放射性崩壊の法則

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

放射性崩壊の法則とは、放射性崩壊速度時間物質中の放射性原子の数に依存することを記述した物理法則である。これはフレデリック・ソディアーネスト・ラザフォードによって定式化され、両者は後にノーベル物理学賞を受賞した。彼らは実験的にこの法則を発見し、1903年に論文の「ラジウムとトリウムの放射能の比較研究」と「放射性変換」で発表し、次のように定義づけた。

放射性生成物の1つを分離し、その放射能を生成元の物質の放射能とは独立して調べた全ての場合において、放射能は幾何級数の法則に従って時間とともに減衰することが分かった。

そこからベルヌーイの定理を用いて、科学者らは次の結論に至った。

変換速度は、まだ変換を受けていない系の数に比例する。

この法則にはいくつかの定式化が存在し、例えば次の微分方程式で表される。

dNdt=λN

つまり。時間間隔dtの間に発生する崩壊数dNは、物質中の原子の数N比例することを表す。

指数法則[編集]

上記の微分方程式においてλは崩壊定数を表しmこれは単位時間あたりの放射性崩壊の確率を表し、その次元はs-1である。マイナス符号は、時間の経過とともに放射性原子の数が減少することを意味する。

上記の微分方程式を解くと次の形になる。

N(t)=N0eλt

従って、放射性原子の数は時間とともに指数関数的に減少する。崩壊率、つまり単位時間あたりの崩壊数は次の通り。

I(t)=dNdt

原子数も指数関数的に減少する。原子数の時間依存性を表す式を微分すると次の式が得られる。

I(t)=ddt(N0eλt)=λN0eλt=I0eλt
I0=初期時点における減衰率

したがって未崩壊放射性原子数と崩壊率の時間依存性は同じ定数λで表される。

崩壊特性[編集]

崩壊定数λの他、放射性崩壊は以下で説明する、この定数から導出されるさらに2つの定数によって特徴づけられる。

平均寿命[編集]

放射性崩壊の法則から、放射性原子の平均寿命の式を導出することができる。時間tにおいて、時間間隔dt間に崩壊した原子の数はdNであり、その寿命はtdNである。平均寿命は、崩壊の全期間にわたって積分することで得られる。

τ=1N0N00tdN=λ0teλtdt=1λ

この値をN(t)及びI(t)の指数関数的な時間依存式に代入すると、時間τの間に、放射性原子の数と物質の放射能(1秒あたりの崩壊数)がe倍ずつ減少することが容易にわかる。

半減期[編集]

詳しくは半減期を参照。

実際には、別の時間的特性である半減期T1/2がより広く用いられる。これは物質中の放射性原子の数または、放射能が2分の1に減衰するまでの時間を表す。

この値と崩壊定数との関係は、次の関係式から導出することができる。

N(T1/2)N0=eλT1/2=12
T1/2=ln2λ=τln20.693τ

崩壊特性の例[編集]

天然に存在する放射性同位体は、主にウラントリウムの複雑な崩壊系列で生成され、半減期は非常に広範囲にわたる。ポロニウム212の3×10-7秒からトリウム232の1.4×1010年までである。テルルの同位体のテルル128は、実験的に観測された半減期が最も長い2.2×1024年である。恒星元素合成によって生成されてから45億年以上が経過しているのにも関わらず、今日でも多くの天然放射性元素が存在するのは、ウラン235、ウラン238、トリウム232などのその他天然放射性核種の半減期が非常に長いためである。例えば、同位体ウラン238は、20個の同位体からなる長い系列の始まりに位置し、それぞれの同位体は先行する元素のアルファ崩壊またはベータ崩壊によって生ずる。ウラン238の半減期は放射性系列のそれ以降の元素の半減期よりもはるかに長いため、系列全体の崩壊は、その前駆元素であるウラン238の崩壊と同時に起こる。このような場合、系列は永年平衡の状態にあると言われる。

主な崩壊特性の例
物質 ウラン238 ウラン235 ウラン234 ウラン210 タリウム210
半減期T1/2 4.5×109 7.13×108 2.48×105 4.97 1.32
崩壊定数λ 4.84×1018s1 8.17×1014s1 1.61×106s1 8.75×103s1
粒子 α α α β β
崩壊エネルギー(MeV) 4.2699 4.6780 4.8575 1.1612 5.482

関連項目[編集]