電力輸送

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送電から転送)
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電力輸送(でんりょくゆそう)とは発電所で起こした電力を消費地に送ることである。送電ともいう。

概要[編集]

発電所は消費地から遠く離れた場所にあり、ときには数百kmも離れている。この際、いかに効率よく電力を輸送するかをまとめた技術である。

電力の発生と輸送[編集]

電気を輸送するときは高電圧にすると低電圧のときに比べて送電線で熱となって失われる電力が少ない。そのため、発電所では交流発電機交流を作り、変圧器高電圧にして消費地に送り、消費地では再び低電圧に変えて消費者に配電する。発電の黎明期では、直流送電も行っていたが、直流では変圧器が使えず、また、直流発電機ブラシとの摩擦といった構造上、高電圧の発電が出来ないので電力輸送が経済的に不利となる。[1]ただし、後述のとおり、周波数の異なる交流は直接融通することができないため、順変換により一旦直流にしたうえで、交流に逆変換する。短区間での直流送電は周波数変換所で行っている。また、長距離送電では有利のこともあるので、我が国では、本州北海道を結ぶ送電線に使用された。

交流発電機[編集]

磁場内でコイルを回転し、コイルの導線が磁束線を切るときの誘導起電力を利用して、力学的エネルギーを電気的エネルギーに変える装置である(フレミングの右手の法則)。電流を取り出す部分の円い環をすべり環といい、これと接触する金属片をブラシという。2個のすべり環は、回転コイルの半回転ごとに電流の流出口と流入口との役割を交替し、交流を送り出す。なお、周波数は東日本が50Hz、西日本が60Hzである。両者は直接融通できず、いったん直流に変換する[2]。なお、東海道新幹線など、東日本でも60Hzを用いる系統があり、こういう小規模な需要に対する周波数変換は、力学的エネルギーを介して変換する方式も用いられる。

変圧器(トランス)[編集]

相互誘導を利用して交流の電圧を変える装置で、共通の鉄心、または絶縁体の筒のまわりに2つ以上のコイルを巻いたものである。電源に接続するコイルを一次コイル、他を二次コイルという。これらの電圧と巻き数は次の関係がある。一次コイルの巻き数をn1、電圧をV1、電流をI1、二次コイルの巻き数をn2、電圧をV2、電流をI2とすると、

V1V2=n1n2

となる。種々の電力損失のない理想的な変圧器の場合、一次コイルに供給される電流と電圧の積は、二次コイルに誘起される電流と電圧の積に等しい。

I1V1=I2V2

送電線[編集]

電力P=IV=I2Rを輸送する場合に電圧Vを高くすると、電流Iは小さくなり、送電線で熱(ジュール熱)となって失われる電力P=I2R(Rは送電線の抵抗)を小さくすることが出来る。また、使用する電線も細くできる。電圧をn倍に高くすると、同じ電力を送電するときの電流は1n倍になり、送電線における電力の損失は1n2倍に減少する。高電圧の交流は、消費地の変電所変圧器を用い、適当に電圧を下げて使用者に供給している。

ジュール熱の抑制[編集]

電力輸送では熱エネルギーを利用しないのでジュール熱を削減し、電気エネルギーの消費を抑える工夫がなされる。これは、エネルギーの浪費を抑えるためだけでなく、ジュール熱に起因する火災を防止するためにも重要である。

広く用いられている方法のひとつに、十分な太さの電線を用意することが挙げられる。導体の電気抵抗は、その太さに反比例するため(抵抗率)、 想定される電流量に対して十分な太さが確保できれば、ジュール熱が削減できるのである。[3]

一方、非常に大きな電気エネルギーを扱う送電線の幹線に太い電線を用意することは不可能である。そのため、電流量を減らし、電圧を上げる。そうすれば少ない電流であっても十分な電気エネルギーを送れるので、これを利用するのが、高圧送電線である。

送電効率[編集]

今日の日本では、家庭に送電される電気は単相交流100Vないし200Vである。しかし、電力会社は、最寄りの変電所まで三相交流6600Vで送電し、電気エネルギーの損失を抑えている。また発電所から伸びる幹線では更に高電圧で送電しているものもあり、高い送電効率を達成している。

一般の家庭に電力会社から供給されている電圧は、単に100Vと呼んでいるが、この値は実効値を意味している。

正弦波交流[編集]

ここで、電流の時刻tにおける値(瞬時値)i(t)を数式に表すと次のようになる。

i(t)=Imsin(ωt+θ)
  • Im:電流の最大値[A]。電流値が最大になった瞬間の値。
  • ω:角周波数(角速度)[rad/s]
  • θ:位相角(位相)[rad](一般にπ<θπ)

この位相とはt=0のときのiの値を決めるもので、他の電流あるいは電圧との関係を考えるとき重要な値である。

交流の周期[編集]

周波数は交流が1秒間に大きさと向きの変化を繰り返す数をいう。この1往復に要する時間を交流の周期という。

周波数をf、周期をTとすると、等速円運動の場合の式と同じように、次の式が成り立つ。


f=1T=ω2π
ω=2πf

波高値、平均値、実効値[編集]

交流の電圧や電流は変化をするのでそれらの強さを表示する。

  • 1.波高値
  • 1周期中の最大の瞬時値。ある方向の波高値と反対方向の波高値とは必ずしも等しいとは限らないが、一般的な正弦波交流は正の波高値と負の波高値とは等しい。このように正負対称の波形の波高値を最大値という。
  • 2.平均値
  • 正弦波では半周期ごとに符号が逆転するのでそれらを単に平均すると0になるので、瞬時値の向きに無関係な量(絶対値)として1周期に渡って平均した値をいう。正弦波交流は正負の変化が対称的だから正の半周期の間の平均値を求めれば良い。上式にてθ=0として平均値を求める。これを式で表すと、
Ia=1T0T|i(t)|dt=1T/20T2i(t)dt

のように表される。これを計算すると、

Ia=1T/20T2Imsinωtdt=1T/2[Imωcosωt]0T/2=ImωT/2(cosωT2+cos0)=Imπ(cosπ+cos0)=2πIm0.637Im

この平均値は交流を整流して直流に変換したときに必要となる値である。

  • 3.実効値
  • 瞬時値を2乗して1周期に渡って平均した値の平方根をとったものをいう。これは交流の大きさを表すのに一般的に使われる値で、一つの抵抗に同じ値の直流を流したときに等しい電力の値となるような物理的意味を持っている。
I=1T0Ti2dt

のように表される。これを計算すると、

I=1T0TIm2sin2(ωt+θ)dt=Im2T0T12(1cos2(ωt+θ)dt)=Im22T[t12ωsin2(ωt+θ)]0T=Im22T(T12ωsin2(ωT+θ)0+12ωsin2θ)=Im22T(T12ωsin(4π+2θ)+12ωsin2θ)=Im22=Im20.707Im

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 堀孝正『パワーエレクトロニクス』オーム社出版局2002年2月25日第1版第7刷発行
  • 酒井善雄『電気電子工学概論』丸善株式会社
  • 力武常次、都築嘉弘『チャート式シリーズ新物理ⅠB・Ⅱ』数研出版株式会社新制第11刷1998年4月1日発行
  • 矢野隆、大石隼人『発変電工学入門』森北出版株式会社2000年9月13日第1版第4刷発行
  • 西巻正郎・森武昭・荒井俊彦『電気回路の基礎』森北出版株式会社1998年3月18日第1版第12刷発行

脚注[編集]

  1. 海外の直流電化鉄道電化でも3000Vである。
  2. 過去には回転変流器を用いる周波数変換も実施された。
  3. オームの法則E=IR (E電圧I電流R電気抵抗)で表される。 抵抗は、導線の長さlに比例し、断面積Sに反比例する。すなわち抵抗Rを抵抗率ρ、長さl、断面積Sで表すと R=ρlS となる。 ρは導線の長さが1m、その断面積が1m2あたりの電気抵抗となる。