料理する女

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料理する女」(りょうりするおんな)は手塚治虫の短編サスペンス漫画。

概要[編集]

ビッグコミックオリジナル』(小学館)の1972年9月20日号に読み切り掲載された。

描写は、馴染みのある手塚漫画のタッチではあるが、劇画のように影が強調されて描かれているシリアスが画風となっている。手塚の漫画にはメタフィクション的なギャグやふざけた描写が入ることもよくあるが、本作には一切ない。

手塚治虫は、手塚治虫漫画全集のあとがきで「自分でもやりきれないほど冷たい作品」と本作を評している。

高齢化問題について論じられる際に本作が採り上げられることもあるが、本作の執筆時期は上記のように高齢化問題など話題にもなっていない1972年である。

あらすじ[編集]

近未来の話。人間の平均寿命は100歳を超えていた。

舞台となる山奥にある××病院の入院患者は老人ばかりで、いずれも何らかの知能障害痴呆精神疾患を患っていた。例外は医師、患者「B」氏の、住み込みで飯炊きをしているおばさん看護婦H」。

例えば……

  • A」氏は、昔は作家だったらしく持ち歩いている手帳にいつもメモを取っているが、メモされたものは文字になっておらず読める状態ではない。
  • 「B」氏は一見まともだが実の娘に殺されると堅く信じており、娘が見舞いに訪れても対応が冷たい。110歳くらい。
  • D」氏は食い気が旺盛で、子どものように奇矯な行動をとる。「E」氏の饅頭を奪おうとした。嗅覚が鋭い。
  • 「E」氏は自分は病んでないのに家族に精神病として入院させられたと主張する。
  • F」氏は刃物に異常な興味を示し、隠し持つ。
  • G」氏は男娼のように医師を誘惑する。

そんなある日、患者の失踪事件が起こる。「C」氏が食事に現れず、捜索しても見つからない。失踪者はこれで5人めだと医師は言う。警察から刑事が来訪してきて、(行方不明が5人めというのは)管理体制に問題があるのではないかと医師に問う。「E」氏が刑事に、医師が「F」氏を使って殺させたのだと耳打ちするが、おばさんは献身的な医師がそんなことをするはずがないと否定する。

「E」氏が左腹をナイフで刺されて死亡する。患者たちは「F」氏を容疑者として詰め寄るが、「B」氏は、「F」氏の犯行ではないこと、殺害現場が発見場所ではない(他の場所で刺され、移動して息絶えた)ことを推理する。「D」氏が「F」氏の遺体から冷凍室の臭いがすると、病院の食料を保管している冷凍室に向かう(腹が減ったので何か食べ物を探す意味もある)。そこで、「D」氏はおばさんに頭を殴られる。

おばさんは「C」氏を殺害し、遺体は解体されて冷凍庫で保管され、患者たちへの食事に提供されていたのだった。おばさんは逃げ出し、崖に追い詰められて、転落死した。

実は、この病院の入院患者たちは、病気というより老人であるが故にその家族に疎まれ、入院させられているのだ。そして患者の家族の依頼によって順番に殺されているのだった。おばさんも精神疾患持ちの入院患者だった。いつ自供するとも限らないので、おばさんが死んだことは都合が良かったと医師は娘に語る。そして、自分の父親(「B」氏)の番は未だか? と督促しに来た娘に今までの殺害手段が使えなくなったので、少し時間がかかることを告げる。

収録書籍[編集]

  • 手塚治虫漫画全集284巻「サスピション」(1983年、講談社
  • グリンゴ 3巻 (1989年、小学館)
  • 恐怖短編集2「悪魔の迷宮編」 (2000年、講談社漫画文庫)
  • 手塚治虫文庫全集133「グリンゴ (2)」(2011年、講談社)
  • 手塚治虫 ミステリーファイル (2014年、小学館、ISBN 978-4778032838

関連項目[編集]

外部リンク[編集]