横モード

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電磁波横モードとは、電磁波の伝搬方向に対して垂直(横,transverse)向きの成分について特定の条件を満たすモードである。

概要[編集]

電磁界分布(電界,磁界)を考えて、その垂直方向(T)成分についての条件から分類する。マクスウェル方程式を解くことで、電磁界分布を得ることができる。 以下では電磁波の伝搬方向をZ方向として、その方向の電磁界をそれぞれとする。 また、同じ条件を満たす波は無数に存在するときは、導出中に境界条件として現れる整数()などを下付き添え字にして、と表記することがある。

物理的な起源[編集]

様々な種類のモードがある電磁波だが、それらの多くは平面波重ね合わせとして解釈できる。 平面波は横波であって縦波の成分はないわけだが、複数の伝搬方向の異なる平面波の重ね合わせでは 正味の伝搬方向が変化し、それに伴って電磁界成分はその方向に射影された成分を横・縦とするようになる。 こうして、あたかも縦波のような成分が現れる。 また、その平面波は伝送線路の境界で反射した波であったりする。

単一モードとマルチモード[編集]

伝送線路には、複数のモードが伝搬できる可能性がある。 しかしながら、通信の際にはただ1つのモードのみを使いたいことがある。 このとき、ただ1つのモードのみが伝送線路を伝搬する条件を単一モード条件と呼ぶ。

具体的には、電磁波はカットオフ周波数よりも高い周波数でなくては伝搬しないことによって制限される。 もし、カットオフ周波数よりも低い周波数の波源であったとすると、減衰して遠方まで伝搬しない。

ここで、カットオフ周波数は伝送線路の形状や寸法と電磁波のモードに依存して変化するので、モードごとに異なる値になりえる。これに対し、カットオフ周波数が最も低いモードを基本モード、それ以外を高次モードと呼ぶ。また、異なる電磁界分布をもつモードでも同じカットオフ周波数になる場合には、縮退しているという。(量子化された電子の軌道がエネルギー的に縮退し得るのと同じように?、量子化された電磁波のモードが周波数的に縮退し得る。)

よって、周波数が伝搬し得る波のうち、ある波のみのカットオフ周波数より高く、他の全ての波のカットオフ周波数より低ければ、前者の波だけが伝搬して、他の全ての波は減衰し、単一モード条件を満たす。

逆に、複数の波を利用することで高速に効率よく通信しようとする場合もあって、マルチモードと呼ばれている。

以上では周波数で議論したが、周波数と相互に変換できる波数でも同様の議論ができる。

種類[編集]

TEモード/TE波[編集]

TEモードあるいはTE波とは、垂直方向(T)の電界(E)成分を持たないモード/波である。 すなわち、ということ。 に加えても満たす場合は、通常TEMモード/TEM波と呼んで区別し、 数式的にも物理的にも異なる扱いが必要になる。 また、特に奇関数のモードはTE奇モード偶関数のモードはTE偶モードと呼ぶ。

TMモード/TM波[編集]

TMモードあるいはTM波とは、垂直方向(T)の磁界(M)成分を持たないモード/波である。 すなわち、ということ。 に加えても満たす場合は、通常TEMモード/TEM波と呼んで区別し、 数式的にも物理的にも異なる扱いが必要になる。 また、特に奇関数のモードはTM奇モード偶関数のモードはTM偶モードと呼ぶ。

TEMモード/TEM波[編集]

TEMモードあるいはTEM波とは、垂直方向(T)の電界(E)および磁界(M)成分を持たないモード/波である。 すなわち、ということ。 つまり、TEモードとTMモードの両方の条件を満たしたようなモードである。 また、静電界と同じ電磁界分布をし、電位差を必要とするため、2導体系でないと実現できない。 2導体系というのは、例えば並行平板コンデンサのように導体が2つに分けられていて、直流的な電圧をかけることができる系である。

準TEMモード/準TEM波[編集]

準TEMモードあるいは準TEM波とは、厳密にはTEMモード/TEM波ではないが、 ほとんどTEMモード/TEM波とみなせるモードである。

関連項目[編集]