという事実は、超常社会の専門家や一定のクリアランスレベルを有する財団職員にとっては公然の事実であり[8]、事件後まもなく、それは一般市民の知る所となる。
特に、カオス・インサージェンシーの分派元がSCP財団の議決機関であるO5評議会の直属の部隊であり、最高レベルの機密性と忠誠を要求されるだろう、機動部隊アルファ-1 ("レッド・ライト・ハンド")であったという定説は、カオス・インサージェンシーの首脳部デルタ・コマンドが現在もO5評議会に忠誠を誓っており、今回の事件はO5評議会による指令であるのだという言説に結び付いた。
恋昏崎新聞社やその他の、これまで超常社会でイエロージャーナリズムや反正常性維持機関的な報道を繰り返してきた報道機関は、SCP財団の管理部門[9]に所属していたというヒュー・マクラウドの著書から以下の箇所を引用したほか、カオス・インサージェンシーによる攻撃がメキシコ湾体制の結束につながったという事実や、カオス・インサージェンシーの攻撃予告がメキシコ湾体制による諸外国への介入へつながったという事実からSCP財団による自作自演説を唱えた。
実際、O5評議会に関してはその全て(存在さえもだ)が矛盾と欺瞞に満ちている。それに連なる管理部門でさえそうであるし、直属部隊である赤い右手、それから離反したという要注意団体カオス・インサージェンシーもそうだ。カオス・インサージェンシーが財団職員の敵対者であるというのは事実だが、彼らが実行した作戦の中には、運のいいことに"財団の利益"になるものが極稀にだがあった。これを単なる偶然と読むか必然と読むかという論は、周辺の事実の矛盾と欺瞞からそもそも成立しないのだが。
また、マンハッタン次元崩落テロ事件以前のカオス・インサージェンシーによる事件が、メキシコ湾体制の結束につながったと見ることができるとしても、テロ事件がそれに綻びを生んだという事実に対しての反論としては、単なる情報伝達の不手際であったという説の他に、次元崩落テロ事件を以て本当にカオス・インサージェンシーがO5評議会に対して敵対したのだという説が挙げられる。
事件当日のマンハッタン周辺の機動部隊・排撃班の配置[編集]
スリーポートランド市政府の社会学者であったマルグレート・デュルラーを始め、超常社会に拠点を置く学者のいくらかは、事件当時の正常性維持機関らの部隊配置数が過少だったのではないかと疑問を呈している。
SCP財団は事件当時即時に展開できた部隊が少なかったことについて、国際連合超常問題特別総会開催中であったために世界オカルト連合に配慮した結果だと述べているが、これについてデュルラーらは、SCP財団が連合に秘密裡で有事の為にマンハッタン島やその周辺に部隊を潜ませておくことは容易に出来得るし、その様なことをしないのはおかしいと述べている。
また、世界オカルト連合についても、当時の動員部隊の殆どが特別総会参加者の護衛と避難に割かれたことについて、想定外の事態とはいえ危機対応が杜撰だった、あるいは連合にしては対応力が低いと述べている。
しかしながら、これらの意見については、1998年以前の協調主義が始まる前の古くからのSCP財団観・世界オカルト連合観に支配されたものであるという指摘がある。また、本当に正常性維持機関らが種別や内容は別として非常に大規模なテロ攻撃を受ける事態を想定していた可能性があるかどうかは、全く不明である。
都市伝説[編集]
この事件について以下に挙げるもの以外にも多くの都市伝説が生まれている。
ユダヤ人陰謀論[編集]
「事件当日、ワールドトレードセンター・コンプレックスなどマンハッタン島で働いていた9000人のユダヤ人全員が仕事を休んでいた」とされる噂が広まった。中森隆志によると、この噂が発信されたのは「ザ・ナイツ・オブ・トゥルース(真実の騎士団)」(en: The knights of trues)というウェブサイトであり、インターネットで活動している超常現象真実主張団体の1つである。このサイトはカオス・インサージェンシーに対して度々好意的な記事を書くことが知られており、一部の超常社会学者の中には、同団体とカオスインサージェンシーの繋がりを疑う者もいる。また、日日新聞の小池豊はこうした「9000人欠勤説」や「ユダヤ人101人がハイジャック機への搭乗予定をキャンセルした」などの記事を掲載したドイツの週刊紙に取材したが情報源は明かされなかった。これらの都市伝説・陰謀について小池は自身の著書で、未だ世界で根強いユダヤ人陰謀論が、典型的な秘密組織であるSCP財団O5評議会や世界オカルト連合の108評議会といった題材に結び付いた結果であるとしている。
「このテロは事前に予言されていた」という説[編集]
代表的なものは「ノストラダムス予言集のいくつかの詩篇で予言されていたとするもの(どの詩篇と結び付けるかは論者によって異なる)」。また、インターネット上では捏造された詩篇も複数出回った。
題材とした作品[編集]
詳細は「Category:マンハッタン次元崩落テロ事件を題材とした作品」を参照
注釈[編集]
- ↑ 世界オカルト連合精神部門は、連合の外交部門に当たり、アノマリーの監視や国際超常コミュニティの監視・折衝を行う。
- ↑ 特別総会開催のために、連合の武力が集中し、また同会議に招かれていた多数の境界線イニシアチブの聖職者がいたため、周辺で一番安全な場所であったため。
- ↑ 70年前の掘削当時に多数の行方不明者を出したことで、トンネル内は地獄とつながっているという伝説があった。
- ↑ 結成当時には、多くの「魔法少女」たちが所属していたが、2011年に最後の「魔法少女」であるアリシア・ピカリングが引退している。
- ↑ 民放のうち、日本テレビ系列は『火曜サスペンス劇場』、テレビ朝日系列では『ニュースステーション』がそれぞれ放送中だった。TBS系列は『ジャングルTV ~タモリの法則~』(毎日放送制作)、フジテレビ系列ではドラマ・『ウソコイ』(関西テレビ制作)がそれぞれ開始した直後だった。この中でニュース速報が出された。
- ↑ 保守的なクリスチャンが遍在する欧米諸国においては、魔女や悪魔と同一の存在、あるいはそれに近いとみなされたパラヒューマンに対する社会的感情というものは必ずしも好ましいわけではなく、当時は現在よりさらに顕著・公然のものであった。
- ↑ かつての超常コミュニティが無法であったという見方は大いに誤りであり、市政府を持つスリーポートランドやユーテックではれっきとした明文法が、宗教系コミュニティでは経典やカノン法が、そういったものがなくとも少数の法と大部分の慣習法が機能しており、こういった小世界の集合体である超常コミュニティを大して尊重しないUIUのやり方には反発があったのは確かである。
- ↑ しかしながら、カオス・インサージェンシーの具体的活動や詳細な情報、能力は、被攻撃者であるSCP財団の機密情報を含んでいたために財団の検閲と隠蔽によりその多くが不明であり、当時の世界オカルト連合でさえSCP財団との情報協力によって、ようやく事件前にそれを知ることができた。
- ↑ 財団の内部部門の一つであり、O5評議会に直属して下部組織を管理する重要組織。
関連項目[編集]
- ワールドトレードセンター爆破事件
- 外国情報監視法
- アメリカ2001年不信郵便物事件
- テロリズム
- 大量殺人
- カオス・インサージェンシー
- 2026年世界同時多発テロ事件(TSUBAME事件)
- チリ・クーデター(1973年の「9・11」)
- 1945年エンパイア・ステート・ビルディングB-25爆撃機衝突事故 - 同じニューヨークで起きた航空機のビルへの衝突事故