ヤコヴレフ Yak-130
ヤコヴレフ Yak-130(ロシア語: Яковлев Як-130、ラテン文字転写: Yakovlev Yak-130)は、ロシアのヤコヴレフ設計局が開発した高等練習機である。その多様な運用能力から、軽攻撃機としても利用されており、NATOコードネームは「ミットン」(Mitten)。
概要[編集]
Yak-130は、旧ソビエト連邦時代から運用されてきたL-39 アルバトロスの後継機として開発された。1980年代後半にソ連空軍が新型練習機の要求を提示し、ヤコヴレフとミコヤンがそれぞれの設計案を提出したことが開発の始まりである。当初はミグ-ATとの競争試作となったが、ソ連崩壊後の経済状況や開発方針の変更により、最終的にはヤコヴレフが独立して開発を進めることになった。
機体は、最新のアビオニクスとフライ・バイ・ワイヤ(FBW)システムを搭載しており、様々な種類の戦闘機をシミュレートできる高い柔軟性を持つ。これにより、第4世代および第5世代戦闘機のパイロット養成に最適化されている。
開発[編集]
Yak-130の開発は、1980年代後半にソ連空軍が次期高等練習機に関する要求を提示したことに端を発する。ヤコヴレフは「Yak-UTS」として設計を開始し、ミコヤンは「ミグ-AT」で応じた。両者の設計案はそれぞれ異なるアプローチであったが、ソ連崩壊により開発は停滞。経済的困難と政治的変化の中、1990年代初頭にはイタリアのアエルマッキ社がヤコヴレフとの共同開発に合意し、ヤク/AEM-130として国際的なプロジェクトに発展した。
しかし、技術移転や市場戦略に関する意見の相違から、アエルマッキは2000年に共同開発から離脱し、独自にM-346 マスターを開発することになった。これにより、ヤコヴレフは再び単独でYak-130の開発を進めることになった。
試作機は1996年 4月25日に初飛行に成功。その後、各種試験を経て、2009年にロシア空軍への量産機納入が開始され、2010年に正式運用が開始された。
設計[編集]
Yak-130は、タンデム複座の亜音速機であり、高い機動性と優れた操縦特性を持つ。主翼は高迎え角飛行に適した設計となっており、失速特性も良好である。
- エンジン:2基のAI-222-25ターボファンエンジンを搭載。高い信頼性と整備性を実現している。
- アビオニクス:オープンアーキテクチャのデジタルアビオニクスシステムを採用しており、将来的なアップグレードが容易である。グラスコックピットには、カラー多機能ディスプレイ(MFD)が装備されている。
- フライ・バイ・ワイヤ(FBW):完全にデジタル化された4重系統のFBWシステムを搭載。これにより、パイロットは様々な航空機の飛行特性をシミュレートすることが可能である。また、飛行安全性を高める役割も担っている。
- 兵装:機体には9箇所のハードポイントがあり、空対空ミサイル、空対地ミサイル、ロケット弾ポッド、機関砲ポッド、各種爆弾などを搭載できる。これにより、高等練習機としての役割だけでなく、近接航空支援や対テロ作戦などの軽攻撃任務にも対応可能となっている。
諸元[編集]
- 乗員:2名(教官、訓練生)
- 全長:11.49 m
- 全幅:9.72 m
- 全高:4.76 m
- 翼面積:23.52 m2
- 空虚重量:4,600 kg
- 最大離陸重量:10,200 kg
- 動力:プログレス AI-222-25 ターボファンエンジン ×2
- 推力:24.5 kN (各エンジン)
- 最大速度:1,060 km/h (マッハ0.89)
- 航続距離:2,000 km
- フェリー航続距離:2,500 km (外部燃料タンク使用時)
- 実用上昇限度:12,500 m
- 上昇率:65 m/s
運用国[編集]
豆知識[編集]
- Yak-130は、その汎用性の高さから「デジタル化されたL-39」とも称される。
- ロシアでは、Yak-130の愛称として「ジョーク」や「エイリアン」といった非公式の呼び名も存在する。これは、その独特な機体形状に由来するとされる。
- ロシアの曲技飛行チーム「ロシアの空の騎士団」は、Yak-130をSu-27の後継となる曲技飛行機としても検討している。
関連項目[編集]
- アエルマッキ M-346 - Yak-130の共同開発から派生したイタリアの練習機
- L-39 (航空機) - Yak-130が後継となるチェコスロバキア製の練習機
- ミグ-AT - Yak-130と競合したロシアの練習機プロジェクト