ベリエフ Be-200

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ベリエフ Be-200(ロシア語: Бериев Бе-200、NATOコードネーム:タガンログ)は、ロシアベリエフ設計局が開発した多目的水陸両用機である。主に消火活動森林火災の空中消火)、捜索救難海上哨戒人員輸送貨物輸送などに使用される。

開発[編集]

Be-200の開発は、1990年代初頭にベリエフ設計局が、大型水陸両用機ベリエフ A-40「アリバトロース」(NATOコードネーム:マーメイド)の設計を基に、より小型で多目的な機体を開発する構想から始まった。A-40で培われた技術と経験がBe-200の設計に大きく貢献している。

当初、Be-200は主に森林火災の空中消火機として構想されたが、その多目的性から、捜索救難や旅客輸送など、幅広い用途への展開が期待された。開発にはイルクート(現イリューシンの一部)が製造を担当し、いくつかの国際企業も参加した。特に、アビオニクスについては、ハネウェルリットン・インダストリーズなどの西側企業との協力も検討された。

試作機は1998年9月24日に初飛行した。その後、数年間の試験飛行と改良を経て、2003年にロシア非常事態省での運用が開始された。

設計[編集]

Be-200は、高翼配置の主翼とT字尾翼を持つ単葉機であり、胴体下部にボートのような形状の艇体を持ち、水上での離着水を可能にしている。胴体側面にスポンソン(張り出し)が設けられており、水上での安定性を高めている。

エンジンは当初、イフチェンコ-プログレス D-436TPターボファンエンジンを2基、主翼の付け根上部にポッド式で搭載している。この配置は、水しぶきの吸入を防ぎ、エンジンの信頼性を高めることを目的としている。D-436TPは、航空機用エンジンであるD-436Tを水陸両用機用に耐腐食性などの改良を施したものである。

Be-200は、最大12トンの水を搭載して空中散布することが可能であり、これはそのサイズクラスの航空機としては非常に優れた消火能力を持つことを意味する。水の積載は、水上を滑走しながら胴体下部のスクープから水を吸い上げることで行われる。この「スクーピング」作業は、わずか14秒で完了することができる。

操縦系統は、フライ・バイ・ワイヤを採用しており、高い操縦性と安全性を提供している。コックピットはガラスコックピットであり、最新のアビオニクスシステムが搭載されている。

バリエーション[編集]

  • Be-200:基本型。
  • Be-200ES:輸出型およびロシア非常事態省向けの改良型。アビオニクスの改良や、捜索救難、医療搬送、貨物輸送などの多様な任務に対応する能力が強化されている。現在、生産されている主要な型式である。
  • Be-200ChS:ロシア非常事態省向けの型式名。Be-200ESとほぼ同義で使用される。
  • Be-210:旅客輸送型(計画のみ)。
  • Be-220:海上哨戒型(計画のみ)。

運用国[編集]

事故[編集]

ベリエフ Be-200は、その運用期間において比較的良好な安全記録を保持しているが、いくつかの事故も発生している。

  • 2021年8月14日トルコで森林火災の消火活動中にロシア非常事態省のBe-200ESが墜落し、乗員8名全員が死亡した。事故原因は調査中だが、地形と気象条件が影響した可能性が指摘されている。

諸元[編集]

  • 乗員: 2名
  • 全長: 32.0 m
  • 全幅: 32.8 m
  • 全高: 8.9 m
  • 翼面積: 105 m²
  • 空虚重量: 28,000 kg
  • 最大離陸重量: 43,000 kg(水上)、41,000 kg(陸上)
  • エンジン: イフチェンコ-プログレス D-436TP ターボファンエンジン × 2基
  • 推力: 73.5 kN (16,500 lbf) × 2
  • 巡航速度: 560 km/h
  • 最大速度: 700 km/h
  • 航続距離: 2,100 km (消火任務時)、3,300 km (フェリー飛行時)
  • 実用上昇限度: 8,000 m
  • 離陸滑走距離: 1,800 m (陸上)、1,500 m (水上)
  • 着陸滑走距離: 1,000 m (陸上)、1,100 m (水上)
  • 水搭載量: 12,000 リットル

豆知識[編集]

Be-200の「200」という数字は、設計局の内部コードである「A-200」に由来しているが、これはA-40の派生型であることに加え、200シリーズの機体であることを示唆している。また、この機体は、ロシアだけでなく、ヨーロッパやアジアの森林火災消火活動にも積極的に投入されており、その信頼性と性能の高さが国際的に評価されている。さらに、冬季には機体を改造し、乗客を乗せる輸送任務にも使用できるよう設計されており、その多目的性が際立っている。

関連項目[編集]

参考書籍[編集]