熱力学
熱力学は、熱・物質・仕事の出入りを、系の巨視的性質から扱う物理学の一分野。
概要[編集]
アボガドロ定数個程度の分子から成る物質の巨視的な性質を巨視的な物理量を用いて記述する。
熱力学は、平衡系と非平衡系に大別される。 ここでいう平衡とは熱平衡・力学的平衡・化学平衡の三者を意味し、系の巨視的状態量が変化しない状態を意味する。 単に熱力学と言えば、通常は平衡系での熱力学を指す。 平衡熱力学は、主に系の各平衡状態と各平衡状態間の過程を扱う。
また、統計力学は熱力学と関わりが深く、エントロピーなど両分野で扱われる概念も多い。 熱力学が巨視的な量を扱うのに対して、統計力学は微視的な物理法則や確率論を用いてそれを支えているような面がある。
熱力学の法則[編集]
熱力学第零法則[編集]
系AとB,BとCがそれぞれ熱平衡ならば、AとCも熱平衡にある。
(A=BかつB=C⇒A=Cのようなイメージ)
熱力学第一法則[編集]
エネルギー保存則である。
閉鎖系の内部エネルギーの変化は、外界から流入した熱量と外界によってなされた仕事の和に等しい。
熱力学第二法則[編集]
熱力学第二法則には以下のようないくつかの表現があるが、それらは実質的に等価である。 また、それらは「エネルギーを別のエネルギーに変換すると、必ず一部分が熱に変換されるれ、熱を100%別のエネルギーに変換することは不可能である」ということを示している。 つまり、「あらゆるエネルギーは最終的には熱になり、再利用が不可能になる」ということを示している。
クラウジウスの表現[編集]
熱を低温の物体から高温の物体へ移動させ、それ以外に何も変化させない過程は不可能である。
トムソン(ケルビン)の表現[編集]
温度の一様な熱源から吸収した熱を全て外界への仕事に変換し、それ以外に何も変化させない過程は不可能である。
オストヴァルトの表現[編集]
第二種永久機関が実現するためには低温熱源が絶対零度である必要があり、 (第三法則を考慮すると)第二種永久機関は実現不可能である。
エントロピー増大の法則・クラウジウスの不等式[編集]
断熱系において不可逆変化ではエントロピーは必ず増加し。 可逆変化ではエントロピーは変わらない。
熱力学第三法則[編集]
ネルンスト・プランクの定理とも。
絶対零度でエントロピーはゼロになり、絶対零度よりも低い温度はありえない。
平衡系で扱う主な量[編集]
圧力(P)[編集]
気体の状態方程式などで登場する。
圧力が一定の変化を定圧変化などと呼び、その際の量には下付き添え字でPを添えるもののある。
力/面積の次元をもち、単位にはパスカルやatm,bar,mmHgなどがある。
体積(V)[編集]
気体の状態方程式などで登場する。
体積が一定の変化を定積変化などと呼び、その際の量には下付き添え字でVを添えるもののある。
長さの三乗の次元をもち、単位にはリットルや立法メートルなどがある。
絶対温度(T)[編集]
気体の状態方程式などで登場する。
体積が一定の変化を等温変化などと呼ぶ。
単位にケルビンを主に使い、単に温度であれば摂氏温度や華氏温度などと相互に変換できる。
熱量(Q)[編集]
主に外界との出入りを考え、状態量ではない。
熱量の出入りのない変化を断熱変化などと呼ぶ。
エネルギーの次元をもち、単位にジュールを主に使い、カロリーなどと相互に変換できる。
仕事(W)[編集]
外界によってなされるものや外界にするものを考え、状態量ではない。
エネルギーの次元をもち、単位にジュールを主に使い、カロリーなどと相互に変換できる。
内部エネルギー(U)[編集]
状態量であり、例えば気体の場合は分子のもっている運動エネルギー(並進・回転など)の総量である。
エネルギーの次元をもち、単位にジュールを主に使い、カロリーなどと相互に変換できる。
エンタルピー(H)[編集]
であり、状態量である。
エネルギーの次元をもち、単位にジュールを主に使い、カロリーなどと相互に変換できる。
エントロピー(S)[編集]
であり、状態量である。
エネルギーを温度で割ったの次元をもち、単位にジュール/ケルビンを主に使う。
ヘルムホルツの自由エネルギー(F)[編集]
であり、状態量である。
エネルギーの次元をもち、単位にジュールを主に使い、カロリーなどと相互に変換できる。
ギブズの自由エネルギー(G)[編集]
であり、状態量である。
エネルギーの次元をもち、単位にジュールを主に使い、カロリーなどと相互に変換できる。