テンダー機関車
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テンダー機関車(テンダー式蒸気機関車、テンダー式とも)とは、車体構成における蒸気機関車の分類の一つ。
- 対極をなす機関車はタンク機関車。こちらは炭水車をもたず、機関車本体に炭庫や水槽を装備する構造となっている。

テンダー機関車の一例(C58形)
概要[編集]
特徴[編集]
- 構造としては、機関車に炭水車(テンダーとも)が連結されているといったものであるが、形状によって、細かく種類が分けられる。
- 自動給炭機を搭載している機関車も一部存在する。
長所[編集]
- 燃料や水の積載量が炭水車の大きさと比例するため、炭水車が大きいほど長距離の運転ができる。また、一度に多くの燃料や水を炭水車に補給するため、タンク機関車より補給する回数が少ない。[注 1]
- 炭水車の重量を動輪の重量に加算できるため、牽引力が高い。また、勾配区間でも安定した走行ができる。
- 基本的に大きなボイラーを搭載することができるため、出力が高い。
短所[編集]
- 炭水車が後方に連結されているため、後方の視界が悪く、逆機による高速運転が難しい。[注 2]また、全長もタンク機関車より長くなるため、小回りが利かないし、転車台も大型のものでなければいけない。
- 炭水車の重量が死重となり、機関車の足かせとなるため、燃料と水を粘着重量(トラクションの発生に寄与し牽引力となる動輪上重量)として活用することはできない。[注 3]
- 炭水車が大きいほど燃料や水の量が多くなるため、その分補給する時間が長くなってしまう。
狭義の分類[編集]
- 先述のとおり、テンダー機関車には形状によって細かく種類が分けられる。
通常型[編集]
- 言わずもがなこの記事で先述した形態。ただし、通常型でも細かい点で形態が異なってくる(流線形など)。
キャブ・フォワード型[編集]
- 機関車本体の前後を逆にしたもの。[注 4]
- 運転室を最前部に設けることによって、機関士は煙害から免れることができ、また良好な前方視界を得ることができた。その反面、燃料(主に石炭)の積載量に限りがあったり、燃料(主に重油)が車両やレールなどの設備に漏れ出て、運転に支障をきたすなどの欠点もあった。
- 20世紀前半にて、主にドイツやイタリア、アメリカのカリフォルニア州の山岳地帯のトンネルが多い線区で使用された。
キャメルバック型[編集]
- キャブ・ミドルワード型、センターキャブ機関車、マザー・ハバードとも。[注 5]
- こちらは機関車の中央に運転台が位置している。[注 6]
- こちらも前方視界を確保することができたが、運転台がサイドロッドの真上に位置するため、ロッドまわりが破損した場合、その部品などが機関士のところへ飛んでくる危険性があった。また、肝心の火室もむき出しの状態のため、機関助士は死と隣り合わせの状況下におかれていた。[注 7]
- 西部開拓時代末期のアメリカで開発、使用されたが、ベルギーにも似通った形態の機関車が存在した。
脚注[編集]
- ↑ そのため、幹線での運行や急行列車の運転に使われる。
- ↑ ただし、C56形などの一部の機関車は、後方の視界の確保のために炭庫側面を欠き取った炭水車を連結している。
- ↑ 改善策として、炭水車にも動力装置を設けた「パワー・テンダー」方式が考案された。しかし、製造されたものの、保守の面や信頼性の面で難点があり、普及はしなかった。
- ↑ キャブ(cab)は「運転室」、フォワード(forward)は「前にある」を意味する。本来、テンダー機関車は前からボイラー→運転台(火室)→炭水車の順番だが、キャブ・フォワード型の場合、運転台(火室がある場合も)→ボイラー→(火室)→炭水車の順番となっている。
- ↑ 初期のものはマッドディガーズとも呼ばれた。
- ↑ キャメルバック(camel back)は直訳すると、「ラクダの背中」を意味する。
- ↑ そのため、1927年には製造の禁止が行われ、既存の機関車もほとんどが普通型に改造された。