単電子近似

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単電子近似とは、多数の電子を持つ量子系の波動関数エネルギー状態を見つけるための近似方法である。

概要[編集]

単電子近似は、量子系は原子核と他の電子との相互作用を考慮した平均ポテンシャル場ないを運動するそれぞれの電子の系として記述できるという仮定に基づく。単電子近似における多電子系の波動関数は、単一粒子の座標に依存する特定の関数軍のスレーター行列式として選ばれる。これらの関数は、平均ポテンシャルを持つ単電子ハミルトニアンの固有関数である。

理想的には、電子が移動するポテンシャルは自己無頓着であるべきである。これを実現するには、ハートリー=フォック法やその相対論的一般化であるハートリー=フォック=ディラッグ近似などの反復法が用いられる。しかし、系はモデルポテンシャルによって記述されることが多い。

数式[編集]

単電子ハミルトニアンは基本的に以下の形を取る。

H^=22mΔ+V(r)

ここで、V(r)は平均ポテンシャルを表す。ハミルトニアンの波動関数のスペクトルは、次の方程式の解によって決定される。

H^ψi=Eiψi

ここで、iは関数を番号づけるための指標である。N個の電子を持つ多電子系の波動関数を構築するには、任意のN個の関数またはそれらの関数のN個の重ね合わせも選択できるが、パウリの排他原理を考慮すると、それらは全て異なる値を取る必要がある。

量子系の基底状態には、単電子エネルギーEiが最小となるN個の関数の集合が対応する。系の基底状態の全エネルギーは、単一電子エネルギーの和によって決定される。

E=i=1NEi

多電子系の波動関数は、置換に対する非対称性の要求を考慮して、波動関数ψiから構築される。これは主にスレーター行列式を用いて行われる。生成演算子を用いるとこの波動関数は以下のように表される。

ψ=a^1a^2...a^N|0

励起状態の波動関数は、最も低いエネルギーを持つ単電子ハミルトニアンの固有関数の1つの代わりに他の関数を選択することによって構築できる。

つまり、任意の単電子波動関数の集合を選べば、多電子系の波動関数は単電子関数の指標の集合|i1,12...iNで特徴づけられるか、単電子状態の一部は満たされ、一部は満たされていないとみなすことができる。満たされた状態に1えお、満たされていない状態に0を割り当てると、多電子系の状態を特徴づける1と0の無限の連鎖を構築することができる。このような連鎖は占有数表現と呼ばれる。

統計物理学では、多電子系の波動関数を正確に決定することはできない。系の状態は混合状態であり、フェルミ=ディラッグ分布を満たす密度行列によって記述される。

応用[編集]

単電子近似は量子化学固体物理学において広く用いられており、特にバンド理論の基礎を築いており、欠かせない物である。