ČD363形電気機関車

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ZSSK363形電気機関車から転送)
ナビゲーションに移動 検索に移動

363形電気機関車とはチェコ鉄道ZSSKが保有する最も広く用いられる交直流電気機関車である。1980年1984年から1990年にかけて181両がシュコダ・プルゼニ社によってチェコスロバキア国鉄向けに製造された。チェコとスロバキア両国ではエソ(Eso、エース)と呼ばれている。この車両は長らくチェコスロバキア国鉄の標準的な機関車として、派生車が多数存在する。

概要[編集]

363形は、旅客列車と貨物列車の牽引の両方に対応できるように設計されている。貨物部門(ČDカーゴZSCS)の分離後、これらの会社の配置にも組み込まれ、あらゆる種類の列車の牽引で使用されている。30年以上の運用中、耐用年数を延ばし、運用の効率性を高める目的で、多くの改造と工事が行われてきた。ほとんどの車両に追加の更新工事が加えられ、最高速度が140km/hに改造されたものは、362形に編入された。2011年からはBfhvee295形制御車との運用が可能となっている。

開発背景[編集]

1970年代にチェコスロバキアで鉄道網の電化が急速に進んだことで、直流3000Vと交流25kV/50Hzの2電源の両方に対応した機関車を導入する必要があった。州間高速輸送を目的とした抵抗式電力制御を備えた最初の国内交直流ヂャ領のES499形が製造された後、1977年には、最新のサイリスタパルス制御を備えた両電源に対応する汎用機関車の試作機の生産が発注されました。最初の2両は1980年にシュコダ69Eの工場番号名で工場を出場し、4年後には量産が開始された。1990年までに、363形は計181両が製造された。

試作機[編集]

試作機(ES499.1001/1002、現在は362-001,002)の製造は1977年4月6日付けのチェコスロバキア運輸省とシュコダ社間の契約によって発注されたが、その時点では設計作業はすでに全面的に進行していた。複雑で長期にわたる開発を経て、最初の2台の試作機が1979年に製造され完成後、1年後に試運転のためにツェルヘニツェ鉄道試験線へ甲種輸送された。その年の末、本線運用での最初の使用が行われ、最初の試作車は(修理の可能性を考慮して製造工場が近かったことを念頭に)プルゼニ-ヘプ間の急行で慣らし運転が行われ、その後、1002号機とともにイフラヴァ–コリーン間で試運転が行われ、牽引システムの分岐点での機関車の挙動が試験された。さらにイフラヴァ周辺の線路で試験が実施され、その後、試験線で交互に試運転が行われた。両方の試作機は1981年の年末に鉄道会社によって1両あたり890万チェココルナでイフラヴァ機関区に配属されたが、試運転は1983年12月まで終了しなかった。

1984年春には、1002号機の試験走行がユーゴスラビア(特にクロアチアスロベニア)でも行われたが、輸出の見込みは、主に関係者の資金不足と直流電源の廃止を考慮したために撤回された。ただし、ここでも機関車は非常に優れた性能を発揮し、605トンの列車を1マイルあたり最大30度の勾配で最高時速60kmで牽引することができた。

試験中および試験後、試作機は何度も改造され、設計の信頼性と実用性を高めるためにいくつか部品交換がされた。

構造[編集]

363形は、両端に運転台が2つある古典的な箱型機関車である。車体の角張ったデザインは、同時期に開発されていた131形電気機関車の機器とほぼ統一されており、工業デザイナーと協力して製造された。試作機は、運転席側面の窪みがないこと(2016年末までは363.002(現在は362.002)で、窪みは後から追加された)、古いタイプの信号灯、およびその他の細部によって、量産機と明確に区​​別されていた。走行機器は2軸台車2台で構成され、その上に下引き横木によって機関車が取り付けられている。牽引力の伝達はピボットピンによって行われる。

機関車の屋根植えのシングルアームパンタグラフは集電に用いられる。電力調整は、高度な半導体端末を用いたサイリスタパルス制御で行われる。(当時のサイリスタパルス制御は珍しく、欧州の技術をリードしていた。)主な回路は機関車の中心部にあるパルスコンバーターで、トラクション整流器からの処理済み電流がここに入力される。コンバーター自体は、合計4台(各輪軸に1台)のトラクションモーター(Al4542FiR系)の電力を調整し、台車枠内に配置されている。片側には駆動系全体の冷却を確保するブラインドがあり、反対側には4つの丸い窓がある。

配置[編集]

試作機の試運転が成功し、優れた性能を示した後、量産が開始された。最初の量産機関車は1984年9月にプジェロフ機関区に配置された。そして新しく電化されたプジェロフ=ブジェツラフ線で運用が開始された。試作機2両は長らくイフラヴァ機関区にいたが、1996年にプジェロフ機関区に、その後現在に至るブルノ機関区に転属した。他の量産機はプルゼニ機関区プラハ機関区チェスケー・ブジェヨヴィツェ機関区ブラチスラヴァ機関区などに配置された。1次車、2次車、3次車、4次車、5次車まであり、計181両製造された。5次車の最終出場車はブラチスラヴァ機関区に配置された。1987年に時速140kmでの運行が可能な362形電気機関車への改造が一部車両で開始された。

運行[編集]

極めて革新的でだった、この363形だが、運行に大きな利点をもたらした。導入後、交直接続地点での時間短縮と作業簡略化をもたらし、機関車を付け替えるなどの所要時間がなくなった。当初は問題や欠陥がちらほらとみられたが、性能の信頼性は徐々に向上し、今日では、チェコとスロバキアの鉄道で、最も信頼性の高い機関車の一つとなっている。

30年以上の運用期間中、この機関車は西端フランティシュコヴィ・ラーズニェから東端のチエルナ・ナト・ティソウまでの電化路線のほとんどで運用された。1999年からはブルノ=チェスカー・トジェボヴァー線などの新規の電化路線での運用も開始された。旅客輸送では、通常両電源間での路線で長距離列車などを牽引し、貨物列車では両電源間の貨物列車などで運用された。例えば、ボフミーン-ブジェツラフ間やブラチスラヴァ-ジリナ間などである。

現在、363形は4つの会社(チェコ鉄道、ČDカーゴ、ZSSK、ZSSKカーゴ)が保有している。ただし、チェコ鉄道では全車362形への改造されたため、実際は在籍していない。チェコではこれらの機関車はプルゼニブルノチェスケー・ブジェヨヴィツェオストラヴァウースチー・ナト・ラベムなどの各車両基地に配置された。プルゼニ配置のものはジェチーンまで急行列車を牽引し、ブルノ配置のものはプラハ-ボフミーン間などで運行される。ČDカーゴ保有のものは、チェコ全体の貨物輸送で使用される。

スロバキアでは長年状況が変わらず、全車がブラチスラヴァに集中配置されており、ジリナやコシツェ、トレビショフへの急行列車の牽引を行っている。361形電気機関車(163形の派生車、ただし車体の形状を除いて363形とは別物である。)が投入された後、363形の地位が低下し一部車両がズヴォレン方面やバンスカー・ビストリツァ方面の路線の列車の牽引に移転し、旧型の240形を置き換えた。

これらの機関車は全般検査の際に、コーポレートカラー(ČDナイブルトZSSKブロンスキ)に基本的に塗装されるが、一部は別の塗装(歴史的なレトロな色など)もいくつか存在する。ČDは363.001号機(現362.001号機)は工場出場時の試験塗装をまとい、078号機はは青樹町の黄色の警告線が入ったクラシックな塗装などがあり、スロバキアでは136号機がこれに該当する。

近代化工事[編集]

運行開始以来、363形にはサ万座真名改造や小規模な工事を受けてきた。メトラ社製の電子式速度計(一部の車両ではUniControls)の段階的な設置、新型パンタグラフの設置、空調システムの近代化、オリジナルのブレーキブロックをより近代的な金属セラミック製ブレーキブロックへの交換などが挙げられる。

最高速度140km/hmで走行可能な362形機関車が納入されなかったため、この速度に到達できる機関車の不足が2000年以降明らかになった。最初の363シリーズ機関車は1993年から1994年の間に十分な速度に維持されていたが、その数は9両と少なく、必ずしも十分ではなかった。2002年に、機関車の大幅な改造工事が開始された。2009年までに、台車と車軸ギアボックスも162形電気機関車の部品に交換されたが、逆に最高速度は120 km/hに低下し、163形200番台シリーズに改番された。この日以降、機関車を加速するために設計された新しい車軸ギアボックスの生産が開始され、改造の際に機関車に直接交換されるようになった。この改造を受けた最初の機関車は363.163号機だった。その後、元の番号を維持したまま、362形に編入された。その後、残りのČDに所属する機関車はすべてこの改造を受け、2020年には最後の2両が362形へ改造され、チェコ鉄道における当形式は消滅した。スロバキアでも改造は同様に行われたが、機関車には元の試作機から362.001に続く番号が与えられている。いずれの場合も、改造された機関車には振動ダンパーが取り付けられ、安全装置にも更なる改良が加えられ、二重安全ガラスを備えた新しい窓が設置され、機関車が120km/h以上の速度で運行することを求める法令を満たすためのその他の変更も行われた。これらの改造は貨物輸送には使われない。というのも、重量物を牽引する際に高速運転が不可能であるためである。

2010年以降、チェコでは機関車との協調運転が可能な新型制御車が導入されたため、363形における対応改造が進んだ。このような改造を受けた車両はプルゼニに配置され、主にプルゼニ-ベロウン間のOs列車で使用される。主にBfhpvee295形制御車とペアを組む。

派生車[編集]

363形はその性能面から派生車が多数存在する。見た目は全く同じなのに性能は異なる者も存在し、チェコ版227系のような感じである。筆者はこれらを363形ファミリーと呼んでいる。

131形に見た目は似ているが、131形の方が先に製造されているし、131形は2連接車体で、抵抗制御である。

関連項目[編集]