語句の揺れ

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語句の揺れ(ごくのゆれ)あるいは言葉の揺れ(ことばのゆれ)は、自然言語に頻繁に見られる、言語学上の現象である。ここでは主に日本語での事例について記す。

勘違い、文化的背景、漢字の用法などから表記・発音にバリエーションが生じる表記揺れ[1]読みの揺れや、外来語を取り入れる際に取り込み方の違いなどによって同義語が複数生じる音写の揺れ、言語の特徴によって、時代が下るにつれ語句の音が変化する音変化の過程での揺れなどがある。

誤用との違い[編集]

言語は流動的なものであり、語句の揺れと誤用との明確な線引きは存在しない。過去誤用であるとされていた用例が一般に定着し、正式な用法となった語句も存在する。

しかし、固有名詞とそれ以外の普通名詞などの間には、許容度に大きな差がある。報道機関では「固有名詞はもともとの言語での発音に忠実にカナ表記する」というのが原則であるが、一般に浸透しきっている表記であっても、「ハレー彗星」などの例外がある。他には、音楽家フェリックス・メンデルスゾーンは「メンデルスゾーン」として知られているが、本来の発音は「メンデルソン」であったともいう。参照元言語が異なる例としては、報道機関ではウクライナの首都は「キーウ」と呼称されているものの、もともとの日本語名である「キエフ」と呼ぶ者も多い。しかし、使用する外来語を限定するのは、特定の主義主張を示すことに使われることもあり、注意が必要である。

一例[編集]

表記・読み[編集]

  • 取り扱い・取扱・取扱い - 漢字の用法が異なる例。記されるスペースに応じて使い分けのあることもある。
  • 重複(チョウフク・ジュウフク) - どちらも同じ意味を表すが、慣用読みと本来の読みの両方が用いられる。一部には「〈ジュウフク〉という読みは誤りである」との意見もある。

音写[編集]

  • ハレー彗星・ハリー彗星 - 音写の揺れの典型例。もとの言語に忠実な発音であるかそうでないかの違い。明治時代には「ハリー彗星」という正確な表記がされていたが、1980年代にメディアが「ハレー彗星」という当時の発音とは乖離した表記をしたのが広まった(ハレー彗星問題)。近年、学会では再び「ハリー彗星」と表記するようになったが、一般ではすでに「ハレー彗星」が浸透している。
  • ウイルス・ヴィールス - 明治時代に医学がドイツから大きな影響を受けたために、ドイツ語読みの「ビールス」とよばれていたが、学術用語の多くがラテン語であることから、ラテン語読みの「ウィルス」と呼ばれるようになった。英語では「バイラス」だが、こちらの用例は少ない。

音変化[編集]

  • 新しい(あたらしい・あらたしい) - 本来の正しい読みは「あらたしい」であるが、音韻転換が発生したことによって明治時代以降に「あたらしい」となった。
    「あたらしい」が定着しきっており、「あらたしい」と読むことはほとんどない。しかし現在でも、「新たな」などの用法に「あらた」読みの名残が見られる。

他言語において[編集]

他言語間でも、語句の借用や音写の際に表記や発音が変化したり、綴り通りに見て本来の発音からかけ離れたりすることは頻繁に見られ、たとえば英語での「Japan ジャパン」がドイツ語「Japan ヤーパン」と、全く同じ綴りでも発音が異なることさえある。

また、同じ日琉語族である琉球語と日本語、および日本語の方言(例えば関西方言首都圏方言)の間でも見られる。

脚注[編集]

  1. なお「表記揺れ」にも「表記の揺れ」など、表記揺れが存在している。

関連項目[編集]