エアバスA380
エアバスA380(えあばすえーさんびゃくはちじゅう)とは、ヨーロッパの航空機メーカー・エアバスが開発した世界最大の旅客機のことである。航空機全体ではもともとAn-225に次いで世界で2番目に大きかったが、同機が2022年のウクライナ侵攻によって破壊されたため、現在は(現存する中で)世界最大の飛行機でもある。
概要[編集]
ヨーロッパのエアバスが開発した、世界初の総二階建て超大型旅客機である。それまで世界最大の旅客機であったボーイング747(ジャンボジェット機)だけでは拡大する航空需要に追いつかず、さらなる後継機が求められたことから、1990年代に超巨大旅客機の構想がスタートし、この開発段階ではエアバスA3XXという仮称で呼ばれていた。
2000年代に入ると開発は本格化し、A3XXからA380に呼び名が変化、2005年4月に初飛行し、2006年12月に型式証明を取得した。
しかし、機体があまりにも巨大すぎたため、当初の計画では2006年度中に運航開始する予定であったところ、2007年10月になってようやく初就航、1号機がローンチカスタマーであるシンガポール航空へ引き渡され、シンガポール〜シドニー線(いわゆるカンガルールート)でデビューした。このシンガポール航空のA380は、翌年の2008年5月にはシンガポール〜成田線に投入されて日本初就航を果たしている。
スペックは、全長が約73mで、全幅は約80m、最大離陸重量560t、航続距離15,400kmである。また、巡航速度は1,050km/h、最高速度1,185km/h、航続距離15,200km。
A380のジェットエンジンは2種類あり、オペレーターはロールス・ロイス トレント900とエンジン・アライアンス GP7200のどちらかを選択できる。
ギア数はノーズギア2本、ボディギア12本(6輪×2)、ウィングギア8本(4輪×2)の合計22本で、B747の18本(ボディ、ウイングともに4輪ギア)やB777の14本(ウイングギアなし)より多い。
2025年、A380は初飛行からちょうど20年を迎え、ハタチとなった。
名称[編集]
「A380」の読み方については「えーさんびゃくはちじゅう」が一般的であるが「えーさんはちまる」とか「えーさんはちぜろ」や「えーさんはちれい」等と読む人もいる。一部では俗称として「サンパチ」と呼ぶ人もいるとか。英語では「エースリーエイティー」である。
ホテルのように豪華で広い座席を搭載していることから「空飛ぶホテル」とも称されるほか、機体サイズがボーイング747(ジャンボ機)を上回ることから「スーパージャンボ」の異名もある。
オペレーター[編集]
- シンガポール航空(シンガポール)
- ローンチカスタマー。2007年に運航開始。世界初のオペレーターで、一時は最大で24機運航していたが、現在は12機を運航中。初めて日本(成田)にA380を飛ばしたことでも有名で、近年もたびたび成田にやって来る。エンジンはトレント900。
- エミレーツ航空(アラブ首長国連邦)
- 2008年に運航開始。世界最大のオペレーターであり、100機以上を運航している。そのため就航都市数も半端ではなく、日本にも成田と関西に毎日飛来している(2025年現在)。ファーストクラスの利用客は、他社のA380にはないシャワールームを利用することもできる。とにかく超豪華なA380だ。エンジンはトレント900とGP7200を併用しているが、後者の方が多数である。
- カンタス航空(オーストラリア)
- 2008年に運航開始。一時は最大で12機運航していたが、現在は10機を運航中。看板路線はやはり、シドニーとロンドンをシンガポール経由で結ぶカンガルールート。エンジンはトレント900。
- エールフランス(フランス)
- 2009年に運航開始。一時は10機を運航し、成田〜パリ線にも投入されていたが、コロナ禍(COVID-19)により2020年に全機退役した。しかし、コロナが落ち着いてからは需要が急回復し、他のエアラインは続々とA380を復帰させたことから、わずか11年の運航実績が早々に幕を閉じたことが疑問視されるようになった。エンジンはGP7200。
- ルフトハンザ(ドイツ)
- 2010年に運航開始。一時は最大で14機運航し、成田〜フランクフルト線にも投入されていたが(現在は撤退)、現在は8機を運航中。コロナ前はフランクフルトを拠点に運航していたが、現在では拠点がミュンヘンにシフトしている。エンジンはトレント900。
- ブリティッシュ・エアウェイズ(イギリス)
- 2013年に運航開始。12機を運航している。主にロンドンと北米各地を結ぶ路線に投入されている。座席配置の面白い特徴として、ビジネスクラスを1階にも2階にもほぼ均一に配置していることが挙げられ、このような配置はエコノミークラスであれば他社のA380でも見られるが、ビジネスではレアといえる。同社のハブ空港であるロンドン・ヒースロー空港は、需要の割に空港の拡張が困難で、世界有数の混雑空港として有名であるため、この混雑を多少なりとも解消するためにA380の存在が期待されている。その証拠に、同空港は世界的にも多くのエアライン(ブリティッシュ・エアウェイズ以外を含む)のA380が集まる空港のひとつである。
- アシアナ航空(韓国)
- 2014年に運航開始。6機を運航している。ソウル発着の中・長距離路線が中心だが、その間合い運用で成田に飛来することも多い。ライバルである大韓航空に対抗するために導入したと思われるが、2027年頃には大韓航空に統合されることが決定しているため、それに伴う今後の動向が注目されそうだ。エンジンはトレント900。
- カタール航空(カタール)
- 2014年に運航開始。一時は最大で10機運航していたが、現在は8機を運航中。ブリティッシュ・エアウェイズとともに、A380を保有する航空会社の中では日本への飛来実績(ダイバートや一時的なシップチェンジ等によるものを含む)がゼロという数少ないエアラインとなっている。エンジンはGP7200。