UH-1Y ヴェノム

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UH-1Y ヴェノム(UH-1Y Venom)は、アメリカベル・ヘリコプター(現ベル・テキストロン)社が開発した双発の中型多目的ヘリコプターである。アメリカ海兵隊UH-1N ツインヒューイの後継機として開発された。

開発[編集]

UH-1Yは、アメリカ海兵隊のH-1アップグレード計画の一環として、AH-1W スーパーコブラの代替となるAH-1Z ヴァイパーと共に開発された。この計画は、海兵隊が運用する既存のAH-1WとUH-1Nの機体を大幅に改修し、共通のエンジン、ローターシステム、アビオニクスなどを採用することで、部品の共通化と整備性の向上を図ることを目的としていた。

UH-1Yのプロトタイプは2001年12月16日に初飛行した。当初はUH-1Nの機体を約84%改修する計画であったが、最終的には新造機として製造されることになった。これは、UH-1Nの老朽化が進んでおり、改修では十分な性能向上と寿命延長が見込めないと判断されたためである。2008年に初期作戦能力を獲得し、配備が開始された。

設計[編集]

UH-1Yは、UH-1Nの基本的な設計思想を踏襲しつつ、性能向上のため大幅な改良が加えられている。

  • 動力ゼネラル・エレクトリック T700-GE-401C ターボシャフトエンジンを2基搭載。これにより、高温・高標高環境での性能が大幅に向上した。
  • ローターシステム:4枚複合材製メインローターと2枚複合材製テイルローターを採用。これにより、飛行性能、安定性、騒音低減が図られた。
  • アビオニクス:完全に統合されたデジタルグラスコックピットを採用。多機能ディスプレイ、先進的な航法・通信システム、統合型電子戦システムなどを備える。
  • 機体構造:胴体の設計が強化され、ペイロードと航続距離が増加した。また、生存性を向上させるための自己防御システムも搭載されている。

UH-1Yは、兵員輸送、物資輸送、偵察、武装護衛、捜索救難、医療後送など、多岐にわたる任務に対応できる汎用性を有している。

運用[編集]

UH-1Yは、アメリカ海兵隊の各海兵航空団に配備されており、世界各地の作戦に投入されている。AH-1Z ヴァイパーとの共通性から、整備、訓練、補給において高い効率性を実現している。

諸元[編集]

(UH-1Y ヴェノムの代表的な諸元)

  • 乗員:2名(操縦士、副操縦士)
  • 搭載量:武装兵員10名 または 貨物約3,020 kg (外部吊下)
  • 全長:17.78 m
  • 全幅:3.43 m (スタブウィング含む)
  • 全高:4.42 m
  • ローター直径:14.63 m
  • 空虚重量:5,370 kg
  • 最大離陸重量:8,390 kg
  • 発動機ゼネラル・エレクトリック T700-GE-401C ターボシャフトエンジン ×2基
    • 出力:各1,800 shp (1,342 kW)
  • 最大速度:304 km/h (164 kn)
  • 巡航速度:250 km/h (135 kn)
  • 航続距離:648 km
  • 実用上昇限度:6,100 m (20,000 ft)

武装[編集]

豆知識[編集]

  • UH-1Yは、その強力な動力と高いペイロード能力から、"ヤンキー"(Yankee)の愛称で呼ばれることがある。
  • UH-1YとAH-1Zは、84%の部品共通性を持つと言われているが、これは両機体の開発当初の目標であり、実際にはそれよりも低い数値に落ち着いている。しかし、それでも整備効率の向上には大きく貢献している。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • Jane's All the World's Aircraft
  • GlobalSecurity.org UH-1Y Venom
  • Bell Textron 公式ウェブサイト