奄美群島
奄美群島(あまみぐんとう)は、日本の南西諸島のうち、鹿児島県に属する島嶼群である。トカラ列島の南、沖縄諸島の北に位置し、東シナ海と太平洋の間に広がる。温暖な亜熱帯気候に属し、豊かな自然と独自の文化が育まれてきた。
地理[編集]
奄美群島は、主に以下の有人島で構成される。
これらの島々は、行政区分としては奄美市、大島郡の各町村に属する。最高峰は奄美大島にある湯湾岳(標高694m)である。地質的には隆起珊瑚礁を多く含み、石灰岩地形が特徴的である。周辺海域は黒潮の影響を強く受け、豊かな海洋生物の宝庫となっている。
歴史[編集]
奄美群島の歴史は古く、縄文時代から人々の生活の痕跡が見られる。
古代・中世[編集]
貝塚などから、早くから南方文化の影響を受けていたことが示唆されている。12世紀頃からは琉球王国との交流が活発になり、その影響下に入った。しかし、薩摩藩もまた奄美群島への影響力を強め、両勢力の間の緩衝地帯としての性格も帯びるようになった。
近世[編集]
1609年の薩摩侵攻により、奄美群島は薩摩藩の直轄領となり、黒糖の生産が強制されるなど、厳しい支配下に置かれた。この時期の過酷な労働や重税は、奄美の歴史に大きな影響を与えた。
近代・現代[編集]
明治維新後は鹿児島県に編入された。太平洋戦争末期には、沖縄戦の激戦地となった沖縄と地理的に近かったため、米軍による空襲を受けるなど、戦争の被害を経験した。
戦後、アメリカ合衆国による占領統治下に置かれたが、1953年に日本に復帰した。この日本復帰運動は、奄美群島の住民にとって重要な歴史的出来事であった。復帰後は、観光業の振興やサトウキビ栽培、大島紬などの伝統産業の維持・発展が図られている。
文化[編集]
奄美群島は、琉球文化と大和文化が融合した独自の文化を形成している。
- 言語:奄美方言(奄美語)は、琉球語派に属し、日本語の本土方言とは大きく異なる特徴を持つ。島ごとに多様な方言が存在する。
- 音楽:島唄と呼ばれる独特の民謡が継承されており、三線に合わせて歌われる。哀愁を帯びたメロディと、即興性のある歌い方が特徴である。
- 食文化:鶏飯、油ぞーめん、ミキなど、地域に根ざした独自の食文化が発達している。黒糖焼酎は奄美群島でのみ製造が許可されている特産品である。
- 伝統工芸:大島紬は、世界三大紬の一つに数えられる絹織物で、複雑な絣模様が特徴である。
自然環境[編集]
奄美群島は、国立公園に指定されるなど、豊かな自然環境が残されている。
- 亜熱帯照葉樹林:アマミノクロウサギ、アマミヤマシギなど、固有の希少動物が生息する照葉樹林が広がる。
- マングローブ林:奄美大島には大規模なマングローブ林が分布し、多様な生物の生息地となっている。
- サンゴ礁:周辺海域には美しいサンゴ礁が発達し、多くの熱帯魚が生息する。
これらの貴重な自然環境は、2021年に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の一部として世界自然遺産に登録された。
交通[編集]
- 航空:奄美空港が主要な空港であり、東京、大阪、福岡、鹿児島などから直行便が運航されている。各離島間にもコミューター便が運航されている。
- 海上:鹿児島港と各離島を結ぶフェリーが定期的に運航されている。島内ではバスやレンタカーが主な交通手段となる。
豆知識[編集]
奄美群島は台風銀座としても知られており、夏季から秋季にかけて多くの台風が接近・通過する。
参考文献[編集]
- 『奄美の歴史と文化』 奄美研究会、南方新社、2005年。ISBN 978-4861240098。
- 『奄美群島の自然と暮らし』 奄美群島自然保護協議会、図書出版南の風、2010年。ISBN 978-4904008013。
- 『日本の地理10 九州・沖縄』 野澤秀樹ほか、朝倉書店、2012年11月20日。ISBN 978-4254167702。