チャクリ・ナルエベト (空母)
チャクリ・ナルエベト(テンプレート:Lang-th, 英語: HTMS Chakri Naruebet, 艦番号:CVH-911)は、タイ王国海軍が保有する軽空母である。艦名は「チャクリー王朝の栄光」を意味する。タイ王国海軍史上初の航空母艦であり、2025年現在、東南アジア地域で唯一の空母である。
概要[編集]
「チャクリ・ナルエベト」は、スペインのバサン造船所(現在のナバンティア)で建造された、スペイン海軍のプリンシペ・デ・アストゥリアス級航空母艦を小型化した設計を基にしている。タイ王国海軍は、広大な排他的経済水域(EEZ)の防衛、海上交通路の保護、および災害救援活動への対応能力向上を目的として、空母の導入を決定した。
本艦は、その設計において航空運用能力と指揮統制能力を重視しており、ヘリコプターの運用を主眼としているが、AV-8S ハリアーIIのようなSTOVL機の運用も可能である。
艦歴[編集]
タイ王国海軍は、1992年にバサン造船所と空母建造契約を締結した。1993年7月12日に起工され、1996年1月20日に進水した。その後、艤装と試験を経て、1997年8月10日にタイ王国海軍に就役した。
就役当初は、艦載機としてAV-8S ハリアーII攻撃機を運用し、タイ湾およびアンダマン海における哨戒任務や、捜索救難活動に従事した。しかし、ハリアー機の維持費や老朽化、部品調達の困難さなどから、2006年には運用が停止されたとされている。以降は、主にヘリコプターの運用を主体とし、災害派遣やVIP輸送、訓練などに使用されている。
2004年のスマトラ沖地震と津波の際には、人道支援および災害救援活動において重要な役割を果たした。その際には、多数のヘリコプターを運用し、被災地への物資輸送や負傷者の救助に貢献した。
設計[編集]
「チャクリ・ナルエベト」は、全長182.6メートル、満載排水量12,500トンと、現代の空母としては比較的小型である。スキージャンプ甲板を有しており、STOVL機の離陸を補助する。飛行甲板は広大なヘリコプター発着スペースを提供し、複数のヘリコプターが同時に運用可能である。
推進方式は、CODOG(Combined Diesel Or Gas Turbine)方式を採用している。これは、低速巡航時には経済的なディーゼル機関を使用し、高速航行時にはガスタービン機関を使用する方式である。最大速力は25.5ノット。
搭載機[編集]
就役当初は、退役したスペイン海軍のAV-8S ハリアーII攻撃機(一部はAV-8Bに準ずるアップグレードが施された)を運用していた。しかし、上述の理由により運用を停止している。
現在では、主に以下のヘリコプターを搭載・運用している。
- シコルスキー S-70B シーホーク (タイ王国海軍はこれをSH-60Bとして運用)
- ベル 212 / ベル 214ST
- ベル UH-1H
搭載機数は、最大でヘリコプター約6-8機、あるいはAV-8Sを6-9機とヘリコプター6-8機とされているが、実際の運用ではより少ない機数となることが多い。
評価[編集]
「チャクリ・ナルエベト」は、タイ王国が東南アジア地域における海上権益の維持と国際貢献を目指す上で、その象徴としての役割を担っている。しかし、運用費用や維持管理の課題、そして搭載機の制約など、その実用性については様々な議論がある。それでも、その存在自体がタイ王国海軍のプレゼンスを高め、地域における影響力の一端を示していると言える。
豆知識[編集]
- 「チャクリ・ナルエベト」は、タイ国王プーミポン・アドゥンヤデートによって命名されました。
- 本艦は、災害救援活動において非常に重要な役割を担っており、タイ国民からは「海上病院」とも呼ばれています。
- その比較的小さなサイズと独特の形状から、しばしば「海上ホテル」と揶揄されることもあります。