ブラウン管
ブラウン管(ブラウンかん)は、電子ビームを蛍光体に当てて発光させ、画像や波形を表示する電子管。陰極線管とも呼ばれ、英語の「cathode ray tube」を略してCRTと表記される[1]。テレビ受像機やコンピュータのディスプレイ、オシロスコープなどに使われてきた。
構造と仕組み[編集]
ガラス容器の内部を真空に保ち、後部にある電子銃から電子ビームを放出する。真空にするのは、電子が気体分子と衝突するのを避けるためである[2]。
電子ビームを細く絞って加速し、前面の蛍光面に当てると、その場所が光る。電子ビームの向きと強さを変えることで、光る位置と明るさを制御する[3]。
テレビ用では、電子ビームで画面を水平方向・垂直方向に繰り返し走査し、映像信号に応じて明るさを変えることで画像を表示する。電子銃から蛍光面までの距離が必要なため、画面を大きくすると奥行きも大きくなりやすい[2]。
偏向方式[編集]
電子ビームの進む向きを曲げることを偏向という。主な方式には次の2つがある。
- 電磁偏向 - コイルに電流を流して磁界を発生させ、電子ビームの向きを変える。テレビ用ブラウン管では、管の後部に取り付けた偏向ヨークを用いる[4]。
- 静電偏向 - 向かい合う金属板の間に電圧を加え、電界によって電子ビームの向きを変える。ブラウン管式オシロスコープでは、水平・垂直の2組の偏向板が使われる[3]。
カラー表示[編集]
カラーブラウン管では、蛍光面に赤・緑・青に発光する蛍光体を規則的に配置する。それぞれに当たる電子ビームの量を調整し、光の三原色を組み合わせてさまざまな色を表現する。シャドウマスク方式では、多数の穴が開いた金属板を蛍光面の手前に設け、各色の電子ビームが対応する蛍光体に当たるようにする[5]。
ソニーが開発したトリニトロンは、1つの電子銃から3本の電子ビームを出し、縦長のすき間を並べたアパーチャーグリルを使う方式である。この方式を採用した最初のカラーテレビは1968年に発売された[6]。
歴史[編集]
1897年、ドイツの物理学者カール・フェルディナント・ブラウンが発明した。「ブラウン管」という名前は、この発明者に由来する[4]。
日本では、高柳健次郎が1926年12月25日に、ブラウン管を用いて「イ」の文字を表示する実験に成功した。高柳は浜松高等工業学校で研究を進め、撮像には機械式のニポー円板、受像にはブラウン管を使用した[7]。
その後、テレビやコンピュータ用ディスプレイの表示装置として広く普及した。2000年代には、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイを用いた薄型テレビへの置き換えが進んだ[5]。
ブラウン管を使ったテレビには、地上デジタル放送のチューナーを内蔵した製品もある。例えばソニーが2003年に発表した「KD-36HR500」などは、ブラウン管でデジタルハイビジョン映像を表示する機種だった[8]。
関連項目[編集]
脚注[編集]
- ↑ CRT - 日本電子
- ↑ a b エレクトロニクスと真空技術 - TDK
- ↑ a b オシロスコープは何で構成されているか - OWON JAPAN
- ↑ a b 第9回「テレビのブラウン管」の巻 - TDK
- ↑ a b 原善一郎「大型映像表示装置発展の系統化調査」第3章 - 国立科学博物館産業技術史資料情報センター
- ↑ 第2部 第2章 トリニトロンカラーテレビの開発 - ソニーグループ
- ↑ 高柳健次郎について - 高柳健次郎財団
- ↑ 進化した「ベガエンジン」による さらなる高画質を実現 - ソニー、2003年8月28日