バックアップ

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バックアップ(backup)とは、

  1. データの状態を複製し、問題発生時の復旧に備えること
  2. 支援をすること

本ページでは、1.について記載する。

リスク分類[編集]

両リスクに備える必要がある。

  • 論理破壊 - ヒューマンエラー、バグ、悪意ある改竄など
  • 物理的破壊や紛失 - ハードウェア故障など

メディアの種類[編集]

複数のメディアにバックアップするのが望ましい。

HDD
大容量で高速である。衝撃や磁気に弱いことが少なくない。それらに対する対策は主に外付けハードディスクで行われている。
光ディスク
DVD、CDなどが含まれる。一度だけ書き込み可能、消去不可なライトワンスと書き換え可能なリライタブルの2種類がある。
USBフラッシュドライブ
いわゆるUSBメモリである。長期のバックアップには稀である。
SSD
容量がHDDと比べて少ない傾向にあるが、より高速である。
磁気テープ
記録装置が非常に高価であるため、個人向きではない。容量が大きいため、システム全体のバックアップに向いている。

バックアップ単位[編集]

  • ファイルバックアップ
1つのファイルを編集する場合は、あるファイルを編集する前に、編集前の状態をコピーし、別のファイル名で保存しておく。誤った編集内容を保存したり、違うファイルデータに置き換えてしまい、元に戻すのが難しい、或いは何らかのトラブルでファイルが破損し読み込めなくなってしまった際、先程別名で保存したファイルを改めて複製し、元の名前で保存し直せば元通り。
複数のファイルが収められているフォルダの場合は、複数のファイルが収められているフォルダごと別の場所(別のフォルダ、ストレージ)へコピーしておき、同じく元に戻せるように備えておく。CUIやそのエミュレータではcpコマンドで行う。
ファイル・フォルダバックアップを手軽に行うための支援ツールも無数にある。PCに結構詳しい人であれは、Windowsでは「Robocopy」コマンド、GNU/Linuxでは「rsync」コマンドを用いることで自由自在かつ安上がりに実現できるだろう。
rsyncコマンドは、大量のファイルをバックアップしたいときに特に役に立つ。
自ら操作する必要があり、少々面倒な形式ではあるものの、難しい点はなく分かりやすい、追加費用もほとんどかからない、最も基本的なバックアップと言える。
  • イメージバックアップ
ファイルやフォルダなどのデータだけでなく、OSのシステム領域や、インストールしたアプリケーション、デフォルトから変更した各種設定など、パーティションのバックアップを保存しておき、イメージファイルとしてまとめる(前述のアーカイブに近い)。一般にnullデータを読み飛ばすことはできない。基本フルバックアップとなる。
すべてのパーティションをバックアップすれば、床に落としてしまった、落雷による過電流で内部回路が焼損してしまった、或いはコンピューターウイルスにやられてOSが起動できない等々の致命的な故障に見舞われても、事前に保存しておいたイメージバックアップから修理あるいは買い替え後の機器へ復元(リカバリー)し、あたかも何事もなかったかのように復旧することが出来る、かも知れない。惨事復旧(Disaster Recovery)と表現したりする。

レベル[編集]

  • フルバックアップ
必要なすべてのデータを複製する。容量が多い場合、時間がかかり、バックアップ先に多くの容量が必要となる。バックアップ先に充分な空きが必要である。
  • 増分バックアップ、差分バックアップ
ファイルをバックアップすると、ファイル容量が単純計算で2倍になる。塵も積もれば、空き容量を圧迫してしまう。
「同じファイル2つは、重複する部分も保存しなければならなくて、何だか無駄だなぁ」と考えた天才が、増分バックアップ、差分バックアップという概念を編み出した。
増分バックアップは、前回のバックアップから変化した部分(増分)のみを保存する。
例:9月1日にフルバックアップを保存する。9月2日は1日から増えた部分を保存。9月3日は2日からさらに増えた部分を保存。9月4日は3日からさらにさらに増えた部分を保存。以下繰り返し。
1回1回の増分バックアップの所要時間・容量は少な目だが、何らかのトラブルで9月2日の増分バックアップが吹き飛んだ場合、9月3日および9月4日の増分バックアップは使用不能になる。
差分バックアップは、ある地点でのフルバックアップから変化した部分(差分)のみを保存する。
例:9月1日にフルバックアップを保存する。9月2日は1日から変化した部分のみを保存。9月3日も1日から変化した部分のみを保存。9月4日も1日から変化した部分のみを保存。以下繰り返し。
9月2日の差分バックアップよりも、9月3日の差分バックアップよりも、9月4日の差分バックアップが所要時間・容量は増加する一方、9月2日の差分バックアップが吹き飛んでも9月3日の差分バックアップが吹き飛んでも、9月1日のフルバックアップと9月4日の差分バックアップの両方が無事である限りへっちゃら。
増分バックアップ・差分バックアップいずれも、その「起点」となるフルバックアップが必要となる。何らかのトラブルにより起点フルバックアップが吹き飛んでしまうと、それ以降に保存された増分・差分バックアップは役に立たなくなる。
同じ機器を繰り返しバックアップしたいという用途においては、フルバックアップの繰り返しよりも増分・差分バックアップのほうが容量節約になる。
有償バックアップ製品の大半は増分・差分いずれか、或いは両方に対応している(製品の方針により違いがある)。ある程度溜まった増分・差分を起点フルバックアップへ統合し、新たな起点フルバックアップとする「マージ(統合)」機能を備える製品も。

アーカイブ[編集]

複数のファイル・フォルダをまとめて1つのファイルにしたものをアーカイブ、または書庫ファイルと呼ぶ。アーカイブを作成するには「圧縮ソフト」、アーカイブを展開して中のファイルを利用できるようにするには「展開ソフト(解凍ソフト)」を用いる。圧縮と展開の両方の機能を持つアーカイブソフトウェアが多くある。
一般に、アーカイブ化されたされたファイル・フォルダはそのままでは閲覧・利用できず、展開する必要がある。その代わりに複数のファイルを単一のアーカイブファイルとして扱いやすくし、アーカイブをバックアップすることで、複数のファイル・フォルダをバックアップすることと同等となる。アーカイブソフトウェアによっては、展開しなくても、ファイル名などのメタデータは閲覧できることがある。
ごく一部の形式(圧縮を行わないtarなど)を除き、ファイル・フォルダを「圧縮」することで、元々のファイル・フォルダのサイズ合計よりアーカイブファイルのサイズは小さくなる。これまでに様々な圧縮アルゴリズムが実用化されてきた(lzh形式、rar形式、gzip形式など)が、世界的ではzip形式がデファクトスタンダードとなっている。tar.gz(tarball,tarで連結を行い、gzipで圧縮したもの)や7zも多く使われる。

ルートパーティションのフルバックアップについて[編集]

その仕組み上、例えば「ルートパーティション(あるいはCドライブ)のフルバックアップをルートパーティション(あるいはCドライブ)内の別のフォルダへ保存」は出来ない。外付けUSBディスクやHDD、或いはNAS等ネットワークストレージ等、対象の記憶装置以外の記憶装置へ保存する必要がある(ルートパーティション(Cドライブ)のフルバックアップをマウントされているパーティション内へ保存であれば可能)。
ファイル・フォルダのバックアップはある程度手軽にできる一方、OSやアプリを含むフルバックアップはWindowsやmacOSでは難しいが、GNU/Linuxでは比較的簡単である。有料のバックアップソフトもある。特に「吹き飛んでしまうとそれこそ会社まで吹き飛んでしまうほど重要なサーバー」は必ず定期的にフルバックアップを保存すべし。
大半のバックアップ製品は2つのバックアップ方法に対応している。1つは、動作中のOSへバックアッププログラムをインストールし、自動的に動作するよう設定しておいて、動作中のOSをバックアップする方法(ホットバックアップ)。もう1つは、Live USBやLive CD等で機器を起動し、停止している状態のOSを手動バックアップする方法(コールドバックアップ)。

スナップショット[編集]

スナップショットは厳密にはバックアップと異なり、データそのものを保存するのではなく、あるパソコン・あるサーバーの前回からの「変化」を記録している。
差分バックアップと似ているが、バックアップは対象の記憶装置以外の記憶装置へ保存、スナップショットは対象の記憶装置内の別場所へ保存という考え方が近い。
差分バックアップから復元するには差分バックアップの起点となるフルバックアップが必要になるが、スナップショットにおける起点はスナップショット取得元の記憶装置そのもの。変化の記録を元に戻すことで、古いバージョンのファイルが復活する。
差分バックアップがフルバックアップ+差分バックアップの保存容量を必要とするのに対し、スナップショット保存に必要な保存容量は小さい。スナップショット取得に要する時間はせいぜい数分程度、大抵は数十秒で終わる。
一方、ディスクの故障などで元々のディスクが読み取れない場合、スナップショットは全く役に立たない。仕組みの都合上、バックアップと異なり別の外付けディスクやNAS等への保存はできない。
スナップショットとバックアップは異なる概念。あくまでバックアップを取ったうえで、追加でスナップショット機能を有効化するのが鉄則。
OSによっては、システムの状態のスナップショットを定期的・自動的に保存、不具合発生時に発生前の状態へ戻すソフトウェアを備えている。Windowsでは「復元ポイント」、GNU/Linux(Linux Mintではプリインストールされている)では「Timeshift」、macOSのTime Machineがある。

ファイル履歴[編集]

ファイルの変更履歴を自動的に保存し、古いバージョンへ差し戻せる機能を持つアプリケーションやシステムが複数存在する(差分バックアップの応用と言える)。
Microsoft ExcelLibreOffice Calcは初期状態では履歴を保存しないものの、「変更履歴」/「変更記録」機能を有効化することでxlsx/odsファイル自体に過去の編集履歴を保存するようになる(履歴を有効にしていない状態と比べ、必然的にファイルサイズは増大する。また、最終版からは削除した情報も履歴に残っている場合があり、時としてセキュリティリスクと化す)。LibreOffice Calcでは、上部にある「編集」を選択し、「変更の追跡」を選択し、「記録」を選択することで可能である。
OneDriveDropBoxなどクラウドストレージサービスには、アップロードされたファイルの履歴が自動的に保存され、同じファイル名の古いバージョンを取り出すことができるものがある。
ファイル履歴の話とは異なるが、ウィキペディアや我らがエンペディアなどMediaWikiは、各記事の履歴を保存し、必要に応じて過去の版へ戻す機能を備える。
規模の大きなアプリケーションの開発現場では、アプリケーションの元となるソースコードの変更履歴を保存しておき、誤った変更を取り消したりする等の仕組みを活用する(Git等のバージョン管理システム)

クラウド[編集]

  • クラウドストレージ
上記ファイル履歴と話が被るが、DropboxOneDriveGoogle DriveiCloudProton DriveTresorit等々、各社からクラウド上に構築されているファイル保存サービスが提供されている。
AndroidスマホへGoogleアカウントでサインインし「Google Driveへのバックアップ」を有効化すると、Wi-Fi接続時にスマホ内データがGoogle Driveへバックアップされる。機種変更した新しいスマホへ同じGoogleアカウントでサインインすると以前の機種のバックアップデータが新スマホへ復元され、以前とあまり変わらない使用感が戻ってくる。
上記の自動バックアップはたしかに、便利ではあるが、セキュリティ・プライバシー上のリスクと容量の問題がある。
セキュリティ・プライバシー上のリスクが高いため、NSAの違憲の大量監視プログラムであるPRISMに参加している企業のクラウドストレージにはアップロード前の暗号化なしでの保存は原則してはいけない。
Proton DriveTresoritのようなエンドツーエンド暗号化のクラウドストレージもある。

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

関連項目[編集]

Wikipedia-logo.pngウィキペディアの生真面目ユーザーたちがバックアップの項目をおカタく解説しています。