日本語
日本語 | |
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基礎情報 | |
話される国・地域 | 日本、中南米、ハワイ[注 1]など |
語族 | 日琉語族 |
話者数 | 1億2700万 |
話者数の順位 | 9 |
言語コード | |
ISO 639-1コード | ja |
ISO 639-3コード | jpn |
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日本語(にほんご、にっぽんご)は、日本で話されている事実上の公用語である。
概要[編集]
発祥地が不詳であるため、孤立語とされたり、ウラル・アルタイ語起源説、マライ・ポリネシア起源説(南島語起源説)など多くの説がある。少なくとも漢語(古代中国語)朝鮮語、ロマンス諸語、英語の影響は受けており、基礎語彙(身体語)のレベルではマライ・ポリネシア語やアルタイ語との共通点もある。
ただ、「それらの基層語として何があったか」については推測の域を出ない。
文字[編集]
日本語は中国から輸入した漢字のほか、これを簡略化したひらがな、カタカナ、ラテン文字を使用したローマ字を持っている。かなは一文字が一拍(1モーラ)で、文字と発音が一致しているため、「あいうえお…」の五十音は、読み方はそのまま「あいうえお…」である[1]。
文字と発音が一致するようになったのは戦後のことである[2]。かな文字が生まれて以降、室町時代には既に文字と発音が大きく乖離しており、昭和初期に至るまで乖離が大きくなる一方であったが、戦後、「現代かなづかい」が制定され、文字と発音はほぼ一致するようになった。
母音は「あ・い・う・え・お」の5五段体系[3]が仮名文字体系(五十音図)が用いられているが、発音としては各地の方言を含めると「三種以上・八種以下」あたりが妥当であるらしい。
表意文字を表音文字としても使用するのはシュメール(楔形文字)や古代エジプト(ヒエログリフやデモティック)でも行われたので、日本独自の文化というわけではない。
漢字[編集]
基本的に表意文字であるが、地名などに万葉仮名のような表音文字的表記が残っているものもある。
ほとんどが中国発祥の文字である。ただし「国字」と呼ばれる「日本で創作された文字」(「働」「峠」など)や、意味が変わっている事例もある。「漢字は外国人が日本語を難しいと思う理由のひとつである」という意見もあるが、「漢字・仮名交じり文」というスタイルについては、「ヒエログリフみたいな、表意文字と表音文字が混在しているシステムが、現代の先進諸国で普通に機能している!」というので、そのシステムについて興味を持つ欧米人もいる。ただし漢字の読みが複数あることには辟易するそうで、パソコン用の安価で使い勝手のいい辞書引きシステムがなぜ普及しないかという疑問がある。
日本で用いられる字体、いわゆる新字体(常用漢字)は戦後に制定された略字表記で、繁体(康煕字典体)や簡体と異なる字形を持っている字もある。
文字の数は数えきれないほどあるが[4]、もっぱら用いられているのはせいぜい二千字、多くて三千五百字程度である。
ただし、漢字の造語能力の高さはギリシャ語やラテン語に匹敵し、学術以外の分野でも重宝されている。ただし現代の日本ではこの能力が活かされているとは言えず、外来語の輸入による漢熟語の造語は明治・大正期を以てひと段落つき、以降はカタカナ語での輸入が多くを占めている。
一方中国では、明治・大正期の造語運動はあまり活発でなく、「共和国」などで日本製の漢語を輸入することも多かったものの、新元素の誕生などで未だに新しい熟語・字体が誕生しており、日本と中国で異なる点であるといえる。
日本由来とされる漢語の具体例[編集]
医学・遺伝・右翼・液体・会社・概念・改変・解剖・科学・学力・官公庁・規則・気体・教育・協会・共産主義・教授・強制・偶然・駆逐艦・組合・倶楽部・系列・景気・経済・現金・現象・交番・国際・採光・最恵国・財閥・催眠・作品・錯覚・左翼・参観・参照・紫外線・時間・支部・乗客・乗務員・消火栓・視察・時事・主観・触媒・社会・資本・自由・出版・宗教・出版物・心理学・商法・人格・制裁・精神・成分・政策・政党・絶対・前提・創作・大気・大局・代表・単位・単純・単行本・蛋白質・地下水・地質・抽象・貯蔵・貯蓄・抵抗・低調・低能・出口・哲学・伝染病・電池・電話・動員・導火線・冬季・独裁・独占・二重奏・場合・背景・博士・博物・舶来品・場所・版画・反感・半旗・半径・番号・反射・反対・範疇・反動・否決・必要・否定・白夜・表象・標本・評決・編制・封鎖・服用・不動産・分解・分析・分子・分配・平面・変圧器・法案・封建・放射・方針・法人・法則・方程式・法律・飽和・保険・保障・民主・民法・目的・目標・理念・領土 ……
平仮名[編集]
コード表ではぁから始まる文字。漢字の草書を更に崩したものが原形。全48文字から(「ん」は「う」「む」で表記されることも多かった。「仮名手本忠臣蔵」は四十七士である)なり、いくつかの文字には大文字以外に小文字がある。ただし、うち「ゑ」を除く「ゐ・ゔ」の二文字はあまり使われない。小文字形は使われている文字と使われていない文字があり「ぁ・ぃ・ぅ・ぇ・ぉ」のほか「っ・ゃ・ゅ・ょ・ゎ」がある。
ただし、日本語ネイティブにとっては漢字・カタカナとの併用が楽である。「すもももももももものうち」は「李も桃もモモのうち」と書くのが親切であり、でなければ「李」としたい。
カタカナ[編集]
コード表ではァから始まる文字。漢字の偏(へん)や旁(つくり)などから一部分を取ったものが原形。ただし、そのうちの数文字は現在あまり使われていない(「ヰ・ヸ・ヱ・ヹ」と「ヺ」)。いくつかの文字には大文字以外に小文字があり、「ァ・ィ・ゥ・ェ・ォ」以外に「ッ・ャ・ュ・ョ・ヮ」がある。「ヵ」「ヶ」はもともと「个」と書き、「個」や「箇」と同じ字であって、その代用字として用いられる。
「蒲公英」は「タンポポ」でもあり「たんぽぽ」でもある。
ローマ字[編集]
ヘボン式・日本式・訓礼式がある。
句読点、濁点等[編集]
日本独自の句読点「、。」を使用している(英語風ならば「,.」)。アルファベットで言うグレイヴやアクセントのような物である。また、濁点・半濁点と呼ばれる特殊な記号を表す文字もあるが、半濁点・濁点つきの仮名(カナ)文字もある。括弧(通称「パーレン」)や感嘆符「!」(「雨垂れ」)・疑問符「?」・その合字「⁉」(「耳垂れ」)などに踊り字や句読点などを加え、総じて「約物」という。「々」(「ノマ」)も約物のひとつ。
文法[編集]
語順はSOV形が基本だが、OSVも可能。ただ「主述構造」とする方が適切だとする考えもある。動詞、あるいは主語を説明する述語が文の最後に来て、修飾語が被修飾語より前に来る以外、語順は自由。文法格は、名詞の後に格助詞をつけることで表す。主題が大きく発達している言語である。
動詞、形容詞、助動詞に活用があり、後に続く語の種類によって変化する。人称による変化は無く、時制は助動詞を用いて表す。
動詞[編集]
各動詞は、6種類の活用型を持つ。それぞれ、未然形、連用形、終止形、連体形、仮定形、命令形である。ただし、未然形と連用形は2種類ずつあり、終止形と連体形は同じ形なので、実質7種類である。なお、西日本では仮定形をあまり使わない。
参考文献[編集]
- 大野晋『日本語の文法を考える』(岩波新書)
脚注[編集]
外国語の転用[編集]
日本にはなかった物が外国から入ると、それに対応する日本語を創作するか、あるいは外国語をそのまま転用することになる。古代から中世は漢語、近世はポルトガル語、後にオランダ語、近代にはドイツ語と英語から転用した。さらに和製英語が登場した。
共通語と方言[編集]
明治政府は学制を定めた際、東京市の西側(山の手)の言葉を教科書に登場させた。この山の手には武家屋敷街が形成されており、参勤交代によってそれぞれ朝廷のある上方、地方、そしていわゆる江戸っ子の話す言葉が混ざり合った、ニュートラルな言葉が形成されていたため、山の手の言葉が採用された。
現在の日本にはどの言葉が共通語かという法令はないが、日本国憲法とそれによって制定される法令が一般的に共通語とされている。方言は数が多く、10km離れた土地でも少しずつ異なっているといわれるが、大きく分けて東北地方、甲信越地方、関東地方、東海地方、北陸地方、近畿地方、中国地方、四国地方、九州地方、南西諸島でそれぞれの方言がある。ただし、明治時代以降の教育の普及、新聞、雑誌、ラジオ、テレビの普及によって、話者数の少ない方言は多い方言に吸収される傾向がある。北海道は明治時代以降に植民が始まったので、日本各地の方言が入り交じっている。
近縁言語[編集]
日本語は日琉語族に属しており、琉球語・八丈語・八重山語などと近縁である。ただし北海道・樺太・千島列島で話されるアイヌ語とは、文化的な接触から借用・被借用の関係こそあるものの、深い関係はない。
また日本語を話す集団が未だ大陸に居た際、朝鮮半島で朝鮮語との言語接触が発生しており、このことから日本語と朝鮮語は一部の基層語彙に共通するものがある。なお朝鮮半島で日本語の近縁言語を話す集団は最近まで存在しており、古代には半島日本語(大陸和語)、近世には済州島でタムラ語が話されていた。さらにその前はオーストロネシア語族やアルタイ語族との関係もあったと指摘されている。
文字入力[編集]
文字入力の場合は、ローマ字入力とかなめくり入力がある。
- ローマ字入力のキー
- かな入力のキー
押す回数\キー | あ | か | さ | た | な | は | ま | や | ら | わ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | あ | か | さ | た | な | は | ま | や | ら | わ |
2 | い | き | し | ち | に | ひ | み | ゆ | り | ゐ |
3 | う | く | す | つ | ぬ | ふ | む | よ | る | ゑ |
4 | え | け | せ | て | ね | へ | め | ゃ | れ | を |
5 | お | こ | そ | と | の | ほ | も | ゅ | ろ | ん |
6 | ぁ | っ | ょ | ゎ | ||||||
7 | ぃ | |||||||||
8 | ぅ | |||||||||
9 | ぇ | |||||||||
10 | ぉ |
脚注[編集]
批判[編集]
「日本語は、日本の『国語』としては不適切である」という意見があった。その理由としては、
- 原始的であり、近代社会にそぐわない
- 特殊である
- 曖昧である
- 国際的にいうと、習得しづらい
などが理由として挙げられるが、歴史学や日本語処理によっておおむね否定された。
原始的である[編集]
表意文字と表音文字が混在するスタイルは、あまり例がない。表意文字を表音文字として使う例は古代エジプト文字や楔形文字の時代から行われていたが、「表意文字」と「表紋文字」を混在する表記体系(いわゆる「漢字かな交じり文」)が一般的である言語は珍しい。
特殊である[編集]
とはいえ、ネイティブだけでも一億人以上もおり、五億人ほどの使用者がいる。いわゆる「中国語(北京語)」や「ロシア語」のような国語・標準語ではない自然言語の中では、特殊な存在ではある。
曖昧である[編集]
共通語としての性格があるため、ラテン語と同じく省略が多い。英語だと、主語の「I」を省略すると命令形になってしまう。
習得しづらい[編集]
ジャック・ハルペン、マーティ・フリードマン、クロード・チアリなど、フツーに日本語を習得している人も多い。「『語順』によって文法格を示すわけではない」「省略が多い」といったことが理由とされるが、パソコンやタブレットが普及した現在では、それほど習得しづらい言語ではないという。
また、『語順』によって文法格を示すわけではない言語も、主語を省略する言語も珍しくない。結局、習得のしやすさは母語が何語かに大きく依存する。