寄せ場

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寄せ場(よせば)は、日雇い労働者と日雇い労働の斡旋業者(手配師人夫出し)が集まり、日常的に労働力を取引している場所。あるいはその場所を持つ地域。寄り場ともいう[1]青木秀男は「日雇労働者が手配師や人夫出しから日雇い仕事を斡旋されて労働現場に送り出される場所」と定義している[2]。主な寄せ場には山谷東京都台東区荒川区)、寿町横浜市中区)、笹島名古屋市中村区)、釜ヶ崎大阪市西成区)、築港福岡市博多区)、ドン広島市のJR広島駅周辺)などがある[1]。山谷、寿町、釜ヶ崎は三大寄せ場と呼ばれる。これに笹島を加えて四大寄せ場、築港を加えて五大寄せ場とも呼ばれる。

日雇い労働者が宿泊する簡易宿泊所が集中する地域はドヤ街と呼ばれる。ドヤ街は寄せ場を中心に形成されるため、多くの場合、寄せ場はドヤ街である[3]。ただし、笹島、出屋敷兵庫県尼崎市)、築港、ハラッパ川崎市川崎区[4]高田馬場(東京都新宿区)などドヤ街のない寄せ場もある[3]。「ドヤ街のない寄せ場は、日本全国の都市に散在している。通常、交通の要所である駅や港や幹線道路近くに存在する」[5]。また日進町(川崎市川崎区)のように寄せ場のないドヤ街もあり、寄せ場は少し離れた場所に存在する[6]

歴史的には江戸石川島に代表される人足寄場に発する[1]。形成時期から大きく分けると、伝統的なスラムを核とするもの(山谷、釜ヶ崎)と戦後に焼け跡や駅の周辺に形成されたもの(寿町、笹島)がある[7]高度成長期に急速に発展した土木建設をはじめとする基幹産業は都市に存在する過剰労働力を臨時労働者として雇用し、全国的に寄せ場が形成されていった[8]。1960年代に山谷、釜ヶ崎、寿町などにバラック建てではない本建築の簡易宿泊所が建設され、ドヤ街が形成された[8]。同時期に重層的な下請け制度とヤクザが関与する暴力的な労働者支配―搾取のメカニズムが成立した[8]。寄せ場労働者は高度経済成長やバブル期のビル建設ラッシュの担い手となった。

1990年代に寄せ場の労働市場機能は低下した。大倉祐二はその要因として「①90年代以降の建設労働部門における機械化・合理化の進展による土工需要の減少、②職業紹介雑誌を窓口としたパート・アルバイト市場などの「新たな」非正規労働市場の確立・拡大による既存の労働市場の駆逐」を指摘している(大倉祐二「「非正規」型の雇用と「ホームレス」」『都市文化研究』Vol.6巻、2005年)[9]。同時期に野宿者の激増、不安定雇用の拡大が生じ、この現象を生田武志は「全国の釜ヶ崎化」(『ルポ最底辺――不安定就労と野宿』ちくま新書、2007年)、西澤晃彦は「社会の総寄せ場化」(「貧者の居場所をめぐって――アイデンティティ問題としての貧困」『寄せ場』Vol.21、2008年)と呼んだ。原口剛は「社会の総寄せ場化」を可能とした要因の一つとして、携帯電話スマホネットカフェビデオ試写室など情報技術の進展をあげている[10]

寄せ場のある地域[編集]

関東地方[編集]

中部地方[編集]

近畿地方[編集]

中国地方[編集]

九州地方[編集]

出典[編集]

  1. a b c 青木秀男『寄せ場労働者の生と死』明石書店、1989年、40-41頁
  2. 青木秀男編著『場所をあけろ!――寄せ場/ホームレスの社会学』松籟社、1999年、26頁
  3. a b 吉田竜司「<論⽂>ホボヘミアと「寄せ場」 : 「寄せ場」の社会変動研究へ向けてPDF」『京都社会学年報』第3号、1995年12月
  4. 牛草英晴「「寄せ場」としての釜ケ崎」、釜ケ崎資料センター編『釜ヶ崎――歴史と現在』三一書房、1993年
  5. a b c d e 山口恵子「寄せ場・ドヤ街・駅手配」、青木秀男編著『場所をあけろ!――寄せ場/ホームレスの社会学』松籟社、1999年、44頁
  6. 「白手帳」と寄せ場・寿町の現在 「山谷」制作上映委員会、2019年9月6日
  7. 青木秀男「「寄せ場」研究の諸問題」」『寄せ場』Vol.1、1988年
  8. a b c 松沢哲成(日本寄せ場学会)・なすび(活動委員会)「寄せ場の歴史」山谷労働者福祉会館
  9. 原口剛「1950-60年代の港湾運送業における寄せ場・釜ヶ崎の機能PDF」『都市文化研究』Vol.7巻、2006年
  10. 原口剛『叫びの都市――寄せ場、釜ヶ崎、流動的下層労働者』洛北出版、2016年
  11. a b 馬場佳久「社会的棄民の民俗誌――山谷ドヤ街の文化研究PDF」『関東都市学会年報』第5巻、2003年3月
  12. 仙道久忠「那覇の寄せ場PDF」沖縄フィールド・リサーチ2006

関連項目[編集]

関連文献[編集]

  • 中根光敏『「寄せ場」をめぐる差別の構造』(広島修道大学総合研究所[広島修道大学研究叢書]、1993年)
  • 青木秀男『現代日本の都市下層――寄せ場と野宿者と外国人労働者』(明石書店、2000年)
  • 日本寄せ場学会年報編集委員会編『寄せ場文献精読306選――近代日本の下層社会』(日本寄せ場学会、発売:れんが書房新社、2004年)
  • 吉村智博『近代大阪の部落と寄せ場――都市の周縁社会史』(明石書店、2012年)
  • 中原一歩『寄せ場のグルメ』(潮出版社、2023年)