英国海軍 航空母艦 イラストリアス
イラストリアス(HMS Illustrious)は、イギリス海軍の航空母艦(空母)。イラストリアス級航空母艦のネームシップであり、第二次世界大戦を通じて地中海、インド洋、太平洋など各地で運用された。
概要[編集]
イラストリアス級航空母艦は、第二次ロンドン海軍軍縮会議によって課された空母の排水量制限(23,000トン)内で、最大限の防御力と搭載機数を両立させることを目指して設計された。特に、飛行甲板を装甲化するという画期的な試みがなされており、これは当時としてはイギリス海軍独自の思想であった。
イラストリアスは、1937年4月27日にヴィッカース・アームストロング社のバロー=イン=ファーネス造船所で起工され、1939年4月14日に進水、1940年5月25日に就役した。
戦歴[編集]
地中海[編集]
就役後、イラストリアスは地中海艦隊に配属され、第二次世界大戦初期の地中海における重要な作戦に参加した。
- タラント空襲:1940年11月11日夜、イラストリアスから発艦したフェアリー ソードフィッシュ雷撃機によるイタリア海軍拠点タラントへの奇襲攻撃を敢行。この攻撃により、イタリア海軍の戦艦数隻が大損害を受け、海戦史上初めて航空機が主力艦に壊滅的な打撃を与えた事例として知られる。この成功は、後の真珠湾攻撃にも影響を与えたとされる。
しかし、1941年1月10日、マルタ島への補給作戦中にドイツ空軍のJu 87 スツーカによる激しい攻撃を受け、6発の直撃弾と3発の至近弾を受け大破した。飛行甲板の装甲が一定の効果を発揮したものの、機関部に深刻な損傷を受け、乗員多数が死傷した。イラストリアスはアレクサンドリアへ退避後、応急修理を受け、その後アメリカ合衆国のノーフォーク海軍造船所で本格的な修理が行われた。
インド洋・太平洋[編集]
修理を終えたイラストリアスは、1942年にインド洋艦隊に配属され、日本海軍のセイロン沖海戦における脅威に対抗した。その後、1944年からはイギリス太平洋艦隊に加わり、対日作戦に参加した。
- 沖縄戦:1945年4月、沖縄戦における日本軍の特攻攻撃に遭遇。数回の特攻機の命中を受けたものの、装甲化された飛行甲板が功を奏し、致命的な損傷を免れた。これにより、イラストリアスは「不沈艦」と評されることとなる。
戦後[編集]
第二次世界大戦終結後、イラストリアスは主に訓練空母として運用された。新型航空機の運用試験や、パイロットの養成などに貢献した。1954年12月に退役し、1956年にスクラップとして売却された。
豆知識[編集]
- イラストリアスの飛行甲板は、鋼鉄製の非常に厚い装甲で覆われており、これは当時の世界の空母の中でも類を見ない特徴でした。これにより、日本軍の特攻攻撃にも耐え抜くことができたと言われています。
- タラント空襲は、航空機による攻撃が海軍の主力艦隊に与える影響を世界に示した画期的な作戦であり、後の真珠湾攻撃の計画にも大きな影響を与えたとされています。
- イラストリアスがマルタ島沖で損傷を受けた際、修理のためにアメリカまで自力航行したことは、その堅牢さを示すエピソードとして語り継がれています。
関連項目[編集]
参考書籍[編集]
- チェスター・ウィルモット『ビスマルク追撃』読売新聞社、1966年。
- ドナルド・マッキンタイア『空母エンタープライズ』早川書房、1970年。
- 福井静夫『世界空母物語』光人社、1997年。ISBN 978-4769808381。