藤野豊
藤野 豊(ふじの ゆたか、1952年 - )は、日本近現代史研究者。
経歴[編集]
横浜市生まれ[1]。高校時代から部落問題や安保、沖縄、ベトナム反戦などの問題にも関心を持ち、高校闘争を経験[2]。神奈川部落問題研究会に参加[1]。1971年早稲田大学第一文学部入学[3][4]。学内を支配する革マル派の目を逃れながら狭山差別裁判糺弾闘争に参加し、同級生の川口大三郎を部落解放闘争に勧誘した[2]。1972年11月に川口が革マル派に殺害された後、早稲田大学全学行動委員会(WAC)の一員となり、革マル派の暴力から自治会臨時執行部を守る「防衛隊」に配属された[2]。1974年6月の部落解放同盟神奈川県連合会の結成に関わる[2]。当初は大学を退学し、部落解放同盟東京都連合会の専従活動家になる予定であったが[1]、神奈川県連書記長の敷本五郎から「神奈川の地から部落問題を理解する学者になれ」と言われ[2]、卒業することに方針を転換。卒業論文は神奈川県の融和運動史[1]。
1975年早稲田大学文学部卒業[5]。高校教員を経て、大学院に進学し、全国的な融和運動史と水平運動史を研究[1]。1978年早稲田大学大学院文学研究科日本史専攻博士前期課程修了(文学修士)。1984年早稲田大学大学院文学研究科日本史専攻博士後期課程退学[6]。1991年「水平運動の社会思想史的研究」で文学博士(早稲田大学)[7]。埼玉大学・神戸市外国語大学・帝塚山大学等の非常勤講師[8]、富山国際大学人文社会学部助教授、同大学国際教養学部助教授、同准教授を経て[9]、2011年敬和学園大学人文学部教授[9][10]。同大学人文社会科学研究所長・図書館長を務める[11]。2023年退職[10]。
ハンセン病市民学会事務局長、ハンセン病問題ふるさとネットワーク富山代表、部落解放にとりくむ富山県連絡会議幹事[12]、優生手術に対する謝罪を求める会呼びかけ人[13]、政府のハンセン病問題真相究明検証会議委員も務めた[14]。
部落問題、ハンセン病患者への差別、アイヌ民族への差別、売買春問題、戦後日本の人身売買などの人権問題を研究する[1][15]。
著書[編集]
単著[編集]
- 『同和政策の歴史』(解放出版社、1984年)
- 『水平運動の社会思想史的研究』(雄山閣出版、1989年)
- 『日本ファシズムと医療――ハンセン病をめぐる実証的研究』(岩波書店、1993年、第三刷2001年、オンデマンド版2015年)
- 『それぞれの選択――「大検」からみた学校・教育論』(かもがわ出版、1997年)
- 『日本ファシズムと優生思想』(かもがわ出版、1998年)
- 『強制された健康――日本ファシズム下の生命と身体』(吉川弘文館[歴史文化ライブラリー]、2000年)
- 『被差別部落ゼロ?――近代富山の部落問題』(桂書房、2001年)
- 『性の国家管理――買売春の近現代史』(不二出版、2001年)
- 『「いのち」の近代史――「民族浄化」の名のもとに迫害されたハンセン病患者』(かもがわ出版、2001年)
- 『厚生省の誕生――医療はファシズムをいかに推進したか』(かもがわ出版、2003年)
- 『ハンセン病と戦後民主主義――なぜ隔離は強化されたのか』(岩波書店、2006年)
- 『忘れられた地域史を歩く――近現代日本における差別の諸相』(大月書店、2006年)
- 『ハンセン病 反省なき国家――『「いのち」の近代史』以後』(かもがわ出版、2008年)
- 『戦争とハンセン病』(吉川弘文館[歴史文化ライブラリー]、2009年、オンデマンド版2022年)
- 『戦後日本の人身売買』(大月書店、2012年)
- 『孤高のハンセン病医師――小笠原登「日記」を読む』(六花出版、2016年)
- 『「黒い羽根」の戦後史――炭鉱合理化政策と失業問題』(六花出版、2019年)
- 『強制不妊と優生保護法――"公益"に奪われたいのち』(岩波書店[岩波ブックレット]、2020年)
- 『戦後民主主義が生んだ優生思想――優生保護法の史的検証』(六花出版、2021年)
- 『検証・狭山裁判Ⅰ 再審無罪に向けて裁判闘争の歴史を振り返る』(世織書房、2025年)
共著[編集]
- 『米騒動と被差別部落』(徳永高志、黒川みどり共著、雄山閣出版、1988年)
- 『「水平社伝説」からの解放』(朝治武、黒川みどり、関口寛共著、かもがわ出版、2002年)
- 『知っていますか?ハンセン病と人権一問一答 第3版』(神美知宏、牧野正直共著、解放出版社、2005年)
- 『差別の日本近現代史――包摂と排除のはざまで』(黒川みどり共著、岩波書店[岩波現代全書]、2015年)
- 『人間に光あれ――日本近代史のなかの水平社』(黒川みどり共著、六花出版、2022年)
編著[編集]
- 『近代部落史資料集成(第7-8巻)米騒動と部落問題(1・2)』(渡部徹共編、三一書房、1985年)
- 『近世神奈川の被差別部落』(荒井貢次郎共編、明石書店、1985年)
- 『歴史のなかの「癩者」』(編、ゆみる出版、1996年)
- 『教室から「自由主義史観」を批判する――差別と侵略の近代史』(編、かもがわ出版、1997年)
- 『近現代日本ハンセン病問題資料集成 戦前編(全8巻)』(編・解説、不二出版、2002年)
- 『近現代日本ハンセン病問題資料集成 戦後編(全10巻別冊1)』(編・解説、不二出版、2003-2004年)
- 『近現代日本ハンセン病問題資料集成 戦前編・戦後編 解説・総目次』(編・解説、不二出版、2004年)
- 『近現代日本ハンセン病問題資料集成 補巻(1-5、8、9、12-15)』(編・解説、不二出版、2004-2007年)
- 『神奈川の部落史』(「神奈川の部落史」編集委員会編著、藤野豊編集代表、不二出版、2007年)
- 『十五年戦争極秘資料集 補巻31 大同保育隊報告』(編・解説、不二出版、2008年)
- 『近現代部落史――再編される差別の構造』(黒川みどり共編、有志舎、2009年)
- 『戦後初期人身売買・子ども労働問題資料集成(全10巻)』(石原剛志共編・解説、不二出版、2013-2014年)
出典[編集]
- ↑ a b c d e f 「水平社伝説」からの解放 紀伊國屋書店
- ↑ a b c d e 藤野豊「「革命と暴力」に関する覚書(PDF)」『敬和学園大学研究紀要』第32号、2023年
- ↑ 『ゲバルトの杜 ~彼は早稲田で死んだ~』公式ホームページ
- ↑ 藤野豊「『革命と暴力』に関する覚書、敬和学園大学研究紀要、2023年第32号、(其の一) ynozaki2024の日記、2024年6月16日
- ↑ researchmap
- ↑ 人権啓発・映画上映会 | 人権に関するデータベース 人権ライブラリー
- ↑ 水平運動の社会思想史的研究 CiNii Research
- ↑ 藤野豊『水平運動の社会思想史的研究』雄山閣出版、1989年
- ↑ a b KAKEN
- ↑ a b ハンセン病元患者が託した資料も 敬和学園大元教授・藤野豊さん、新潟県新発田市の図書館に蔵書5000冊寄贈 新潟日報、2024年10月20日
- ↑ 戦後民主主義が生んだ優生思想―優生保護法の史的検証 紀伊國屋書店
- ↑ 忘れられた地域史を歩く―近現代日本における差別の諸相 紀伊國屋書店
- ↑ 優生手術に対する謝罪を求める会 arsvi.com
- ↑ ハンセン病 反省なき国家 かもがわ出版
- ↑ 北澤満「書評 藤野豊『「黒い羽根」の戦後史――炭鉱合理化政策と失業問題』(PDF)」『エネルギー史研究』No.35、2020年
外部リンク[編集]
- 藤野 豊 主要研究著作一覧(PDF)
- 藤野豊「ドキュメンタリー映画い『ゲバルトの杜』と狭山裁判闘争、『部落解放』2024年6月、855号。 - ynozaki2024の日記