制御理論における状態方程式とは、制御対象の入出力関係を一階の常微分方程式などで表した式。
連続な系[編集]
時間
の関数である、
入力
,出力
,状態
についての微分方程式である。
線形な系[編集]
線形な系では時間的に一定な行列
を用いて


などと表す。
行列
は、入力がそのまま出力に影響する部分を表している。
そのため、制御対象では
はないことが多く、コントローラにおいて見られる。
非線形な系[編集]
非線形な系では
の関数
を用いて


などと表す。ただし、入力がそのまま出力に影響する部分はないものとした。
これに対して、テイラー展開や非線形性を打ち消すフィードバックを用いて線形化をできて、線形な系に帰着できる場合もある。
離散的な系[編集]
サンプリング回数が何回目かを示す
を添え字として
入力
,出力
,状態
についての漸化式である。
時間的に一定な行列
を用いて


などと表す。
元々離散的な系だけでなく、連続な系から変換することもできる。
可制御性と可観測性[編集]
可制御性は入力によって出力を制御可能かを示しており、可観測性はオブザーバによって状態を観測できるかを示している。
可制御性[編集]
任意の初期状態を有限時間で別の状態に移す入力が存在するとき可制御であると言い、
そうでないとき不可制御であると言う。可制御性は、行列
で決定し
(A,B)可制御とも言って
- 可制御⇔

- 不可制御⇔

である。ここで、
は状態の次元である。
また、
を可制御性行列、可制御性グラム行列,可制御性グラミアンなどと呼ぶ。
可観測性[編集]
有限時間の入出力から初期状態を一意に決定できるとき可観測であると言い、
そうでないとき不可観測であると言う。可観測性は、行列
で決定し
(C,A)可観測とも言って
- 可観測⇔

- 不可観測⇔

である。ここで、
は状態の次元である。
また、
について
を可観測性行列、可観測性グラム行列,可観測性グラミアンなどと呼ぶ。
安定性[編集]
の固有値すなわち状態方程式の極で安定性や収束の速さを評価できる。
連続な系ではすべての極の虚部が負であること、離散的な系ではすべての極の絶対値が1以下であるときに安定になる。
そうなるように、フィードバックをかけるなどして安定化する設計をすることもできる。
双対性[編集]


に対して


を双対システムと呼ぶ。
この双対システムでは互いに可制御性と可観測性やフィードバックとオブザーバが逆になるという関係がある。また、伝達関数においても転置行列(あるいは引数の符号が逆の転置行列)になる。
伝達関数との関係[編集]
連続な系ではラプラス変換、離散的な系ではZ変換を用いて、状態方程式から伝達関数に変換できる。逆に伝達関数から状態方程式に変形する方法もあるが、状態の座標変換分だけ自由度があり、複数の状態方程式に変換できる。このとき、
の固有値は伝達関数の極と一致する。
関連項目[編集]