シムカ

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シムカ(Simca)は、かつてフランスに存在した自動車メーカーである。イタリアのフィアットの子会社として設立され、その後アメリカのクライスラー、最終的にはフランスのPSA・プジョーシトロエン(現在のステランティス)の傘下に入り、ブランドは消滅した。

歴史[編集]

シムカは、1934年にイタリアのフィアット社のフランス法人として、アンリ・ピゴッツィによって設立された。社名の「Simca」は「Société Industrielle de Mécanique et Carrosserie Automobile」(自動車機械および車体工業会社)の頭文字に由来する。当初はフィアット車のライセンス生産を行っていたが、次第に独自のモデルを開発するようになった。

第二次世界大戦後、シムカはフランスの自動車産業において重要な地位を占めるようになった。特に「シムカ・アロンデ」はベストセラーとなり、戦後の経済復興に貢献した。1950年代には、フォード・フランスを買収し、その生産設備とモデルラインナップを獲得した。これにより、シムカはフランス国内第4位の自動車メーカーへと成長した。

1960年代に入ると、シムカは経営戦略の転換期を迎える。フィアットは徐々にシムカへの関与を減らし、1963年にはアメリカのクライスラーがシムカの株式の過半数を取得し、傘下に収めた。これにより、シムカは「クライスラー・フランス」と改称され、クライスラーの欧州戦略における重要な拠点となった。この時期には「シムカ・1000」や「シムカ・1100」などのヒットモデルが誕生した。

しかし、1970年代オイルショックと世界的な景気低迷は、クライスラーの経営に大きな打撃を与えた。クライスラーは欧州事業の再編を余儀なくされ、1978年にシムカを含む欧州事業全体をPSA・プジョーシトロエンに売却した。PSAはシムカのブランドを「タルボ」に統合し、最終的にシムカのブランド名は消滅した。

主な車種[編集]

  • シムカ・アロンデ(Simca Aronde):1951年に発表された中型セダン。戦後のシムカを代表するヒットモデル。
  • シムカ・1000(Simca 1000):1961年に発表された小型リアエンジンセダン。そのコンパクトなサイズと経済性で人気を博した。
  • シムカ・1100(Simca 1100):1967年に発表された前輪駆動のハッチバック。現代のハッチバックの先駆けとなるモデルの一つ。
  • シムカ・ロンシャン(Simca Ranch):1950年代に生産されたステーションワゴン。商用車としても利用された。

豆知識[編集]

  • シムカのロゴマークは、ツバメをモチーフにしたデザインであった。「アロンデ」という車名もフランス語でツバメを意味する。
  • シムカは、モータースポーツにも積極的に参加し、特にラリーや耐久レースで活躍した経歴がある。
  • クライスラー傘下時代には、北米市場向けに「ダッジ・オムニ」や「プリムス・ホライズン」として販売されたシムカ設計の車両も存在した。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • Gazda, M. (2014). Simca - The Complete Story. The Crowood Press.
  • Renaux, D. (2009). Simca : de Fiat à Talbot. ETAI.
  • スキナー, R. (1987). 『世界の自動車史:フランス車編』. グランプリ出版.