ナビエ=ストークス方程式
ナビエ=ストークス方程式とはニュートン流体の運動を記述する偏微分方程式である。3次元流体の流れの一般的な場合、これらは粘性流体の運動保存則(ニュートンの第二法則の一般化)を表す3つのスカラー微分方程式である。これらの方程式をベクトル関係として考慮すると、合わせてナビエ=ストークス方程式として呼ばれる。これらはフランスの物理学者のアンリ・ナビエとイギリスの物理学者のジョージ・ストークスにちなんで名づけられた。ナビエ=ストークス方程式は流体力学で最も重要な方程式であり、多くの自然現象や工学問題の数学的モデル化に使用される。
式[編集]
ナビエ=ストークス方程式は、分子力のモデル概念から出発したナビエ(1822年、非圧縮性流体)とポアソン(1829年、圧縮性流体)によって最初に得られた。その後、アデマール・バレ・ド・サン-ヴナンとストークスによって、この方程式の現象論的な導出がなされた。
未知数及びは、時間および座標の関数である。ここで、、は、流体が運動する平面または三次元の領域である。閉じた方程式系を得るためには、ナビエ=ストークス方程式に、質量保存の法則を表す不連続性方程式を追加する必要がある。
検討対象の問題に対する具体的な解決策を見つけるには、境界条件と初期条件を指定する必要がある。例えば、領域の境界と書記時点における測度場を指定する。
また、ある一点における圧力の時間依存性も考慮する必要がある。
圧縮性を考慮にいれると、ナビエ=ストークス方程式は次のような形になる。
- =動粘性係数(せん断粘度)
- =第2粘度もしくは体積粘度
- =クロネッカーのデルタ
粘度及びが一定であるという条件下では、この方程式はベクトル方程式に帰着される。
この場合、閉じた方程式系を得るためには、圧縮性流体の連続方程式を追加する必要がある。
さらにエネルギーバランスを表す微分方程式と状態方程式も含まれる。
解析と解法[編集]
方程式の解の解析は、クレイ数学研究所が100万ドルの賞金を提供している7つのミレニアム問題の1つの本質である。その目標は、3次元ナビエ=ストークス方程式のコーシー問題に対する大域的な滑らかな解の存在の証明または反証することである。空間的または平面的な流れに対するナビエ=ストークス方程式系の一般的な解析解を得るには、その非線形性と初期条件および境界条件への強い依存性によって複雑になる。
- 正確な解法一覧
- 単純な水路における定常流(ポアズイユ流、テイラー=クエット流、クエット流など)。
- ソリトンと非線形波。典型的なソリトンは、非常に複雑な境界条件下にある系の解となる可能性がある。ソリトンはエンジニアのスコット・ラッセルによって水路で初めて実験的に観測された。
- 有限時間のみ存在する解(いわゆるピーク状態)。この仮説は1933年にジャン・ルレイによって提唱された。彼は流体中の乱流は、速度の何らかの成分が無限大になる点または渦糸の形成によって生じると提唱した。
- 音の振動。波の振幅が小さい場合、それらも解になる。方程式の非線形項は解に影響しないため、無視ができる。解は正弦または余弦の調和関数、つまり音の振動である。
基本特性[編集]
- レイノルズ数が特定の臨界値を超えると、空間流または平面流の解析的厳密解は、カオス的な流れの様相(乱流)を示す。特定の場合では、これはファイゲンバウム理論や、カオスへの遷移に関する他のモデルが関係している。レイノルズ数が臨界値以下になると、解は再び非カオス的な流れの様相を示す。
- 乱流条件下における方程式係数の変化に対する感受性が非常に高く、レイノルズ数が0.05%変化すると、解は互いに全く異なるものとなる。
応用[編集]
熱伝導方程式と拡散方程式、及び対応する質量力を加えることで、ナビエ=ストークス方程式系は、対流、液体中の熱拡散、異なる液体の多成分混合物の挙動を記述することができる。
ローレンツ力を質量力として方程式に導入し、連続媒体中の場に関するマクスウェル方程式を系に加えることで、このモデルは電気流体力学および磁気流体力学における現象を記述するために使用が可能である。特にこのようなモデルはプラズマや星間ガスの挙動を記述・モデル化するために有効活用される。
ナビエ=ストークス方程式系は、地球物理学的流体力学の基礎であり、地球のマントルの流れ(ダイナモ問題)を記述する上でも使用される。
ナビエ=ストークス方程式の変形は、大気力学、特に天気予報において、大気塊の動きを記述するためにも用いられる。様々な技術装置における実際の流れを記述するためには、最小の渦よりも小さいセルを持つ系さんグリッドを用いることで、許容できる数値解の制度が得られる。これは現代コンピューターでもかなりの計算時間を要する。そのため、実際の流れの計算を簡略化するために、様々な乱流モデルが開発されてきた。