ハンガリー語の文法

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この項ではハンガリー語の文法について解説する。

概要[編集]

ハンガリー語とはウラル語族であり、アジア系の言語であり周りのチェコ語ドイツ語セルビア語などのインド・ヨーロッパ語族とは大きく異なる。アジア系の言語ということもあり日本語と非常に似ている点が多く存在している(語順など)。

文法[編集]

文構造[編集]

基本的に主語→目的語→述語の日本語と同じである。

人称代名詞[編集]

人称 単数 複数
1人称 Én Mi
2人称 Te/Ön/Maga Ti/Önök/Maguk
3人称 Ő Ők
  • 2人称の使い分けはTeは「君」に相当し、ÖnとMagaは「あなた」に相当する。目上の人や見知らぬ人へはMagaを用いるのが普通である。これはフランス語のTuとVousのように使い分けられているのと似ている。
  • 3人称は性別の区別はない。日本語で言えば「あの人」、「あの方」、「あいつ」。
  • イタリア語スペイン語と同じく、動詞は全て活用が異なるので主語は省かれる。

名詞の複数形の作り方[編集]

語尾 名詞
語尾が母音 autó→autók(車)
語尾が子音の後舌母音語 barát→barátok(友達)
語尾が子音の非円唇前舌母音語 szék→székek(椅子)
語尾が子音の円唇前舌母音語 könyv→könyvök(本)
  • 母音a,eで終わるものはá,éになり長音化する。
  • 後舌母音語は-akになるもの(語幹がaのA語幹)がある。(ház→házak(家))
  • 例外
    • 短母音化するもの:
      • víz→vizek(水)
      • levél→levelek(手紙)
    • 母音が脱落するもの:
      • cukor→cukrok(砂糖)
    • 語幹にvが出没するもの:
      • ló→lovak(馬)
    • 円唇母音だが-etをとるもの
      • könyv→könyvek(本)
    • よく分からないもの
      • férfi→rérfiak(男性、稀にこんなよくわからない変化をするものがある。)

冠詞[編集]

種類 単数 複数
定冠詞 A,Az A,Az
不定冠詞 Egy なし
  • Azは母音の前で。
  • 定冠詞と不定冠詞そしてない時によって意味は異なってくる。例えば:
    • 定冠詞:A könyvet olvasom.(私はその本を読んでいる。)→ある特定のものを指す。
    • 不定冠詞:Egy könyvet olvasok.(私はある本を読んでいる。)→不特定なものを指す。
    • 冠詞無し:Könyvet olvasok.(私は読書をしている。)→動詞と一体化して日本語でいう熟語を形成する。

指示代名詞[編集]

指示代名詞は指示形容詞としても使える。

  • Ez:これ(複数形:Ezek)

Mi ez?(これは何ですか?)-Ez ceruza.(これは鉛筆です。)

  • Az:あれ(複数形:Azok)

Mi az?(あれは何ですか?)-Az táska.(あれはバックです。)

指示形容詞として用いる場合は定冠詞をつける必要がある。

  • Ezek az emberek diákok.(この人たちは学生です。)
  • Az az autó elromlott.(あの車は壊れている。)

van動詞[編集]

van動詞は英語のbe動詞に相当し、「~である(コピュラ動詞)、~がある・~がいる(存在動詞)」という意味になる。

人称 単数 複数
1人称 Én vagyok Mi vagyunk
2人称親称 Te vagy Ti vagytok
2人称敬称 Ön/Maga van Önök/Maguk vannak
3人称 Ő van Ők vannak
  • 例文
    • Itt vagyok.(私はここにいる。)
    • Ki vagy te?(君は誰?)
  • 2人称敬称と3人称は同じである。
  • 存在動詞で3人称においてはvan動詞は用いられるが、コピュラ動詞では用いられない(もちろん2人称敬称も)。ただし過去形では使う。例:
    • Ő kedvesek van.(彼は優しい。(彼は/優しく/ある))
    • Ő tanár.(彼は先生です)
    • Maga japáni?(あなたは日本出身ですか?)

否定文の作り方[編集]

否定文はnem~を付ければ「~ではない」という意味になる。

  • Nem tudok.(私は知らない。)
  • Azok emberek nem magyár vagyok, hanem csehek.(あの人たちはハンガリー人ではなくてチェコ人だ。)

疑問文の作り方[編集]

疑問文は語順を変えずに"?"を語末につけるだけで作れる。スラブ系の言語同様、会話では最後の方を強く読まないと相手に伝わらない。対する応答はIgen(はい)、Nem(いいえ)で答える

  • Magyár vagy?-Igen, magyár vagyok.(あなたはハンガリー人ですか?-はい、私はハンガリー人です。)
  • Ők diákok?-Nem, ők nem diák, hanem tanárok.(彼らは学生ですか?-いいえ、彼らは学生ではなく先生です。)

疑問詞を用いた疑問文[編集]

疑問詞を用いる疑問文は、他言語同様最後の方を強く発音する必要はない。疑問詞には以下のものがある。

  • Mi:何
  • Ki:誰
  • Mikor:いつ
  • Hol:どこ
  • Honnan:どこから
  • Hová:どこへ
  • Hogyan:どうやって、どのように
  • Miért:なぜ
  • Melyik:どれ
  • Mennyi:どれくらい
  • Mit:(何を)
  • Kit:(誰を)
  • Melyiket:(どれを)
  • 例文
    • Mi ez?-Ez a szótár.(これは何?-これは辞書だよ。)
    • Ki vagy te?-Antal vagyok.(君は誰?-アンタルです。)
    • Hol van Spanyolország?-Az Ibériai-félszigeten található.(スペインとはどこですか?-イベリア半島にあります。)
    • Honnan folyik a Duna?-Németországból folyik.(ドナウ川はどこから流れていますか?-ドイツからです。)
    • Hová megy a vonat?-Debreceni.(その列車はどこへ行きますか?-デブレツェンです。)
    • Hogyan oldja meg a problémát?-Nem, ez a plobléma könnyü.(どうやってその問題を解くの?-いや~、この問題は簡単だよ。)
    • Miért nevetsz?-Nem semmi.(なんで笑ってるの?-何でもないよ。)
    • Melyik a helyes?-Ez.(どれが正解ですか?-これです。)
    • Mennyi ideig tart?-30 percet vesz igénybe.(どのくらいかかりますか?30分です。)

名詞の対格形の作り方[編集]

名詞の対格いわゆる目的語の作り方は簡単で、-tをつける。子音で終わる名詞は-ot(A語幹は-at),-et,-ötをつける。複数形は-at,-etをつける。

語尾 単数形 複数形
語尾が母音(リンゴ) alma almát almák almákat
語尾が子音の後舌母音語(窓) ablak ablakat ablakak ablakaat
語尾が子音の非円唇前舌母音語(子供) gyerek gyereket gyerekek gyerekeket
語尾が子音の円唇前舌母音語(かぼちゃ) tök→tökök tökök→ek
  • 母音a,eで終わるものはá,éになり長音化する。
  • 語末が、-ny,-r,-l,-j,-ly,-n,-s,-sz,-zs,-zの名詞は直接-tをつけること。例:reggel→reggelt(Jó reggelt kívánok(おはようございます(いい/朝を/望みます。)))
  • 例外(以下の例外は上記の規則には従わない)
    • 短母音化するもの:
      • víz→vizet(水)
      • levél→levelet(手紙)
    • 母音が脱落するもの:
      • cukor→cukrot(砂糖)
    • 語幹にvが出没するもの:
      • ló→lovat(馬)
    • 円唇母音だが-etをとるもの
      • könyv→könyvet(本)

動詞の現在形の活用[編集]

ハンガリー語の動詞には不定活用と定活用があり、これは日本語や英語にはない文法である。不定活用は目的語がない時・不定冠詞がある名詞の時・名詞に冠詞がない時の活用で、定活用は定冠詞がある名詞や固有名詞(目的語)があるときの活用である。要するに不定活用は自動詞、定活用は他動詞である。ロシア語のся動詞とそうではない普通の動詞の関係とも似ているのかな。

母音調和の規則があるので動詞は母音調和によって別々の変化をする。母音調和はこちらを参照

  • 不定活用
後舌母音動詞(hall(聞く))
人称 単数 複数
1人称 hallok hallunk
2人称 hallsz halltok
3人称 hall hallnak
非円唇前舌母音動詞(beszél(話す))
人称 単数 複数
1人称 beszélek beszélünk
2人称 beszélsz beszéltek
3人称 beszél beszélnek
円唇前舌母音動詞(örül(喜ぶ))
人称 単数 複数
1人称 örülök örülünk
2人称 örülsz örültek
3人称 örül örülnek
  • 例文
    • Hallok zene.(私は音楽を聞きます。)
    • Beszélsz németül?(ドイツ語は話せる?)
    • Örülnek.(彼らは喜んでいます。)
  • 定活用
後舌母音動詞(hall(聞く))
人称 単数 複数
1人称 hallom halljuk
2人称 hallod halljátok
3人称 hallja hallják
非円唇前舌母音動詞(szeret(好きである))
人称 単数 複数
1人称 szeretem szeretjük
2人称 szereted szeretitek
3人称 szereti szeretik
円唇前舌母音動詞(főz(料理する))
人称 単数 複数
1人称 főzöm örüljük
2人称 örülöd örülitek
3人称 főzi főzik
  • 例文
    • A zenét hallom.(私はその音楽を聞いています。)
    • Az Udont szereted?(うどんは好き?(うどんを/好みますか?))
    • A Gulyáslevest főzi.(彼はグヤーシュレヴェシュを作る。)

注意事項[編集]

自動詞しかない(目的語を取らない)ものは定活用が存在しない(van(である),jön(来る),megy(行く))。またdolgozik(働く)やérkezik(着く)のようなik動詞と呼ばれるものも定活用はない

関連項目[編集]