部分波解析

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部分波解析とは、量子力学において、各波をその構成角運動量成分に分解し、境界条件を用いて解を構築することで散乱問題を求める方法を指す。

散乱理論からの予備情報[編集]

以下の説明は、基本的な散乱理論を考察する標準的な方法に従う。一定方向の粒子ビームは、球対称ポテンシャルV(𝐫)で散乱される。このポテンシャルは、短距離作用型であるため、rのような長距離では、粒子は自由粒子のように振舞う。原則、あらゆる粒子は波束で記述されるべきだが、代わりに、波束は平面波exp(ikz)に分解できるので、計算を簡略化するために、z軸に沿って伝播する平面波として散乱を記述する。ビームは、粒子が散乱ポテンシャルと相互作用する時間よりも長い時間にわたって有効であるため、この問題は定常的であると仮定する。すなわち、粒子ビームを表す波動関数Ψ(𝐫)に対する定常シュレーディンガー方程式を解く必要がある。

[22m2+V(r)]Ψ(𝐫)=EΨ(𝐫)

解を求めるには、次の仮定を立てる。

Ψ(𝐫)=Ψ0(𝐫)+Ψs(𝐫)
  • Ψ0(𝐫)exp(ikz)=入射平面波
  • Ψs(𝐫)=元の波動関数を乱す散乱波

この漸近形Ψs(𝐫)は散乱中心付近での観測が多くの場合不可能で、粒子の検出が散乱源から遠く離れた場所で行われる。長距離では、粒子は自由粒子のように振舞うはずであり、したがってΨs(𝐫)は自由シュレーディンガー方程式の解であるべきである。これは、物理的に意味のない寄与を一切含まない平面波のような形をしているべきであることを意味している。そのため、次のような級数で表される平面波展開が研究されている。

eikz=l=0(2l+1)iljl(kr)Pl(cosθ)

ここで、ベッセル関数jl(kr)は漸近的に次のように振舞う。

jl(kr)12ikr(exp[i(krlπ2)]exp[i(krlπ2)])

これは出射球面波と入射球面波に対応する。散乱波動関数の場合、出射部分のみが期待される。したがって、Ψs(𝐫)exp(ikz)/rの遠距離では散乱波の漸近形は[2]に等しいと仮定される。

Ψs(𝐫)f(θ,k)exp(ikz)r
  • f(θ,k)=散乱振幅 (この場合は、角θのみに依存するエネルギー)

結論として、これは波動関数全体に対して次の漸近表現につながる。

Ψ(𝐫)Ψ(+)(𝐫)=exp(ikz)+f(θ,k)exp(ikz)r

部分波の拡大[編集]

球対称ポテンシャルV(𝐫)=V(𝐫)の場合、散乱波の波動関数は球面調和関数に展開でき、方位対称性によりルジャンドル多項式に帰着される。

Ψ(𝐫)=l=0ul(r)rPl(cosθ)

標準的な散乱問題では、入射ビームは波数kの平面波の形を取ると仮定され、ベッセル関数とルジャンドル多項式を用いた平面波展開によって部分波に分解することができる。

ψin(𝐫)=eikz=l=0(2l+1)iljl(kr)Pl(cosθ)

ここでは、球座標系が用いられ、Z軸はビーム方向と一致する。この波動関数の動径方向部分は球面ベッセル関数のみで構成され、これは2つの球面ハンケル関数の和として書き直すことができる。

jl(kr)=12(hl(1)(kr)+hl(2)(kr))

hl(2)は漸近的に(つまり、r</math>が大きい場合)、i(l+1)eikr/(kr)のように振舞い、したがって出射波となる。一方、hl(1)は漸近的にil+1eikr/(kr)のように振舞い、したがって入射波となる。入射波は散乱の影響を受けないが、出射派は部分波SlS行列要素として知られる因子によって修正される。

ul(r)rrilk2π(hl(1)(kr)+Slhl(2)(kr))

流れが保たれる場合は、|Sl|=1となり、位相遷移は実数になる。これは通常、ポテンシャルに虚数吸収成分がない場合に当てはまる。虚数吸収成分は、他の反応経路による損失などをシミュレートするために、現象論的模型でよく使用される。したがって、完全な漸近波動関数は、

ψ(𝐫)rl=0(2l+1)ilhl(1)(kr)+Slhl(2)(kr)2Pl(cosθ).

ψinの引き算は、漸近的な出射波動関数を与える。

ψout(𝐫)rl=0(2l+1)ilSl12hl(2)(kr)Pl(cosθ)

球面ハンケル関数の漸近式を用いて、次の式が得られる。

ψout(𝐫)reikrrl=0(2l+1)Sl12ikPl(cosθ)

散乱振幅f(θ,k)は以下から決定されるため、

ψout(𝐫)reikrrf(θ,k)

よって、

f(θ,k)=l=0(2l+1)Sl12ikPl(cosθ)=l=0(2l+1)eiδlsinδlkPl(cosθ)

そして微分断面積は次の式で与えられる。

dσdΩ=|f(θ,k)|2=1k2|l=0(2l+1)eiδlsinδlPl(cosθ)|2

このモデルはあらゆる短距離相互作用に有効である。長距離相互作用(クーロン相互作用など)の場合、lに関する和は発散する可能性がある。このような問題に対する一般的な手法は、クーロン相互作用を短距離相互作用とは別で考えることである。なぜなら、クーロン問題は、この問題においてハンケル関数の役割を果たすクーロン関数を用いて正確に解くことができるためである。