非線形振動とは、線形ではない振動。
多くの振動現象は簡単のため単振動のような線形な振動として扱われる。
しかし、厳密には線形ではなく近似によって線形としている場合、特定の条件では線形近似との乖離が大きくなることがある。
そのような場合、非線形振動としてより正確に扱う必要が生じる。
振り子[編集]
振り子は、振幅が小さいときは単振動とみなせるが、振幅が大きいときは非線形振動になる例である。
簡単のため、次の事項を仮定する。
- 振り子は平面内で運動する。(コリオリの力などは考えない)
- 空気抵抗などの減衰成分を無視する。
- 振り子の糸は十分に軽く、その質量は無視できる。(あるいは、糸の重さを含めた重心までの長さや質量を計算しても良い)
振り子の長さ
,
重力加速度
,
おもりの質量
,
糸の鉛直方向からの角度
を用いて
振り子の運動方程式は

整理して

この微分方程式には正弦関数が含まれているので、線形に近似して簡単に扱いたくなる。
単振動に近似できる場合[編集]
振幅が小さいとき
が小さいため、三角関数をテイラー展開して2次(正弦関数なので正確には3次)以上の項が十分に小さく無視できるとし、
と近似する。

この微分方程式の解は(詳しくは微分方程式#2階線形微分方程式を参照)

ただし、
は任意定数で初期条件などで決定できる。
このとき周期は、
となって振幅に依らない。
つまり、振り子の等時性が成り立つ。
単振動に近似できない場合[編集]
振幅が大きいとき
が大きいため、テイラー展開の2次以上の項を大きくなっていまい、
という近似は成り立たない。

はそのまま解くことが難しく非線形振動は計算が面倒である。
楕円積分を使って解くことができる他、コンピュータを利用して数値解を得ることもできる。
それらの結果から単振り子の等時性が破れることがわかっている。
関連項目[編集]