草原の子テングリ
『草原の子テングリ』(そうげんのこテングリ)は、1977年に公開された日本のアニメーション映画。21分[1]。
概要[編集]
原案は手塚治虫[2][3]。制作はシンエイ動画で、東京ムービーからシンエイ動画が独立した後の第1回作品となる[3]。演出は大塚康生が担当しており、大塚のアニメ初演出作品となる[2][3]。ノンクレジットではあるが[4]、原画・レイアウトには宮崎駿、近藤喜文、小田部羊一も参加している[2][3]。
本作は雪印乳業(2011年に雪印メグミルクへ吸収)の劇場用PR映画として製作された[2][3]。企業のPR映画ではあるが、文部省選定、中央児童福祉審議会推薦、優秀映画界紹介推薦を受けている[4]。一般公開は行なわれておらず、雪印乳業の工場見学者や雪印乳業の宣伝部に貸し出しを希望した人のみが鑑賞できる状態であったため「幻のアニメ」とも呼ばれていた。
中央アジアの草原を舞台としたチーズ発祥の物語で、兄弟同然に育った仔牛と少年の友情や草原で暮らす民の情緒や生活が描かれる[2][4]。
あらすじ[編集]
中央アジアの草原の村で、少年テングリは仔牛のタルタルと兄弟のように育ってた。
ある冬、村の大人たちが食べ物がなくなったのでタルタルを殺して食べようとしているのを知ったテングリは、ひそかにタルタルを逃がした。
数年後、山に黄金の角を持った牛が住んでいるという話を聞かされた村人とテングリは牛の肉を食糧とするため、山へと向かった。しかし、村人たちは牛たちに負かされてしまう。村人たちは逃げ、テングリは独り取り残され牛たちに囲まれる。牛たちを率いていた黄金の角を持った牛とは、成牛となったタルタルであった。
牛を殺して食べずに済むよう、タルタルはテングリに冬場の食料不足対策としてチーズの作り方を教えた。
スタッフ[編集]
キャスト[編集]
DVD/一般公開[編集]
2021年3月に大塚が死去し、2023年8月12日に秋葉原UDXシアター(東京都)で追悼イベントが開催された際には、本作の上映も行われた[2]。
2007年に撮り下ろしインタビューによるメイキング映像「『草原の子テングリ』のできるまで」を併録したDVDが市販された。このDVDは品切れ状態が長らく続いたが、2023年に再販されている[3]。
制作にあたって[編集]
メイキング映像「『草原の子テングリ』のできるまで」において、大塚は以下のような苦労談を語っている。
- 時間が無かったので、とにかくコマを抜いた。基本的には1秒に3コマ。(フルアニメは秒間24コマが一般的)
- 使えるセル画のサイズが1つしかなかったので、線の太さも1種類しか使えなかった。
- このため、パン、ズームイン、ズームアウトといった撮影技法は効果的にできなかった。
- 色味がねむい。(コントラストが弱い)
影響[編集]
脚注[編集]
- ↑ “土曜図書 わくわく映画館(PDF)”. 仙台市 (2023年6月1日). 2025年11月16日確認。
- ↑ a b c d e f “追悼企画で大塚康生の初演出作「草原の子テングリ」上映、一般公開されていない一作”. コミックナタリー (2023年7月4日). 2025年11月16日確認。
- ↑ a b c d e f “大塚康生が演出、宮崎駿や近藤喜文らも参加した「草原の子テングリ」DVDが再販売”. アニメハック. 映画.com (2023年10月22日). 2025年11月16日確認。
- ↑ a b c d e f g h i j k l m n “手塚治虫の幻のアニメ『草原の子 テングリ』がDVD化!”. CD Journal (2008年3月31日). 2025年11月16日確認。
- ↑ “『火の鳥 エデンの花』監督がインスピレーションを得た参考作品とは?”. CinemaCafe.net (2023年11月7日). 2025年11月16日確認。