脇田晴子

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脇田 晴子(わきた はるこ、1934年3月9日 - 2016年9月27日)は、歴史学者滋賀県立大学名誉教授。専門は日本中世史、日本女性史。夫は歴史学者の脇田修。旧姓は麻野[1]

経歴[編集]

兵庫県西宮市生まれ[2]。父は俳人の麻野恵三[2]。実家は地主・素封家で[2]農地改革で没落した[3]。子供の頃から謡曲仕舞小鼓をやらされていた[3]。1952年大阪府立北野高等学校卒業[2]。1956年神戸大学文学部史学科卒業[4]。1960年脇田修と結婚[2]。1963年京都大学大学院文学研究科博士課程修了[4]同志社女子大学非常勤講師(日本女性史担当)[5]。1967年橘女子大学(2005年京都橘大学に改称)文学部助教授[4]。1969年「中世商工業座の構造」で文学博士(京都大学)[6]。1971年橘女子大学文学部教授[4]。1984年鳴門教育大学学校教育学部教授[4]。1990年大阪外国語大学外国語学部教授[4]。1995年滋賀県立大学人間文化学部教授[4]。2004年城西国際大学大学院人文科学研究科客員教授[4]。2007年石川県立歴史博物館館長[4]。2010年京都橘大学名誉教授[4]

1964年に理系の研究者らと京大婦人研究者連絡会(1975年より京都婦人研究者連絡会[7]、1994年より「女性研究者の会・京都[8])を結成した[9]。1970年に芝田正子(のち京都橘大学事務局長)と京都婦人問題研究会を結成した[5][9][10]。1976年に代表となって京大出身者を主軸にした女性史総合研究会を設立し[5][11]、1977から1979年度に科研費の助成を受けた共同研究「日本における婦人問題の歴史的総合的研究」の研究代表者を務めた。研究成果として女性史総合研究会編『日本女性史(全5巻)』(東京大学出版会、1982年)を刊行した後、同研究会は解散した[12]。脇田ら西日本在住の研究者は研究会活動を継続し、研究成果として脇田編『母性を問う――歴史的変遷(上・下)』(人文書院、1985年)を刊行した[10]。1986年6月に女性史総合研究会を再開し、1989年まで初代代表を務めた[10]。2005年に女性史学賞を創設した[13][14][15]

2016年9月27日、心不全のため神戸市内の病院で死去、82歳[16]

賞歴[編集]

人物[編集]

中世商業史研究の第一人者[18]女性史研究の先駆者[14][15][19]。商業史の研究から入り、京都を中心にした都市論に取り組んだ後、女性史を研究した[20]。商業史の研究で中世は経済活動が活発だったこと、その中で女性が大きな役割を果たしたことを明らかにした[14]。6歳の頃から能楽の稽古を行い[21]、芸能史の研究でも業績を上げた[14]白拍子など女性が担った芸能が後に能や狂言に影響を与えたことを明らかにした[15]

部落史の研究でも業績を上げた[22]。『日本中世商業発達史の研究』(御茶の水書房、1969年)で林屋辰三郎被差別部落形成に関する散所説を批判し、林屋と散所をめぐって論争を行った[23]。「中世における性別役割分担と女性観」(女性史総合研究会編『日本女性史 第2巻』東京大学出版会、1982年)で網野善彦の南北朝期まで非農業民が天皇に直属し、天皇・宮廷の力が弱まった時点から卑賤視が始まったという説を批判し、網野と遊女や白拍子の身分をめぐって論争を行った[24]

1996年から2004年に石見銀山遺跡調査整備委員会委員、1997年から2004年に石見銀山歴史文献調査団団長、2004年から2006年に世界遺産の推薦書作成専門委員会委員を務め、石見銀山の世界遺産登録に大きな役割を果たした[25]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『日本中世商業発達史の研究』(御茶の水書房、1969年)
  • 『日本中世都市論』(東京大学出版会、1981年)
  • 『室町時代』(中央公論社中公新書]、1985年)
  • 『大系日本の歴史7 戦国大名』(小学館、1988年/小学館[小学館ライブラリー]、1993年)
  • 『日本中世女性史の研究――性別役割分担と母性・家政・性愛』(東京大学出版会、1992年)
  • 『中世に生きる女たち』(岩波書店岩波新書]、1995年)
  • 『中世京都と祇園祭――疫神と都市の生活』(中央公論新社[中公新書]、1999年/吉川弘文館[読みなおす日本史]、2016年)
  • 『女性芸能の源流――傀儡子・曲舞・白拍子』(角川書店[角川選書]、2001年/KADOKAWA[角川文庫]、2014年)
  • 『日本中世被差別民の研究』(岩波書店、2002年)
  • 『天皇と中世文化』(吉川弘文館、2003年)
  • 『能楽のなかの女たち――女舞の風姿』(岩波書店、2005年)
  • 『能楽からみた中世』(東京大学出版会、2013年)

共著[編集]

  • 『歴史の中のジェンダー』(M・ペロー、G・デュビィ、A・コルバン、網野善彦、河野信子、五味文彦、三枝和子、佐佐木幸綱、鶴見和子、波平恵美子、宮田登、若桑みどりほか共著、藤原書店、2001年)
  • 『物語 京都の歴史――花の都の二千年』(脇田修共著、中央公論新社[中公新書]、2008年)

編著[編集]

  • 『母性を問う――歴史的変遷(上・下)』(編、人文書院、1985年)
  • 『日本女性史』(林玲子、永原和子共編、吉川弘文館、1987年)
  • 『ジェンダーの日本史 上 宗教と民俗 身体と性愛』(S.B.ハンレー共編、東京大学出版会、1994年)
  • 『ジェンダーの日本史 下 主体と表現 仕事と生活』(S.B.ハンレー共編、東京大学出版会、1995年)
  • 『アイデンティティ・周縁・媒介――「日本社会」日仏共同研究プロジェクト』(アンヌ ブッシイ共編、吉川弘文館、2000年)
  • 『周縁文化と身分制』(マーチン・コルカット、平雅行共編、思文閣出版、2005年)

出典[編集]

  1. デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「脇田晴子」の解説 コトバンク
  2. a b c d e 『日本歴史』第823号、2016年12月
  3. a b 坂東昌子、野口美智子、新山陽子編『女性と学問と生活――婦人研究者のライフサイクル』勁草書房、1981年、105-110頁
  4. a b c d e f g h i j 京都橘大学が、文化勲章受章者・脇田晴子元教授に名誉教授の称号を授与 大学プレスセンター、2010年12月4日
  5. a b c 脇田晴子「女性史と私 私の女性史研究の軌跡」『総合女性史研究』第21号、2004年3月
  6. 中世商工業座の構造 CiNii Research
  7. 新山陽子「京都通信 京都における婦人研究者運動の歩み――京都婦研連編『女性と学問の生活』刊行に際して」『新しい歴史学のために』第167号、1982年5月
  8. 女性研究者の会・京都編『女性研究者は歩む――20世紀から21世紀へ』女性研究者の会・京都、1999年
  9. a b スペシャル・インタビュー 私達の在り様が歴史を創る/脇田 晴子 石川県立歴史博物館館長 平成22年秋 文化勲章受章」『共同参画』2011年6月号
  10. a b c 当研究会について 女性史総合研究会
  11. 伊藤康子『女性史入門』ドメス出版、1992年
  12. 近世女性史研究会編『論集近世女性史』吉川弘文館、1986年
  13. 2025年度「奈良女子大学アジア・ジェンダー文化学研究センター 第20回女性史学賞」募集要項 奈良女子大学、2025年4月18日
  14. a b c d 女性史研究の歴史学者、脇田晴子さん死去 文化勲章受章 朝日新聞、2016年9月28日
  15. a b c 女性史研究の草分け、脇田晴子さん死去 文化勲章受章、滋賀県立大名誉教授 産経新聞、2016年9月28日
  16. 脇田晴子さん(鳴教大元教授)|訃報 徳島新聞、2016年9月29日
  17. 『日本中世被差別民の研究』(岩波書店刊) | 第25回(2003年) | 顕彰事業 公益財団法人角川文化振興財団
  18. 佐々木銀弥「脇田晴子著『日本中世都市論』PDF」『史学雑誌』第92巻第7号、1983年
  19. 脇田晴子さんが死去 滋賀県立大名誉教授 日本経済新聞、2016年9月28日
  20. 細川涼一日本中世女性史研究の軌跡 : 脇田晴子・田端泰子氏を中心に」『女性歴史文化研究所紀要』第33号、2024年3月
  21. UMINDO Volume 24 (3) 滋賀県立琵琶湖博物館
  22. 本学卒業生 脇田晴子氏が文化勲章を受章しました 神戸大学、2010年11月4日
  23. 横井清「散所」改訂新版 世界大百科事典 「散所」の意味・わかりやすい解説
  24. 小谷野敦「聖なる性」の再検討」『日本研究』第29集、2011年4月
  25. 10月(第2回)定例記者会見(10月29日) 島根県

関連文献[編集]

  • 網野善彦『日本中世の非農業民と天皇』(岩波書店、1984年/上・下、岩波文庫、2024年)
  • 部落問題研究所編『部落の歴史と解放運動 前近代篇』(部落問題研究所出版部、1985年)
  • 豊永聡美「中世における遊女の長者について」、安田元久先生退任記念論集刊行委員会編『中世日本の諸相 下巻』(吉川弘文館、1989年)
  • 網野善彦『中世の非人と遊女』(明石書店、1994年/講談社学術文庫、2005年)
  • 服藤早苗「脇田晴子氏を偲ぶ―総合女性史研究会創設の頃―」(『総合女性史研究』第34号、2017年3月)
  • 塚田孝編集・解説『研究の足跡――身分と部落問題』(部落問題研究所、2025年)

外部リンク[編集]