火縄銃
火縄銃（ひなわじゅう）とは、先込め銃の内、火薬への点火に火縄を使う初期の銃のことである。
日本では種子島に上陸したポルトガル人によって伝えられたことから、種子島と呼ばれることもあった。
日本の火縄銃(ジャパニーズマッチロック)以外でもヨーロッパのマッチロック式の古式銃は火縄銃に相当する。尚、それ以前のサーペンタインロック式古式銃も火縄銃には違いない。
ホイールロック式以降のマズルローダーは火縄銃と混同されることはあるが、正確には火縄銃ではない。
使用方法[編集]
銃口から火薬と弾丸を棒で押し込み、火皿には点火薬を入れ、火の付いた火縄を火挟みに嵌め込む。引き金を引くと火縄が火皿に接触、点火薬に点火、火は点火孔から発射薬に伝わり発射薬が爆発。弾丸が発射される。
弾込めを素早く行えるように、発射薬を一発分づつ袋詰めして弾丸を添えた「早合」というものが使われることもある。
歴史[編集]
15世紀にヨーロッパで発明された。弓よりも強力であり、鎧では、銃弾を防ぐことは不可能であった。銃弾を防げるように鎧を厚い鉄板で作れば、動くことが困難になり歩兵の餌食である。
連射性は長弓に大きく劣り、命中精度ではクロスボウに劣った。しかし、発砲の際に大きな爆発音がするため、命中しない場合でも敵を威嚇する効果が非常に高い。
製造するには高い技術力が必要で、工業を発展させることに繋がった。これを大量に運用できる軍隊は他の軍隊を圧倒し、そのため、世界の歴史を大きく変えた。エジプトのマムルーク朝がオスマン帝国に滅ぼされたのもこれを運用したイェニチェリのためであった。
日本には天文12年（1543年）頃に種子島に伝わったとされている。このため、日本では火縄銃のことを種子島と称することもある。この種子島を本格的に活用して天下に覇を唱えたのが、織田信長であったことは良く知られている。
その後の日本の火縄銃[編集]
火縄式は携帯には危険で敵から目立ち、天候が悪いと使用できないので17世紀から燧石式に取り替えられていったが、日本では燧石式が広まらず、相変わらず火縄式が使われ続けていた。その理由は戦乱が収まり、新式の銃が必要でなくなったこと、日本には良質な燧石が産出せず、不発の危険性があったこと、燧石式は発射時の衝撃が大きく、狙撃に向かないことなどがあった。1837年の大塩平八郎の乱でも、幕府軍、反乱軍ともに火縄銃が使用されている。火縄銃からの脱却は19世紀前半にオランダからゲベール銃を輸入して西洋式軍事訓練を始めたのがきっかけで、戊辰戦争の頃には旧幕府軍、新政府軍ともに火縄銃は使用されなくなった。ただし、火縄銃の機関部を燧石式に改造した銃は使用されている。
運用[編集]
先込め式で連発が出来ず、火縄を使う方式は危険で発射位置も明らかになるなど、難がある等、問題点は多かったが、戦場では運用でカバーして戦果を上げたとされる話はある。
製作方法[編集]
銃身[編集]
- 真金と呼ばれる鉄棒に熱した軟鉄の板を巻き付け、接合部をハンマーで叩いて溶接する。
- 両端を金鋸で切断する。
- 全体を軟鉄のリボンで巻き付けて溶接する。
- 銃口部にはさらに軟鉄のリボンを巻き付けて溶接して火薬ガスの衝撃から守れるようにし、内部をヤスリで磨いて照準器を溶接する。
- 銃身後端の雌ネジをどのように作ったのかは謎である。雄ネジだけはヤスリで作り、それを加熱した銃身後端に差し込み、周囲を叩いて成形したという説が有力である。
火薬[編集]
木炭、硫黄、硝酸カリウムを混合させた黒色火薬を用いた。硝酸カリウムは当初、輸入に頼ったが、尿とカイコの糞を使って国産化できた。しかし製作には時間がかかり、緊急に必要なときは輸入した。
参考動画[編集]
脚注[編集]
