ロング・ウォーク (2025年の映画)
『ロング・ウォーク』(英語: The Long Walk)は、リチャード・バックマン(スティーヴン・キングの別ペンネーム)の小説を原作とした2025年公開のディストピアサバイバル映画。フランシス・ローレンス製作・監督作品。日本公開は2026年。
本項では、以下、劇中の架空の競技としてのロング・ウォークは「〈ロング・ウォーク〉」と記述する。
概要[編集]
スティーヴン・キングがリチャード・バックマンの名義で1979年に出版した同名小説を原作とする。キングが大学在学中に執筆していた作品であり、キングのデビュー作となる『キャリー』(こちらも2度映画化されている)よりも前に存在していたことになるため「事実上の⻑編初執筆作」とも言われている[1]。
小説の邦訳版は沼尻素子翻訳のものが扶桑社より『死のロングウォーク』のタイトルで1989年に初刊行された。本映画の日本公開に併せて、『ロング・ウォーク』に改題し映画映像を表紙画にしたものが2026年5月に復刊されている[2]。
アメリカ合衆国では、2025年9月12日に劇場公開された[1]。
〈ロング・ウォーク〉のルール[編集]
- 時速3マイル以上の速度で歩くこと。
- 時速3マイルを下回ると警告が発せられる。以降、10秒ごとに警告が累積し、4回目の警告は即射殺。
- 警告を受けずに1時間経過すると、警告は1回分取り消しになる。つまり、警告3回を受けた状態から3時間、時速3マイル以上を維持すると、警告0の扱いになる。
- ルートを外れた場合は警告無しで即射殺。
- 水が入った水筒は、兵士に要求すれば何回でも交換してもらえる。
- 雨天決行。
- 休息無し。睡眠は歩きながら。排泄も歩きながらするか、30秒以内に済ませる。
あらすじ[編集]
架空の歴史上のアメリカ。国家の分断から起きた内戦のため、国際的な地位は低下し、社会は困窮していた。かつての栄光を取り戻すため、アメリカ国民を鼓舞するため、国を挙げて〈ロング・ウォーク〉が開催されていた。
優勝者には破格の賞金と、なんでも1つ願いがかなえられる権利が与えられる。各州を代表する〈ロング・ウォーク〉参加選手たちは、ただひたすら歩く。そゴールは無く、不眠不休で歩き、最後に生き残った選手が優勝となる死のレースであった。
それぞれの思惑を秘め、少年たちは時に助け合い、奇妙な友情を育みながら歩く。そして1人、また1人と脱落し、射殺されて行く。
最後に残ったレイ・ギャラティとピート・マクヴリーズ。歩みを停めたピートにレイは「もう少しいっしょに歩こう」とピートを立たせて歩ませる。そしてピートの背後で座り込んだレイに兵士が銃弾を撃ち込み、少佐がとどめを刺した。
ピートは副賞にその場の兵士が持っていたカービン銃をもらうと、少佐を撃ち、いずこかへと歩み去った。
スタッフ[編集]
- 監督 - フランシス・ローレンス[3]
- 脚本 - J・T・モルナー[3]
- 原作 - スティーブン・キング
- 製作 - ロイ・リー、スティーブン・シュナイダー、フランシス・ローレンス、キャメロン・マコノミー[3]
- 音楽 - ジェレマイア・フレイツ[3]
- 配給 - クロックワークス(日本)[3]
キャスト[編集]
- レイ・ギャラティ
- クーパー・ホフマン
- 47番。本名は「レイモンド」で「レイ」は愛称。メイン州フリーポート出身。
- 映画はレイが〈ロング・ウォーク〉選手に選出された旨のメッセージから始まる。
- 〈ロング・ウォーク〉最後(49番目)の脱落者。
- 父親を目の前で少佐に射殺されたことから、優勝した場合にはカービン銃を受け取り、その場で少佐を射殺して仇を討つことを考えていた。しかし、それではその場でレイ・ギャラティも射殺されるので母親と再開できなくなると、ピートにたしなめられる。
- 地元の出身であり、ルート上でレイへの応援メッセージを掲げる住民の少女などもいる。住んでいたフリーポートもルート上にあったため、母親と再開することになるが、その際にルートを外れようとしたところを、「母親の前で射殺されたいのか」とピートに制止させられた。
- ピート・マクヴリーズ
- デヴィッド・ジョンソン
- 23番。本名は「ピーター」で「ピート」は愛称。
- 両親はおらず、叔父のもとで育ったが、叔父は幼い子供に暴力をふるうような人物でもあった。悪行が露見し、入院するような大きな傷を負うが、すべては自分のせいだと達観するようになる。
- 誰かを傷つけてまで勝利しようとは考えておらず、限界になったら静かに座って射殺されようと考える。
- ビリー・ステビンズ
- ギャレット・ウェアリング
- 38番。
- 少佐の私生児であり、副賞として「父親に逢いたい、お茶会に招待されたい」と願い、自分が少佐の私生児であることを指摘するつもりであったが、少佐はそのことを知っていた。
- 風邪を引き、体調が悪化。一緒に歩けたことを光栄だったとレイとピートに告げ、自分を振り返って見ないことを2人に約束させると、立ち止まった。48番目の脱落者。
- アート・ベイカー
- タット・ニュオート
- 6番。本名は「アーサー」で「アート」は愛称。
- 貧しい町の出身で、優勝賞金をもって祖母の下へ帰ることを夢見る。〈ロング・ウォーク〉中に友達を作ろうと考えており、レイ、ピートと「三銃士」を結成する。副賞には「月旅行」などを告げる。
- 終盤、鼻血が止まらなくなり、脱落する。その際、ロザリオと十字架をレイに託す。47番目の脱落者。
- ハンク・オルソン
- ベン・ワン
- 46番。
- 〈ロング・ウォーク〉参加者で唯一の既婚者。妻の名は「クレメンタイン」。
- 疲労困憊から錯乱し、兵士に襲い掛かろうとしたところを轢殺・射殺される。この時点で生存している参加者たちは優勝賞金から未亡人となるクレメンタインにいくらかを支払おうと約し、コリーが歌いだしたことで「いとしのクレメンタイン」を合唱する(バーコヴィッチを除く)。
- コリー・パーカー
- ジョシュア・オジック
- 48番。
- ネイティブ・アメリカン。終盤、突如として兵士のカービン銃を奪い、兵士を撃ち殺すも、他の兵士たちから撃たれる。即死こそしなかったが、奪ったカービン銃で自死した。46番目の脱落者。
- ゲイリー・バーコヴィッチ
- チャーリー・プラマー
- 5番。
- 口が悪い。ランク・サンダースの名前をからかい、ランクの母親の悪口を言ったことが原因でランクは脱落することになり、他の参加者から「人殺し」と呼ばれることになる。
- 本人も口が悪く、初対面の人が相手だと最初の印象が悪くなりがちなことは自認しており、それが原因で故郷でも友達がいなかったと語っている。
- 他の参加者から相手にされないことで精神的に参り、自分も「クレメンタイン基金」に賛同である旨をレイを通じて他の参加者に伝えた後に、手持ちの金属スプーン(歩行中に食事するのに利用)で自分の頸動脈を切り、その後、45番目の脱落者として兵士に射殺される。
- リチャード・ハークネス
- ジョーダン・ゴンザレス
- 49番。
- 優勝後は出場者目線で〈ロング・ウォーク〉について出版(そして印税収入)をもくろんでおり、競技中に出場者情報などのメモを取る。
- トーマス・カーリー
- ローマン・グリフィン・デイヴィス
- 7番。
- 年齢を偽って参加したのではないかと他の参加者に揶揄されるくら幼く見える。
- こむら返りを起こし、〈ロング・ウォーク〉最初の脱落者となる。
- カーリーが脱落した(射殺された)シーンの後に映画タイトルが表示される。
- ジェイムス・ユーイング
- ノア・デメル
- 1番。
- 脚が痙攣したことが原因となって脱落。
- ピアソン
- サメラ・プムルワナ
- 8番。
- コース沿道にいたレイのファンの少女を見つけて指さした。
- ランク・サンダース
- デイモン・ワライタリー
- 19番。
- 名前のことでバーコヴィッチにからかわれる。「フランクの愛称とかならともかく、ランクなんて名前はあり得ない」から始まって、そんな名前を付けたランクの母親までからかいの対象となったことで、バーコヴィッチに殴りかかろうとし、これが規制対象行為として兵士に射殺される。
- ラーソン
- ケイナン・レーマン
- 14番。
- ザック
- Emmanuel Oderemi
- 50番。
- パーシー・グリムス
- Dale Neri
- 31番。
- ルートから外れて逃亡しようとしたところ、兵士たちからの銃撃を浴びて死亡。
- パトリック・スミス
- Teagan Stark
- 4番。
- 足首を負傷し、脱落する。
- トレスラー
- Sam Clark
- 24番。
- ポータブルラジオを持ち込んでいる。最後はいきなり奇声を挙げつつ服を脱ぎだし、路上で立ち止まって射殺される。
- ロナルド
- Jack Giffin
- 45番。
- 下痢に悩み、それがもとで歩行速度を維持できず脱落する。
- ギャラティの母
- ジュディ・グリア
- 名は「ジニー」。ジェニーではない。
- ギャラティの父
- ジョシュ・ハミルトン
- 政府禁制の書物を集めていたりしたことから、目の前で少佐に射殺された(なお、妻子の前で禁制品に手を出さないことの宣誓を求められており、これを断ったことが射殺の原因ともなっている)
- 少佐
- マーク・ハミル
- 車に乗り、〈ロング・ウォーク〉に同行する。歩くことはなく、車両に乗っている。常時同行しているのではなく、適宜、睡眠、食事、シャワーを浴びたりしているもよう。ときおり参加者を鼓舞するような一方的な演説を行う。
- 最後の1人、49番目の脱落者は少佐自身が射殺するのが恒例となっているようであり、楽しみにしているルート沿いの住民もいるようである。
使用楽曲[編集]
- モリー・マローン[3]
- アイルランドのフォークソング。非公式ではあるが「ダブリンの歌」として親しまれている。
- レイの夢の中で母親の歌う子守唄として用いられる。
- My Eyes Are Getting Heavy[3]
- カリフォルニアを拠点に活動していたバンド「パリッシュ・ホール」(Parish Hall)が1970年にリリースした楽曲。
- 少佐や体制についての不満を大声で皆が言うシーンで、トレスラーの持つラジオから流れる曲。
- いとしのクレメンタイン[3]
- ハンク・オルソンの死を悼んで、コリー・パーカーが歌いだし、合唱となった。
- アメリカ・ザ・ビューティフル[3]
- 優勝者が決まった際に、観客が合唱する。
- Took a Walk[3]
- シャブージー with ステファン・ウィルソン・ジュニアの楽曲。
- エンドクレジットと共に流れる。
- Last Of My Kind ft. Paul Cauthen[4]
- シャブージーの2024年7月にリリースされた3rdアルバム『ホエア・アイヴ・ビーン・イズント・ホエア・アイム・ゴーイング』収録曲。
- 予告編で使用された。
製作に関するあれこれ[編集]
- ほとんどがロケ撮影で行われ、実際にスタート地点からゴールまで出演者とスタッフで旅をしつつ順撮りが行われた[5]。出演者たちは長い行程で心身共に疲労がたまり、(脚本上、射殺され脱落するので)人数は減って行くことで、絆は深まるという劇中と同じ変化が自然発生した[5]。雨や炎天下なども撮影日の天気そのままである[5]。
- ラストは2パターン製作されたが、どちらも原作小説のラストとは異なるものであった[5]。
没ラスト[編集]
上述のように2パターン製作されたラストシーンのうち、没になったほうのあらすじを以下に記す。UHB BDの特典映像として収録されている[6]。
- 没ラストのあらすじ
- 優勝者・ピート・マクヴリーズは副賞にその場の兵士が持っていたカービン銃をもらい、少佐に突き付けた。しかし、ピートは引き金を引かず、銃を置いていずこかへと歩き去った。
- しばらくして、レイ・ギャラティの母親、ハンク・オルソンの妻、アート・ベイカーの祖母は、それぞれ自宅の扉前に置かれていた大金入りの封筒を見つける。それから3人のもとには定期的に差出人不明の大金が届けられるようになった。またアートの祖母のもとには、アートの遺品であるロザリオと十字架も届けられた。
原作との相違点[編集]
- 〈ロング・ウォーク〉の参加者数。原作は100人。映画は50人でアメリカ各州の代表となっている。
- 〈ロング・ウォーク〉の観覧は、原作では途中から規制解除になり、沿道の住人以外の観客も登場するが、映画では沿道の住人以外は登場しない。
- 原作と映画とで人種が変更になっている登場人物がいる。一例としてアート・ベイカーは原作ではクー・クラックス・クランに参加していたこともある白人であるが、映画では黒人となっている。
- レイ・ギャラティの父親。原作では分隊に連行され、以降は消息不明。映画ではレイの目前で少佐に射殺される。
- ピート・マクヴリーズの傷。原作では恋人とのトラブルで出来たもの。映画では悪行に伴う報復の末。
- ロング・ウォーク〉の優勝者。原作ではレイ・ギャラティ。映画ではピート・マクヴリーズ。
日本公開[編集]
日本では2026年6月26日に劇場公開された[5]。R15+指定作品[7](15歳未満の劇場入場や鑑賞が禁止)。
激痛足つぼ上映[編集]
2026年6月20日にHUBHUB下北沢(東京都世田谷区)内のシアタールームで「激痛足つぼ上映」が行われた[7]。
登場人物たちの痛みや苦しみを、「身をもって体感」してもらうことを目的としたイベントで、参加者たちは公式Xでの高倍率の選考の末に選ばれた[7]。
本作を上映し、脱落者が出るシーンが流れると、兵士に扮した足つぼ施術者たちが参加者に激痛足つぼマッサージを施術する[7]。この際にうめき声を含む声を挙げると警告が行われ、4回目の警告を受けたら退場となる[7]。退場者が増えると1人に複数の施術者がつくようにもなる[7]。
賞歴[編集]
- 2025年 フェニックス映画批評家協会賞 トップ10作品選出
- 2026年 第41回インディペンデント・スピリット賞 ロバート・アルトマン賞受賞
脚注[編集]
- ↑ a b “スティーブン・キングの処女作、ついに映画化『ロングウォーク』6月日本公開決定 特報&ビジュアル解禁”. Real Sound (2026年1月30日). 2026年7月14日確認。
- ↑ “『ロングウォーク』マーク・ハミルがデスレース参加者を追い詰める! 予告&ビジュアル解禁”. クランクイン! (2026年4月9日). 2026年7月14日確認。
- ↑ a b c d e f g h i j “『ロングウォーク』の挿入曲とサントラ”. Filmmusik. 2026年7月14日確認。
- ↑ “映画『ロングウォーク』の予告篇で流れる曲は?”. CD JOURNAL (2026年4月16日). 2026年7月14日確認。
- ↑ a b c d e f g 小原篤 (2026年6月26日). 朝日新聞. https://www.asahi.com/articles/ASV6T1R83V6TUCVL01MM.html+2026年7月14日閲覧。
- ↑ “The Long Walk Has An Alternate Ending, And I'm Both Happy And Amazed That It Wasn't In The Theatrical Cut” (英語). Cinemablend (2025年11月27日). 2026年7月14日確認。
- ↑ a b c d e f “「ロングウォーク」激痛足つぼ上映開催、参加者が極限状態に「今も痛みが続いています」”. 映画ナタリー (2026年6月25日). 2026年7月14日確認。
外部リンク[編集]
- 映画『ロングウォーク』オフィシャルサイト
- 映画『ロングウォーク』公式(@LongWalk_jp) - 𝕏(旧:Twitter)