スペイン海軍
スペイン海軍(スペインかいぐん、スペイン語: Armada Española)は、スペインの国軍であるスペイン軍を構成する海軍である。その歴史はレコンキスタ時代にまで遡り、大航海時代には世界にまたがる広大なスペイン帝国を支える重要な役割を担った。現代においても、NATOの一員として、国際的な安全保障に貢献している。
歴史[編集]
スペイン海軍の歴史は、イベリア半島におけるキリスト教国家の形成と深く結びついている。
中世[編集]
レコンキスタの進展に伴い、カスティーリャ王国やアラゴン王国といった主要な王国は、地中海や大西洋における海上交通路の確保と防衛のために海軍力を発展させた。特にアラゴン王国は、地中海貿易を保護するため、強力なガレー船隊を保有していた。
大航海時代[編集]
1492年のグラナダ陥落とクリストファー・コロンブスによるアメリカ大陸の発見は、スペイン海軍の歴史における転換点となった。新大陸からの莫大な富、特に銀を本国へ輸送するため、スペインのガレオン船と呼ばれる大型帆船が建造され、インディアス艦隊が組織された。この時代、スペイン海軍は世界最強の海軍の一つとして君臨し、フェリペ2世時代にはアルマダ(無敵艦隊)としてその名を轟かせた。しかし、1588年のアルマダの海戦での敗北は、その優位性に陰りをもたらした。
近世[編集]
17世紀から18世紀にかけて、スペイン海軍はイギリス海軍やフランス海軍との間で覇権を争った。トラファルガーの海戦(1805年)での敗北は、スペインの海上覇権の終焉を決定づけた。
近代[編集]
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、スペイン海軍は再建の道を歩むが、米西戦争(1898年)での敗北は、残されていた海外植民地のほとんどを喪失させ、その地位をさらに低下させた。
現代[編集]
フランシスコ・フランコ体制下では、海軍力の限定的な近代化が進められた。スペインの民主化以降、スペイン海軍はNATOに加盟し、その一員として国際的な平和維持活動や共同演習に積極的に参加している。
組織[編集]
スペイン海軍は、国防省の指揮下にある。その最高司令官はスペイン国王であるが、実質的な指揮は海軍参謀総長が執る。
基地[編集]
主要な海軍基地は以下の通り。
装備[編集]
スペイン海軍は、多様な艦艇、航空機、装備を保有している。
艦艇[編集]
- フアン・カルロス1世級強襲揚陸艦
- F-100型フリゲート(アルバロ・デ・バサン級フリゲート)
- F-110型フリゲート(ボニファス級フリゲート) - 建造中
- S-80型潜水艦 - 建造中
- メテオロ型哨戒艦
- 掃海艇
- 揚陸艦
航空機[編集]
- AV-8B ハリアー II - 強襲揚陸艦に搭載
- SH-60 シーホーク
- NH90
任務[編集]
スペイン海軍の主な任務は以下の通り。
豆知識[編集]
- スペイン海軍のモットーは「永遠に、そして何よりも祖国のために」(スペイン語: Por España y lo de España)である。
- 「アルマダ」はスペイン語で艦隊を意味する言葉であり、元々は特定の艦隊の名称ではなかった。
- スペイン海軍の軍服は、その歴史的な背景から、イギリス海軍やフランス海軍の影響を受けている部分が見られる。
関連項目[編集]
参考文献[編集]
- 青木栄一 『船と海軍の歴史物語』 講談社、2008年。ISBN 978-4-06-214491-0。
- 世界の艦船編集部 『世界の海軍史』 海人社、2001年。ISBN 978-4-7973-1629-9。